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18話 この世の創造者

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「ねえリンダ。王太子様のお兄様って知ってる?」
 さっきの授業で結局、書ききれなかったので、彼女のノートを写しながら闇の王について聞いてみることにした。リンダは物知りだから、きっと知ってるはずだ。
「ああ、生徒会長だよ」
「ええっ、本当に!?」
「うん。ハーリー様は一年前、遠征先で行方不明になっちゃってるんだけど……」

 彼女の情報によると、王国の要請で上級魔法師のハーリーが中級クラスの生徒たちと共に上等魔物の討伐に向かった際、突如として行方が分からなくなったそうだ。魔物自体は姿を消したので被害は最小限に抑えられたが、それ以来、彼は戻っていない。だから生徒会長のポストは現在、空席のままなのだ。
「そうなんだ。ねえ、闇の王って……」
「あっ、アリアナ! 授業に遅れるよ!」
「あ、う、うん」
 中級クラスに仮編入したあたしたちは基礎学習の講義をヒス女史から受けていた。これが苦痛で苦痛で仕方ないんだけど~。

「おい、属性と特殊能力は覚えただろうな。後でテストするからな。それじゃあ次は魔物について講義する。死にたくなければしっかり聞いとけよ!」
「え……は~い」
「魔物には下等、中等、上等そして特等と種類がある。下等はだな……」
 ふあぁぁあああ! やばっ! 睡魔が……。
 あたしの目はかろうじて開いてるけど、全然内容が頭に入ってこないや。後でリンダに聞こっと。

 ***

「でね、アリアナ。下等、中等の魔物は知能がなく、ただの怪物なのよ」
「課外授業で現れた魔物とか?」
「うん。ウロボロスは数は多いけど下等だから、斬りまくれば退治できるけど、ガーゴイルのような中等は弱点を探る必要があるわ。単独で立ち向かうのは危険だからグループで対処しないといけないの」
「なるほど~」
「でも中級クラスの生徒はこれ以上の魔物に手を出してはいけない決まりなのよ」
「上等の魔物とか相手するのは無理ってこと?」
「うん。人型の魔物は知能があるから超強いんだって」
「ほ~。じゃあ特等とか現れたら即逃げなきゃだね!」
「そうだよ!」
 納得。ヒス女史よりもリンダに聞いた方が分かりやすいんだよね。それとついでにまた聞いてみるけど。
「でね、闇の王って誰なのかな?」
「闇の王──この世の創造者で、クリエイターとも呼ばれてる特等の魔物ね。その姿は誰も見たことがないらしいよ」
「生徒会長の可能性はあるかな?」
「たぶん違うと思うな」
「ええっ、どうして?」
「状況から察するに、ハーリー様は連れ去られたんだと思うの。もしかしたら特等魔物に憑依されてるかもしれない」
 つまりは……闇の王はアレク先生の可能性も考えられるってこと? そんなことはないよ! 絶対に違う!
 あたしは少し不安になってしまった。

「おーい、二人とも。ヒス女史が呼んでるぞ」
「あ、ガレスさん!」
「なんで俺も呼ばれてるのかな……?」
 ガレスまでも不安に感じながら、三人で事務室に向かった。そこはヒス女史専用の小部屋だ。
「アリアナとリンダ。特別講義は終わったが、二人を中級クラスの授業に参加させる前に、やらねばならないことがある」
「……え~と、それは何ですか?」
 リンダと顔を見合わせながら、恐る恐る聞いてみる。
「お前ら、運動音痴だろ! 体力もないし!」
「は? そ、そうですが何か?」
「まずは基礎体力をつけなくてはならないだろ! ガレスよ、お前を監督に命ずる。こいつらを三ヶ月間、しっかり鍛えてくれ!」
「ええーーっ!?」
「かしこまりました」

 おいおい、まじですか。またトレーニングの再開ですか? もう体育祭も終わってるし、勘弁してよ~。



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