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19話 雷光使いの少年
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「ガレスさん、三ヶ月は長いです!」
テテテっとリンダと園庭を駆けながら、この地獄の特訓が早く終わって欲しいと願っていたけど、やばそうな予感がする。
「進級は半年に一回だからな。まだ入学して二ヶ月半だろ。それまで初級クラスを離れて特別カリキュラムを受けるって、結構珍しいんだぜ」
「ねえ、どんなカリキュラムか知ってる?」
「さあ? とにかく騎士団に入れるくらいにしろって言われてるんだけどな」
「ええーーっ! そんなの無理っ!」
「無理っ、無理っ!」
二人ともぶーたれる。ガレスに八つ当たりしても仕方ないのに。
彼のメニューは柔軟に筋トレ、それにランニングとひたすら基礎体力を上げることが中心だった。しかし、それだけではない。
「俺のメニューは日々行う訓練の準備体操みたいなものだ。実践トレーニングは他の生徒が担当するから」
「え、そうなの?」
がーんだ。これだけでヘトヘトなのにまだ何かあると思うと目眩がする。
どうやら、中級クラスの魔法師が交代であたしたちの面倒を見るらしい。そしてガレスに代わって現れたのは、可愛らしい小さな男子生徒だった。彼は無表情でどこかぼーっとしてる雰囲気を漂わせている。
「僕の名前はリック・モンテーロ。君たちを鍛えるよう頼まれたから、仕方なく付き合ってあげることにした」
「はあ……よろしくお願いします」
本当に華奢な少年って感じだけど大丈夫かな。つか、とぼけているようで結構冷たいこと言ってるよね。中級クラスにこんな人いた?
「……君たちの名前は……あ、思い出した。リンダさんだ。それから、アリ……アリ」
「アリアナです!」
「うん。二人とも、この結界衣を着て」
彼から透明なカッパのような服を渡され、言われるがままに身に着けてみる。
「リンダさん、土の防御を張って。アリアナさんは竜巻で防御する感じで。……早くしてね」
そんな急に言われてもって思いつつ、金髪のあたしを意識して集中する。
「ねえ、まだなの?」
「は、はい。ただいま!」
リンダの手が地面に触れると土にエネルギーが込められ、微細な振動が生じて土の壁が形成されていく。その壁は徐々に高くなり、頑丈な土壁として現れた。一方、あたしは手を振り回し、空気を巻き込むような動きを始める。周りには風が渦巻き、やがて竜巻が形成された。
「遅いね。死んじゃうよ。……まあいっか、じゃあ始めるよ」
「えっと、なにを?」
「あ、その前に。その防御は弱いから避けるように」
「はい?」
リックが両手を迅速に上げると、手のひらから眩い光が放たれ、光球が高速で接近してきた。
「ひぃっ!」
それは雷の光だ。防御の壁を貫き、結界衣を纏ったあたしたちに打撃を与えた。
「ぎゃあああっ……」
「……雷は土や風をほぼ通り抜けるから、避けないとやられるよ?」
「この防御は気休めかい!?」
「うん。気休め程度かもしれないけど、何もしないよりはマシだよ。まあ、ほぼ結界衣がダメージを軽減させてるだけだけどね。でもね、戦いは防御を整えて攻撃するのが基本だから」
「戦う体制が大事ってこと?」
「うん。じゃあ、次は避けてね」
さっさと雷光が放たれる。でも、そのスピードについてこれず、またしても雷を浴びてしまった。あたしたちは防御も消えて地面に横たわった。感電してしまったのだ。
「中級クラスはそんな甘いものじゃないよ。僕の攻撃を躱して反撃できるようにならないと無理だから。自主的にトレーニングを積んでおいて。……忙しいから帰る」
ああっ、なんだ、この雷光使いの少年は! そんなに厳しいなら初級クラスに戻してください!
テテテっとリンダと園庭を駆けながら、この地獄の特訓が早く終わって欲しいと願っていたけど、やばそうな予感がする。
「進級は半年に一回だからな。まだ入学して二ヶ月半だろ。それまで初級クラスを離れて特別カリキュラムを受けるって、結構珍しいんだぜ」
「ねえ、どんなカリキュラムか知ってる?」
「さあ? とにかく騎士団に入れるくらいにしろって言われてるんだけどな」
「ええーーっ! そんなの無理っ!」
「無理っ、無理っ!」
二人ともぶーたれる。ガレスに八つ当たりしても仕方ないのに。
彼のメニューは柔軟に筋トレ、それにランニングとひたすら基礎体力を上げることが中心だった。しかし、それだけではない。
「俺のメニューは日々行う訓練の準備体操みたいなものだ。実践トレーニングは他の生徒が担当するから」
「え、そうなの?」
がーんだ。これだけでヘトヘトなのにまだ何かあると思うと目眩がする。
どうやら、中級クラスの魔法師が交代であたしたちの面倒を見るらしい。そしてガレスに代わって現れたのは、可愛らしい小さな男子生徒だった。彼は無表情でどこかぼーっとしてる雰囲気を漂わせている。
「僕の名前はリック・モンテーロ。君たちを鍛えるよう頼まれたから、仕方なく付き合ってあげることにした」
「はあ……よろしくお願いします」
本当に華奢な少年って感じだけど大丈夫かな。つか、とぼけているようで結構冷たいこと言ってるよね。中級クラスにこんな人いた?
「……君たちの名前は……あ、思い出した。リンダさんだ。それから、アリ……アリ」
「アリアナです!」
「うん。二人とも、この結界衣を着て」
彼から透明なカッパのような服を渡され、言われるがままに身に着けてみる。
「リンダさん、土の防御を張って。アリアナさんは竜巻で防御する感じで。……早くしてね」
そんな急に言われてもって思いつつ、金髪のあたしを意識して集中する。
「ねえ、まだなの?」
「は、はい。ただいま!」
リンダの手が地面に触れると土にエネルギーが込められ、微細な振動が生じて土の壁が形成されていく。その壁は徐々に高くなり、頑丈な土壁として現れた。一方、あたしは手を振り回し、空気を巻き込むような動きを始める。周りには風が渦巻き、やがて竜巻が形成された。
「遅いね。死んじゃうよ。……まあいっか、じゃあ始めるよ」
「えっと、なにを?」
「あ、その前に。その防御は弱いから避けるように」
「はい?」
リックが両手を迅速に上げると、手のひらから眩い光が放たれ、光球が高速で接近してきた。
「ひぃっ!」
それは雷の光だ。防御の壁を貫き、結界衣を纏ったあたしたちに打撃を与えた。
「ぎゃあああっ……」
「……雷は土や風をほぼ通り抜けるから、避けないとやられるよ?」
「この防御は気休めかい!?」
「うん。気休め程度かもしれないけど、何もしないよりはマシだよ。まあ、ほぼ結界衣がダメージを軽減させてるだけだけどね。でもね、戦いは防御を整えて攻撃するのが基本だから」
「戦う体制が大事ってこと?」
「うん。じゃあ、次は避けてね」
さっさと雷光が放たれる。でも、そのスピードについてこれず、またしても雷を浴びてしまった。あたしたちは防御も消えて地面に横たわった。感電してしまったのだ。
「中級クラスはそんな甘いものじゃないよ。僕の攻撃を躱して反撃できるようにならないと無理だから。自主的にトレーニングを積んでおいて。……忙しいから帰る」
ああっ、なんだ、この雷光使いの少年は! そんなに厳しいなら初級クラスに戻してください!
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