24 / 37
24話 推しの一本釣りOL、ついでに敵も捌きます── 謝恩会でリベンジの乾杯を。
しおりを挟む
「あ、あなたねぇっ!?」
まるで怨霊でも取り憑いたかのような形相で睨みつけられたけど……ええ、全然怖くない。
「池園さん、ステージへお願いします」
インカム越しに主任の声が聞こえると、絵梨花は一言も返事せず、最後まで私を睨みつけたまま無言でステージへと歩いて行った。
だから、怖くないってば。
私はというと、内心の興奮をどうにも隠しきれなかった。あの絵梨花に、ついに言ってやったのだ。
『花、よくやったじゃない!』
『はい。ちょっとフライングしちゃいましたけど』
『これからが本番よ。追い討ち、忘れずにね』
ええ、もちろん。全力でかけさせていただきます。
会場では、専務の〝出向宣言〟を受けて、拍手と歓声が巻き起こっていた。
──ああ、もう明らかに「喜んでる」よね。
そのざまあな空気が、会場中にいい感じで蔓延している。
さて、裏方の仕事はひと段落。表彰式まで少し時間があるので、それまではちゃんと席に着かなくちゃいけない。……けど、正直、賑やかなテーブルってちょっと苦手。立ち止まっていると、有志の皆さんが手を振ってくれた。
「綾坂さーん、こっちこっち!」
『花、皆さん味方よ。ちゃんとコミュニケーション取りなさい』
う、うん。わかってます……
とりあえず、お料理をいただいてビールをひと口。今夜は興奮してるから、いくら飲んでも酔わない気がする。お酌をしたり、されたりしながら、注がれたビールはとにかく勢いで飲み干した。
「綾坂さん、僕もう〝お嬢様〟には付き合いませんからね」
「お前、手のひら返し早っ!……ま、俺もだけどな。はははは!」
……と、そんなふうにフレンドリーに話しかけられて、ぎこちなく笑って相づちを打つ。うん、私にできるのはこのくらいが限界。
それでも、このテーブルに〝敵〟がいないのは本当に救いだった。絵梨花はというと、主任にベッタリくっついて離れないし──お局様はというと、まるでストーカーのごとく翔様のテーブル周辺をうろついて、話しかけるタイミングを狙ってる様子。
……まだ、あの二人、頑張るつもりかしら?
『花、ちょっと翔にビールでも注ぎに行きなさい。まずはお局を〝撃沈〟よ』
『了解です。彼女の目の前で、翔様とラブラブモード全開かまします』
有志の皆さんと頑張ってフレンドリーに会話してたけど、ここで本来の任務を思い出す。そう、今日はただの謝恩会じゃない──反撃の日。
私はグラスを持って席を立ち、わざとお局の視界を横切るように歩く。そして、彼女がずっと話しかけられずに立ちすくんでいた翔様の真正面に立った。
「翔さん、お疲れ様でーす」
彼がちょうど会話の切れ目でこちらを向いた瞬間を狙って、さりげなくビールを注ぐ。その手際の良さに、お局は「まさか……」という顔でこっちを見ていた。しかも、気づけば背後にピタリ。私たちの会話を聞き逃すまいと必死な様子。
「乾杯!花さんもお疲れさま。裏方、大変だったでしょう?」
「いえいえ、大したことありませんよ。それより……翔さん、週末って何かご予定あります?」
「んー、部屋の片付けくらいかな」
「良かった。それなら、お邪魔してもいいですか?まだ整理したい荷物もありますし、お料理も作りますよ」
「えっ、あ、うん。ほんと?それは助かるなぁ」
若干動揺しつつも、顔をほころばせる翔様。ふふ、作戦成功。
「じゃあ、あとで連絡しますね。うふふ……」
背後で空気が凍ってるけど、気にしない気にしない。軽やかに振り返ると、狙い通りの鉢合わせ。お局と目が合った。
「あら、こんなところで何をなさってるんですかぁ?」
「え、い、いや……その……」
「先輩?動きがカクカクしてますけど、新手のダンスですか?」
「な、なによ、私はただドリンクを……」
必死に取り繕いながら、しれっとドリンクコーナーへ逃げようとするお局。
──ふん、もう逃がさないわ!
「そういえば、翔さんと書道クラブでご一緒だったんですってねぇ?」
「……綾坂。あんた、彼とどういう関係なのよ?」
「ええ、親しくさせていただいてますけど、なにか?」
「こ、恋人なのか?」
「狙ってますけど?あ、もちろん先輩には負けませんわ」
「……ぐぬぬ」
「え?まさかとは思いますが、先輩……年甲斐もなく本気で狙ってました?うそでしょ?……っふふふ、あっはっはっはっは!!」
笑いすぎて腹筋に効いた。
ちょっと酔ってるかも。でも、まだトドメは刺してない。
「絵梨花さんも後ろ盾が吹っ飛んだご様子ですし、先輩もそろそろ〝ご自愛〟なさった方がよろしいかと。有志一同、ちゃーんと見てますからね?」
ひらひらと手を振って、締めの一撃。
「……では、お気を確かに。ご機嫌よう」
お局は涙目で固まり、そのまま氷漬けの彫像のごとく動かなくなり……
気づけば会場から、すーっと消えていた。
よし、撃沈完了。次、行こう。
まるで怨霊でも取り憑いたかのような形相で睨みつけられたけど……ええ、全然怖くない。
「池園さん、ステージへお願いします」
インカム越しに主任の声が聞こえると、絵梨花は一言も返事せず、最後まで私を睨みつけたまま無言でステージへと歩いて行った。
だから、怖くないってば。
私はというと、内心の興奮をどうにも隠しきれなかった。あの絵梨花に、ついに言ってやったのだ。
『花、よくやったじゃない!』
『はい。ちょっとフライングしちゃいましたけど』
『これからが本番よ。追い討ち、忘れずにね』
ええ、もちろん。全力でかけさせていただきます。
会場では、専務の〝出向宣言〟を受けて、拍手と歓声が巻き起こっていた。
──ああ、もう明らかに「喜んでる」よね。
そのざまあな空気が、会場中にいい感じで蔓延している。
さて、裏方の仕事はひと段落。表彰式まで少し時間があるので、それまではちゃんと席に着かなくちゃいけない。……けど、正直、賑やかなテーブルってちょっと苦手。立ち止まっていると、有志の皆さんが手を振ってくれた。
「綾坂さーん、こっちこっち!」
『花、皆さん味方よ。ちゃんとコミュニケーション取りなさい』
う、うん。わかってます……
とりあえず、お料理をいただいてビールをひと口。今夜は興奮してるから、いくら飲んでも酔わない気がする。お酌をしたり、されたりしながら、注がれたビールはとにかく勢いで飲み干した。
「綾坂さん、僕もう〝お嬢様〟には付き合いませんからね」
「お前、手のひら返し早っ!……ま、俺もだけどな。はははは!」
……と、そんなふうにフレンドリーに話しかけられて、ぎこちなく笑って相づちを打つ。うん、私にできるのはこのくらいが限界。
それでも、このテーブルに〝敵〟がいないのは本当に救いだった。絵梨花はというと、主任にベッタリくっついて離れないし──お局様はというと、まるでストーカーのごとく翔様のテーブル周辺をうろついて、話しかけるタイミングを狙ってる様子。
……まだ、あの二人、頑張るつもりかしら?
『花、ちょっと翔にビールでも注ぎに行きなさい。まずはお局を〝撃沈〟よ』
『了解です。彼女の目の前で、翔様とラブラブモード全開かまします』
有志の皆さんと頑張ってフレンドリーに会話してたけど、ここで本来の任務を思い出す。そう、今日はただの謝恩会じゃない──反撃の日。
私はグラスを持って席を立ち、わざとお局の視界を横切るように歩く。そして、彼女がずっと話しかけられずに立ちすくんでいた翔様の真正面に立った。
「翔さん、お疲れ様でーす」
彼がちょうど会話の切れ目でこちらを向いた瞬間を狙って、さりげなくビールを注ぐ。その手際の良さに、お局は「まさか……」という顔でこっちを見ていた。しかも、気づけば背後にピタリ。私たちの会話を聞き逃すまいと必死な様子。
「乾杯!花さんもお疲れさま。裏方、大変だったでしょう?」
「いえいえ、大したことありませんよ。それより……翔さん、週末って何かご予定あります?」
「んー、部屋の片付けくらいかな」
「良かった。それなら、お邪魔してもいいですか?まだ整理したい荷物もありますし、お料理も作りますよ」
「えっ、あ、うん。ほんと?それは助かるなぁ」
若干動揺しつつも、顔をほころばせる翔様。ふふ、作戦成功。
「じゃあ、あとで連絡しますね。うふふ……」
背後で空気が凍ってるけど、気にしない気にしない。軽やかに振り返ると、狙い通りの鉢合わせ。お局と目が合った。
「あら、こんなところで何をなさってるんですかぁ?」
「え、い、いや……その……」
「先輩?動きがカクカクしてますけど、新手のダンスですか?」
「な、なによ、私はただドリンクを……」
必死に取り繕いながら、しれっとドリンクコーナーへ逃げようとするお局。
──ふん、もう逃がさないわ!
「そういえば、翔さんと書道クラブでご一緒だったんですってねぇ?」
「……綾坂。あんた、彼とどういう関係なのよ?」
「ええ、親しくさせていただいてますけど、なにか?」
「こ、恋人なのか?」
「狙ってますけど?あ、もちろん先輩には負けませんわ」
「……ぐぬぬ」
「え?まさかとは思いますが、先輩……年甲斐もなく本気で狙ってました?うそでしょ?……っふふふ、あっはっはっはっは!!」
笑いすぎて腹筋に効いた。
ちょっと酔ってるかも。でも、まだトドメは刺してない。
「絵梨花さんも後ろ盾が吹っ飛んだご様子ですし、先輩もそろそろ〝ご自愛〟なさった方がよろしいかと。有志一同、ちゃーんと見てますからね?」
ひらひらと手を振って、締めの一撃。
「……では、お気を確かに。ご機嫌よう」
お局は涙目で固まり、そのまま氷漬けの彫像のごとく動かなくなり……
気づけば会場から、すーっと消えていた。
よし、撃沈完了。次、行こう。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
阿里
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる