36 / 37
36話 干し草卒業OL、霊は旅立ち乳は残る──成長したのは胸と自意識です。
しおりを挟む
『たまたまじゃないわ。実はね……』
ララ様は、これまで語らなかった〝あの世漂流記〟をようやく打ち明けてくれた。
霊魂となったララ様は、まず自分のスマホを探して風俗店周辺をふよふよと彷徨っていたらしい。が、見つからず。人間だった頃はGPSでポチっと探せたのに、死んだらそんな便利機能は当然使えない。
『とりあえずスマホの探索は打ち切って、門前を追いかけてみることにしたの』
そんなわけで、深夜の霊界ウォーキング。門前の住むマンションにまで辿り着いたものの、彼にとってララ様の魂はノーアクセス。ドアもすり抜けられるのに、心は開かない。なんて理不尽な霊界ルール!
『霊魂って、意外と不自由なのよ?人に直接危害を加えることは基本できないし。誰かに〝入れてもらう〟しかないの』
つまり、憑依先が必要だった。でも、生きてる人間がそう簡単に〝死にかける〟わけもなく、スカウト活動は難航。
「夜が明けちゃって、門前のいる会社に行くしかないかと思ってね」
そんなララ様が会社をふらふらしていた時──ビルのフロアで、私の姿が目に留まったのだ。
……似てる。綾坂花っていうのね。
『地味で陰気な子だったけど、なんかこう……放っておけなくて』
『まぁ、否定はできませんけど……』
ララ様は私を〝興味深く〟観察したらしい。絵梨花グループに虐げられ、謝恩会の会計係にさせられて鬱屈していた私を見て、「助けたい」って思った気持ちと、「使えるかも」って気持ちがごっちゃになったという。
『花は顔もスタイルも、びっくりするくらい似てたのよ』
『だから後をつけて……』
『ええ。観察対象から、最有力候補になったの』
それで、私がヤケ酒あおって風呂場で溺れかけて──スコーンと憑依に成功したというわけ。
「これはチャンスだと思ったのよ!身体は借りるけど、恩は返すからって、心の中で何度も唱えたわ」
いや……そのあたりの記憶、あいまいだったけど……悪霊でなくて良かった。
『憑依して門前に復讐する前に、花にお礼がしたくなったの』
『それで……あんなに親身になってくれたんですね』
『ええ。あなたは本当は、すごく魅力的な子。自信がないだけだったのよ』
あの厳しさの裏に、そんな優しさがあったなんて。思い出が胸にしみる。
『これからも、自信を持って生きていってちょうだい』
『ララ様……でも、これからも一緒にいてくれるんですよね?』
『残念だけど──ここでお別れなの』
えっ。
『な、なんでですか!?』
『もう、この世に未練がなくなっちゃったの。だから、昇天タイムです』
突然、身体がふわっと軽くなる。
『え、え、えっ!?これって……!?』
『わたくしの魂が、そろそろ離れ始めてるのよ』
『ちょっ……!ま、待って!急過ぎます!行かないでください!』
涙が込み上げてくる。
『花、あなたはね、本当に素敵な女性なの。自分をもっと信じて』
『でも……寂しいです……』
『最後に一言。──その巨乳は置いていくから、あとは頼んだわね』
何その遺言!?
『それと、翔のこと。好きなんでしょう?ちゃんと告白しなさいよ。あの子、鈍感だから!よろしくねー!』
急に魂がスコーンと抜けていくような感覚が襲い、私は力が抜けて、その場にぺたんと座り込んだ。
「はぁ……はぁ……ララ様ぁ……寂しいですよお……!」
──その声に応えるように、かすかに響いた最後のひと言。
『じゃねー!』
あぁ、ララ様……。
彼女の魂が完全に抜けていったことを、全身で感じた。悲しいけれど、これが現実なんだ。
でも私はもう、引っ込み思案な〝干し草女〟じゃない。ララ様がくれた勇気と自信を胸に、ちゃんと前を向いて生きていける。
──だから、もう〝干し女〟なんて言わせない。
私は、窓からゆっくりと消えていく青い光を見つめながら、心の中で強く誓った。
さようなら、ララ様──そしてありがとう。
ララ様は、これまで語らなかった〝あの世漂流記〟をようやく打ち明けてくれた。
霊魂となったララ様は、まず自分のスマホを探して風俗店周辺をふよふよと彷徨っていたらしい。が、見つからず。人間だった頃はGPSでポチっと探せたのに、死んだらそんな便利機能は当然使えない。
『とりあえずスマホの探索は打ち切って、門前を追いかけてみることにしたの』
そんなわけで、深夜の霊界ウォーキング。門前の住むマンションにまで辿り着いたものの、彼にとってララ様の魂はノーアクセス。ドアもすり抜けられるのに、心は開かない。なんて理不尽な霊界ルール!
『霊魂って、意外と不自由なのよ?人に直接危害を加えることは基本できないし。誰かに〝入れてもらう〟しかないの』
つまり、憑依先が必要だった。でも、生きてる人間がそう簡単に〝死にかける〟わけもなく、スカウト活動は難航。
「夜が明けちゃって、門前のいる会社に行くしかないかと思ってね」
そんなララ様が会社をふらふらしていた時──ビルのフロアで、私の姿が目に留まったのだ。
……似てる。綾坂花っていうのね。
『地味で陰気な子だったけど、なんかこう……放っておけなくて』
『まぁ、否定はできませんけど……』
ララ様は私を〝興味深く〟観察したらしい。絵梨花グループに虐げられ、謝恩会の会計係にさせられて鬱屈していた私を見て、「助けたい」って思った気持ちと、「使えるかも」って気持ちがごっちゃになったという。
『花は顔もスタイルも、びっくりするくらい似てたのよ』
『だから後をつけて……』
『ええ。観察対象から、最有力候補になったの』
それで、私がヤケ酒あおって風呂場で溺れかけて──スコーンと憑依に成功したというわけ。
「これはチャンスだと思ったのよ!身体は借りるけど、恩は返すからって、心の中で何度も唱えたわ」
いや……そのあたりの記憶、あいまいだったけど……悪霊でなくて良かった。
『憑依して門前に復讐する前に、花にお礼がしたくなったの』
『それで……あんなに親身になってくれたんですね』
『ええ。あなたは本当は、すごく魅力的な子。自信がないだけだったのよ』
あの厳しさの裏に、そんな優しさがあったなんて。思い出が胸にしみる。
『これからも、自信を持って生きていってちょうだい』
『ララ様……でも、これからも一緒にいてくれるんですよね?』
『残念だけど──ここでお別れなの』
えっ。
『な、なんでですか!?』
『もう、この世に未練がなくなっちゃったの。だから、昇天タイムです』
突然、身体がふわっと軽くなる。
『え、え、えっ!?これって……!?』
『わたくしの魂が、そろそろ離れ始めてるのよ』
『ちょっ……!ま、待って!急過ぎます!行かないでください!』
涙が込み上げてくる。
『花、あなたはね、本当に素敵な女性なの。自分をもっと信じて』
『でも……寂しいです……』
『最後に一言。──その巨乳は置いていくから、あとは頼んだわね』
何その遺言!?
『それと、翔のこと。好きなんでしょう?ちゃんと告白しなさいよ。あの子、鈍感だから!よろしくねー!』
急に魂がスコーンと抜けていくような感覚が襲い、私は力が抜けて、その場にぺたんと座り込んだ。
「はぁ……はぁ……ララ様ぁ……寂しいですよお……!」
──その声に応えるように、かすかに響いた最後のひと言。
『じゃねー!』
あぁ、ララ様……。
彼女の魂が完全に抜けていったことを、全身で感じた。悲しいけれど、これが現実なんだ。
でも私はもう、引っ込み思案な〝干し草女〟じゃない。ララ様がくれた勇気と自信を胸に、ちゃんと前を向いて生きていける。
──だから、もう〝干し女〟なんて言わせない。
私は、窓からゆっくりと消えていく青い光を見つめながら、心の中で強く誓った。
さようなら、ララ様──そしてありがとう。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
阿里
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる