学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第3部 群雄割拠編

第38話 孤立!主なきリョフ軍!

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 チョウシュウ軍を破ったソウソウ軍は、そのままエンジュツ本拠地へと雪崩れ込んだ。

 しかし、既にその教室はもぬけの殻であった。

「エンジュツめ。教室を放棄して逃走するとはなかなか素早い奴だな」

 机椅子の散乱したその教室を一望するソウソウの元に男装の少女・カクカが駆け込んできた。

「ソウソウ様、リョフがリュービ軍を襲撃、リュービ強奪後、部室に引き返したそうです」

「なに…カクカ、ジュンユウ。これはエンジュツ軍との共同作戦だと思うか?」

「共同作戦というにはあまりにもタイミングがお粗末でしょう。リョフの突発的な行動かと」

「私もその様に思います」

 カクカの後に、髪をおさげに結い、地味めな眼鏡をかけた、おっとりした雰囲気の女生徒が彼女に同意する。

 彼女はジュンイクの姪にしてソウソウの新参謀・順藤攸菜じゅんどう・ゆうなことジュンユウである。


「そうだな…我が軍は連戦で疲れている。どうする、一度戻るか?」

 ソウソウの質問にジュンユウが答える。

「先延ばししてエンジュツやその他の勢力と手を組まれる方が厄介です。速やかにリョフを討伐すべきです」

「ふぅ…ジュウユウ、我が軍に加わって早々、連戦になってすまんな」

「覚悟の上です」

「カクカ、カコウトン達に態勢を建て直し次第、我が軍に合流するように伝えよ!」

「わかりました」

「これより我が軍はリョフ討伐に向かう!速やかに準備せよ!」



 リョフ陣営・文芸部~

 リョフの突然のリュービ強奪、ひいてはその庇護者であるソウソウへの敵対行動はリョフ陣営に対しても衝撃を与えた。

 事の発端となったチントウは、兄・チンケイに謝罪、その対策を検討することとなった。

「すみません兄さん、リョフに対し不用意な発言でした…」

「まあ、あの行動は読めん、仕方がないな」

「まさか、リュービの従軍を聞いて拐ってくるなんて…なんでそんな無茶をやれるのか…」

 理解不能といった表情で頭を抱えるチントウに、チンケイはフッと笑った。

「お前は少し理性的過ぎるな。お前とリョフを足して2で割ればちょうど良いかも知れんな」

「何がちょうど良いんですか」

「リュービの恋人として」

「な、に、兄さん、からかわないでください!」

「しかし、どうしたものか。まさかこんなに早く事態が動くとは…」

 顔を赤らめながら詰め寄るチントウをよそに、チンケイは思案に入った。



「どういうつもりだ!コウジュン・チョーリョー!これではソウソウと戦争になるではないか!」

 この事態に頭を抱えるもう一人の人物・チンキュウはコウジュン・チョーリョーに激昂した。

「すまない、断りきれなかった」

「リョフ様の命令だ。それにチンキュウ、お前は反ソウソウ派ではないか!戦争ならやればいいだろう!」

「タイミングというものがある。何故よりによってエンジュツ勢力が弱っている時にやるんだ!」

 謝るチョーリョーに対し、コウジュンはチンキュウを責め、口論となった。

「せめてエンジュツが会長就任時ならまだしも…いや、今からでもなんとか連絡をとって同盟を組むべきか」

 チンキュウが対策を練る中、右耳にピアスをつけた男子生徒・ゾウハが息を切らして駆け込んでくる。

「大変っすよ。ソウソウがもうそこまで来てるっす」

「早すぎる!

 リョフは…リョフ様は部屋に籠る気か!これだけの事態を招いて!」



 ここは文芸部準備室、リョフに捕らえられた俺は、彼女と二人きりでこの中にいた。

「リュービ…リュービ…」

「リョフ…そんなに強く抱きしめられると苦しいんだけど…」

「リュービ…抱きしめ…られる…いや…か…?」

「いやと言うか、当たってるものは嬉しいんだけど、その…」

「いや…なら…やめ…る…お前の…いやがる…こと…なら…やらない…だから…何処に…も…行かない…で…欲しい…」

 鬼神と恐れられた少女が、今にも泣きそうな顔で俺に懇願してくる…

「リョフ…」



「と、いう感じで、チントウからの連絡によるとリョフはずっとリュービを抱きしめて部屋に籠ってるらしい」

 文芸部前に陣取るソウソウ軍では、ソウソウが諸将への報告を行っていた。

「あの狼、意外と純愛なんだな。もっとガンガンセックスしてるかと思ったんだが」

「ソウソウ様…今そのセリフは引かれますよ…」

 頭を抱えるカクカを押し退け、カンウ・チョーヒがソウソウを責める。

「セッ…何て事言うんですか、ソウソウ!抱きしめるのだって充分重罪です!一刻も早く兄さんを救出しましょう!」

「そうだぜ!それに…いつリョフに襲われるかわからないんだし、早く救出しないと!」

「そうは言っても敵はリョフだ。無理な力押しはできん」

 そこへ新参謀・ジュンユウが現れ、校内の見取図を広げ、説明を始める。

「ソウソウ様、こことここの階段とここの廊下を抑えました。これで文芸部は完全に孤立です」

「ご苦労。リョフ軍は強い。そしてその強さは機動力からくる。包囲し、教室に閉じ込め、その機動力を封じるのが最も手っ取り早い方法だ」

「そんな悠長なことをしていたら兄さんが…私とチョーヒで忍び込んで兄さんを奪い返します!」

「カンウ、勝手な事はしないでもらおう!

 私だってリュービは心配だ。だからこうして逐一中のチントウと連絡を取り合っている。

 まだ危機的状況下でないのは確かだ。だからもう少し待って欲しい」

「…わかりました。行きますよチョーヒ」

「ああ…」

 カンウとチョーヒは包囲網の配置へと移動した。

 二人が去った頃、カクカがソウソウに確認を入れた。

「…そんなにリュービのこと心配してたんですか?」

「心配はしてるさ。ただ、私的にはここで奴が大人になっても別に構わんがな」

 そういうとソウソウは立ち上がり、前線へと赴いた。

「さぁ、全軍に伝えよ!リョフ軍は一兵たりとも逃がしてはならない!敵が突破を試みたら必ず押し止め、一人でもいいから捕虜とせよ!

 リョフに動きがあればすぐ連絡がくることになっている。リョフ出陣の時は全軍一丸となって捕らえよ!」

 前線ではリョフ軍とソウソウ軍の衝突が始まっていた。

「邪魔だー!」

「我が隊はチョーリョー軍を押し返せ!チョーリョー、お前はこのジョコーが相手だ!」

「猪口才な!」

 包囲網突破を試みるチョーリョーを、新たにソウソウ軍に加わった赤髪の男子生徒・ジョコーが押し止める。

「流石ソウソウ軍、まだこれだけの使い手がいようとは…」

 ジョコー個人の戦闘力も高く、チョーリョーと互角に渡り合った。

「ジョコー!今加勢するぞ!」

「チョーリョー、私達が相手だ!」

 更にソウジン・リテンが加勢に加わり、チョーリョー隊はますます劣勢となった。

「次から次にと!やむを得ん!全軍撤退!」

「逃がすな!一人でも多く捕まえろ!」

 チョーリョーは敵の猛攻をくぐり抜け、何とか部室へと帰還した。

「すまぬ、チンキュウ。

 敵陣は突破できそうにない。一見薄そうに見えてもすぐに他の部隊が救援にきて囲まれてしまう」

「やはり、難しいか」

「それと、我が隊のチョウショ・リスウの二人が敵に捕まってしまった」

 そこへコウジュン・ゾウハも現れた。

「我が偵察に出したコウカイも捕まったようだ」

「それと言いにくいんっすけど、チョウコーの姿が見えねぇっす。もしかしたら脱走したかもしれねっす」

「わかった…君達は敵との接触は極力避け、防衛と脱走の監視に専念して欲しい」

「わかった。では我ら交代で監視を行おう」

 リョフが部屋から出てこないため、チンキュウが全体の指揮を取っていた。しかし、ソウソウ軍の迅速な包囲の前に、完全に後手に回っていた。

「捕らえられた部員は致命的な被害とは言えない。しかし、閉じ込められ、一人ずつ減っていくこの状況で他の部員が堪えられるだろうか」



 文芸部・書庫~

 チンキュウは頭を悩ませていたが、既にソウソウと内通しているチンケイ・チントウ兄妹に取っては最良の状況であった。

「多少、問題はあったが、良い結果となった」

「そうですね、兄さん。元々、リョフを封じるために包囲戦の案はありましたしね。結果論ですが、理想通りの展開とも言えます」

「この部が一丸となるなんて無理な話だ。今この文芸部には文芸部の部員、元々のリョフ軍、そしてヨウホウ・カンセン軍がいる。

 教室に対して人数が多すぎる。すし詰め状態に加えて、包囲されているというストレス。更に一緒にいるのは相性最悪の文科系と体育会系。トラブルが起きん方がおかしい。

 リョフは部屋に籠りきり、コウジュン・チョーリョーは外の防衛で手一杯、チンキュウ一人ではこれをまとめきれまい」

 チンケイの読み通り、文芸部の拠点である図書室では、文芸部員とその他の生徒で揉め事が起こっていた。

「お前ら場所を取りすぎだ!もう少し向こうに寄らんか!」

「俺達はさっきまで見張りで疲れてんだ!お前らこそ戦ってないんだからもう少し場所寄越せ!」

「お前文芸部副部長の言うことが聞けんのか!」

「俺達は文芸部じゃねえ!」

 一方、文芸部部長であるリョフは、リュービと共になおも部屋にこもり、出てくる気配すらなかった。

「はむはむ…リュービ…耳た…ぶ…大きくて…柔らか…い…な…」

「ん…リョフ、耳を噛まないでくれ」

 外からノック音と共にチントウの声が聞こえてきた。

「リョフ様、今よろしいでしょうか?」

「なんだ…入れ…」

 リョフはリュービを膝にのせ、抱き締めた状態でチントウを出迎えた。

「ソウソウ様よりお手紙を預かりました」

「貸せ……………チンキュウ…を…呼べ…」

 今までなんの反応も示さなかったリョフからの突然の呼び出しにチンキュウは急ぎ駆けつけた。

「リョフ様、どうされましたか?」

「ソウソウより…手紙…来た…今…降伏…すれば…私と…リュービの…仲を…取り持つ…と

 降伏…しよう…」

 リュービを抱きしめ、ソウソウの手紙を片手に無邪気に喜ぶリョフに、チンキュウは青ざめた。

「いけません!ソウソウなんて全く信用できない。ソウソウはリュービがお気に入りという話もあります。きっと取り上げられます!」

(まずい…この追い詰められた状態でなお、リョフはリュービしか見ていないと知られれば、部下は誰も着いてこなくなる。

 それに私はソウソウを裏切った身、今さらソウソウへ降伏なんて…)

「でも…このまま…じゃ…リュービ…取られる…」

「ならエンジュツと協力しましょう。先程連絡がつきました。エンジュツと組み、後ろからソウソウを攻撃してもらいましょう」

「わかった…なら…手を…組め…」

「お待ちください。残念ながらもう電話だけでは信用されません。 

 なんとか包囲を抜け、使者を送り、直接説得しますのでしばらくお待ち下さい」

「なら…その…使者…私が…行く…」

「え、リョフ様自らですか!」

「私なら…包囲…突破…できる…リュービを…縛れ…連れて…いく…」

「え、俺も?」
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