学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第4部 カント決戦編

第44話 出陣!帰らぬ行軍!

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 薄暗い教室の一角に嬌声が響き渡る。

「はぁ…はぁ…どうしたリュービ?今日はいつになく激しいじゃないか。

 この私をよがらせたいのか?それとも倒したいのか?」

 暗い教室の中にあって、その赤黒い髪と眼、そして白い肌が美しく存在を際だたせていた。

 その美しさの主・ソウソウは恍惚な笑みを浮かべ、俺の頬を撫でる。

「はぁ…はぁ…俺はソウソウに教えられた通りやってるだけで、そんなつもりは…」

「ふふ、今日のは私が教えた以上の成果だったぞ。

 リュービ、それだけ元気なら仕事を与える。

 行方をくらませていたエンジュツの居場所がわかった。今、奴は密かに文芸部襲撃を画策しているようだ。

 あの辺はお前が詳しいだろう。リュービ!シュレイ、ロショウを副将につける。行ってエンジュツを捕らえてこい!」

「わかったよ、ソウソウ」

 ソウソウは俺が去るのを見送り、乱れた服を直し、髪を整え、立ち上がった。

「さて、では、私は次の仕事をしようか」



『キ…アニキ…』

「アニキ!」

 お団子ヘアーの義妹・チョーヒが俺の顔を覗きこんできていた。

「ん…どうしたチョーヒ」

「どうしたはこっちのセリフだぜ。最近のアニキ、様子おかしいぜ?」

「委員会の仕事で少し疲れてるだけさ。

 さぁ、エンジュツ討伐に向けて出陣準備だ」

 そこへ長く美しい黒髪をなびかせ、もう一人の義妹・カンウが現れた。

「兄さん、今回同行するシュレイさんとロショウさんが挨拶に来られました」

 カンウの後ろに二人の男子生徒が続いて入ってきた。

「シュレイさんとロショウさんですね。エンジュツ討伐の指揮官を任されたリュービです。よろしくお願いします」

「リュービ君、よろしくお願いします。私が今回、ワーキンググループのエグゼクティブプロデューサーにアサインされました朱野礼文あけの・のりふみ、シュレイと申します。私が最適化されたソリューションを提供いたしましょう」

「は?」

「つまりな、指揮官に任命されたシュレイだ、よろしくってことだよ。俺は露口招将つゆぐち・あきまさ、ロショウだ。よろしくな」

「あ、ああ、よろしく」

 黒のインナーにデニムのズボン、メガネをかけた男子生徒・シュレイと日に焼けた肌にジャージ姿の男子生徒・ロショウ。この二人が今回、ソウソウから付けられた増援だが、実際は俺の監視役といったところだろう。

 しかし、それ以前に意志疎通が大丈夫なのか心配になってきた。

「とにかく、準備出来次第出発する。文芸部が襲撃されるより前にエンジュツを討たねばならない」

「大丈夫ですか、兄さん?

 最近、少しやつれたような…ボーッとしていることも多いように見えますが」

「ホントだぜ。

 アニキ、委員会委員会で付き合い悪いしさ」

「心配かけてすまない、カンウ・チョーヒ。

 もう少ししたら仕事も一段落ついて元のように戻るからさ」

 「ホントだろうな~」

「ああ…もう少しだけ待ってくれ…」



 臨時学園長室~

「失礼します、学園長」

 生徒会を実質的に運営している女生徒・ソウソウは、若き女性学園長・リューキョーを訪ねた。

「ソウソウさん、どうかしましたか」

「あなたにお貸ししていたものを返してもらいに来た」

「あら、何かお借りしていたかしら?」

「ああ、私の男だ」

 ソウソウの眼光が鋭く光り、リューキョー学園長を睨み付けた。

「ソ、ソウソウさん、何を言ってるの…」

「この臨時学園長室を用意したのは私ですよ。何も知らないと思いましたか?」

「そんな、まさか…!」

「あなたのお父さん、先代学園長は女子高生との援交で職を追われた。血は争えませんな」

「私はそんなつもりでリュービ君と会っていたわけでは…」

「白状しましたね、リュービとの逢引を」

「あっ…私に何をする気なの…」

「私は公表したり、あなたを辞職に追い込む気はない。

 …ただ、私のリュービをタブらかしたあなたがどれほどの女か、その体で教えていただきたい」

 ソウソウはリューキョー学園長の腕を掴むと、力強く引き寄せ、その首筋に口づけをした。

「いや、離して!あッ…ダメよ、女同士でこんなこと…」

「そうですか?私は女子校出身だから割りと普通にありましたよ」

「私も女子校を卒業しましたが、こんなことありません!」

「じゃあ、私が教えてあげますから、家のベッドまで来て下さい。

 トージョーも待ってますよ」

 ソウソウの口から自身の親族の名を聞き、リューキョー学園長の顔面は蒼白になった。

「あの娘に何をしたの!」

「よからぬ事を企んでるようでしたのでね。

 なぁに、男では味わえない快楽を教えてあげただけですよ。

 後はカクカに任せたので、早くしないと壊れてしまうかも知れませんがね」

「ソウソウ、あなたって人は…」

 その日、リューキョー学園長から一通のメールがリュービに送られた。

『ごめんなさいリュービ君。もうあなたとは会えません』



 中央校舎付近・校庭~

 リュービは、校庭の一角にたむろするエンジュツ軍を発見した。

「あれがエンジュツ軍か。陣形もバラバラだし、とりあえず人を集めたと言った感じか。

 シュレイ・ロショウ!」

 リュービの呼び掛けにソウソウ軍からの増援・シュレイ、ロショウが応答した。

「これより我らの部隊は中央のエンジュツ本隊に突撃する。

 君たちは後方支援と逃げ散ったエンジュツ兵の捕獲を行って欲しい」

「リーダーのリマークにアグリーです」

「つまり、わかったってことさ。行くぜ、シュレイ!」

「よし、ではカンウ・チョーヒ行くぞ!エンジュツと決着をつける!」


  灰色の髪に、フリルのついたヘッドドレスをつけ、エプロンドレスを着たメイドの様な姿の女生徒・チョウクンは本陣へ注進に走った。

「エンジュツ様、敵襲です!」

 紫の長い髪に、大きなリボンをつけ、子供の様に小柄な体つきの女生徒・エンジュツはこの報告に驚き慌てた。

「え、ソウソウ主力はエンショウと戦ってるんじゃなかったの!

 しかもあれリュービじゃない!相手が悪いわ!逃げるわよ!」

 かつて文芸部を巡っての戦いでリュービに苦渋を嘗めさせられたエンジュツにとって、リュービは会いたくない相手だった。

「敵は目前まで迫っています!

 私が足止めしますからエンジュツ様はお逃げください!」

 メイド服の上から防具を装着した女生徒がエンジュツの前に進み出る。

「頼んだわよ、キレイ」

 一方、リュービ軍は既にエンジュツ軍の一部と戦闘を開始していた。

「誰かこのチョーヒの相手になる奴はいないか!」

「チョーヒだ!」

「乱暴者のチョーヒだ!」

「殺されるぞ逃げろ!」

 勇壮威猛ゆうそういもうと名高いチョーヒの突撃にエンジュツ軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。

「なんだ、どいつも逃げやがって張り合いがない!」

「チョーヒ!私が相手だ!」

「お前、確かキレイとか言ったな。ちょうどいい、いつぞやのアニキの恨みだ!」

 チョーヒの前に武装メイド・キレイが立ちはだかる。鉛の様なチョーヒの拳を、キレイは手甲でもって防ぎ、チョーヒの猛攻に食らいつく。

「へ、やるじゃねーか。エンジュツなんか
のとこにいなきゃもっと評価されただろうに」

「ほざくな!」

「だが、チョーヒ様の敵じゃないぜ!」

 チョーヒ渾身の稲妻の様な一撃に、キレイは受け止めきれず、撃沈した。

「へ、いっちょあがりだぜ!」

 

 一方のエンジュツは、チョウクン一人を伴い、戦闘より逃亡していた。

「はぁ…はぁ…もう走れない…チョウクン、ジュース買ってきて。あの蜂蜜入りのやつ…」

「エンジュツ様、まだほとんど走っておりませんよ。それにこの辺に自販機なんてありません」

「見つけたぞ!エンジュツ!」

「げっ、リュービ!」

「もう逃げ場はない。観念しろ」

 俺は義妹・カンウと共にエンジュツ・チョウクンを追い詰めた。

 エンジュツは涙眼になって叫ぶ。

「やめて…私に乱暴する気ですわね!エロ同人みたいに!」

「しないよ!」

 隣のチョウクンも屈辱だと言わんばかりに吐き捨てる。

「くっ…殺せ!」

「うるさいよ!」

 ともあれ、エンジュツは捕らえた。これでこの戦いも終わりか…

「兄さん、チョーヒがキレイを捕まえたみたいです。シュレイたちに連絡しましょう」

「ああ、そうだな。ん、メールがきてる」

 俺は取り出したスマホに一通のメールが届いているのを見つけた。それは学園長からのメールであった…

「待ってちょうだい!なんでもするから見逃して欲しいの!」

「そ、その、エッチな要求でしたら私がしますから、エンジュツ様だけでも…」

 メールは短い内容であったが、すぐにその意味はわかった。

 ソウソウだ。ソウソウが学園長を捕まえたんだ。ソウソウは相手が学園長でもお構い無しなのか。

 学園長ばかりではない。ソウソウはカンウやチョーヒ、さらに他の仲間も支配下に置こうとしている。このまま帰るわけにはいかない。

 ソウソウと戦うか?あのソウソウに俺なんかが勝てるのか?考えろ、俺の最良の選択肢はなんだ?俺の手元にある武器は…

 俺は泣いて赦しを乞うエンジュツに眼を向けた。

「エンジュツ、見逃して欲しいか。なら、服を脱げ」

「え…リュービ、やはりお前も男なのね…」

「兄さん!何考えてるんですか!」

 カンウが激昂するが、躊躇とまどっている時間はない。

「いいから、早くしろ」

 逃げ散ったエンジュツ軍を虜にし、シュレイ・ロショウの二将が俺の前に現れた。

 俺は二人に頭を下げ、“エンジュツを取り逃がした”と報告した。

「すまない、シュレイ・ロショウ。エンジュツを逃してしまった。」

「私にとって今回のプロジェクトの結果に充分コミットしております。エクスキューズの必要ほありません」

「つまり、結果は上々だから気にすんなってことさ」

 シュレイは真面目に、ロショウは笑いながら答える。

「いや、責任はこのリュービにある。

 俺たちはこのままエンジュツを捜索する。君達は捕虜を連れて先に帰還してくれ」

「…それがリーダーのディシジョンならこのタスクをお任せします」

「つまり、了解だとさ。じゃあ、俺たちは捕虜を連れて帰るから、捜索任務の方は任せますよ」

 シュレイ・ロショウの二人は何かしら思うところもあったようだが、すんなり帰ってくれた。

「では、我らはこれよりエンジュツ捜索のため、文芸部を活動拠点とする。全軍、出発!」
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