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第6部 西校舎攻略編
第179話 直談!西来の英雄!
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時は戻って、西校舎・リュービ陣営~
敵将・チョウジンらを倒し、リュウショウ攻略に大手をかけたリュービたち。だがその時、北方の守りを任せていた義妹・チョーヒらより、西涼のバチョウが襲来したとの知らせが届けられた。
「バチョウだって!
バチョウというと元西涼校生で反乱を起こし、ソウソウをあと一歩まで追い詰めたというあのバチョウか?」
俺・リュービの問いかけに、情報を持ってきた使者のリカイが答える。
「はい、そのバチョウ率いる一軍が北部に出現しました」
使者・リカイはケピ帽を被り、白いローブを羽織った細身の男子生徒。元はリュウショウの将・ゲンガンの配下だった。だが、そのゲンガンがチョーヒに降伏したので、彼もチョーヒの部下となっていた。
「チョーヒ将軍は事前にコウメイ様よりチョウロ軍が侵攻してきたら援軍を要請するようにと指示を受けておりました」
使者・リカイがそう答えたので、俺は隣に立つ軍師・コウメイへと振り向く。
「やはりバチョウさんが来ましたか」
薄水色の髪に、愛らしい顔つきの小柄な少女・コウメイはこの事態を想定していたような口ぶりで呟いた。
「コウメイはバチョウが来るとわかっていたのか?」
「いえ、わかっていたわけではありません。
ですが、バチョウさんがチョウロの陣営にいる情報は得ていました。西北を追われたために西校舎へ活路を見出したか、あるいは同盟者・チョウロの指示か、いずれにせよこちらに来る可能性は高いと思っていました。
なので、チョーヒさんにはチョウロの軍が来たら援軍を要請するよう伝えておりました」
「それで対処はどうする?」
バチョウ襲来を想定していたのなら、対処も考えているだろう。そう考えた俺はすぐに彼女に尋ねた。
「追い払うだけならいくらでも対処はできます。
ですが、バチョウさんは西北校舎へ未だ強い影響力を持った方。そして、彼女は西北校舎へ強く固執されているようにお見受けします」
そこまで言ったところで、俺はコウメイが何を言いたいのか察してしまった。
「コウメイ、まさかバチョウを味方につけようと考えているのか?」
まさかと思い、俺はそうコウメイに尋ねると、彼女はニコリと笑って答えた。
「はい。バチョウさんを味方につけられれば、この後の西北校舎への進出に大きな助けとなってくれるでしょう。
ですが、問題があります」
そう語るコウメイに、俺は「問題?」と尋ねた。
「バチョウさんの行動は予測できても、その心の内までは読むことはできません。
ですので、彼女を説得する確実な策はありません」
「それはつまり、俺の力で彼女を説得しろと?」
「はい!」
軍師少女・コウメイはとびきりの笑顔でそう答えた。
「つまり、バチョウを説得するために俺自身が援軍として赴かねばならないということか。
だが、その間のここはどうする?
今、最後の砦を攻略し、これから敵の本拠地を攻撃しようという段階だ。その攻撃に俺が抜けても大丈夫か?」
「確かにこれから始まるのは最後の決戦で、その戦いにリュービさんの存在は不可欠です。
ですが、最後であるからこそ攻略は時間をかけるべきかと思います。この最後の決戦に時間を割くために、今まで駆け足気味に攻略してきたとも言えます。
西校舎を手に入れるだけなら、一気呵成に攻めてすぐに決着をつけるのも手です。
しかし、リュービさんの軍は侵略ではなく、平定であるべきです。威圧でもって従えるのではなく、人徳でもって相手が従うよう仕向けるべきでしょう。
これから我らは西校舎を統治せねばならず、その先にはソウソウとの決戦が待ち構えています。今は時間をかけてでも、リュービさんの侵略者のイメージを払拭することを優先しましょう」
「なるほど。確かにまだ残っているリュウショウ方の人材を一人でも多く味方につけたい」
俺は説得に失敗したチョウジンを思い出していた。彼にももっと時間をかけていれば説得出来たかもしれない。苦い経験だ。出来れば彼の二の舞いは避けたい。
「そのためにすべきことは、長期の包囲戦と宣伝活動。そちらでしたら私にお任せください。戦闘面でしたら直にチョーウンも合流するでしょうし、十分対処は可能です」
「わかった。一応、コーチューらは残していこう。俺が戻るまでに出来るだけ西校舎の生徒の心を攻略しておいてくれ」
「はい、わかりました」
俺はコウメイに西校舎の本拠地攻略を任せると、案内役のリカイとともに一軍を率いて北を目指した。
道案内と言っても、進軍してきた道を戻るだけなのでそこまで必要ない。それよりも俺はリカイにこれまでのチョーヒ軍の活躍と北部情勢を尋ねた。彼は理路整然と説明をしてくれた。おかげで道中に今の情勢をほぼ把握することが出来た。
そんな話をしている内に俺たちはチョーヒらの籠もる北の教室へとたどり着いた。バチョウが来襲したと聞いたが、今は一段落ついたのか教室の周囲は静かな様子であった。
「さて、到着だ。まずはチョーヒやカクシュンらの労をねぎらって……」
「アニキーーー!!!」
「グハッ!」
チョーヒの声が聞こえたかと思うと、砲弾のような一撃が腹に直撃し、俺は思わずうめき声を上げた。
「うう……チョーヒか……?」
俺は混濁する意識の中でそう尋ねた。
「そうだぜ!
アニキ、久しぶりだぜ!」
俺に雷撃のような一撃で抱きついてきたのは、やはりチョーヒだった。耳のようなお団子ヘアーの小柄な彼女は子猫のような笑顔を向けて、虎のような怪力で俺を締め付ける。
「ああ……久しぶりだね、チョーヒ。そんなに日数は経ってないはずなのに随分会ってない気がするよ。
うう……痛い痛い、そろそろ離してくれ!」
「後5分だぜ!」
「ムリムリ、折れるって!」
ゴキンというおおよそ人体からしてはいけない音が俺の体から放たれると、ようやくチョーヒは俺を離してくれた。
「イタタタ……
コホン、とにかく、チョーヒ、力加減はともかく、手厚い歓迎ありがとう。力加減はともかく!
そして、北部の平定ご苦労さま。君たちの活躍のおかげで最大の敵・ホーギを降すことができた」
「へへ、オレにかかれば朝飯前だぜ!」
先ほどまで俺を絞め殺そう……いや、熱い抱擁をしてくれた少女は得意満面の笑顔で返した。
俺は続いて茶髪の頭にゴーグルをつけ、ダウンジャケットを着た男子生徒・カクシュンの方へと向き直った。
「カクシュン、今までこの地を守っていてくれてありがとう。君たちのおかげで俺は背後を気にせず敵と戦うことができた」
「皆の頑張りがあってこそです!」
漫画の主人公のように爽やかな笑顔で、カクシュンはそう答えた。
さらに俺は今回新たに加わってくれた髭を生やした大がらな男子生徒・ゲンガンへと声をかけた。
「ゲンガン、君たちのことは道中、リカイから聞かせてもらった。君たちのような熟練の戦士が加わってくれれば心強い。心から歓迎するよ」
「勿体無い言葉でございます。
某は既に3年生。ともに戦える時間は長くありませんが、粉骨砕身して働かせていただきます」
降伏してからのゲンガンとは今回が初対面だ。そのせいか嫌に謙った態度だ。それに関しては後々親睦を深めていくこととしよう。
それに加えて、俺は道中に考えていたことをゲンガンにお願いした。
「ゲンガン、早速で悪いが一つ頼みがある。俺の案内役をしてくれたリカイは君の部下だったね。
リカイを俺の軍に譲ってはくれないか?」
そう尋ねると、ゲンガンより先に隣りにいるチョーヒが怪訝な顔を見せた。
「アニキ、もしかしてリカイみたいな幼い顔つきのの少年が好みなんだぜ?」
そう言いながらチョーヒは今にも飛びかかりそうな様子で俺との間合いを詰めだした。
「違う違う! そういうつもりじゃないから落ち着け!
道中、リカイと話してみたが、なかなか頭の回る男だ。ぜひ、参謀として迎えたい」
俺はそう言ってゲンガンに頼むと、彼は恭しい態度で頭を下げ、了承した。
「なるほど、そういうことなら某は構いません。
元々、リカイは一兵士で終わる男ではないと思い、ゆくゆくは中央へ推薦するつもりでおりました。
それが叶うのであれば、某が反対する理由はありません。後はリカイにお尋ねください」
俺はゲンガンの許しを得ると、改めて後ろに控える円柱のケピ帽に、白いローブを羽織った細身の少年・リカイへと向いた。
「リカイ、話は聞いていたと思うが、俺は君を参謀として迎え入れたい。どうだろうか?」
「はい、喜んでお仕えさせていただきます!」
リカイは嬉しそうに俺の提案を受け入れてくれた。
新たな参謀・リカイを加えた俺は、早速、今の情勢を尋ねた。
「それで、北からバチョウが攻めてきたと聞いたけど、今はどうなっている?
どうやら今は戦ってはいないようだけど」
北の群雄・チョウロより派遣された将軍はバチョウであった。バチョウは西北校舎でソウソウに対して反乱を起こし、その勇名を轟かせた人物。
壮絶な戦いが繰り広げられると予想される相手だが、今はどうにも攻めてきている様子ではない。
その疑問にチョーヒは頭を掻きながら答えた。
「それが不思議な奴なんだぜ。
攻めてきたと思ったら、陣に籠もってそれっきり。全く戦おうとしないんだぜ」
「戦おうとしない?」
俺が疑問符を浮かべると、チョーヒに窓へと誘われた。そして、彼女は廊下の先を指し示した。
彼女の指差した先には確かに一軍が陣取っており、バチョウの旗が翻っている。
「確かに彼方に布陣する一軍はバチョウの軍のようだ。
しかし、不気味なほど静まり返っている。まるで戦おうという覇気が見えない」
「な、おかしな奴だぜ?
あっちから攻めてきてはずなのにだぜ。オレたちも何度か近付いて挑発してみたんだが、まったく応じようともしないんだぜ」
「うーん、あくまで防衛のために来たのだろうか?
それにしてはわざわざバチョウなんて大物を投入するのは不思議な感じだ」
俺は頭をひねったが、ここで考えてわかるものでもない。俺は頭を切り替えて指示を出した。
「わからないことを考えても仕方がない。
よし、リカイ、参謀として最初の任務だ。君はバチョウについて少しでも多く情報を集めてきてくれ」
「お任せください」
リカイを送り出すと、俺は続いてチョーヒらに指示を出した。
「バチョウの陣を間近で見たい。出陣しよう。
チョーヒ、ゲンガンたちは俺とともに来てくれ。
カクシュンはここの守りを引き続き頼む」
「任せろだぜ!」
俺たちは軍を率いてバチョウの陣地の間近まで迫った。
敵陣は怖いくらい静まり返っていた。防柵で周囲を囲み、明らかに防御の形態を取っている。柵向こうに見える敵兵は、戦いたそうにこちらを|睨にら》みつけてくる。
しかし、決して戦おうという素振りを見せない。厳命されているのか、守備兵の様相に徹していた。それでも近づくに連れて、多少のざわつきは見えるが、それも戦うほどの騒ぎには見えなかった。
「うーむ、兵士に闘志は見えるが、戦おうとはしない。
これはバチョウが戦うなと厳命しているのだろうか?
それなら交渉が出来るかもしれない」
俺は万一に備えてチョーヒを側近くで守らせると、バチョウの陣地に向けて呼びかけた。
「俺は南部の群雄、流尾玄徳、リュービだ!
君たちの大将・バチョウと話がしたい!」
俺がそう呼びかけると、バチョウの陣地はにわかに動き出した。
どうやら、まったくの無視は無さそうだが、戦うのか交渉に応じるのか全然読めない。俺は固唾を呑んで見守った。
しばらくの喧騒の後、バチョウの陣地の扉は開け放たれ、軍団が姿を表した。
その先頭に立つ女性に否が応でも目を向けてしまう。美しく長い金髪をたなびかせ、爛爛と輝く碧い瞳をした、透き通る白い肌をした美女。
あれが噂に聞くバチョウだろう。錦のバチョウとはよく言ったもので、その名に違わぬ艶姿だ。
その金髪碧眼の美女・バチョウは俺を見つけると、キッと睨みつけて怒鳴った。
「お前が玄徳・リュービか!
アタシは西涼のバチョウ!
どちらが強いか、アタシとお前とで一騎討ちをして雌雄を決せん!」
最新話まで読んでいただきありがとうございました。
三国志が好き、三国志に興味が持てたと思っていただけたのなら、お気に入り登録、感想をよろしくお願いいたします。
トベ・イツキtwitterアカウント
https://twitter.com/tobeitsuki?t=GvdHCowmjKYmZ5RU-DB_iw&s=09
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作品の話や三国志のことを話してます。よければどうぞ
次回は4月13日20時頃更新予定です。
敵将・チョウジンらを倒し、リュウショウ攻略に大手をかけたリュービたち。だがその時、北方の守りを任せていた義妹・チョーヒらより、西涼のバチョウが襲来したとの知らせが届けられた。
「バチョウだって!
バチョウというと元西涼校生で反乱を起こし、ソウソウをあと一歩まで追い詰めたというあのバチョウか?」
俺・リュービの問いかけに、情報を持ってきた使者のリカイが答える。
「はい、そのバチョウ率いる一軍が北部に出現しました」
使者・リカイはケピ帽を被り、白いローブを羽織った細身の男子生徒。元はリュウショウの将・ゲンガンの配下だった。だが、そのゲンガンがチョーヒに降伏したので、彼もチョーヒの部下となっていた。
「チョーヒ将軍は事前にコウメイ様よりチョウロ軍が侵攻してきたら援軍を要請するようにと指示を受けておりました」
使者・リカイがそう答えたので、俺は隣に立つ軍師・コウメイへと振り向く。
「やはりバチョウさんが来ましたか」
薄水色の髪に、愛らしい顔つきの小柄な少女・コウメイはこの事態を想定していたような口ぶりで呟いた。
「コウメイはバチョウが来るとわかっていたのか?」
「いえ、わかっていたわけではありません。
ですが、バチョウさんがチョウロの陣営にいる情報は得ていました。西北を追われたために西校舎へ活路を見出したか、あるいは同盟者・チョウロの指示か、いずれにせよこちらに来る可能性は高いと思っていました。
なので、チョーヒさんにはチョウロの軍が来たら援軍を要請するよう伝えておりました」
「それで対処はどうする?」
バチョウ襲来を想定していたのなら、対処も考えているだろう。そう考えた俺はすぐに彼女に尋ねた。
「追い払うだけならいくらでも対処はできます。
ですが、バチョウさんは西北校舎へ未だ強い影響力を持った方。そして、彼女は西北校舎へ強く固執されているようにお見受けします」
そこまで言ったところで、俺はコウメイが何を言いたいのか察してしまった。
「コウメイ、まさかバチョウを味方につけようと考えているのか?」
まさかと思い、俺はそうコウメイに尋ねると、彼女はニコリと笑って答えた。
「はい。バチョウさんを味方につけられれば、この後の西北校舎への進出に大きな助けとなってくれるでしょう。
ですが、問題があります」
そう語るコウメイに、俺は「問題?」と尋ねた。
「バチョウさんの行動は予測できても、その心の内までは読むことはできません。
ですので、彼女を説得する確実な策はありません」
「それはつまり、俺の力で彼女を説得しろと?」
「はい!」
軍師少女・コウメイはとびきりの笑顔でそう答えた。
「つまり、バチョウを説得するために俺自身が援軍として赴かねばならないということか。
だが、その間のここはどうする?
今、最後の砦を攻略し、これから敵の本拠地を攻撃しようという段階だ。その攻撃に俺が抜けても大丈夫か?」
「確かにこれから始まるのは最後の決戦で、その戦いにリュービさんの存在は不可欠です。
ですが、最後であるからこそ攻略は時間をかけるべきかと思います。この最後の決戦に時間を割くために、今まで駆け足気味に攻略してきたとも言えます。
西校舎を手に入れるだけなら、一気呵成に攻めてすぐに決着をつけるのも手です。
しかし、リュービさんの軍は侵略ではなく、平定であるべきです。威圧でもって従えるのではなく、人徳でもって相手が従うよう仕向けるべきでしょう。
これから我らは西校舎を統治せねばならず、その先にはソウソウとの決戦が待ち構えています。今は時間をかけてでも、リュービさんの侵略者のイメージを払拭することを優先しましょう」
「なるほど。確かにまだ残っているリュウショウ方の人材を一人でも多く味方につけたい」
俺は説得に失敗したチョウジンを思い出していた。彼にももっと時間をかけていれば説得出来たかもしれない。苦い経験だ。出来れば彼の二の舞いは避けたい。
「そのためにすべきことは、長期の包囲戦と宣伝活動。そちらでしたら私にお任せください。戦闘面でしたら直にチョーウンも合流するでしょうし、十分対処は可能です」
「わかった。一応、コーチューらは残していこう。俺が戻るまでに出来るだけ西校舎の生徒の心を攻略しておいてくれ」
「はい、わかりました」
俺はコウメイに西校舎の本拠地攻略を任せると、案内役のリカイとともに一軍を率いて北を目指した。
道案内と言っても、進軍してきた道を戻るだけなのでそこまで必要ない。それよりも俺はリカイにこれまでのチョーヒ軍の活躍と北部情勢を尋ねた。彼は理路整然と説明をしてくれた。おかげで道中に今の情勢をほぼ把握することが出来た。
そんな話をしている内に俺たちはチョーヒらの籠もる北の教室へとたどり着いた。バチョウが来襲したと聞いたが、今は一段落ついたのか教室の周囲は静かな様子であった。
「さて、到着だ。まずはチョーヒやカクシュンらの労をねぎらって……」
「アニキーーー!!!」
「グハッ!」
チョーヒの声が聞こえたかと思うと、砲弾のような一撃が腹に直撃し、俺は思わずうめき声を上げた。
「うう……チョーヒか……?」
俺は混濁する意識の中でそう尋ねた。
「そうだぜ!
アニキ、久しぶりだぜ!」
俺に雷撃のような一撃で抱きついてきたのは、やはりチョーヒだった。耳のようなお団子ヘアーの小柄な彼女は子猫のような笑顔を向けて、虎のような怪力で俺を締め付ける。
「ああ……久しぶりだね、チョーヒ。そんなに日数は経ってないはずなのに随分会ってない気がするよ。
うう……痛い痛い、そろそろ離してくれ!」
「後5分だぜ!」
「ムリムリ、折れるって!」
ゴキンというおおよそ人体からしてはいけない音が俺の体から放たれると、ようやくチョーヒは俺を離してくれた。
「イタタタ……
コホン、とにかく、チョーヒ、力加減はともかく、手厚い歓迎ありがとう。力加減はともかく!
そして、北部の平定ご苦労さま。君たちの活躍のおかげで最大の敵・ホーギを降すことができた」
「へへ、オレにかかれば朝飯前だぜ!」
先ほどまで俺を絞め殺そう……いや、熱い抱擁をしてくれた少女は得意満面の笑顔で返した。
俺は続いて茶髪の頭にゴーグルをつけ、ダウンジャケットを着た男子生徒・カクシュンの方へと向き直った。
「カクシュン、今までこの地を守っていてくれてありがとう。君たちのおかげで俺は背後を気にせず敵と戦うことができた」
「皆の頑張りがあってこそです!」
漫画の主人公のように爽やかな笑顔で、カクシュンはそう答えた。
さらに俺は今回新たに加わってくれた髭を生やした大がらな男子生徒・ゲンガンへと声をかけた。
「ゲンガン、君たちのことは道中、リカイから聞かせてもらった。君たちのような熟練の戦士が加わってくれれば心強い。心から歓迎するよ」
「勿体無い言葉でございます。
某は既に3年生。ともに戦える時間は長くありませんが、粉骨砕身して働かせていただきます」
降伏してからのゲンガンとは今回が初対面だ。そのせいか嫌に謙った態度だ。それに関しては後々親睦を深めていくこととしよう。
それに加えて、俺は道中に考えていたことをゲンガンにお願いした。
「ゲンガン、早速で悪いが一つ頼みがある。俺の案内役をしてくれたリカイは君の部下だったね。
リカイを俺の軍に譲ってはくれないか?」
そう尋ねると、ゲンガンより先に隣りにいるチョーヒが怪訝な顔を見せた。
「アニキ、もしかしてリカイみたいな幼い顔つきのの少年が好みなんだぜ?」
そう言いながらチョーヒは今にも飛びかかりそうな様子で俺との間合いを詰めだした。
「違う違う! そういうつもりじゃないから落ち着け!
道中、リカイと話してみたが、なかなか頭の回る男だ。ぜひ、参謀として迎えたい」
俺はそう言ってゲンガンに頼むと、彼は恭しい態度で頭を下げ、了承した。
「なるほど、そういうことなら某は構いません。
元々、リカイは一兵士で終わる男ではないと思い、ゆくゆくは中央へ推薦するつもりでおりました。
それが叶うのであれば、某が反対する理由はありません。後はリカイにお尋ねください」
俺はゲンガンの許しを得ると、改めて後ろに控える円柱のケピ帽に、白いローブを羽織った細身の少年・リカイへと向いた。
「リカイ、話は聞いていたと思うが、俺は君を参謀として迎え入れたい。どうだろうか?」
「はい、喜んでお仕えさせていただきます!」
リカイは嬉しそうに俺の提案を受け入れてくれた。
新たな参謀・リカイを加えた俺は、早速、今の情勢を尋ねた。
「それで、北からバチョウが攻めてきたと聞いたけど、今はどうなっている?
どうやら今は戦ってはいないようだけど」
北の群雄・チョウロより派遣された将軍はバチョウであった。バチョウは西北校舎でソウソウに対して反乱を起こし、その勇名を轟かせた人物。
壮絶な戦いが繰り広げられると予想される相手だが、今はどうにも攻めてきている様子ではない。
その疑問にチョーヒは頭を掻きながら答えた。
「それが不思議な奴なんだぜ。
攻めてきたと思ったら、陣に籠もってそれっきり。全く戦おうとしないんだぜ」
「戦おうとしない?」
俺が疑問符を浮かべると、チョーヒに窓へと誘われた。そして、彼女は廊下の先を指し示した。
彼女の指差した先には確かに一軍が陣取っており、バチョウの旗が翻っている。
「確かに彼方に布陣する一軍はバチョウの軍のようだ。
しかし、不気味なほど静まり返っている。まるで戦おうという覇気が見えない」
「な、おかしな奴だぜ?
あっちから攻めてきてはずなのにだぜ。オレたちも何度か近付いて挑発してみたんだが、まったく応じようともしないんだぜ」
「うーん、あくまで防衛のために来たのだろうか?
それにしてはわざわざバチョウなんて大物を投入するのは不思議な感じだ」
俺は頭をひねったが、ここで考えてわかるものでもない。俺は頭を切り替えて指示を出した。
「わからないことを考えても仕方がない。
よし、リカイ、参謀として最初の任務だ。君はバチョウについて少しでも多く情報を集めてきてくれ」
「お任せください」
リカイを送り出すと、俺は続いてチョーヒらに指示を出した。
「バチョウの陣を間近で見たい。出陣しよう。
チョーヒ、ゲンガンたちは俺とともに来てくれ。
カクシュンはここの守りを引き続き頼む」
「任せろだぜ!」
俺たちは軍を率いてバチョウの陣地の間近まで迫った。
敵陣は怖いくらい静まり返っていた。防柵で周囲を囲み、明らかに防御の形態を取っている。柵向こうに見える敵兵は、戦いたそうにこちらを|睨にら》みつけてくる。
しかし、決して戦おうという素振りを見せない。厳命されているのか、守備兵の様相に徹していた。それでも近づくに連れて、多少のざわつきは見えるが、それも戦うほどの騒ぎには見えなかった。
「うーむ、兵士に闘志は見えるが、戦おうとはしない。
これはバチョウが戦うなと厳命しているのだろうか?
それなら交渉が出来るかもしれない」
俺は万一に備えてチョーヒを側近くで守らせると、バチョウの陣地に向けて呼びかけた。
「俺は南部の群雄、流尾玄徳、リュービだ!
君たちの大将・バチョウと話がしたい!」
俺がそう呼びかけると、バチョウの陣地はにわかに動き出した。
どうやら、まったくの無視は無さそうだが、戦うのか交渉に応じるのか全然読めない。俺は固唾を呑んで見守った。
しばらくの喧騒の後、バチョウの陣地の扉は開け放たれ、軍団が姿を表した。
その先頭に立つ女性に否が応でも目を向けてしまう。美しく長い金髪をたなびかせ、爛爛と輝く碧い瞳をした、透き通る白い肌をした美女。
あれが噂に聞くバチョウだろう。錦のバチョウとはよく言ったもので、その名に違わぬ艶姿だ。
その金髪碧眼の美女・バチョウは俺を見つけると、キッと睨みつけて怒鳴った。
「お前が玄徳・リュービか!
アタシは西涼のバチョウ!
どちらが強いか、アタシとお前とで一騎討ちをして雌雄を決せん!」
最新話まで読んでいただきありがとうございました。
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高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
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