14 / 18
一人前
しおりを挟む
「ねぇ……そろそろ起きてくれない……?」
「ふぇ、んん……」
「あーもう!起きろって……」
「んあ?」
「言ってんだろーがっ!」
「ぶばぼぼはっ!ぶほお!」
「全く、やっと起きた……」
目を開けると、不機嫌そうな顔をしたクニハルが、空っぽのペットボトルを両手に握りしめて立っていた。
「やっと起きた……じゃねー!どうすんのコレ!?びちょびちょ!びちょびちょなんだけど!」
「仕方ないだろ!?何回声かけても起きてくれないから!」
「しかも色付いてるし!コレただの水じゃないよね!?」
「オレンジジュースだけど!?なんか文句ある!?」
「文句しかねーよ!水より悲惨なんですけど!?」
二十年間の人生の中で、頭からオレンジジュースをかけられるなんて初めての事だった。髪の毛から布団まで、特に頭の周りがもれなくベタベタして気持ち悪い。改めて、ジュースに含まれる糖分の量を思い知らされた。
「しかもコレ粒入りジュースだし……」
「まあ……勿体無いなとは思った」
「そういう意味じゃねーよ!確かに勿体無いけど!掃除が大変だって意味だよ!」
「あ、そっちか……」
大量に散乱したみかんの粒を、どうやって処理しようか。湿っている為、掃除機は使えない。答えを見つけられない俺を見て、クニハルが励ます様に言った。
「元気出せよ、そのうち蜂谷君が一人前になったら布団なんて飽きるほど買ってやるからさ」
「飽きるほど欲しくねえよ、一枚でいいんだ一枚で!そもそもこの仕事に一人前とか存在すんのかよ……」
「そりゃ存在するよ。どうやったらなれるか聞きたい?」
「あんまり興味無いけど……とりあえず聞いとこうかな」
「聞くって事は興味あるんじゃん。素直じゃないなぁ、今流行りのツンデレってやつ?」
「いいから言えよ!早く!」
本当にそこまで興味は無いけど、断ったら可哀想だと思って聞いてやったというのに……何がツンデレだバーロー。あれは美少女の専用技なのであって、成人男性のツンデレに需要など無いのだ。
「それはね、人間として一人前になる事だよ」
「うん、全然意味分かんねえ」
「ちょっとは考えろよ!人間として一人前になるには、自分に対して正直でいる事が大事なんです!」
「お、おう」
「平たく言えば自分に嘘をつくなって事だね。分かった?」
「分かった分かった……つかないよ」
「よろしい、その言葉忘れないでね。さぁ仕事の時間だ、行くよ蜂谷君」
自分に対して嘘をつくのはいけない事。そんな事言われなくても分かってる。今までも、そしてこれからも、自分を騙す事なんて一度だって無い。そう思っていた。
この時までは、そう思っていた。
「ふぇ、んん……」
「あーもう!起きろって……」
「んあ?」
「言ってんだろーがっ!」
「ぶばぼぼはっ!ぶほお!」
「全く、やっと起きた……」
目を開けると、不機嫌そうな顔をしたクニハルが、空っぽのペットボトルを両手に握りしめて立っていた。
「やっと起きた……じゃねー!どうすんのコレ!?びちょびちょ!びちょびちょなんだけど!」
「仕方ないだろ!?何回声かけても起きてくれないから!」
「しかも色付いてるし!コレただの水じゃないよね!?」
「オレンジジュースだけど!?なんか文句ある!?」
「文句しかねーよ!水より悲惨なんですけど!?」
二十年間の人生の中で、頭からオレンジジュースをかけられるなんて初めての事だった。髪の毛から布団まで、特に頭の周りがもれなくベタベタして気持ち悪い。改めて、ジュースに含まれる糖分の量を思い知らされた。
「しかもコレ粒入りジュースだし……」
「まあ……勿体無いなとは思った」
「そういう意味じゃねーよ!確かに勿体無いけど!掃除が大変だって意味だよ!」
「あ、そっちか……」
大量に散乱したみかんの粒を、どうやって処理しようか。湿っている為、掃除機は使えない。答えを見つけられない俺を見て、クニハルが励ます様に言った。
「元気出せよ、そのうち蜂谷君が一人前になったら布団なんて飽きるほど買ってやるからさ」
「飽きるほど欲しくねえよ、一枚でいいんだ一枚で!そもそもこの仕事に一人前とか存在すんのかよ……」
「そりゃ存在するよ。どうやったらなれるか聞きたい?」
「あんまり興味無いけど……とりあえず聞いとこうかな」
「聞くって事は興味あるんじゃん。素直じゃないなぁ、今流行りのツンデレってやつ?」
「いいから言えよ!早く!」
本当にそこまで興味は無いけど、断ったら可哀想だと思って聞いてやったというのに……何がツンデレだバーロー。あれは美少女の専用技なのであって、成人男性のツンデレに需要など無いのだ。
「それはね、人間として一人前になる事だよ」
「うん、全然意味分かんねえ」
「ちょっとは考えろよ!人間として一人前になるには、自分に対して正直でいる事が大事なんです!」
「お、おう」
「平たく言えば自分に嘘をつくなって事だね。分かった?」
「分かった分かった……つかないよ」
「よろしい、その言葉忘れないでね。さぁ仕事の時間だ、行くよ蜂谷君」
自分に対して嘘をつくのはいけない事。そんな事言われなくても分かってる。今までも、そしてこれからも、自分を騙す事なんて一度だって無い。そう思っていた。
この時までは、そう思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる