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第39話 取引成立-2
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ミュリエルは、マドゥレーヌの侍女に案内され、フィンのいるところへ戻ってきた。
フィンは怪我をしていないミュリエルの姿を見て、そばに近寄り、顔に憂いも恐れも出ていないことに安堵した。
「診察は問題ありませんでした。健康そのものです。ポーションを飲んでいただきましたので、2、3日は寝込むことになりますが、ご希望の結果が得られると思います」
「感謝します。これで少し肩の荷が降りました。あの子をどうするか、決めかねていたのですよ、事実を打ち明けて、後妻に貰ってもらうしかないと思っていたのですが、親としては、醜聞から守ってやりたいと思っていたのです」
2人で何の話をしていたのか分からないが、ギャスパーの態度が軟化したようだと、ミュリエルは思った。
「心を痛めているようです。家族との時間を、設けてあげてください」
「そうですな、マドゥレーヌが21歳の成人を迎えるまでは、家族と過ごさせましょう。幼いジュリエットも、姉を恋しがっているようですからな」
「私はオートゥイユ子爵の願いを叶えました。今度はオートゥイユ子爵が、私の願いを叶える番です。ペルティエ領から、近々密輸船が出航するという情報を得ています。その密輸船を押さえるつもりです」
「分かりました。協力しましょう。密輸船の積荷はアヘンです。呉国に輸出するのですが、フランクールに帰ってくる時は、呉国の見目麗しい、若い男女を乗せてきます。そしてフランクールやザイドリッツ、スルエタに奴隷として売り捌きます」
「奴隷か、胸糞悪いな」フィンは眉間に皺を寄せ、残りのスコッチを一気に喉へ流し込んだ。
空いたグラスに、ギャスパーはスコッチを継ぎ足した。
大枚をはたいて買った上物のスコッチで、客に見せびらかすために取っておいたが、万が一監獄に入ることになれば飲めなくなる、それならば、飲める時に飲んでおこうと、開けることにした。
「最初こそアヘンの輸出だけでしたし、密輸船の出航を見逃すだけで良かったですから、ブリヨン侯爵に逆らうよりはと思い、協力していたのですが、奴隷を連れて来ていると知って、手を引こうとしたら、物流を阻害されてしまい、協力せざるを得なくなったのです」
ブリヨン侯爵領が、パトリーよりも南に位置しているため、マルセル領の商人たちは、ブリヨン侯爵領を通らなければ、パトリーへ行けない。
「国に訴えようとは思わなかったのですか?」フィンが訊いた。
「ブリヨン侯爵の仲間が、どこにいるかも分かりませんからな、有力者は皆、東方貿易会社に出資している。王室も例外ではありません。加担していないと言い切れるだけの証拠がなかったのです。そうこうしているうちに、兄や弟は、見て見ぬふりをするだけではなく、金のために手を貸すようになってしまった」
「あなたは手を貸していないと?」フィンは訝しそうにギャスパーを見た。
「同じ年頃の娘がいますからな、私は傍観しているだけです。助けないのなら、同罪なのかもしれませんがね」
「娘のために思い止まったのなら、マドゥレーヌ嬢にとっては、大きな意味になると思います」ギャスパーは、我が子を愛しているようなので、彼の助けがあれば、マドゥレーヌも立ち直るだろうと、ミュリエルは安堵した。
「アンドレ王子には、いつ伝えるつもりですかな?」
「証拠は全て揃っています。明日の朝、ここを立つ予定です。パトリーに戻り次第、協力を申し出ます」
「あの侯爵から証拠を握るとは、あなたには、余程に優秀なスパイがついているのですね、逆らわない方が身のためでしょうな。知りうる限りの加担者と、出航の日にちは、分かり次第、お知らせしますよ」悪魔に育てられた天使は、悪魔よりも怜悧で抜け目ない少女に育ったようだと、ギャスパーは思った。
「ブリヨン侯爵は密輸船の存在を徹底的に隠していました。それは密輸品がアヘンだったからでしょうか、それとも奴隷を隠したかったのでしょうか」ミュリエルが訊いた。
「アヘンも奴隷も、他人に知られたいようなことではありませんが、どちらも違うと思います。密輸船が海賊船だからでしょうな」ギャスパーは誰にも聞かれてはならないといった風に、声を落として答えた。
「海賊……」
「はい、海賊と内通していたとなると、密輸の罪など可愛いものです。この事実が明るみに出れば、一族郎党処刑されてしまう。それでも、あなたは罪を暴きますかな?」
「はい、カルヴァン家が途絶えたとして、それが何だと言うのでしょう。私にカルヴァン家を守る義理はありません。そして、私は既にカルヴァンではありません」
やはり、この少女は抜け目ない、海賊が関わっていることを知らなかったのに、身を守ることを怠らなかった。
貴族でいれば、特権を得られたのに、先を読んで潔く平民になり、カルヴァン家から遠くに身を置いた。
そして、涼しい顔で一族郎党破滅に追いやろうとしている。何があったか知らないが、私怨と言っていた。余程の恨みなのだろう。
「なるほど、このために家を出たのですか」
「薬師になりたかったというのが本当の理由ですが、家を出るきっかけを作ったのは、カルヴァン侯の悪事です」
話は終わりだと、ミュリエルとフィンは席を立った。
フィンは怪我をしていないミュリエルの姿を見て、そばに近寄り、顔に憂いも恐れも出ていないことに安堵した。
「診察は問題ありませんでした。健康そのものです。ポーションを飲んでいただきましたので、2、3日は寝込むことになりますが、ご希望の結果が得られると思います」
「感謝します。これで少し肩の荷が降りました。あの子をどうするか、決めかねていたのですよ、事実を打ち明けて、後妻に貰ってもらうしかないと思っていたのですが、親としては、醜聞から守ってやりたいと思っていたのです」
2人で何の話をしていたのか分からないが、ギャスパーの態度が軟化したようだと、ミュリエルは思った。
「心を痛めているようです。家族との時間を、設けてあげてください」
「そうですな、マドゥレーヌが21歳の成人を迎えるまでは、家族と過ごさせましょう。幼いジュリエットも、姉を恋しがっているようですからな」
「私はオートゥイユ子爵の願いを叶えました。今度はオートゥイユ子爵が、私の願いを叶える番です。ペルティエ領から、近々密輸船が出航するという情報を得ています。その密輸船を押さえるつもりです」
「分かりました。協力しましょう。密輸船の積荷はアヘンです。呉国に輸出するのですが、フランクールに帰ってくる時は、呉国の見目麗しい、若い男女を乗せてきます。そしてフランクールやザイドリッツ、スルエタに奴隷として売り捌きます」
「奴隷か、胸糞悪いな」フィンは眉間に皺を寄せ、残りのスコッチを一気に喉へ流し込んだ。
空いたグラスに、ギャスパーはスコッチを継ぎ足した。
大枚をはたいて買った上物のスコッチで、客に見せびらかすために取っておいたが、万が一監獄に入ることになれば飲めなくなる、それならば、飲める時に飲んでおこうと、開けることにした。
「最初こそアヘンの輸出だけでしたし、密輸船の出航を見逃すだけで良かったですから、ブリヨン侯爵に逆らうよりはと思い、協力していたのですが、奴隷を連れて来ていると知って、手を引こうとしたら、物流を阻害されてしまい、協力せざるを得なくなったのです」
ブリヨン侯爵領が、パトリーよりも南に位置しているため、マルセル領の商人たちは、ブリヨン侯爵領を通らなければ、パトリーへ行けない。
「国に訴えようとは思わなかったのですか?」フィンが訊いた。
「ブリヨン侯爵の仲間が、どこにいるかも分かりませんからな、有力者は皆、東方貿易会社に出資している。王室も例外ではありません。加担していないと言い切れるだけの証拠がなかったのです。そうこうしているうちに、兄や弟は、見て見ぬふりをするだけではなく、金のために手を貸すようになってしまった」
「あなたは手を貸していないと?」フィンは訝しそうにギャスパーを見た。
「同じ年頃の娘がいますからな、私は傍観しているだけです。助けないのなら、同罪なのかもしれませんがね」
「娘のために思い止まったのなら、マドゥレーヌ嬢にとっては、大きな意味になると思います」ギャスパーは、我が子を愛しているようなので、彼の助けがあれば、マドゥレーヌも立ち直るだろうと、ミュリエルは安堵した。
「アンドレ王子には、いつ伝えるつもりですかな?」
「証拠は全て揃っています。明日の朝、ここを立つ予定です。パトリーに戻り次第、協力を申し出ます」
「あの侯爵から証拠を握るとは、あなたには、余程に優秀なスパイがついているのですね、逆らわない方が身のためでしょうな。知りうる限りの加担者と、出航の日にちは、分かり次第、お知らせしますよ」悪魔に育てられた天使は、悪魔よりも怜悧で抜け目ない少女に育ったようだと、ギャスパーは思った。
「ブリヨン侯爵は密輸船の存在を徹底的に隠していました。それは密輸品がアヘンだったからでしょうか、それとも奴隷を隠したかったのでしょうか」ミュリエルが訊いた。
「アヘンも奴隷も、他人に知られたいようなことではありませんが、どちらも違うと思います。密輸船が海賊船だからでしょうな」ギャスパーは誰にも聞かれてはならないといった風に、声を落として答えた。
「海賊……」
「はい、海賊と内通していたとなると、密輸の罪など可愛いものです。この事実が明るみに出れば、一族郎党処刑されてしまう。それでも、あなたは罪を暴きますかな?」
「はい、カルヴァン家が途絶えたとして、それが何だと言うのでしょう。私にカルヴァン家を守る義理はありません。そして、私は既にカルヴァンではありません」
やはり、この少女は抜け目ない、海賊が関わっていることを知らなかったのに、身を守ることを怠らなかった。
貴族でいれば、特権を得られたのに、先を読んで潔く平民になり、カルヴァン家から遠くに身を置いた。
そして、涼しい顔で一族郎党破滅に追いやろうとしている。何があったか知らないが、私怨と言っていた。余程の恨みなのだろう。
「なるほど、このために家を出たのですか」
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話は終わりだと、ミュリエルとフィンは席を立った。
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