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冒険の島

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「島が見えたぞー!」


野太い声に甲板を磨いてた顔を上げると、水平線の向こう側に小さな影が見えた。
こっちの連中って目もいいんだよな。


あんなのよく見えるぜ。
目を細めてもゴマ粒のような影にしか見えない。


「サイちゃん。船長起こしてきて。」


バスク副船長に言われて、雑巾をバケツに放り込んで早足で向かう。
まだ日は高くない。船長は寝ている時間だ。


コンコン


「船長。サイです。」


返事はない。


コンコン


「島が見えました。」
「入れ。」


起きてんじゃねえか。
そんなことはおくびにも出さず、笑顔で「おはようございます。」と告げる。


洗面器に用意しておいた水を満たして、船長が顔を洗っている間に島のことを報告する。
船長は身支度を整えると俺の襟首を引っ掴んで甲板に向かった。何でだ。


「島が見えたって?」
「あら、早いわねぇ。さすがサイちゃん。」
「船長。サイの首が締まるよ。」


ようやっと解放された俺は軽く咳き込みながら、船長が取り出したものを見る。
こないだ書いてた海図だ。


小さな島だが、周りに座礁が多く、西側は海底が浅くなっている。
干潮だと結構な範囲が干潟になるんじゃないか?


つまり、船をつけにくい島だと言える。
船を寄せるなら座礁の少ない東側だろうけど、東は崖っぽいんだよなあ。


「…とりあえず、東に斥候を出す。船はここで待機だ。」
「面倒な島みたいだものねえ。」
「だからこそって感じもするけどねえ。」


船長たちも同意見みたいだ。
この世界の海図の情報じゃあ、実際に見ないとわからないことも多い。


懸命な判断だろう。
たぶんヤジスさんが行くんだろうな。頑張ってください。


「サイ。おめえも行け。」


はい?
え。俺ぇぇっ?


「そうねえ。サイちゃん見つけるの得意だし。」
「お前が見つけてきたお宝だ。縁があるお前が行け。」


いやいやいや。
たまたまっすよ?


船長に怒られないためだけに取ってきたやつだし。
保冷剤だって知ってたら取ってこなかったし。


つうか、助けてもらったあのちっさい船であそこまで行くんでしょう?無理無理無理。ひっくり返ったらどうすんだ。
ぶんぶん首を振る俺を野太い腕がガシッとつかむ。


「おっしゃ~。行くぞ~。サイ~。」
「い~い天気だなあ~。」
「うわああぁぁぁ。」


俺の意志はスルーで、船の皆に意気揚揚と送り出されることになった。
ちくしょう。俺、ちっさい船は船酔いするのに。
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