【完結】冷徹宰相と淫紋Hで死亡フラグを『神』回避!? ~鬱エロゲー溺愛ルート開発~

愛染乃唯

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「だって、私、はしたなくて」

 私はもう、震えながら囁くしかない。
 ふ、と、耳元でまた、彼が笑った気がした。
 でも、すぐに彼が私の尻を掴んで腿を寄せさせたので、私はそれどころではなくなった。

「腿を寄せてくれ……そう、強く。そう。それでいい」

 言われた通りにきゅっと腿を寄せると、腿と腿の間に彼の存在を強く感じる。
 堅くこごった、彼の中心。
 それが今、私の中心のすぐ側にある。

「すこし、我慢だ」

 耳朶に落とされた声はどことなく甘く、私はまた、呼吸を忘れてあえいだ。

「あっ……んう」

「いい声だ。外で聞いている者に、もっと聞かせてやってくれ」

 囁いたあと、彼が腰を動かし始める。

「ひゃっ! ぅ……うん、あ、あっ、あっ、んっ」

 私は悲鳴に近い嬌声を上げた。
 ちゅ、ちゅぷ、ちゅ、と、甘えた水音が立つ。
 表面を擦られているだけなのに、たっぷりと濡れた花びらは彼をのがすまいと絡みつく。
 あげく私の肉芽はすっかりと硬くなってしまい、感覚のかたまりと化した。
 そこを彼に擦り上げられるたび、快感が、強い波になって私を押し上げる。
 何度も、何度も、何度も、快感が終わらない。

「うっ、くぅ……ヴィンセントさまっ……」

 抑えようもなくこぼれる、情けない声。
 体はとっくに強すぎる快感に負けていて、熱いものに触れたみたいに彼のものから逃げかける。
 腰を浮かせたいのに、強い力がそれを許さない。
 大きな手でウェストを掴まれて、引き寄せられて、押しつけられる。

「ゆるして……ゆるして、ヴィンセントさま……、お願い」

 うなされたみたいに繰り返し、私はヴィンセントにしがみついた。
 しっとりと汗で濡れた彼の体が私を受け止め、強く抱きしめてくれる。
 私を閉じこめる力なのに、優しくて、それが嬉しい。
 もっと、と思う。もっと。もっと――何?
 息を切らした彼の声がする。

「もう少しだ、頑張ってくれ」

「ちが、う、もう、入れてぇ……!」

 私は叫び、腰をうねらせた。
 鋭いけれど表面を撫でて終わる快感が、お腹の中に溜まっている。
 それをえぐり出して欲しい。掻きだして欲しい。
 痛くてもいいから。あなたに。

 あなただけに――。

「っ……!」

 私を抱いていたヴィンセントの腕に力がこもり、呼吸が苦しくなる。
 それも気持ちよくて、私も必死に腕に力を入れた。
 私たちは抱き合う。
 体の隙間がまったくなくなるくらい、強く、強く。
 しばらくヴィンセントの背中には力が入っていたけれど、やがてふーっと脱力していく。
 彼は私を抱いたまま、ぱたりと寝台に倒れこんだ。
 しばし、二人して無言で呼吸を整える。
 ぼんやりとした頭のどこかで、私はリリアのことを考えていた。
 彼女は、まだ扉の向こうにいるのだろうか。寝台から気配をうかがうかぎりは、いないような気がする。
 私たちはかなり迫真の演技ができた、ということなんだろうか。
 まあ、半分以上本気だった気もするけれど……。

 私はヴィンセントが目を閉じているのを確認してから、そーっと反対側を向く。
 あった。まだ、枕元にボタンがある。
 私はそれを、サイドチェストに載った花瓶の裏に、そーっとそーっと移動させた。
 これで見つからないだろう、と思えたところで、ヴィンセントに声をかける。

「ヴィンセントさま……大丈夫です? いけました?」

 目を閉じたまま、きゅっと額に皺を寄せるヴィンセント。

「お前が気にすることでは……いや……」

 ヴィンセントはそのまま、じっと固まってしまった。
 どうしたんだろう、大丈夫かな、と思いつつも、私は彼の顔から目を離せない。
 この人、やっぱり渋い顔が最高に似合う。でも……と思って、私はヴィンセントの眉間に手を伸ばした。この皺が取れたらどんな顔になるんだろう、という興味に負けた。
 指先が眉間に触れた瞬間、ヴィンセントはぱちりと目を開け、私を抱き寄せる。

「ごめんなさい……!」

 ひぇっとなり、とっさに謝る私。
 ヴィンセントは大きくて温かな体で私を包み、真剣に囁いた。

「謝るな」

「えっ……はい。はい……?」

 謝らないとなると、何を言ったらいいのだろう。
 困った私の頭を、ヴィンセントの手が軽く撫でた。
 一度、二度。
 大事なものをなぞるように撫でて、彼は言う。

「大事に、させてくれ」

「大事に……?」

 私の思考は、ばちんと固まる。

 大事に。
 私を、大事に。
 こんな私を、大事に?

 前世ではただの社畜で、仕事もほどほど、容姿はイマイチ、頑張っても頑張っても使い潰されるだけで、趣味はエロゲーで。
 そんなどうしようもない私を、大事に?

 考えると、頭がぐるぐるしてきてしまう。
 心の中にあった硬いものが、どろっと融けてきてしまう。
 これってなんだろう。少なくとも、今まで融けたことのない何かだ。
 これが融けたら、私はどうなるのかな。
 私は、私でいられるのかな。
 肌がざわざわするような不安に襲われ、私は慌てて唇を噛んだ。

「エレナ?」

 ヴィンセントが少し心配そうに聞いてくる。
 優しくされている。間違いなく、優しくされている。
 どろり、ますます融けてしまいそうになって、私は、強く、強く唇を噛んだ。

 ダメだ。ここで融けたらダメな気がする。
 私には役目がある。ヴィンセントを救うという役目がある。
 そのためにここにいるのを忘れちゃ駄目だ。
 そもそも、ヴィンセントが私に好意的なのは、エレナが親友の娘だからだ。
 そうだ――ヴィンセントが大事にしたいのは、私じゃない。
 エレナだ。

 ヴィンセントが見ているのは、エレナ。

 そう思うと、少しだけほっとできた。
 何度か呼吸して、冷静さを取り戻して。
 ひとまず、私は彼に謝る。
 
「ごめんなさい、ヴィンセント様」
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