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第6章:救世主
第10話:誰かのための涙
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「コッシロー殿……。私はアリス殿にどう接すればわかりません」
「よくやったと褒めるべきでッチュウ。救世主による被害を最小限に抑えてくれたことは間違いないのでッチュウ」
全身、切り傷だらけとなってしまったアンドレイ=ラプソティたちは、その場でへたりこむ。救世主に感化された民衆が暴徒と化すのはよくあることだが、それを止める役割を持つのが『天界の十三司徒』である。しかしながら、今回の救世主騒動において、勲功第一は間違いなくアリス=アンジェラであった。
しかし、暴徒たちが口汚く罵ったようににアリス=アンジェラには聖女というよりかは『魔女』のほうが適任なのでは? と思わざるをえないアンドレイ=ラプソティであった。アリス=アンジェラはもしすかすると、レオン=アレクサンダーから天命を回収した時、先ほど救世主を屠った時と同じ恍惚とした表情をその顔に浮かべていたかもしれない。
そして、救世主を信じる者たちの気持ちを顧みることなく、文字通り払ってみせた。アンドレイ=ラプソティの心中は穏やかでは無かった。アリス=アンジェラと打ち解けるようにと努力はしてきたものの、彼女と自分は決して相容れぬ存在であることをこの一件で思い知らされることになる
「そんな思い詰めた顔をしなさんなって。アンドレイは気にしすぎだ」
「そう……なんですかね? 私とアリス殿はわかり合えない気がしてなりません」
「そもそも、ヒトとヒトは分かり合えると錯覚するもんだ。そして、それは天使や悪魔も同じだけだ」
天使が悪魔に説教されるという、なんとも不思議な光景を見ることになるコッシロー=ネヅであった。コッシロー=ネヅはアリス=アンジェラの守護天使である。もし、アンドレイ様がアリスちゃんの敵に回るのならば止む無しという考えを抱いている。しかしながら、そのアンドレイ=ラプソティを諭すベリアルのおかげか、アンドレイ=ラプソティは段々と落ち着きを取り戻し始めるのであった。
アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラの手によって、心に深い傷を負った。しかし、そのアンドレイ=ラプソティをさらに絶望の底へと落とそうと画策しているダン=クゥガーなる謎のダークエルフがアンドレイ=ラプソティの堕天化を止めた。そして、ここまでの道中、アンドレイ=ラプソティは仇敵であるアリス=アンジェラとどうにか分かり合おうと務めてきた。
それが救世主騒動を経ることで、またもや、アンドレイ=ラプソティに複雑な感情を抱かせることになるが、ベリアルがここに居てくれたおかげで、アンドレイ=ラプソティは再度、アリス=アンジェラとの対話を試みる。
「アリス殿、お疲れ様です。しかし、さすがにこれはやりすぎです」
「ボクもそう思っていマス。他にもやりようがあったはずですが、今のアリスに出来るのはアレしかありませでシタ」
このアリス=アンジェラの一言に、アンドレイ=ラプソティは意外なことに、アリス殿でも反省することがあるのだという失礼な感想を抱くことになる。そして、その感情が顔に出ていたのか、アリス=アンジェラはムッ! とした表情になってしまう。アンドレイ=ラプソティは自分の感情をごまかすように、苦笑してしまうのであった。
「出会った頃に比べて、アリス殿は感情豊かなのだと思います」
「それは失礼なのデス! アリスだって、笑ったり怒ったりできマス!」
「では、創造主:Y.O.N.N様以外の誰かのことを思い、わんわんと赤子のように泣いたことはありますか?」
アンドレイ=ラプソティはヒトとして、天使として当たり前のことを聞いてみた。今朝、アリス=アンジェラを慕っている男の子がアリス=アンジェラとの別れの際において、ボロボロと涙を零していた。自分はついもらい泣きしてしまいそうになったが、その時のアリス=アンジェラの表情からは、まるで涙が一滴も零れないような女性に見えたのだ。
それはその男の子に対して、お姉さんとして接するために涙を我慢していたようには見えなかった。ただ、聖女としての役割を果たすかのように、アリス=アンジェラは気丈に振る舞い、男の子を振り払ってしまったのだ。
アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの言葉を受けて、無い胸の前で腕組みをし、さらにはう~~~ん、う~~~ん、う~~~ん!? と思いっ切り首級を傾げている。
「創造主:Y.O.N.N様に祈りを捧げている最中に気持ちが昂ってしまい、泣くのとは別のことを指しているのですヨネ?」
「はい、もちろん、その通りです。大切なひととの別れとかに流す涙のことですね。アリス殿にはそういう方はいなかったのですか?」
「コッシローさんともし、そうなったのであれば、ボクは泣くかもしれません。でも、絶対にとは言い切れないかもしれまセン……」
アンドレイ=ラプソティは自分でも意地悪な問いかけをしていると思わざるをえなかった。アリス=アンジェラは女の子ではあるが、普通の女の子とは違っていることは感じていた。とにかく、感情表現がまだまだま乏しいと感じるアリス=アンジェラに対して、アンドレイ=ラプソティは助言の意味を込めて、アリス=アンジェラに言葉を贈る。
「アリス殿にもし自分の命よりも大切なヒトが出来たたら、そのヒトといっぱい笑って、いっぱい怒って、そして、いっぱい泣いてください。その時にお節介焼きの天使が居たなって思い出してくれたら、幸いです」
「わかり……まシタ。創造主:Y.O.N.N様以外でアリスにとって、大切なヒトが出来るかどうかは不明ですけど、もしそのようなヒトと巡り合えたら、ボクはその時の感情を大切にしたいと思いマス」
アンドレイ=ラプソティは今はこれで良いと思った。アリス=アンジェラとの対話はこれから先も続けなければならないと思うが、それでも少しは気に留めておいてほしいと願うばかりであった。
2人の大事な話も終わったところでベリアルが彼女らにゆっくり休める場所を探そうぜと提案してくる。いつまでもこんな死体が転がる場所に居るから、陰鬱な話ばかりになってしまうと言ってくる。アンドレイ=ラプソティはさすがは『怠惰』の権現様だと思ってしまうが、彼の提案を受けて、場所を変えることにするのであった。
「というわけで、やってきました。救世主討伐もなったことだし、祝いの酒だっ!」
「あなたってひとは……。聖地の端だと言っても、それを口にだしますかね?」
「うぐぅ! 昨日も飲んだくれたばっかりなのデス! ボクとしては控えたほうが良いと思いマス!」
「じゃあ、アリス嬢ちゃんはミルクなっ!」
「ちょっと待ってくだサイ! 誰も飲まないとは言ってないのデス! 聖地:エルハザムはワインの聖地でもあるのデス! 麦酒とワインは別腹なのデス!」
「血のように紅いワインは救世主の血であり、創造主:Y.O.N.N様の恵みなのでッチュウ。ベリアル、アリスちゃんをイジメちゃダメなのでッチュウ」
「よくやったと褒めるべきでッチュウ。救世主による被害を最小限に抑えてくれたことは間違いないのでッチュウ」
全身、切り傷だらけとなってしまったアンドレイ=ラプソティたちは、その場でへたりこむ。救世主に感化された民衆が暴徒と化すのはよくあることだが、それを止める役割を持つのが『天界の十三司徒』である。しかしながら、今回の救世主騒動において、勲功第一は間違いなくアリス=アンジェラであった。
しかし、暴徒たちが口汚く罵ったようににアリス=アンジェラには聖女というよりかは『魔女』のほうが適任なのでは? と思わざるをえないアンドレイ=ラプソティであった。アリス=アンジェラはもしすかすると、レオン=アレクサンダーから天命を回収した時、先ほど救世主を屠った時と同じ恍惚とした表情をその顔に浮かべていたかもしれない。
そして、救世主を信じる者たちの気持ちを顧みることなく、文字通り払ってみせた。アンドレイ=ラプソティの心中は穏やかでは無かった。アリス=アンジェラと打ち解けるようにと努力はしてきたものの、彼女と自分は決して相容れぬ存在であることをこの一件で思い知らされることになる
「そんな思い詰めた顔をしなさんなって。アンドレイは気にしすぎだ」
「そう……なんですかね? 私とアリス殿はわかり合えない気がしてなりません」
「そもそも、ヒトとヒトは分かり合えると錯覚するもんだ。そして、それは天使や悪魔も同じだけだ」
天使が悪魔に説教されるという、なんとも不思議な光景を見ることになるコッシロー=ネヅであった。コッシロー=ネヅはアリス=アンジェラの守護天使である。もし、アンドレイ様がアリスちゃんの敵に回るのならば止む無しという考えを抱いている。しかしながら、そのアンドレイ=ラプソティを諭すベリアルのおかげか、アンドレイ=ラプソティは段々と落ち着きを取り戻し始めるのであった。
アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラの手によって、心に深い傷を負った。しかし、そのアンドレイ=ラプソティをさらに絶望の底へと落とそうと画策しているダン=クゥガーなる謎のダークエルフがアンドレイ=ラプソティの堕天化を止めた。そして、ここまでの道中、アンドレイ=ラプソティは仇敵であるアリス=アンジェラとどうにか分かり合おうと務めてきた。
それが救世主騒動を経ることで、またもや、アンドレイ=ラプソティに複雑な感情を抱かせることになるが、ベリアルがここに居てくれたおかげで、アンドレイ=ラプソティは再度、アリス=アンジェラとの対話を試みる。
「アリス殿、お疲れ様です。しかし、さすがにこれはやりすぎです」
「ボクもそう思っていマス。他にもやりようがあったはずですが、今のアリスに出来るのはアレしかありませでシタ」
このアリス=アンジェラの一言に、アンドレイ=ラプソティは意外なことに、アリス殿でも反省することがあるのだという失礼な感想を抱くことになる。そして、その感情が顔に出ていたのか、アリス=アンジェラはムッ! とした表情になってしまう。アンドレイ=ラプソティは自分の感情をごまかすように、苦笑してしまうのであった。
「出会った頃に比べて、アリス殿は感情豊かなのだと思います」
「それは失礼なのデス! アリスだって、笑ったり怒ったりできマス!」
「では、創造主:Y.O.N.N様以外の誰かのことを思い、わんわんと赤子のように泣いたことはありますか?」
アンドレイ=ラプソティはヒトとして、天使として当たり前のことを聞いてみた。今朝、アリス=アンジェラを慕っている男の子がアリス=アンジェラとの別れの際において、ボロボロと涙を零していた。自分はついもらい泣きしてしまいそうになったが、その時のアリス=アンジェラの表情からは、まるで涙が一滴も零れないような女性に見えたのだ。
それはその男の子に対して、お姉さんとして接するために涙を我慢していたようには見えなかった。ただ、聖女としての役割を果たすかのように、アリス=アンジェラは気丈に振る舞い、男の子を振り払ってしまったのだ。
アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの言葉を受けて、無い胸の前で腕組みをし、さらにはう~~~ん、う~~~ん、う~~~ん!? と思いっ切り首級を傾げている。
「創造主:Y.O.N.N様に祈りを捧げている最中に気持ちが昂ってしまい、泣くのとは別のことを指しているのですヨネ?」
「はい、もちろん、その通りです。大切なひととの別れとかに流す涙のことですね。アリス殿にはそういう方はいなかったのですか?」
「コッシローさんともし、そうなったのであれば、ボクは泣くかもしれません。でも、絶対にとは言い切れないかもしれまセン……」
アンドレイ=ラプソティは自分でも意地悪な問いかけをしていると思わざるをえなかった。アリス=アンジェラは女の子ではあるが、普通の女の子とは違っていることは感じていた。とにかく、感情表現がまだまだま乏しいと感じるアリス=アンジェラに対して、アンドレイ=ラプソティは助言の意味を込めて、アリス=アンジェラに言葉を贈る。
「アリス殿にもし自分の命よりも大切なヒトが出来たたら、そのヒトといっぱい笑って、いっぱい怒って、そして、いっぱい泣いてください。その時にお節介焼きの天使が居たなって思い出してくれたら、幸いです」
「わかり……まシタ。創造主:Y.O.N.N様以外でアリスにとって、大切なヒトが出来るかどうかは不明ですけど、もしそのようなヒトと巡り合えたら、ボクはその時の感情を大切にしたいと思いマス」
アンドレイ=ラプソティは今はこれで良いと思った。アリス=アンジェラとの対話はこれから先も続けなければならないと思うが、それでも少しは気に留めておいてほしいと願うばかりであった。
2人の大事な話も終わったところでベリアルが彼女らにゆっくり休める場所を探そうぜと提案してくる。いつまでもこんな死体が転がる場所に居るから、陰鬱な話ばかりになってしまうと言ってくる。アンドレイ=ラプソティはさすがは『怠惰』の権現様だと思ってしまうが、彼の提案を受けて、場所を変えることにするのであった。
「というわけで、やってきました。救世主討伐もなったことだし、祝いの酒だっ!」
「あなたってひとは……。聖地の端だと言っても、それを口にだしますかね?」
「うぐぅ! 昨日も飲んだくれたばっかりなのデス! ボクとしては控えたほうが良いと思いマス!」
「じゃあ、アリス嬢ちゃんはミルクなっ!」
「ちょっと待ってくだサイ! 誰も飲まないとは言ってないのデス! 聖地:エルハザムはワインの聖地でもあるのデス! 麦酒とワインは別腹なのデス!」
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