拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第5章:首輪と鎖

第10話:怒髪天のコープ

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 ロック=イートとリリー=フルールがその仲を段々と深めていっている間、コープ=フルールと言えば、仕事の合間に執事のゴーマ=タールタルと綿密な打ち合わせをおこなっていた。

「ふむふむ。ロックくんの次の対戦相手に相応しい相手となると、公式試合に出るような強者じゃなければならないのは、私の予想通りなのですね?」

「そうなのじゃ。一つ目入道サイクロプスをたった一人で倒したとなれば、もうそこらのゴロツキ連中では試合を組むことすら難しいのじゃ。というわけで、ロック=イートを三か月後に開かれる上覧武闘会に出場させるのはどうですじゃ?」

 二人は今、屋敷にあるコープ=フルールの書斎に居た。執事:ゴーマ=タールタルが書類の束を主人であるコープ=フルールに渡しながら話す。その書類の中には、ロック=イートの対戦相手の候補者の詳細を記したモノもある。それに眼を通しながら、ふむふむと言っているのがコープ=フルールである。

「なるほど、なるほど。さすがゴーマくんですね。これらの書類に記された候補者たちが一同に集まるのが10月に開かれる上覧武闘会ゆえに、そこにロックくんを放り込めということですか」

「そうですじゃ。あの若造がどれほどの腕前なのかを推し量れると同時に、予選を突破できるとなれば、主アンゴルモア大王に一目置かれる存在へと一足飛びに行けるという寸法ですのじゃ」

 コープ=フルールは出来る男が大好きだ。壱を頼めば拾の結果をもたらすそんな男をだ。ゴーマ=タールタルはフルール家の家臣連中において重鎮の席に着いており、その能力は他の者と比べて、ずばぬけて高い。そして、今回もまたその能力を駆使し、コープ=フルールが満足する調査結果を出してきたのだ。

「ありがとうございます。いやあ、私はゴーマ=タールタルくんにはお世話になりっぱなしですよ。よくもまあ、こんな有能な男が私の下に転がりこんできたものだと、私は自分の幸運を自分で褒めてあげたい気分になります」

「そこは、それがしをべた褒めするところではないですかな? いやまあ、コープ様のいつものことと言えば、いつものことですが……」

 コープ=フルールの悪癖のひとつに、他者を評価しつつ、ついでに自分の評価をもっと上げるというモノがある。それは受け取るヒトによっては鼻持ちならぬ態度なので、ゴーマ=タールタルとしては、なるべくしてほしくない言動である。だが、それでもヒトの才を見抜くことに長けたコープ=フルールであることはゴーマ=タールタルも長年の付き合いで理解している。増長してほしくないとは思うモノの、一方ではコープ=フルールの才能を認めているがゆえに、そうなるのも致し方ないと思ってしまう彼である。ゴーマ=タールタルは、ごほんとひとつ咳をつき

「では、ロックにはこの大会に出てもらうことで決まりで良いですな?」

「はい。そういう運びで行きましょう。私がロックくんに伝えておきますので、ゴーマくんのこれに関してのお仕事はここまでです。報酬はいつものアレで良いですかね?」

 コープ=フルールはにっこりと笑顔で机の引き出しから横に縦10センチメートル、横7.5センチメートル、高さ3センチメートルの金色のケースを取り出し、それをゴーマ=タールタルに手渡す。ゴーマ=タールタルは破顔し、両手でその金色のケースを受け取り、それを燕尾服の内ポケットにしまい込む。ゴーマ=タールタルは愛煙家である。彼は金品を受け取ることよりも、フランク副王国で採れる煙草葉を使用した葉巻を吸うことを至上の喜びとしている。コープ=フルールはゴーマ=タールタルのためにわざわざそれを仕入れて、褒美として彼に手渡したのであった。

 ゴーマ=タールタルは主人であるコープ=フルールに一礼し、部屋から退出していく。彼が向かう先は屋敷にある喫煙所である。ゴーマ=タールタルは足取り軽く、その喫煙所へと消えていくのであった。ひとり書斎に残されたコープ=フルールは、ふうううと一息つき

「ゴーマくんは本当にフランク副王国産の葉巻が好きですねえ……。まあ、こちらとしても安くつくから良いのですが……」

 コープ=フルールとしてはゴーマ=タールタルの働きに対して、もっと値の張るモノを準備しても良いとさえ思っている。しかしながら、ゴーマ=タールタルは身をわきまえているのか知らないが、頑なに葉巻だけで良いと言い出す始末である。まあ、この辺りはひとそれぞれの趣向ゆえに深くはツッコミを入れずにおいているコープ=フルールである。

 コープ=フルールはゴーマ=タールタルが持ってきた書類の束に再び眼を向ける。上覧武闘会に参加するであろう戦士たちの仔細が記されているモノだ。それをマジマジと読みながら、彼はロック=イートなら、この強者たちとどう戦うのであろうかと夢想しはじめる。それを考えているだけで、コープ=フルールの心は躍ってしまう。主アンゴルモア大王が主催するだけあって、どの戦士たちも字名あざな持ちの連中ばかりだ。その火中にロック=イートを放り込めると思えるだけでも、コープ=フルールの血が沸き立ってしまう。

「さてさて……。うちの可愛い娘を手篭めにした不埒な使用人に罰を与えてくれるのは、どのヒトなんでしょうか……。って、あれ? あれれ? なんで、このお方が参戦するんです!? ちょっと、ゴーマくん、これは聞いてませんよ!?」

 コープ=フルールは上覧武闘会へ参加予定の者の名前を見て、眼を剥くこととなる。その中に明らかにこの大会に参加するには不釣り合いすぎる人物の名前があったのだ。スペシャルゲストと銘打たれているが、これはもしや出来レースなのではないのかとさえ思えてしょうがないコープ=フルールである。

「なんで、参加者の名前に神槍:ブリトニー=ノーガゥが挙がっているんです?? 彼はアンゴルモア四天王のひとりですよ?? こんなの、誰が優勝するかなんて、大会が始まる前から決まっているといっても過言じゃないでしょっ!!」

 コープ=フルールは憤りを感じていた。10月におこなわれる予定の上覧武闘会は、アンゴルモア大王降誕1200周年を祝ってのことだ。それゆえに世の中に名が知れた者たちが出るのは当たり前と言えば当たり前である。一介の商人に過ぎないコープ=フルールでさえ、ゴーマ=タールタルが持ってきた書類の束の中には、彼が見知っている戦士たちの名前が列挙されている。しかしながら、それでもアンゴルモア四天王のひとりが参戦するなど予想外すぎたのだ。

「あったま来ましたねっ! 主アンゴルモア大王ともいうお方が、出来レースを仕組むなど、参加する戦士たちにとって、これ以上無い侮辱ですよっ! 誰かロックくんをこの書斎に呼びだしてくださいっ! リリーと乳クリ合ってる最中でも構いませんっ! 今すぐに連れてきてくださいっ!!」
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