拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
52 / 122
第6章:予選大会

第1話:予選開始

しおりを挟む
――大王歴1200年10月1日 アンゴリア大王国 商業都市:シュマルカルデンにて――

 この日、ロック=イートが住まう商業都市:シュマルカルデンの一区画において、アンゴルモア大王降誕1200周年を祝うために開かれる上覧武闘会の予選が執り行われることとなった。もちろん、この上覧武闘会はフランク副王国、イタリアーノ副王国、ポールランド副王国からも参加者を募っており、各地の予選会場で戦士たちがその腕を競い合っている。

 約10日間に及ぶ予選大会で最終的には31人の戦士が選ばれることとなる。そしてシード選手であるアンゴルモア四天王のひとり:神槍:ブリトニー=ノーガゥは予選を戦わずに決勝トーナメントへと駒を進めれるという手筈が整っていた。誰しもが神槍:ブリトニー=ノーガゥの実力は知っており、それについては異論は起こらなかった。それよりも、決勝トーナメントで、もし彼を打ち倒せれば、自分がアンゴルモア四天王のひとりとして数えられるのではという出世欲に燃えることとなる。

 しかしながら、ひとり、神槍:ブリトニー=ノーガゥの無傷での決勝トーナメント行きに憤慨していた男がいた。彼は自分自身が出場するわけでもないのに、異様にブリトニー=ノーガゥに敵愾心を抱いていたのである。そのため、予選の時点で試合に賭け金が積み上げられていたのだが、その男は自分が用意した駒に多額の賭け金を積み上げることとなる。

「ロックくんっ! あなたに今月の売り上げの全てを賭けているのですから、しっかりしてくださいねっ!!」

 手狭な予選会場には申し訳ない程度に設置された観客席があった。そこは出場する戦士たちの身内たちが集まる程度の広さしかないというのに、コープ=フルールは屋敷の使用人たちを引き連れて、太鼓やトランペットなどを用いて、ロック=イートを全面的に応援するという異彩を放っていたのであった。応援される側のロック=イートはたまったものではなかった。自分が出場しているのはあくまでも予選であり、そこまでの応援を送られるほどに苦戦しているわけでもない。

 ロック=イートは予選の1,2,3回戦をほぼほぼ無傷に勝ち進む。ロック=イート自身は拍子抜けも良いところであった。全国から強者が集まると言われていただけに、予選に参加するまでの約2カ月間余り、セイ=レ・カンコーと毎日、汗水流して訓練に励んでいた。しかし、この程度の相手しかいないのかと、ロック=イートはついため息を漏らしてしまう。

 商業都市:シュマルカルデンで執りおこなわれている予選の最初は4グループに分かれての総当たりのリーグ戦であった。ロック=イートは予選の予選であるそのリーグ戦を1位で突破し、続く予選トーナメントへ出場する運びとなる。ロック=イートはリーグ戦ではまさに秒殺と言っていいほどの戦果を収めていた。開始のゴングがなるや否や、ロック=イートは相手の戦士に一気に詰め寄り、ワンツースリーと左右のこぶしによる連打を浴びせたのであった。戦闘態勢が完全に整わぬ相手には、これが一番利く。

 そして、予選リーグ戦の会場は裏武闘会の試合会場よりも狭く、直径7メートルほどの広さであった。試合が開始した時点で、相手の手に持つ武器の刃の先が届きそうな位置から開始されるのだ。しかも風呂桶のような構造の予選会場に逃げ場などあるわけもなく、試合開始早々にロック=イートに距離を詰められた相手戦士はなすすべなく、ロック=イートのロケット・3連打を喰らって、砂地の地面に横たわることとなる。

 ここまで近い距離から試合を開始されると、長剣ロング・ソードの類を持つ戦士にとっては逆に迷いが産まれてしまう。突くべきか払うべきか、それとも後退して距離を取るべきかの3択を迫られる。その逡巡している心の隙を突く恰好でロック=イートは試合開始早々に相手との距離をほぼゼロにまでもっていき、相手に何もさせずに圧倒してきたのであった。

 しかし、そんなロック=イートであるが、さすがに予選最後を飾る4人でおこなわれるトーナメント戦では、それは使えないだろうと予測する。誰しもがその必勝の戦法を用いていることが見るだけでわかるからだ。残った者たちはほとんど傷らしい傷を負っていない。

(ここからが予選本番ってわけか……。リーグ戦はあくまでも参加者を振るいにかけるためのもので、それ相応の実力者ならあの会場の仕掛けなんて、すぐに察知するって寸法か)

 ロック=イートは自分を含めて4人の戦士たちのいで立ちを見比べることとする。予選が始まってから早5日が経過しており、この場に残った4人たちは誰一人、満身創痍といった者はいなかった。身に着けている鎧は新品同様であり、苦戦したようにはまったく見えなかったのである。ロック=イートは彼らを見て、つい、へへっ……と口の端が綻んでしまう。裏武闘会がロック=イートのタイガー・ホール以外の地でのデビュー戦であったが、国が主催する公式戦デビューはこの予選大会からであった。ここまでの闘いは拍子抜けする相手ばかりであったが、ここから先は否応が無く、自分の身体は傷を負っていくことになる。

 ロック=イートはマゾヒストではないが、戦士の身体は傷を背負ってこそだと思っている。だからこそ、自分の身に強者との戦いの歴史を刻み込みたいとも思っていた。かくして、本戦行きのための予選トーナメントが開始される。ロック=イートの一試合目の相手は奇しくも徒手空拳であった。ロック=イートとの違いと言えば、徒手空拳でありながら、両腕を包み込むように黒鉄クロガネ製の手甲ナックル・カバーを装備している。というよりかは、この点において、ロック=イートのほうが異常であった。拳闘士の類はセスタスと呼ばれる金属製の手甲ナックル・カバーを身に着けているのが普通なのである。そして、動きやすいように革製の部分鎧で急所部分を護っているのだ。

 しかしながら、ロック=イートと言えば、身体は丈夫な布製のカラテ着のみ。そして両手は通称:バンテージと呼ばれる両手の指と甲を自分の打拳で痛めてしまわぬようにとの配慮の下に布で巻かれているだけなのだ。対戦相手はロック=イートの身軽すぎる軽装に驚きを隠せないでいた。自分の黒鉄クロガネ製の手甲ナックル・カバーでロック=イートを殴ってしまっては、彼を殺してしまうのではないかとういう恐れを抱いてしまう。しかしながら、眼の前の相手は自分と同じくほぼ無傷で予選リーグを突破しているのだ。ならばそれ相応の実力者だと思い直し、ロック=イートの対戦相手は気を引き締め直すこととする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...