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第9章:この手で掴むモノ
第3話:3試合目開始
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ロック=イートが自分から視線を外し、あるモノを見ているので、ヨン=ジューロもそちらに視線を向ける。自分が向ける視線の先には黄色い横断幕に黒くて太い字で『一発入魂』と書かれていた。そのため、ヨン=ジューロはついププッと噴き出してしまう。
「あれって、可愛い娘さんを一発で孕ませてこいって意味ですかいな?」
この一言がロック=イートの心に火を着けたのは間違いなかった。自分の仕事仲間が作ってくれたであろう横断幕にケチをつけられたと感じ、非常にイラついてしまうロック=イートであった。しかも午前も午前という時間帯に下ネタをかまされたことにロック=イートは不快感を顔に滲ませることとなる。しかしながらヨン=ジューロは飄々とした雰囲気を崩さず
「まあ、気持ちはわかるんやで。なんでもあんたさん、パトロンの娘さんの騎士なんやろ? どっちなんや? あそこにいる女性たちのどちらがあんたさんのコレなんや?」
ヨン=ジューロはそう言うと、籠手を装着した右手を器用に動かす。拳を握り込んだ状態で親指を人差し指と中指の間から無理やり突き出すような形を成す。ロック=イートとしては、それが何を指すのかはわからなかったが、ヨン=ジューロが何を言わんとしているかだけはわかる。要は眼の前の男はリリー=フルールを辱めているという事実をだ。
「おいっ。それが何を指しているのかは、はっきりとわからないが、俺だけでなくリリーお嬢様まで言及しているってのはどういうことだ?」
「あちゃあ。わい、間違えてもうたんやで。こっちや、こっち。訂正させてもらうんやで?」
ヨン=ジューロはそう言うと、今度は握り拳の状態から、小指だけを立てて見せる。そして、リリーちゃん言うんか~。わいもあんなベッピンさんと一発入魂したいんやでっ! とほざく。ロック=イートは心に決める。試合開始と同時にヘラヘラと笑うあの顔面に右の拳を思いっ切り叩きつけてやろうと。
ヨン=ジューロが友好的ムード? を醸し出すのに対して、敵対心が剥き出しになっているロック=イートである。そんな彼らを試合管理人のひとりである弓神:ダルシゥム=カーメンがはあああ……と深いため息をつく。そして、さっさと試合を開始させてしまおうと思い
「ええ……。第3回戦・第1試合を始めるでごわす。お互い、相手を殺さぬようには注意するのでごわすよ? では、開始の銅鑼を鳴らすでごわすっ!」
弓神:ダルシゥム=カーメンがそう言うと、観客席のとある場所に設置された銅鑼を試合管理人のひとりが先端を白い布で覆われた棒でジャンジャンジャーンッ! と3回大きく叩く。それを合図として、ロック=イートが素早く動く。左足で石畳を蹴り、右足をドンッ! と力強く踏み出す。そして、折りたたんでいた右腕を伸ばそうとする。
「ッ!?」
必殺のロケット・パンチを開幕早々、ヨン=ジューロの顔面に叩きこもうとしていたロック=イートであったが、それは叶わなかった。それよりもだ。ロック=イートはいきなり自分の視界が黄色く染まったことに眼を白黒とさせてしまう。
銅鑼が鳴らされたと同時に円形闘技場の外から内へ向かって突風が吹き荒れたのだ。その風に乗せられて、横断幕が吹き飛ばされた。そしてあろうことか、それはロック=イートの身を包み込んでしまったのだ。前後不覚となってしまったロック=イートは慌てて、自分の身体に巻き付く黄色い横断幕を剥がす。今、この状況下でヨン=ジューロに攻撃されてはたまったものではないからだ。
「くっそっ!!」
ロック=イートは自分の身に巻き付いてくる横断幕をなんとか剥ぎ取ることに成功する。しかし、彼がそれよりも気になったのは、この絶好の機会にヨン=ジューロが自分に対して、攻撃してこなかったことである。ロック=イートは彼のその選択に苦々しい気持ちになってしまう。
「ほら、言うたやろ? わいには幸運の半兎半人がついているって。わいも攻撃をしたかったんやけど、それで決着となったら、お客さんが白けてまうからなあ?」
「この野郎っ!」
ロック=イートは頭に血が昇ってしまう。確かにフェアな闘いという観点から言わせてもらえば、ヨン=ジューロは紳士的振る舞いをしたと言っても過言ではない。だが、先ほどまで自分を散々に挑発しておきながら、それで絶好の機会を自ら逃すこの男に対して、腹立たしいことこの上ない。ロック=イートは横断幕がその身から離れて、どこかに飛んでいくや否や、ヨン=ジューロとの距離をまたもや一気に詰める。
そして、続けざまにワンツーと左右のパンチを繰り出すのであった。しかし、ヨン=ジューロにその眼にも止まらぬパンチはかすりもしなかったのである。ヨン=ジューロはひょいひょいと左右に頭を揺らし、ロック=イートと距離を空けずに回避しきったのである。こればかりはロック=イートも両目を大きく剥く他無かった。
手を用いて拳の軌道を逸らすのであれば、まだ理解できる。しかし、ヨン=ジューロは頭を左右に揺らすことで回避したのだ。これがどれほどの高等技術を要するかは、拳を主に用いて戦うロック=イートだからこそ、わかることであった。
(こいつっ!? 俺のワンツーをキレイにかわしただと!?)
ロック=イートはたまらず、ヨン=ジューロから距離を空けるしか選択肢は無かったと言えよう。続けてワンツーを叩きこむことも出来たのであるが、ヨン=ジューロにそれが当たるイメージがまるで沸かなかったのである。ロック=イートはこの時点になり、自分の対戦相手が相当な手練れであることを認識するに至る。
「ありゃりゃ? わいの予想だと続けてワンツーを繰り返してくると思っていたんやけど、退くんかいなっ! あんたさん、出来ますなあ!?」
ヨン=ジューロはロック=イートをそう評価すると、やっと自分の武器を彼に披露することとなる。腰の周りに結わえていた鎖を解き、その武器の全貌を明らかとする。それは『鎖鎌』と呼ばれるシロモノであった。左手側には金属製の棒の先に鋭利な鎌が付いており、もう一方には分銅が取り付けられている。ヨン=ジューロはアイヤー! という叫び声と共に、右手に持つ分銅付きの鎖を振り回し始めるのであった。
そして、グルングルンと下から上へと10回転ほどさせると、下手に分銅をロック=イートに向かって投げつけてくる。それをロック=イートは左半身にぶつかる寸前で回避する。そして、すかさず左手でその分銅付きの鎖を掴もうとしたのだが、彼の左手は宙を虚しく掻くのみに終わるのであった……。
「あれって、可愛い娘さんを一発で孕ませてこいって意味ですかいな?」
この一言がロック=イートの心に火を着けたのは間違いなかった。自分の仕事仲間が作ってくれたであろう横断幕にケチをつけられたと感じ、非常にイラついてしまうロック=イートであった。しかも午前も午前という時間帯に下ネタをかまされたことにロック=イートは不快感を顔に滲ませることとなる。しかしながらヨン=ジューロは飄々とした雰囲気を崩さず
「まあ、気持ちはわかるんやで。なんでもあんたさん、パトロンの娘さんの騎士なんやろ? どっちなんや? あそこにいる女性たちのどちらがあんたさんのコレなんや?」
ヨン=ジューロはそう言うと、籠手を装着した右手を器用に動かす。拳を握り込んだ状態で親指を人差し指と中指の間から無理やり突き出すような形を成す。ロック=イートとしては、それが何を指すのかはわからなかったが、ヨン=ジューロが何を言わんとしているかだけはわかる。要は眼の前の男はリリー=フルールを辱めているという事実をだ。
「おいっ。それが何を指しているのかは、はっきりとわからないが、俺だけでなくリリーお嬢様まで言及しているってのはどういうことだ?」
「あちゃあ。わい、間違えてもうたんやで。こっちや、こっち。訂正させてもらうんやで?」
ヨン=ジューロはそう言うと、今度は握り拳の状態から、小指だけを立てて見せる。そして、リリーちゃん言うんか~。わいもあんなベッピンさんと一発入魂したいんやでっ! とほざく。ロック=イートは心に決める。試合開始と同時にヘラヘラと笑うあの顔面に右の拳を思いっ切り叩きつけてやろうと。
ヨン=ジューロが友好的ムード? を醸し出すのに対して、敵対心が剥き出しになっているロック=イートである。そんな彼らを試合管理人のひとりである弓神:ダルシゥム=カーメンがはあああ……と深いため息をつく。そして、さっさと試合を開始させてしまおうと思い
「ええ……。第3回戦・第1試合を始めるでごわす。お互い、相手を殺さぬようには注意するのでごわすよ? では、開始の銅鑼を鳴らすでごわすっ!」
弓神:ダルシゥム=カーメンがそう言うと、観客席のとある場所に設置された銅鑼を試合管理人のひとりが先端を白い布で覆われた棒でジャンジャンジャーンッ! と3回大きく叩く。それを合図として、ロック=イートが素早く動く。左足で石畳を蹴り、右足をドンッ! と力強く踏み出す。そして、折りたたんでいた右腕を伸ばそうとする。
「ッ!?」
必殺のロケット・パンチを開幕早々、ヨン=ジューロの顔面に叩きこもうとしていたロック=イートであったが、それは叶わなかった。それよりもだ。ロック=イートはいきなり自分の視界が黄色く染まったことに眼を白黒とさせてしまう。
銅鑼が鳴らされたと同時に円形闘技場の外から内へ向かって突風が吹き荒れたのだ。その風に乗せられて、横断幕が吹き飛ばされた。そしてあろうことか、それはロック=イートの身を包み込んでしまったのだ。前後不覚となってしまったロック=イートは慌てて、自分の身体に巻き付く黄色い横断幕を剥がす。今、この状況下でヨン=ジューロに攻撃されてはたまったものではないからだ。
「くっそっ!!」
ロック=イートは自分の身に巻き付いてくる横断幕をなんとか剥ぎ取ることに成功する。しかし、彼がそれよりも気になったのは、この絶好の機会にヨン=ジューロが自分に対して、攻撃してこなかったことである。ロック=イートは彼のその選択に苦々しい気持ちになってしまう。
「ほら、言うたやろ? わいには幸運の半兎半人がついているって。わいも攻撃をしたかったんやけど、それで決着となったら、お客さんが白けてまうからなあ?」
「この野郎っ!」
ロック=イートは頭に血が昇ってしまう。確かにフェアな闘いという観点から言わせてもらえば、ヨン=ジューロは紳士的振る舞いをしたと言っても過言ではない。だが、先ほどまで自分を散々に挑発しておきながら、それで絶好の機会を自ら逃すこの男に対して、腹立たしいことこの上ない。ロック=イートは横断幕がその身から離れて、どこかに飛んでいくや否や、ヨン=ジューロとの距離をまたもや一気に詰める。
そして、続けざまにワンツーと左右のパンチを繰り出すのであった。しかし、ヨン=ジューロにその眼にも止まらぬパンチはかすりもしなかったのである。ヨン=ジューロはひょいひょいと左右に頭を揺らし、ロック=イートと距離を空けずに回避しきったのである。こればかりはロック=イートも両目を大きく剥く他無かった。
手を用いて拳の軌道を逸らすのであれば、まだ理解できる。しかし、ヨン=ジューロは頭を左右に揺らすことで回避したのだ。これがどれほどの高等技術を要するかは、拳を主に用いて戦うロック=イートだからこそ、わかることであった。
(こいつっ!? 俺のワンツーをキレイにかわしただと!?)
ロック=イートはたまらず、ヨン=ジューロから距離を空けるしか選択肢は無かったと言えよう。続けてワンツーを叩きこむことも出来たのであるが、ヨン=ジューロにそれが当たるイメージがまるで沸かなかったのである。ロック=イートはこの時点になり、自分の対戦相手が相当な手練れであることを認識するに至る。
「ありゃりゃ? わいの予想だと続けてワンツーを繰り返してくると思っていたんやけど、退くんかいなっ! あんたさん、出来ますなあ!?」
ヨン=ジューロはロック=イートをそう評価すると、やっと自分の武器を彼に披露することとなる。腰の周りに結わえていた鎖を解き、その武器の全貌を明らかとする。それは『鎖鎌』と呼ばれるシロモノであった。左手側には金属製の棒の先に鋭利な鎌が付いており、もう一方には分銅が取り付けられている。ヨン=ジューロはアイヤー! という叫び声と共に、右手に持つ分銅付きの鎖を振り回し始めるのであった。
そして、グルングルンと下から上へと10回転ほどさせると、下手に分銅をロック=イートに向かって投げつけてくる。それをロック=イートは左半身にぶつかる寸前で回避する。そして、すかさず左手でその分銅付きの鎖を掴もうとしたのだが、彼の左手は宙を虚しく掻くのみに終わるのであった……。
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