拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
91 / 122
第9章:この手で掴むモノ

第10話:神槍の謎の言葉

しおりを挟む
 ロック=イートは控室で激励を受けた後、試合管理人にそろそろ試合が始まるがゆえに、試合場へと出向けと言われる。ロック=イートはリリー=フルールたちにコクリと頷き、控室の扉を開けて、試合場に続く通路をゆっくりと歩きだす。

 ロック=イートはフッフッ! と短く呼吸を続け、自分の心拍数が上がり過ぎないように調整する。いつもそうだが、この光がまともに当たらぬ試合場までの狭い通路は不安感を大きくさせる。ロック=イートはかけがえのない夢を持っているが、それでもこのジメジメとした通路の雰囲気はそれを無駄だと主張してきているような気がしてならない。

(落ち着け、俺……。何度もこの通路を歩いているだろ……。今更、戻れぬ道だってことは承知してるだろっ!)

 ロック=イートは通路の真ん中で一度、足を止める。そこで大きく深呼吸をしだす。急に立ち止まったロック=イートに対して、後ろをついてきていたリリー=フルール、ヨーコ=タマモ、セイ=レ・カンコーは頭にハテナマークをつけてしまう。ロック=イートが今まで、この通路で足を止めたことがなかったからだ。

 ロック=イートは深呼吸を三度おこなった後、パンパンッ! と両手で頬を叩き、よしっ! とまるで自分で自分を励ますかのような声を出す。そうするロック=イートにリリー=フルールたちは、彼が何故に足を止めたのかが分かった気がしたのである。

「ロック。安心してくださいまし? 神槍と呼ばれても、わたくしたちと同じニンゲンなのですわ」

「そうですぜっ! リリーお嬢様のおっしゃる通り、ロックさん同様、ブリトニー=ノーガゥだって、きっと緊張しているに違いませんぜっ!」

「そうじゃそうじゃ。何といっても準決勝だからのう。ここまでロック=イートが勝ち進めたのはそれ相応の実力の持ち主ということじゃ。ブリトニー=ノーガゥだって、戦々恐々せんせんきょうきょうとしているはずじゃぞっ!」

 彼女らの励ましの声を聞き、ロック=イートは苦笑してしまう。言われてみれば、神槍と呼ばれていても、母の胎内から産まれ出たことは変わりない。どのような人生を歩んできたかの違い等はあっても、大元は同じニンゲンなのだ。今、自分が不安感に押しつぶされそうになっているのと同様に、彼もまた言い知れぬ何かに圧迫感を感じている可能性がある。

「ありがとう。リリー様、セイさん、タマモさん。俺は俺が出来る限りのことを出し尽くしてくるよ」

 ロック=イートは足に力を入れ直し、通路を再び歩き出す。一歩踏み出す度に、通路に流れ込んでくる観客たちの声が大きくなってくる。そして、ロック=イートが通路から完全に出て、試合場の芝生が広がる場所へ足を踏み入れると同時にわれんばかりの歓声がロック=イートの耳に飛び込んでくる。

「うひゃあ。こりゃあ雷でも落ちたかのような大歓声ですぜ。あっしは何だか感動で涙がこぼれてきそうなんですぜ」

「あほか、セイ。泣くのはロック=イートが神槍:ブリトニー=ノーガゥに勝った時にせぬか。今から涙を溢れさせてたら、本番前に涙が枯れ果ててしまうのじゃ」

 ヨーコ=タマモがセイ=レ・カンコーにそう言うが、開会式でロック=イートが散々に観衆たちから罵声を浴びていたというのに、今では快く迎え入れられていることに、彼女もまたジーンと目頭が熱くなってきてしまう。ヨーコ=タマモは涙が眼尻から零れ落ちそうになるのを着物の裾で拭うことで防ぐ。

「ロック。わたくしから何も言うことはありませんわ。ただ、ロックの勝利を信じていますわ」

 リリー=フルールがバンテージが巻かれたロック=イートの両手を自分の両手で優しく包み込み、そう言うのであった。ロック=イートはコクリと彼女に頷き、彼女の額に軽く接吻せっぷんをする

「ああ、わかった。リリー様。俺が『世界最強の生物』へと駆け上がっていくその過程をつぶさに見ていてくれ……」

 ロック=イートは彼女たちに背中を見せる形で、試合場の石畳の上へと躍り出る。ロック=イートは先に石畳の上に毅然と立つ神槍:ブリトニー=ノーガゥを真っ直ぐに見る。彼は全身を白金プラチナ色を下地に翠玉エメラルドのプレートで装飾された全身鎧フルプレート・メイルを着込み、背中には翠玉エメラルド色の外套マントを羽織っている。そして左脇に孔雀の尾羽が取り付けられた兜を抱え込み、その姿でうやうやしくロック=イートに礼をする。

「やあ。お久しぶりと言っていいのかな? 『人類最強計画の申し子』くん。ここまで勝ち進むのはある程度は予想していましたよ?」

 ロック=イートは神槍:ブリトニー=ノーガゥの発言により、頭にハテナマークを浮かべてしまう。そもそもとして、彼に『お久しぶり』と言われるいわれがわからないのだ。そして続けて言われた『人類最強計画の申し子』という言葉にもピンとくるものが無い。彼が何を言わんとしているのか、ロック=イートにはまったくもってわからない。

 そんな首を傾げるロック=イートに対して、神槍:ブリトニー=ノーガゥはやれやれとばかりに頭を左右に振ってみせる。その所作はまるでロック=イートが何も知らぬ愚か者だと言わんとしていたのだ。神槍:ブリトニー=ノーガゥに対して、待ったをかけた人物が居た。それはこの試合の審判をおこなう剣聖:プッチィ=ブッディであった。彼は試合がおこなわれる石畳の外でブリトニー=ノーガゥに要らぬことを言うなッス! と注意しはじめたのだ。

「『人類最強計画』の話をこんな場所ですること自体がご法度なんッス! いくらアンゴルモア四天王と言えども、アンゴルモアっちから御叱りを受けるッスよっ!」

「あれ? そうでしたっけ? いやはや、齢48ともなると記憶が曖昧になってしまっていますね。というわけでついでにロックくんに忠告しておくと、実はロックくんの生まれ故郷が魔物モンスターの襲撃にあったのは、主アンゴルモア大王が関わっています」

 ロック=イートは神槍:ブリトニー=ノーガゥの言葉により、眼を白黒とさせてしまう。何故に自分の生まれ故郷であるウッドランドにまで魔物モンスターの群れが侵攻してきたのかは、誰にもわからないことであった。しかし、眼の前のきらびやかな全身鎧フルプレート・メイルを着こむ男は、偶然、それが起きたのではないと主張してくるのだ。

「キミは……というよりかは、キミの一族はとある実験に力を貸していたのですよ。そして、その実験の成果がロック=イートくん。キミだということです。今、この場にキミがいるのは主アンゴルモア大王のお導きあってこそなのですよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...