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第2章:失って得るモノ
第4話:紅玉眼の蒼き竜
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紅玉眼の蒼き竜は自分の顔めがけて飛んでくる漆黒の円盤に対して、さもうっとおしそうに蝿でも叩き落とすように右足を振り上げて、それを叩き落とそうとする。だが、円盤はするりと紅玉眼の蒼き竜の右足をすり抜けて、向かって左側に大きく逸れていく。それを見た紅玉眼の蒼き竜は、ふんっとひとつ鼻息を漏らす。
だが、左側に逸れていった円盤がいきなり右側へと軌道を変えたことにより、紅玉眼の蒼き竜は紅い左眼を大きく見開くことになる。完全に虚を突かれたことにより、紅玉眼の蒼き竜は対応が遅れ、眉間を左斜め下から鱗を削られることとなる。
紅玉眼の蒼き竜はグギャアアア!! という怪物のような大声をあげながら眉間を前の両足で抑えることとなる。そして、巨体を左右に振りながら、ズドオオオンという重低音を奏でながら、右横へと倒れていく。
「おお……。やりおる。さて、この隙に桃源郷に再び結界を張らせてもらうのじゃ」
妖艶な雰囲気を醸し出す女性は背中で七色に光る翼の光量を増やしていく。彼女を中心として、七色の半球が広がっていく。ゆっくりとであるが積雪を押しのけ、それは強固な結界となる。のっそりと起き上がった紅玉眼の蒼き竜が前足でその七色の結界をひっかくがバチッ! という弾かれる音を奏でれるだけで、その結界をどうにか出来ないでいた。
「ふんっ……。アプサラスどもヨ……。我がこれから支配する国で好き勝手に商売できると思うナ。さっさとこの国から出ていくが良イ」
紅玉眼の蒼き竜は捨て台詞を吐くと、背中の真っ青で大きな翼を広げ、バッサバッサと羽ばたかせる。そして、高さ20ミャートルもある巨体を宙に浮かせて、その場から去っていく。それを苦々しい表情で見送った女性はベッ! と地面に盛大に唾を吐く。その後、去っていく紅玉眼の蒼き竜に対して、未だに左腕を突き出している男に対して、よくぞ隙を作ってくれたのじゃと褒め称える。
だが、レオナルト=ヴィッダーは女性にそう言われたというのに、彼女の方へ振り向きもせず、飛び去っていく紅玉眼の蒼き竜に左腕を真っ直ぐに突き出している。女性はこいつは何をしているのじゃ? と訝しむが、次の瞬間、当たりを覆っていた残雪と氷が溶けだし、さらにそれらは光の粒子へと変換される。起きた現象はそれだけでは無かった。その光の粒子が次々とレオナルト=ヴィッダーの左腕に装着している紅い波模様が走る黒い手甲に吸い込まれていく。
「俺から逃げられると思うなっ!!」
レオナルト=ヴィッダーが大きく開いた左手の前方10センチュミャートル地点に光り輝く太矢が出来上がる。レオナルト=ヴィッダーは一度、左腕を引き絞り、押し出すかのように、その光り輝く太矢を前方へと押し出す。勢いよく押し出された光の太矢は七色の翼を持つ女性が生み出した結界に大穴を開けて、飛び去って行く紅玉眼の蒼き竜の背中へとすっ飛んでいく。
「何イイイ!?」
紅玉眼の蒼き竜は背中から迫りくるエネルギー体に驚くこととなる。レオナルト=ヴィッダーが放った太矢は、七色の翼を持つ女性が生み出した結界とぶつかりあった際に、形状を変化させる。矢の形から潰れた球体へと変化したことにより、貫通力を失っていた。そのため、紅玉眼の蒼き竜の背中のど真ん中に直撃したというのに、彼奴の体勢を崩すだけであった。
紅玉眼の蒼き竜はギリッと歯を噛みしめる。今から戻って、球体を飛ばしてきた相手をかみ殺してやろうとさえ思うが、結界に空いた穴はすぐに塞がり、ますます紅玉眼の蒼き竜は苦々しい表情に変わるのみであった。
(次に会った時は容赦しないゾ……。我には今、やらねばならぬことがあるゆえニ……)
紅玉眼の蒼き竜は崩れた体勢を整え直し、再び、宙を舞い、北西の方角へと飛び去って行く。その姿を見続けていた七色の羽根を持つ女性はホッと安堵の息を漏らした後、パッコーーーン! と勢いよく、下駄でレオナルト=ヴィッダーの後頭部をはたく。
「お主は何を要らぬことをしでかしておるのじゃっ! 奴がわざわざ去っていってくれているところにチャチャを入れる必要はないのじゃろうがっ!」
七色の羽根を持つ女性ががみがみとレオナルト=ヴィッダーに対して説教を飛ばす。しかしながら、レオナルト=ヴィッダーは下駄で叩かれた後頭部を両手で抑えつつ、膝から崩れ落ちるように地面へと沈んでいく。レオナルト=ヴィッダーの視界は段々と暗くなっていき、女性が自分に何かをわめいているのを認識してはいるが、耳までもが遠くなっていく。そして、ついにレオナルト=ヴィッダーは意識を失い、その場で動けなくなってしまうのであった……。
レオナルト=ヴィッダーが次に眼を覚ましたのは、ウィーダ国軍が設営した施設のひとつである救護所であった。レオナルト=ヴィッダーが所属している第十七部隊は壊滅的な損害を受けたということを、自分の世話をしてくれている看護兵から聞かされることとなる。レオナルト=ヴィッダーがベッドに横たわったまま周囲を見渡すと、救護所のベッドを占拠していたのは自分だけではなかった。第十七部隊・隊長であるモーリス=アンガーはもちろんとして、桃源郷の酒場でいっしょに酒を飲んでいたメンバーたちも、うぅ……という苦しそうな呻き声をあげながら、ベッドに伏せていた。
第十七部隊の面々は誰しもがひどい凍傷にかかっており、1000人中、すぐに動けそうだったのは十数人程度だということも、看護兵から聞かされる。
「しかし、なんだって戦場のど真ん中で凍傷にかかってんだ? あんたらの部隊は……。今年は暖冬だぞ。お前たちは毛布の1枚も被らずに偵察任務についてたのかね?」
看護兵にそう問われたが、レオナルト=ヴィッダーは眉間にシワを寄せることとなる。桃源郷:エデンの園を襲った紅玉眼の蒼き竜のことを誰もこの救護所で話をしていないのか? と訝しむ。あそこまで存在感たっぷりな紅い眼を持つ蒼き竜が自分たちを襲ったというのにだ。だが、レオナルト=ヴィッダーは失念している。アレをまともに見たのは第十七部隊において、自分のみであることを……。
だが、左側に逸れていった円盤がいきなり右側へと軌道を変えたことにより、紅玉眼の蒼き竜は紅い左眼を大きく見開くことになる。完全に虚を突かれたことにより、紅玉眼の蒼き竜は対応が遅れ、眉間を左斜め下から鱗を削られることとなる。
紅玉眼の蒼き竜はグギャアアア!! という怪物のような大声をあげながら眉間を前の両足で抑えることとなる。そして、巨体を左右に振りながら、ズドオオオンという重低音を奏でながら、右横へと倒れていく。
「おお……。やりおる。さて、この隙に桃源郷に再び結界を張らせてもらうのじゃ」
妖艶な雰囲気を醸し出す女性は背中で七色に光る翼の光量を増やしていく。彼女を中心として、七色の半球が広がっていく。ゆっくりとであるが積雪を押しのけ、それは強固な結界となる。のっそりと起き上がった紅玉眼の蒼き竜が前足でその七色の結界をひっかくがバチッ! という弾かれる音を奏でれるだけで、その結界をどうにか出来ないでいた。
「ふんっ……。アプサラスどもヨ……。我がこれから支配する国で好き勝手に商売できると思うナ。さっさとこの国から出ていくが良イ」
紅玉眼の蒼き竜は捨て台詞を吐くと、背中の真っ青で大きな翼を広げ、バッサバッサと羽ばたかせる。そして、高さ20ミャートルもある巨体を宙に浮かせて、その場から去っていく。それを苦々しい表情で見送った女性はベッ! と地面に盛大に唾を吐く。その後、去っていく紅玉眼の蒼き竜に対して、未だに左腕を突き出している男に対して、よくぞ隙を作ってくれたのじゃと褒め称える。
だが、レオナルト=ヴィッダーは女性にそう言われたというのに、彼女の方へ振り向きもせず、飛び去っていく紅玉眼の蒼き竜に左腕を真っ直ぐに突き出している。女性はこいつは何をしているのじゃ? と訝しむが、次の瞬間、当たりを覆っていた残雪と氷が溶けだし、さらにそれらは光の粒子へと変換される。起きた現象はそれだけでは無かった。その光の粒子が次々とレオナルト=ヴィッダーの左腕に装着している紅い波模様が走る黒い手甲に吸い込まれていく。
「俺から逃げられると思うなっ!!」
レオナルト=ヴィッダーが大きく開いた左手の前方10センチュミャートル地点に光り輝く太矢が出来上がる。レオナルト=ヴィッダーは一度、左腕を引き絞り、押し出すかのように、その光り輝く太矢を前方へと押し出す。勢いよく押し出された光の太矢は七色の翼を持つ女性が生み出した結界に大穴を開けて、飛び去って行く紅玉眼の蒼き竜の背中へとすっ飛んでいく。
「何イイイ!?」
紅玉眼の蒼き竜は背中から迫りくるエネルギー体に驚くこととなる。レオナルト=ヴィッダーが放った太矢は、七色の翼を持つ女性が生み出した結界とぶつかりあった際に、形状を変化させる。矢の形から潰れた球体へと変化したことにより、貫通力を失っていた。そのため、紅玉眼の蒼き竜の背中のど真ん中に直撃したというのに、彼奴の体勢を崩すだけであった。
紅玉眼の蒼き竜はギリッと歯を噛みしめる。今から戻って、球体を飛ばしてきた相手をかみ殺してやろうとさえ思うが、結界に空いた穴はすぐに塞がり、ますます紅玉眼の蒼き竜は苦々しい表情に変わるのみであった。
(次に会った時は容赦しないゾ……。我には今、やらねばならぬことがあるゆえニ……)
紅玉眼の蒼き竜は崩れた体勢を整え直し、再び、宙を舞い、北西の方角へと飛び去って行く。その姿を見続けていた七色の羽根を持つ女性はホッと安堵の息を漏らした後、パッコーーーン! と勢いよく、下駄でレオナルト=ヴィッダーの後頭部をはたく。
「お主は何を要らぬことをしでかしておるのじゃっ! 奴がわざわざ去っていってくれているところにチャチャを入れる必要はないのじゃろうがっ!」
七色の羽根を持つ女性ががみがみとレオナルト=ヴィッダーに対して説教を飛ばす。しかしながら、レオナルト=ヴィッダーは下駄で叩かれた後頭部を両手で抑えつつ、膝から崩れ落ちるように地面へと沈んでいく。レオナルト=ヴィッダーの視界は段々と暗くなっていき、女性が自分に何かをわめいているのを認識してはいるが、耳までもが遠くなっていく。そして、ついにレオナルト=ヴィッダーは意識を失い、その場で動けなくなってしまうのであった……。
レオナルト=ヴィッダーが次に眼を覚ましたのは、ウィーダ国軍が設営した施設のひとつである救護所であった。レオナルト=ヴィッダーが所属している第十七部隊は壊滅的な損害を受けたということを、自分の世話をしてくれている看護兵から聞かされることとなる。レオナルト=ヴィッダーがベッドに横たわったまま周囲を見渡すと、救護所のベッドを占拠していたのは自分だけではなかった。第十七部隊・隊長であるモーリス=アンガーはもちろんとして、桃源郷の酒場でいっしょに酒を飲んでいたメンバーたちも、うぅ……という苦しそうな呻き声をあげながら、ベッドに伏せていた。
第十七部隊の面々は誰しもがひどい凍傷にかかっており、1000人中、すぐに動けそうだったのは十数人程度だということも、看護兵から聞かされる。
「しかし、なんだって戦場のど真ん中で凍傷にかかってんだ? あんたらの部隊は……。今年は暖冬だぞ。お前たちは毛布の1枚も被らずに偵察任務についてたのかね?」
看護兵にそう問われたが、レオナルト=ヴィッダーは眉間にシワを寄せることとなる。桃源郷:エデンの園を襲った紅玉眼の蒼き竜のことを誰もこの救護所で話をしていないのか? と訝しむ。あそこまで存在感たっぷりな紅い眼を持つ蒼き竜が自分たちを襲ったというのにだ。だが、レオナルト=ヴィッダーは失念している。アレをまともに見たのは第十七部隊において、自分のみであることを……。
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