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第3章:石造りの楽園
第9話:アイリスからリリベルへ
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ダークエルフへと変貌したアイリス=クレープスは膝立ち状態からゆっくりと前方へと倒れ込む。その彼女をヒルデ=スヴァーンが優しく抱きしめ、まるで自分の子をあやすかのようによしよしと右手で彼女の紫金剛石の髪を撫でる。
「あなたはこれからリリベル=ユーリィとして生きるノヨ。アイリス=クレープスはしばらくお休み。決して、レオナルト=ヴィッダーに貴女がアイリス=クレープスと知られてはダメ。もし正体がバレれば、貴女は二度とアイリス=クレープスに戻れないわヨ」
ヒルデ=スヴァーンが恍惚とした表情でアイリス=クレープスであった者にそう告げる。アイリス=クレープスは閉じた左眼から一筋の涙を流す。そして、ゆっくりとまぶたを開き、いまだに青碧玉である両目に確かな意思を宿す。
「わたしはアイリス=クレープスじゃない。リリベル=ユーリィ。ヒルデ。あなたの過去を利用させてもらうわ」
「ええ、それで良いのヨ。利用できるものは何でも利用しなサイ。それがレオナルト=ヴィッダーであったとしても、貴女の願いを叶えるために利用すべきナノ」
「いいえ。ヒルデ。わたしはレオを利用する気はないわ。わたしはレオの盾。レオの剣になる」
ヒルデ=スヴァーンは今はリリベル=ユーリィとなった者を優しく抱きしめたまま、少しばかり嘆息する。だが、彼女の意思を曲げることは出来ないであろうと察し、彼女から身を少しだけ離し、最後にもう一度だけ、懐かしさを称えた表情で彼女の紫金剛石の髪を撫でる。その後、リリベル=ユーリィの両手を自分の両手で包み込み、彼女と共に立ち上がる。
「さあ、行ってらっしゃイ。リリベル=ユーリィ。アイリス=クレープスとしての力は半減してしまいますが、その代わりに『虚無と痛みが産み落とした正義』が貴女をあるべき場所へと導きますワ」
ヒルデ=スヴァーンは黒い波模様が走る紅い手甲を左手でギュッと強めに握る。リリベル=ユーリィは彼女の左手から何かしらの意思を感じたが、その手を振りほどき、居室の出入り口を見る。すると、計ったようにその出入り口に設置してある鉄製の扉が開き、そこをくぐってアイリス=クレープスの兄が白衣の者たち数名を引き連れて、部屋へと侵入してくる。
アイリス=クレープスの兄はわざとらしく両腕を身体の左右へと広げる所作をしながら、アイリス=クレープスへ近づいていく。リリベル=ユーリィへと成り代わったアイリス=クレープスはそんな兄をまっすぐに見据えたままであった。
「お兄様。これが全てお兄様の策略だったとしても、わたしはわたしです」
「ええ、アイリスくん。いえ、今はリリベル=ユーリィくんでしたね。キミはキミのしたいことをしなさい。ヒルデくん。あとは頼みましたよ。先生はリリベルくんをレオナルトくんの下へと届けてきますので」
フィルフェン=クレープスは白衣の者たちに合図する。白衣の者たちはその手に持つ武具をリリベル=ユーリィに装着していく。彼女の右の腕先には黒い波模様が走る紅い手甲に合わせるように、リリベル=ユーリィの身体は紅を基調とした防具を装着させていく。そして、最後に黄金色の鞘に収めれられた細剣をフィルフェン=クレープスがリリベル=ユーリィに手渡す。
「その細剣の名は『薔薇乙女の細剣』と呼ばれている品です。振るう者の心情に沿い、その刃の色を変えると言われています。キミが何色の未来を描くかは、キミ次第だということです」
兄が何を言わんとしているのか、あまり理解できていないアイリス=クレープスであった。しかし、渡された細剣からは、明らかに異常な魔力を感じる彼女であった。それゆえに、この細剣も兄が何かしらの目的があって、自分に手渡したきたということだけを理解する。しかし、そんなことはどうでも良かった。自分の身を護る武具があれば、それを用いて、レオの盾と剣になれれば良いのだ。
「お兄様。わたしはこの細剣を用いて、お兄様が思い描く未来さえも突き穿いてみせればいいわけね?」
「ハハッ! さすがは我が妹ですよ。あなたはあなたを貫き通しなさい。先生の手のひらの上で踊るだけではダメなのですから……」
軽快に笑ってみせるフィルフェン=クレープスであったが、その表情にはどこか憂いを含んでいた。アイリス=クレープスはそれを見逃さなかったが、それでも青碧玉の両目に確かな意思を宿して、兄をまっすぐと見つめ続けた。フィルフェン=クレープスは妹にコクリと頷く。外は寒いだろうということで、白衣の者たちに指示を出し、上に羽織る白いフード付きロングコートを彼女に与える。アイリス=クレープスはそれを受け取ると、紅を基調とした部分鎧の上からロングコートを羽織る。そして、フードを眼深く被り、周囲からは自分が誰であるかがわからないようにする。
何かしらの秘密をもったダークエルフの騎士の誕生であった。それに対して、彼女の兄であるフィルフェン=クレープスがわざとらしく片膝をつき、左手を差し出す。差し出された左手にリリベル=ユーリィが右手を軽く乗せる。儀式めいたそれが終わった後、フィルフェン=クレープスは再び立ち上がり、彼女の右手を左手で握ったまま、彼女を東の塔から脱出させる。それをヒルデ=スヴァーンが見送ることになるが、彼女の顔だけでなく身体全体がスライムのように一度潰れた後、再びヒトの姿へと変化する。
「いってらっしゃいまシ、ワタクシのリリベル=ユーリィ……。再び、貴女がこの城に踏み入れるまでの時間稼ぎはワタクシが担いまショウ」
スライム状からヒトの姿に戻ったヒルデ=スヴァーンは、アイリス=クレープスへと変貌していた。ローブの上からでも大きさがわかるほどの豊満な胸は削ぎ落され、アイリス=クレープスのモノと同様にまで小さくなっていた。そして、安産型だった尻も小ぶりに変化し、まさに天使のお尻といっても良いものになってしまっている。その裸体を隠すようにヒルデ=スヴァーンは先ほどまで羽織っていたローブを着直す。しかしながら、ヒルデ=スヴァーンはもともと伸長が170センチュミャートルほどあったために、155センチュミャートルほどのアイリス=クレープスの身体ではぶかぶかであった。
しかしながら、その恰好のままで天幕付きのベッドへと転がり込み、ベッドの感触を確かめるようにゴロゴロと左右に身体を揺らす。そして、何を思ったか、ローブの前をはだき、アイリス=クレープスである自分の身体を舐めるように見る。そして、小ぶりの胸のひとつを右手で持ち上げて
「随分、寂しいおっぱいになってしまいましたワ。でも、レオナルト=ヴィッダーはこの身体が好きなのネ……。少しばかり、この身体で楽しませてもらいましょうかしラ?」
ヒルデ=スヴァーンはそう言うと、銀色となってしまった下の毛奥深くに左手の人差し指と中指、さらには薬指までをも忍び込ませていく……。
「あなたはこれからリリベル=ユーリィとして生きるノヨ。アイリス=クレープスはしばらくお休み。決して、レオナルト=ヴィッダーに貴女がアイリス=クレープスと知られてはダメ。もし正体がバレれば、貴女は二度とアイリス=クレープスに戻れないわヨ」
ヒルデ=スヴァーンが恍惚とした表情でアイリス=クレープスであった者にそう告げる。アイリス=クレープスは閉じた左眼から一筋の涙を流す。そして、ゆっくりとまぶたを開き、いまだに青碧玉である両目に確かな意思を宿す。
「わたしはアイリス=クレープスじゃない。リリベル=ユーリィ。ヒルデ。あなたの過去を利用させてもらうわ」
「ええ、それで良いのヨ。利用できるものは何でも利用しなサイ。それがレオナルト=ヴィッダーであったとしても、貴女の願いを叶えるために利用すべきナノ」
「いいえ。ヒルデ。わたしはレオを利用する気はないわ。わたしはレオの盾。レオの剣になる」
ヒルデ=スヴァーンは今はリリベル=ユーリィとなった者を優しく抱きしめたまま、少しばかり嘆息する。だが、彼女の意思を曲げることは出来ないであろうと察し、彼女から身を少しだけ離し、最後にもう一度だけ、懐かしさを称えた表情で彼女の紫金剛石の髪を撫でる。その後、リリベル=ユーリィの両手を自分の両手で包み込み、彼女と共に立ち上がる。
「さあ、行ってらっしゃイ。リリベル=ユーリィ。アイリス=クレープスとしての力は半減してしまいますが、その代わりに『虚無と痛みが産み落とした正義』が貴女をあるべき場所へと導きますワ」
ヒルデ=スヴァーンは黒い波模様が走る紅い手甲を左手でギュッと強めに握る。リリベル=ユーリィは彼女の左手から何かしらの意思を感じたが、その手を振りほどき、居室の出入り口を見る。すると、計ったようにその出入り口に設置してある鉄製の扉が開き、そこをくぐってアイリス=クレープスの兄が白衣の者たち数名を引き連れて、部屋へと侵入してくる。
アイリス=クレープスの兄はわざとらしく両腕を身体の左右へと広げる所作をしながら、アイリス=クレープスへ近づいていく。リリベル=ユーリィへと成り代わったアイリス=クレープスはそんな兄をまっすぐに見据えたままであった。
「お兄様。これが全てお兄様の策略だったとしても、わたしはわたしです」
「ええ、アイリスくん。いえ、今はリリベル=ユーリィくんでしたね。キミはキミのしたいことをしなさい。ヒルデくん。あとは頼みましたよ。先生はリリベルくんをレオナルトくんの下へと届けてきますので」
フィルフェン=クレープスは白衣の者たちに合図する。白衣の者たちはその手に持つ武具をリリベル=ユーリィに装着していく。彼女の右の腕先には黒い波模様が走る紅い手甲に合わせるように、リリベル=ユーリィの身体は紅を基調とした防具を装着させていく。そして、最後に黄金色の鞘に収めれられた細剣をフィルフェン=クレープスがリリベル=ユーリィに手渡す。
「その細剣の名は『薔薇乙女の細剣』と呼ばれている品です。振るう者の心情に沿い、その刃の色を変えると言われています。キミが何色の未来を描くかは、キミ次第だということです」
兄が何を言わんとしているのか、あまり理解できていないアイリス=クレープスであった。しかし、渡された細剣からは、明らかに異常な魔力を感じる彼女であった。それゆえに、この細剣も兄が何かしらの目的があって、自分に手渡したきたということだけを理解する。しかし、そんなことはどうでも良かった。自分の身を護る武具があれば、それを用いて、レオの盾と剣になれれば良いのだ。
「お兄様。わたしはこの細剣を用いて、お兄様が思い描く未来さえも突き穿いてみせればいいわけね?」
「ハハッ! さすがは我が妹ですよ。あなたはあなたを貫き通しなさい。先生の手のひらの上で踊るだけではダメなのですから……」
軽快に笑ってみせるフィルフェン=クレープスであったが、その表情にはどこか憂いを含んでいた。アイリス=クレープスはそれを見逃さなかったが、それでも青碧玉の両目に確かな意思を宿して、兄をまっすぐと見つめ続けた。フィルフェン=クレープスは妹にコクリと頷く。外は寒いだろうということで、白衣の者たちに指示を出し、上に羽織る白いフード付きロングコートを彼女に与える。アイリス=クレープスはそれを受け取ると、紅を基調とした部分鎧の上からロングコートを羽織る。そして、フードを眼深く被り、周囲からは自分が誰であるかがわからないようにする。
何かしらの秘密をもったダークエルフの騎士の誕生であった。それに対して、彼女の兄であるフィルフェン=クレープスがわざとらしく片膝をつき、左手を差し出す。差し出された左手にリリベル=ユーリィが右手を軽く乗せる。儀式めいたそれが終わった後、フィルフェン=クレープスは再び立ち上がり、彼女の右手を左手で握ったまま、彼女を東の塔から脱出させる。それをヒルデ=スヴァーンが見送ることになるが、彼女の顔だけでなく身体全体がスライムのように一度潰れた後、再びヒトの姿へと変化する。
「いってらっしゃいまシ、ワタクシのリリベル=ユーリィ……。再び、貴女がこの城に踏み入れるまでの時間稼ぎはワタクシが担いまショウ」
スライム状からヒトの姿に戻ったヒルデ=スヴァーンは、アイリス=クレープスへと変貌していた。ローブの上からでも大きさがわかるほどの豊満な胸は削ぎ落され、アイリス=クレープスのモノと同様にまで小さくなっていた。そして、安産型だった尻も小ぶりに変化し、まさに天使のお尻といっても良いものになってしまっている。その裸体を隠すようにヒルデ=スヴァーンは先ほどまで羽織っていたローブを着直す。しかしながら、ヒルデ=スヴァーンはもともと伸長が170センチュミャートルほどあったために、155センチュミャートルほどのアイリス=クレープスの身体ではぶかぶかであった。
しかしながら、その恰好のままで天幕付きのベッドへと転がり込み、ベッドの感触を確かめるようにゴロゴロと左右に身体を揺らす。そして、何を思ったか、ローブの前をはだき、アイリス=クレープスである自分の身体を舐めるように見る。そして、小ぶりの胸のひとつを右手で持ち上げて
「随分、寂しいおっぱいになってしまいましたワ。でも、レオナルト=ヴィッダーはこの身体が好きなのネ……。少しばかり、この身体で楽しませてもらいましょうかしラ?」
ヒルデ=スヴァーンはそう言うと、銀色となってしまった下の毛奥深くに左手の人差し指と中指、さらには薬指までをも忍び込ませていく……。
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