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第4章:ヴァルハラへの道
第2話:フィルフェンからの支援金
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いったい、クルス=サンティーモが淹れてくれたお茶は何回こした茶葉を使っているのかと聞きたくなったが、それは同時にレオまで責めることになるので、リリベル=ユーリィはツッコミを入れれなくなってしまう。そこまで窮状に陥っていることをなんとなく察したリリベル=ユーリィは隣に座る兄:フィルフェン=クレープスに小さな声で耳打ちする。
「おお、このフィルフェン=クレープスというほどの男が失念しておりました。クルスくん。これは旅の資金のためと思い、こちらが用意させてもらったモノです。どうぞ、これで美味しいモノでも食べてください」
フィルフェン=クレープスはそう言うと、自分の後ろで立っている白衣の者から何かが入った袋を受け取り、さらに薄汚れたテーブルの上にガチャリという音を奏でながら、その袋を置いてみせる。そして、ささ、どうぞ中身を確認してくださいとクルス=サンティーモに促す。クルス=サンティーモは恐る恐るその袋の中身を確認する。そして袋の中が黄金色の光を発していることで、クルス=サンティーモは腰を抜かして、木製の床に尻餅をついてしまうのであった。
「こ、こんなに受け取って良いんですゥ!? 毎日、お魚を食べることが出来ちゃいますゥ!!」
「ハハッ! お魚どころか、肉三昧ですよお!! それも燻製ではありませんっ。生の肉を手に入れて、すぐに焼肉を楽しめちゃうレベルですっ!!」
クルス=サンティーモは木製の床に尻餅したままに、はわわ……と慌てふためいてみせる。リリベル=ユーリィは何をふたりで芝居がかったことをしているのだろう? と不思議に思ってしまう。そう考えた矢先に、はっ! と気づきを得てしまうリリベル=ユーリィであった。そして彼女はなるべく言葉を選らんで
「わたしもお肉を食べたいと思っていたのです。どうせなら、これから懇談会といきませんか? わたしの国ではご飯を一緒に食べなければ、家族にはなれないという言葉がありますので」
「は、はいっ! では、さっそく宿屋の主人に美味しいモノを準備してもらえるように伝えてきますのですゥ!」
クルス=サンティーモはそう言うと、すぐさま立ち上がり、金貨が詰まった袋を大事そうに抱えて、皆がいる部屋から飛び出していく。フィルフェン=クレープスは微笑ましくクルス=サンティーモが部屋から退出するのを見送る。クルス=サンティーモが居なくなった後、リリベル=ユーリィに向かってにっこりと微笑み
「リリベルくん。貴女が騎士らしい振る舞いを出来るようなので、先生は安心しました。レオナルトくんたちをおおっぴらに援助できなかったのですよ、先生は。レオナルトくんは2年間の兵役で稼いだお金で今まで食いつないできたみたいです」
兄の説明にリリベル=ユーリィは頭の中にクエスチョンマークを浮かべてしまった。薄給の一兵卒でもあの2年間を生き残った兵士たちであれば、国王からそれなりの恩賞を手に入れているはずだと。なのに、茶葉を何回使ったのだ? と疑ってしまいそうなほどの薄い紅茶で喉を潤わせなければならないほどの窮状に陥るのかがリリベル=ユーリィにはわからない。
「あの、えっと……。国王からの嫌がらせで恩賞はもらえなかったのかしら? 聞くところによれば、お給金とは別に恩賞も出たはずだと聞き及んでいますが……」
「チュッチュッチュ。リリベルのお嬢さん。このアホはその金のほとんどを国王が提示した5つの秘宝集めのために消費してしまったのでッチュウ。本来なら国が動いても、手に入れれるかどうか不明な物を一個人がどうにかしようとすれば、あっというまに資金が尽きて当たり前なのでッチュウ」
コッシロー=ネヅはレオナルト=ヴィッダーのアホぶりをこれでもかと話してみせる。レオナルト=ヴィッダーは兵役を終えた後、国王が城のバルコニーから兵士や国民たちに向けて、5つの秘宝の内、ふたつを手に入れてこいと言い放った。そして、このアホは桜色の乳首をさらけ出したアイリス姫に脳みそを焼かれてしまったのだと。
レオナルト=ヴィッダーは三日三晩、昏睡しつつもアイリス姫の名前を呼び続け、さらに眼を覚ますや否や、ベッドから飛び出した。そして、相方の豚ニンゲンと見間違えるようなデーブ=オクボーンと共に、5つの秘宝の情報を手に入れようとオールドヨーク中をさまよい続けた。しかし、とある事件をきっかけにデーブ=オクボーンはレオナルト=ヴィッダーの前から姿を消した。それでもレオナルト=ヴィッダーは諦めずにクルス=サンティーモと共に5つの秘宝を求め続けたのだ。
そして、友のデーブ=オクボーンが姿を消し、資金が尽きかけたと同時にレオナルト=ヴィッダーはある有力な情報を手に入れたのだ。国王が提示した5つの秘宝のひとつである『天使の嬉し涙』の情報をだ。そこまでコッシロー=ネヅが説明すると、部屋のドアが開かれ、蒼髪オカッパの女の子が、これまた恰幅の良い女性と共に現れる。恰幅の良い女性は両腕に抱えきれるギリギリの量の料理を手に持っていた。
「さあ、たんとお食べ。あたしゃは金払いの良い客には、ケチケチしない性質なんでね?」
「女将さんは現金なのですゥ。いつも、お金が無いなら宿から出ていってもらわないと困るんだけどねえ? って愚痴ってばかりだったのですゥ」
「そらそうよ。レオンが病人じゃなかったら、とっくに宿から放り出してるわ。フィルフェン様が数年前に通した法案が正式に議会を通り、国に発布されてなかったら、どれだけ楽だったと思うんだい?」
宿屋の女将はやれやれといった表情を浮かべながら、薄汚れたテーブルの上に料理が盛られた皿をどんどん置いていく。今や、手狭なテーブルからその料理の数々が落ちてしまいそうになっていた。そして、自分の仕事が終わったとばかりに右手をひらひらと振りながら、部屋から退出していこうとする。その後ろ姿にペコリと礼儀正しくクルス=サンティーモはお辞儀をするのであった。
「なんだか嫌な方ですね。宿屋選びを間違えたのでは?」
リリベル=ユーリィが不遜な態度であった宿屋の女将に対して、文句を言ってみせる。だが、そんな女将をかばうようにクルス=サンティーモはブルブルと強く頭を左右に振り、リリベル=ユーリィの言葉を否定する。
「そんなこと無いんですゥ! 法で病人を宿屋から追い出せないことにはなりましたけど、それを律儀に守っているところは少ないと聞いているんですゥ。女将さんは口は悪いですけど、レオン様を決して宿からは追い出さなかったのですゥ!」
リリベル=ユーリィには何故にここまでクルス=サンティーモが女将の肩を持つのか、あまり理解できていなかった。国を統治するために法があり、それを護るのは国民の義務であるからだ。それが為されないのであれば、なんのための法だという話になる。しかし、わかっていないのはもちろん、リリベル=ユーリィの方である。
「先生がこの法で失敗したなと思ったことは、この法を破った者に対しての罰則が生ぬるいということなんですよね……」
「おお、このフィルフェン=クレープスというほどの男が失念しておりました。クルスくん。これは旅の資金のためと思い、こちらが用意させてもらったモノです。どうぞ、これで美味しいモノでも食べてください」
フィルフェン=クレープスはそう言うと、自分の後ろで立っている白衣の者から何かが入った袋を受け取り、さらに薄汚れたテーブルの上にガチャリという音を奏でながら、その袋を置いてみせる。そして、ささ、どうぞ中身を確認してくださいとクルス=サンティーモに促す。クルス=サンティーモは恐る恐るその袋の中身を確認する。そして袋の中が黄金色の光を発していることで、クルス=サンティーモは腰を抜かして、木製の床に尻餅をついてしまうのであった。
「こ、こんなに受け取って良いんですゥ!? 毎日、お魚を食べることが出来ちゃいますゥ!!」
「ハハッ! お魚どころか、肉三昧ですよお!! それも燻製ではありませんっ。生の肉を手に入れて、すぐに焼肉を楽しめちゃうレベルですっ!!」
クルス=サンティーモは木製の床に尻餅したままに、はわわ……と慌てふためいてみせる。リリベル=ユーリィは何をふたりで芝居がかったことをしているのだろう? と不思議に思ってしまう。そう考えた矢先に、はっ! と気づきを得てしまうリリベル=ユーリィであった。そして彼女はなるべく言葉を選らんで
「わたしもお肉を食べたいと思っていたのです。どうせなら、これから懇談会といきませんか? わたしの国ではご飯を一緒に食べなければ、家族にはなれないという言葉がありますので」
「は、はいっ! では、さっそく宿屋の主人に美味しいモノを準備してもらえるように伝えてきますのですゥ!」
クルス=サンティーモはそう言うと、すぐさま立ち上がり、金貨が詰まった袋を大事そうに抱えて、皆がいる部屋から飛び出していく。フィルフェン=クレープスは微笑ましくクルス=サンティーモが部屋から退出するのを見送る。クルス=サンティーモが居なくなった後、リリベル=ユーリィに向かってにっこりと微笑み
「リリベルくん。貴女が騎士らしい振る舞いを出来るようなので、先生は安心しました。レオナルトくんたちをおおっぴらに援助できなかったのですよ、先生は。レオナルトくんは2年間の兵役で稼いだお金で今まで食いつないできたみたいです」
兄の説明にリリベル=ユーリィは頭の中にクエスチョンマークを浮かべてしまった。薄給の一兵卒でもあの2年間を生き残った兵士たちであれば、国王からそれなりの恩賞を手に入れているはずだと。なのに、茶葉を何回使ったのだ? と疑ってしまいそうなほどの薄い紅茶で喉を潤わせなければならないほどの窮状に陥るのかがリリベル=ユーリィにはわからない。
「あの、えっと……。国王からの嫌がらせで恩賞はもらえなかったのかしら? 聞くところによれば、お給金とは別に恩賞も出たはずだと聞き及んでいますが……」
「チュッチュッチュ。リリベルのお嬢さん。このアホはその金のほとんどを国王が提示した5つの秘宝集めのために消費してしまったのでッチュウ。本来なら国が動いても、手に入れれるかどうか不明な物を一個人がどうにかしようとすれば、あっというまに資金が尽きて当たり前なのでッチュウ」
コッシロー=ネヅはレオナルト=ヴィッダーのアホぶりをこれでもかと話してみせる。レオナルト=ヴィッダーは兵役を終えた後、国王が城のバルコニーから兵士や国民たちに向けて、5つの秘宝の内、ふたつを手に入れてこいと言い放った。そして、このアホは桜色の乳首をさらけ出したアイリス姫に脳みそを焼かれてしまったのだと。
レオナルト=ヴィッダーは三日三晩、昏睡しつつもアイリス姫の名前を呼び続け、さらに眼を覚ますや否や、ベッドから飛び出した。そして、相方の豚ニンゲンと見間違えるようなデーブ=オクボーンと共に、5つの秘宝の情報を手に入れようとオールドヨーク中をさまよい続けた。しかし、とある事件をきっかけにデーブ=オクボーンはレオナルト=ヴィッダーの前から姿を消した。それでもレオナルト=ヴィッダーは諦めずにクルス=サンティーモと共に5つの秘宝を求め続けたのだ。
そして、友のデーブ=オクボーンが姿を消し、資金が尽きかけたと同時にレオナルト=ヴィッダーはある有力な情報を手に入れたのだ。国王が提示した5つの秘宝のひとつである『天使の嬉し涙』の情報をだ。そこまでコッシロー=ネヅが説明すると、部屋のドアが開かれ、蒼髪オカッパの女の子が、これまた恰幅の良い女性と共に現れる。恰幅の良い女性は両腕に抱えきれるギリギリの量の料理を手に持っていた。
「さあ、たんとお食べ。あたしゃは金払いの良い客には、ケチケチしない性質なんでね?」
「女将さんは現金なのですゥ。いつも、お金が無いなら宿から出ていってもらわないと困るんだけどねえ? って愚痴ってばかりだったのですゥ」
「そらそうよ。レオンが病人じゃなかったら、とっくに宿から放り出してるわ。フィルフェン様が数年前に通した法案が正式に議会を通り、国に発布されてなかったら、どれだけ楽だったと思うんだい?」
宿屋の女将はやれやれといった表情を浮かべながら、薄汚れたテーブルの上に料理が盛られた皿をどんどん置いていく。今や、手狭なテーブルからその料理の数々が落ちてしまいそうになっていた。そして、自分の仕事が終わったとばかりに右手をひらひらと振りながら、部屋から退出していこうとする。その後ろ姿にペコリと礼儀正しくクルス=サンティーモはお辞儀をするのであった。
「なんだか嫌な方ですね。宿屋選びを間違えたのでは?」
リリベル=ユーリィが不遜な態度であった宿屋の女将に対して、文句を言ってみせる。だが、そんな女将をかばうようにクルス=サンティーモはブルブルと強く頭を左右に振り、リリベル=ユーリィの言葉を否定する。
「そんなこと無いんですゥ! 法で病人を宿屋から追い出せないことにはなりましたけど、それを律儀に守っているところは少ないと聞いているんですゥ。女将さんは口は悪いですけど、レオン様を決して宿からは追い出さなかったのですゥ!」
リリベル=ユーリィには何故にここまでクルス=サンティーモが女将の肩を持つのか、あまり理解できていなかった。国を統治するために法があり、それを護るのは国民の義務であるからだ。それが為されないのであれば、なんのための法だという話になる。しかし、わかっていないのはもちろん、リリベル=ユーリィの方である。
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