【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

文字の大きさ
41 / 261
第4章:ヴァルハラへの道

第10話:淫婦の天使の笑顔

しおりを挟む
「なあ、クルス。ここは本当にヴァルハラなのか? 俺が酒場の噂話で聞いているのとは、かなり印象が違うんだが?」

 レオナルト=ヴィッダーは石で出来た建物が立ち並ぶ大通りをクルス=サンティーモと共に歩いていた。その大通りには屋台がところ狭しと並んでいることはいる。しかし、その屋台には売り物と呼べるモノは並べられておらず、さらには店員も居ない。普段は賑わいを見せているはずであろうが、今日は神が決められた安息日なのか? と思ってしまうほどに、大通りは閑散としていた。

 そして、今、眼に見えている状況を『あの時』の酒保しゅほと脳内で比べてみても、自分の眼に映る光景は寂しいという一言に尽きる。あの時の酒保しゅほは、そこら中で肌が透けてしまうほどに生地が薄いキャミソールによって、申し訳ない程度に身体を隠している淫婦の天使で溢れかえっていた。それと比べれば、今、足を踏み入れているヴァルハラは殺風景すぎた。

 ヴァルハラとは各地で姿を見せる桃源郷の本拠地だという認識がレオナルト=ヴィッダーにあった。しかし、その認識が根底から覆られそうな気分になってしまう。

(四方八方から、俺を襲ってくるであろう淫婦の天使をことごとく、俺のおちんこさんで撫で斬りする予定だったんだが……)

 レオナルト=ヴィッダーは当てが外れてしまったことに、がっくりと肩を落としてしまうことになる。別に酒池肉林の地において、王者になろうとしたわけではなかったが、ここまでヴァルハラが閑散としていると、自分は招かれざる客なのでは? という疑問を抱かずにはおれなかった。

 しかしながら、クルス=サンティーモは気落ちするレオナルト=ヴィッダーとは対照的に足取りが軽やかであった。いくらさびれた故郷であったとしても、そんなに故郷に帰ってきたのが嬉しいのだろうか? とさらに疑問を抱くレオナルト=ヴィッダーであった。彼自身、田舎と呼ばれるような場所からウィーダ王国の首都:オールドヨークにやってきて、そして、衛兵としての訓練を積み、ようやくいっぱしの正規衛兵隊に所属できるようになったのだ。しかし、そうだからといって、年末年始や盆に故郷に帰った時は、相変わらずさびれてるなあ……という感想しか抱くことはなかった。

 今のクルス=サンティーモのように、放っておいたら、この場で小躍りしだすほどにはウキウキな心は帰郷時には持てなかった。軽やかな足取りのクルス=サンティーモに誘われるままにレオナルト=ヴィッダーはヴァルハラ一番の大通りを抜けて、さらに坂道を登っていく。その坂道の先には大屋敷がどっかりと居座っていた。

「でけえ……。大海を越えた東方をさらに超えた先にあると言わている木と紙で出来た屋敷って、こんなにでかいのか!?」

「個人で所有するモノとなると、これくらいの大きさの屋敷は稀らしいですゥ。これと比べたら、どこの住まいもウサギ小屋になっちゃうので、これが特別だと思っておいたほうが良いのですゥ」

 クルス=サンティーモの説明に、はぁ……という言葉しか出てこないレオナルト=ヴィッダーであった。木製のコテージとはまったくもって造りが違っており、まさにオリエンタルの神秘そのものが自分の眼の前に存在した。個人の趣味で、こういう造りの個人宅を所有している貴族はいることはいる。だが、眼の前の屋敷は規模がまるで違っていた。クルス=サンティーモの言う通り、貴族が所有している木と紙の邸宅はウサギ小屋と称して差し支えないモノであった。

 ヴァルハラのあるじが住むという大屋敷は平屋建てというのに、横方向で言えば、丘の上をまるまる占拠していたのである。奥行まではこの場からは確認できないが、とてつもなく向こう側に広がっていることは簡単に想像できた。そして、これまた漆喰と木で出来た門をくぐると、細かでありながら一定の大きさを持つ石が敷き詰められているではないか。レオナルト=ヴィッダーはここを土足で踏んでいって良いのか、よくわからなくなってしまう。

 しかしながら、クルス=サンティーモは気にした様子もなく、大屋敷の敷地をどんどん進んでいく。レオナルト=ヴィッダーはおっかなびっくりといった感じで歩を進めていくのに、あまりにもクルス=サンティーモは彼と比べて対照的すぎた。

「あ、ここからは土足厳禁なのです。ブーツをここで脱いでくださいね?」

 クルス=サンティーモは大屋敷の入り口までやってくると、レオナルト=ヴィッダーにブーツを脱ぐようにと促す。レオナルト=ヴィッダーは言われるままにボロボロの革製のブーツを脱ぐ。クルス=サンティーモはレオナルト=ヴィッダーが履いていたブーツを向きを揃えて並べ直した後、靴下姿で屋敷の奥へと進んでいく。レオナルト=ヴィッダーは黙って、彼の後を追う他無かった。

 そして、いくつかの部屋の横にある狭い木製の床の通路を通る。その通路から素晴らしいという言葉しか出てこない中庭を見ることが出来た。しかしながら、そんな感嘆の声で胸中が埋め尽くされているレオナルト=ヴィッダーを置いていきそうになるクルス=サンティーモである。クルス=サンティーモは遅れ気味のレオナルト=ヴィッダーに振り向き、何をそんなに感心した顔つきになっているのかがわからないという表情になってしまっている。

 クルス=サンティーモにとっては、2年前までは、よく見る風景であったために、レオナルト=ヴィッダーの心境を上手く掴むことが出来ないでいたのだ。

「そんなに珍しいんですゥ?」

「あ、ああ……。生まれて初めて見る……」

 レオナルト=ヴィッダーは心が感動で打ち震えてしまう。大き目の石やちょっとした池が中庭に点在しているのだが、その石や池の配置が絶妙であり、レオナルト=ヴィッダーが想像もしたこともない世界観がそこに確かに存在したのである。左右に奇妙に折れ曲がった針葉樹も、この中庭を彩っている。こんな奇妙でありがなら、心を底のほうから持っていかれそうになる風景に痛く感動してしまうレオナルト=ヴィッダーであった。

 そんな中庭を眼で楽しんだ後、レオナルト=ヴィッダーはクルス=サンティーモに誘われて、ようやくヴァルハラのあるじの居室へとたどり着く。そこでは、さも眠そうにひじ掛けに上半身を預けつつ、畳と呼ばれる草製の床に足を放り投げている人物が居た。

「おや? クルスかえ? いつの間に戻ってきたのじゃ?」

「ウルト叔母様、クルス=サンティーモが今の御主人様を連れて、遊びに来たのですゥ」

「ほう……。それはそれは、遠路はるばるようこそなのじゃ。今は稼ぎ時じゃて、屋敷の者ならず、ヴァルハラ全体が休業しておる。クルスよ。帰ってきたばかりで済まぬが、其方の御主人様への御奉仕はクルス、お前がするのじゃぞ」

 クルス=サンティーモは、元気にハイッ! と返事をするや否や、どこかに消えていく。そして、10数分後に戻ってくると、クルス=サンティーモは乳首が透けてみえる薄手のキャミソールに着替えてきたのだ。そして、立ちすくむレオナルト=ヴィッダーの前で正座状態から深々と頭を下げる。そして、彼が顔を持ち上げた時、彼の顔は淫婦の天使そのものとなっていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...