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第7章:暴力に屈する正義
第8話:緋色の大鳥
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レオナルト=ヴィッダーは唇に鋭い痛みを感じたと同時に、呻き声をあげてしまう。両手で頭を抱えつつ、うががが! と上半身を前後左右に振りまくる。まるで悪霊に取りつかれでもしているかのようで、それを振り払おうとしている仕草にも似ていた。
「くっそ!! 俺の意識を返せっ!! 俺はアイリスと添い遂げるまで、お前に身体全てを譲り渡す気はねえんだっ!!」
レオナルト=ヴィッダーはもがき続けた。身体のそこら中から紫色の瘴気を溢れ出させつつ、自分を完全に支配しようとしてくる素戔嗚に対して必死に抗う。自分の身体全体を縛り上げる鋼鉄の鎖を引きちぎるかのような所作を繰り返し、レオナルト=ヴィッダーは両腕を左右に振り上げる。
バッキーン!! という金属が弾け飛ぶ音と共に、レオナルト=ヴィッダーの身体から瘴気が弾け飛ぶこととなる。レオナルト=ヴィッダーはハアハア……と荒い呼吸を繰り返し、ついにはぐったりとリリベル=ユーリィの身体に覆いかぶさっていく。リリベル=ユーリィは慌てふためき、レオの身体にどこか異常がないのか? と思い、レオの上着を剥ぎ取る。
するとだ……。レオナルト=ヴィッダーの剥き出しとなった上半身を見て、リリベル=ユーリィは愕然となってしまう。レオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちが硬質化していたのだ。皮膚が渇いて硬くなっているのではない。比喩表現無しにレオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちが鉱物化していたのだ。銅、銀、金、紫水晶など、色とりどりの鉱物がレオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちにまばらに存在していた。
リリベル=ユーリィはここにきて、ようやくレオナルト=ヴィッダーが何故、身体を上手く動かせないのかの理由を知ることとなる。レオナルト=ヴィッダーの身体は生身と鉱物が入れ混じる身体となってしまっていることをだ。
次にリリベル=ユーリィはレオナルト=ヴィッダーを地面に横たわせ、彼のズボンを完全に引きずり降ろしてみる。リリベル=ユーリィの予想通り、レオナルト=ヴィッダーの左足の5割近くを鉱物が占めていたのだ。リリベル=ユーリィは本当の意味で泣きそうになっていた。レオナルト=ヴィッダーは素戔嗚から呪力を引き出す代償として、身体を物理的に違う何かに変換させられていたのだ。
(レオ……。こんな身体になってまで、わたしと結婚しようとしてたんだ……。レオ、ごめんね……)
息も絶え絶えといったレオナルト=ヴィッダーの胸に自分の顔を押し付けて、リリベル=ユーリィは青碧玉の眼から涙を流し続けた。レオの本当の状態も知らずに、リリベル=ユーリィはレオに愛してほしいと願ったのだ。そんな愚かな女が自分だと言われている気がしてたまらない彼女であった。
だが悲嘆にくれるリリベル=ユーリィに対して神は『慈悲』を与える。
レオナルト=ヴィッダーとリリベル=ユーリィはふんわりとした暖かな空気に触れることとなる。リリベル=ユーリィは何が起きたのだろうと、涙を流しながら辺りを見回すこととなる。そして、その温かさは前後左右からではなく、上から降ってくることに気づく。
「アレは何? 炎の塊? いえ? 鳥?」
リリベル=ユーリィは遥か頭上を旋回しながら飛んでいる緋の色をした大きな鳥を視認する。その大鳥はバッサバッサと大きな翼をゆったりと羽ばたかせていた。そして、羽ばたかせている翼から1枚のこれまた見事に緋色の羽根が、ひらひらとリリベル=ユーリィの下へと舞い降りてくる。
その羽根は不思議な事にリリベル=ユーリィの正面に落ちてきて、リリベル=ユーリィはその大きな緋色の羽根を抱え込むこととなる。するとどうだ。自分の身体の奥底から熱が沸き出し、その熱はリリベル=ユーリィの右腕に集中していく。次の瞬間、紅い光が弾け飛ぶ。リリベル=ユーリィが次にまぶたを開いた時、リリベル=ユーリィの右の腕先には黒い波模様が走る紅を基調とした手甲が装着されていた。
「え? ええ!? なんで奇稲田姫が今ここに!?」
リリベル=ユーリィは不思議でしょうがなかった。この場に来る時、リリベル=ユーリィは紅を基調とした部分鎧の全てを脱いできていた。もちろん、悪い魔女と称する女性からもらった奇稲田姫もテントの中に置いてきた。だが、置いてきたはずの奇稲田姫が自分の右腕に装着されており、リリベル=ユーリィは戸惑いを隠せなくなってしまう。
そんなリリベル=ユーリィに対して、彼女の遥か頭上を舞う秘色の大鳥がクワァァァ! とひと鳴きしてみせる。その鳴き声がリリベル=ユーリィに天啓をもたらす。リリベル=ユーリィは何かを確信し、自分の右手でレオナルト=ヴィッダーの左腕を掴む。
そうすることで、リリベル=ユーリィの右腕に集中していた熱が奇稲田姫を介し、レオナルト=ヴィッダーが左腕に装着している素戔嗚に伝達するのであった。そして、その熱は素戔嗚内で留まることを知らずにレオナルト=ヴィッダーの身体中を駆け巡ることとなる。
「レオの生身の部分が増えて……いく。もしかしてあの大鳥が『緋喰い鳥』??」
リリベル=ユーリィはコッシロー=ネヅの言葉を思い出していた。緋喰い鳥はレオナルト=ヴィッダーの身体から呪いをいくばくかは取り除くことが出来るという話をだ。その証拠に自分の頭上遥か高くを舞う緋色の大鳥が落としてくれた緋色の羽根によって、レオナルト=ヴィッダーの身体が癒されている。
「よかった。レオの乱れた呼吸がだんだん落ち着いてきてる……」
リリベル=ユーリィは心底、ホッと安堵する。レオは苦しさの余りに自分の身体を両手の爪で掻きむしっていたが、その行為もやめて、今はかなり落ち着いた感じで地面に横たわっている。そして、彼は柔和な顔つきで、リリベル=ユーリィのほほに右手を伸ばしてくる。リリベル=ユーリィは彼の右手を両手で包み込み、自分の左手に添える。しかし、その瞬間であった。緋色の羽根による癒しはレオナルト=ヴィッダーにだけ与えられたのではない。
「ぶぎぃぃぃ!!」
リリベル=ユーリィは今夜一番の豚声を上の口と下の尻穴から発することとなる。緋色の羽根がもたらした癒しの神力はリリベル=ユーリィが傷つけられた腸壁を急速に癒したのだ。それにより、未だにリリベル=ユーリィの腸内に残されていたレオナルト=ヴィッダーのスペル魔が強制的に排除されるように身体が生理的反応を示したのである。
「み、見ないで、レオ……。わたし、恥辱で死んじゃぶぎぃぃぃ!!」
「くっそ!! 俺の意識を返せっ!! 俺はアイリスと添い遂げるまで、お前に身体全てを譲り渡す気はねえんだっ!!」
レオナルト=ヴィッダーはもがき続けた。身体のそこら中から紫色の瘴気を溢れ出させつつ、自分を完全に支配しようとしてくる素戔嗚に対して必死に抗う。自分の身体全体を縛り上げる鋼鉄の鎖を引きちぎるかのような所作を繰り返し、レオナルト=ヴィッダーは両腕を左右に振り上げる。
バッキーン!! という金属が弾け飛ぶ音と共に、レオナルト=ヴィッダーの身体から瘴気が弾け飛ぶこととなる。レオナルト=ヴィッダーはハアハア……と荒い呼吸を繰り返し、ついにはぐったりとリリベル=ユーリィの身体に覆いかぶさっていく。リリベル=ユーリィは慌てふためき、レオの身体にどこか異常がないのか? と思い、レオの上着を剥ぎ取る。
するとだ……。レオナルト=ヴィッダーの剥き出しとなった上半身を見て、リリベル=ユーリィは愕然となってしまう。レオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちが硬質化していたのだ。皮膚が渇いて硬くなっているのではない。比喩表現無しにレオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちが鉱物化していたのだ。銅、銀、金、紫水晶など、色とりどりの鉱物がレオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちにまばらに存在していた。
リリベル=ユーリィはここにきて、ようやくレオナルト=ヴィッダーが何故、身体を上手く動かせないのかの理由を知ることとなる。レオナルト=ヴィッダーの身体は生身と鉱物が入れ混じる身体となってしまっていることをだ。
次にリリベル=ユーリィはレオナルト=ヴィッダーを地面に横たわせ、彼のズボンを完全に引きずり降ろしてみる。リリベル=ユーリィの予想通り、レオナルト=ヴィッダーの左足の5割近くを鉱物が占めていたのだ。リリベル=ユーリィは本当の意味で泣きそうになっていた。レオナルト=ヴィッダーは素戔嗚から呪力を引き出す代償として、身体を物理的に違う何かに変換させられていたのだ。
(レオ……。こんな身体になってまで、わたしと結婚しようとしてたんだ……。レオ、ごめんね……)
息も絶え絶えといったレオナルト=ヴィッダーの胸に自分の顔を押し付けて、リリベル=ユーリィは青碧玉の眼から涙を流し続けた。レオの本当の状態も知らずに、リリベル=ユーリィはレオに愛してほしいと願ったのだ。そんな愚かな女が自分だと言われている気がしてたまらない彼女であった。
だが悲嘆にくれるリリベル=ユーリィに対して神は『慈悲』を与える。
レオナルト=ヴィッダーとリリベル=ユーリィはふんわりとした暖かな空気に触れることとなる。リリベル=ユーリィは何が起きたのだろうと、涙を流しながら辺りを見回すこととなる。そして、その温かさは前後左右からではなく、上から降ってくることに気づく。
「アレは何? 炎の塊? いえ? 鳥?」
リリベル=ユーリィは遥か頭上を旋回しながら飛んでいる緋の色をした大きな鳥を視認する。その大鳥はバッサバッサと大きな翼をゆったりと羽ばたかせていた。そして、羽ばたかせている翼から1枚のこれまた見事に緋色の羽根が、ひらひらとリリベル=ユーリィの下へと舞い降りてくる。
その羽根は不思議な事にリリベル=ユーリィの正面に落ちてきて、リリベル=ユーリィはその大きな緋色の羽根を抱え込むこととなる。するとどうだ。自分の身体の奥底から熱が沸き出し、その熱はリリベル=ユーリィの右腕に集中していく。次の瞬間、紅い光が弾け飛ぶ。リリベル=ユーリィが次にまぶたを開いた時、リリベル=ユーリィの右の腕先には黒い波模様が走る紅を基調とした手甲が装着されていた。
「え? ええ!? なんで奇稲田姫が今ここに!?」
リリベル=ユーリィは不思議でしょうがなかった。この場に来る時、リリベル=ユーリィは紅を基調とした部分鎧の全てを脱いできていた。もちろん、悪い魔女と称する女性からもらった奇稲田姫もテントの中に置いてきた。だが、置いてきたはずの奇稲田姫が自分の右腕に装着されており、リリベル=ユーリィは戸惑いを隠せなくなってしまう。
そんなリリベル=ユーリィに対して、彼女の遥か頭上を舞う秘色の大鳥がクワァァァ! とひと鳴きしてみせる。その鳴き声がリリベル=ユーリィに天啓をもたらす。リリベル=ユーリィは何かを確信し、自分の右手でレオナルト=ヴィッダーの左腕を掴む。
そうすることで、リリベル=ユーリィの右腕に集中していた熱が奇稲田姫を介し、レオナルト=ヴィッダーが左腕に装着している素戔嗚に伝達するのであった。そして、その熱は素戔嗚内で留まることを知らずにレオナルト=ヴィッダーの身体中を駆け巡ることとなる。
「レオの生身の部分が増えて……いく。もしかしてあの大鳥が『緋喰い鳥』??」
リリベル=ユーリィはコッシロー=ネヅの言葉を思い出していた。緋喰い鳥はレオナルト=ヴィッダーの身体から呪いをいくばくかは取り除くことが出来るという話をだ。その証拠に自分の頭上遥か高くを舞う緋色の大鳥が落としてくれた緋色の羽根によって、レオナルト=ヴィッダーの身体が癒されている。
「よかった。レオの乱れた呼吸がだんだん落ち着いてきてる……」
リリベル=ユーリィは心底、ホッと安堵する。レオは苦しさの余りに自分の身体を両手の爪で掻きむしっていたが、その行為もやめて、今はかなり落ち着いた感じで地面に横たわっている。そして、彼は柔和な顔つきで、リリベル=ユーリィのほほに右手を伸ばしてくる。リリベル=ユーリィは彼の右手を両手で包み込み、自分の左手に添える。しかし、その瞬間であった。緋色の羽根による癒しはレオナルト=ヴィッダーにだけ与えられたのではない。
「ぶぎぃぃぃ!!」
リリベル=ユーリィは今夜一番の豚声を上の口と下の尻穴から発することとなる。緋色の羽根がもたらした癒しの神力はリリベル=ユーリィが傷つけられた腸壁を急速に癒したのだ。それにより、未だにリリベル=ユーリィの腸内に残されていたレオナルト=ヴィッダーのスペル魔が強制的に排除されるように身体が生理的反応を示したのである。
「み、見ないで、レオ……。わたし、恥辱で死んじゃぶぎぃぃぃ!!」
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