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第8章:地上の楽園
第10話:|薔薇騎士《ローズ・ナイト》
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緋喰い鳥は一切、手加減をする様子を見せなかった。リリベル=ユーリィがひとつ紅い竜巻を掻き斬る度に、両の翼から紅い竜巻を3個生み出す。リリベル=ユーリィはそれに飲み込まれてたまるものかと、薔薇乙女の細剣を懸命に振り回し続けた。鎧下の服はすでにボロボロで、赤い竜巻は彼女の褐色の柔肌に無数のひっかき傷を作り出す。
リリベル=ユーリィは全身が火傷したかのような錯覚に捕らわれる。紅い竜巻によって傷つけられた身体が熱を帯び、その熱が段々と脳を焼き始める。しかし、リリベル=ユーリィは頭の中を常に冷やし続けた。それだけでなく、熱操作の魔術により、紅を基調とした部分鎧も物理的に冷やす。リリベル=ユーリィが着こむ部分鎧の表面には霜が降り、白く変色しかけていた。
だが、鎧下の服がボロボロにされたために、冷却された部分鎧はリリベル=ユーリィの身体を凍傷で侵し始める。特に胸部部分のパーツとリリベル=ユーリィの乳首の先端がくっつきはじめる。リリベル=ユーリィは乳首を噛み千切られそうな感覚に襲われて、彼女は痛さのあまりに意識が飛びかけて片膝をつきそうになる。
ついに体勢を大きく崩したリリベル=ユーリィに向かって、紅い竜巻群は容赦なくリリベル=ユーリィを包囲しつつ、その包囲を狭めていく。リリベル=ユーリィはガリッと唇を歯で噛み、乳首に襲い掛かる痛みを唇を噛み切った痛みでごまかそうとした。しかし、それでも全身を蝕む熱と冷えがリリベル=ユーリィから体勢を整わせる力を奪うこととなる。
「リリベルっっっ!!」
彼女の一部始終を見ていたレオナルト=ヴィッダーは吼えた。今まさに赤い竜巻群に飲み込まれようとしていた彼女の姿を見せつけられ、レオナルト=ヴィッダーの心の中の何かが弾け飛ぶ。レオナルト=ヴィッダーは段々と萎んでいった黒い球体を再び膨らませる。先ほどまではせいぜい直径1ミャートル程度であったものが、一気に3倍へと膨れ上がる。レオナルト=ヴィッダーはそれをリリベル=ユーリィを包み込もうとしてた紅い竜巻群に向かって放った。
放たれた直径3ミャートルの黒い球体は赤い竜巻群を吹き飛ばしながら、リリベル=ユーリィの頭上まで一気にすっ飛んで行き、そこで一度、静止する。しかし、まるでそれ自体が何かしらの卵であったかのように、表面が割れ砕け、破片をまき散らし、さらにはその黒い球体を中心として、8匹の黒い大蛇が生まれたのであった。
リリベル=ユーリィは茫然とするしかなかった。黒い球体自体は直径50センチュミャートルまで萎んでしまっていた。しかし、その宙に浮かぶ黒い球体を中心として、8匹の黒い大蛇が四方八方へとその鋭い牙を剥き出しにしつつ、次々と紅い竜巻群を喰らっていく。この世のものとは思えない光景を間近で見せつけられたリリベル=ユーリィは心底、恐怖心を抱いてしまうこととなる。どうか願わくば、8匹の大蛇の牙が自分に向かってこないことだけを願う。
しかし、喰らう物が無くなった8匹の黒い大蛇の内、5匹が緋喰い鳥に纏わりつくが、残りの3匹が鎌首をもたげ、リリベル=ユーリィの方を向く。リリベル=ユーリィもまた、レオナルト=ヴィッダーが生み出した黒い大蛇の餌としか認識されていなかった……。リリベル=ユーリィは尻餅をつきながら、自分と眼を合わせてくる黒い大蛇から逃げようとした。しかし、腰が抜けており、手足をばたつかせても、身体は思うように動かない。
黒い大蛇3匹は紫色の舌をチロチロと口の外へと高速に出し入れをする。リリベル=ユーリィはこの黒い大蛇に食べられてしまうと思い、恐怖の余りに失禁してしまう。蛇に睨まれたカエルとは、まさに今のリリベル=ユーリィを象徴していた。しかし、そんな彼女であったが、右手はまだ薔薇乙女の細剣をしっかりと握りしめていた。それが彼女を黒い大蛇の魔の舌から救い出すこととなる。
黒い大蛇3匹が赤い竜巻に代わり、リリベル=ユーリィの周りをゆっくりと旋回しながら動く。そして、包囲が完了したとばかりにその長い胴でリリベル=ユーリィの身体を締め上げようとした。しかし、それと同時にリリベル=ユーリィが右手で握る薔薇乙女の細剣から大量のイバラが飛び出し、リリベル=ユーリィと黒い大蛇の間に割って入る。
黒い大蛇はリリベル=ユーリィをドーム状に覆い隠してしまったイバラによって、リリベル=ユーリィを絞め殺すことは出来なくなってしまう。紫色の舌をチョロチョロと高速に出し入れしつつ、リリベル=ユーリィから物理的に距離を取らざるをえなくなる。どうすれば、リリベル=ユーリィを包み込んでいる大量のイバラを排除できるのかと考える黒い大蛇たちであった。
しかしながら、数十秒後にはリリベル=ユーリィを護るべく、ドームを形成していたイバラ群がまるでツボミが開くかのように四方八方へと広がりを見せる。そして、イバラ群の中心部には、薔薇色を基調とした全身鎧を着込んだダークエルフの騎士が静かに立ち上がったのである。
そのダークエルフの薔薇騎士は、これまたイバラが巻き付いた細剣を右手に持っていた。そして、イバラの細剣を上下左右に振り回すや否や、彼女の周りで虎視眈々と彼女の命を狙っていた黒い大蛇は百の花弁に変えられてしまう。
ダークエルフの薔薇騎士は、大蛇の一匹を花弁に変えると、すぐさま、次の大蛇をイバラの細剣で串刺しにしてしまう。喉あたりを歪な形をした細剣で貫かれ、ピギャアアア!? という断末魔をその口から放つ他なかった黒い大蛇であった。
そして、最後の3匹目は、彼女から逃げようとするが、彼女の足元で花弁のように広がっていたイバラ群が罪人を捕らえる鎖の如くに蛇行しつつ、その黒い大蛇をがんじがらめにしてしまう。逃げられなくなった黒い大蛇はダークエルフの薔薇騎士の横薙ぎ一閃により、鎌首を宙に放り投げられてしまう。
身の危険が去ったことで、ダークエルフの薔薇騎士は片膝をつく。それと同時にイバラ群が彼女の右手に持つイバラの細剣に収束していく。全てのイバラ群がイバラの細剣に収納されるや否や、薔薇色の全身鎧は、オープンフルフェイスの兜ごと、通常の部分鎧へと姿を変える。その様はまるで薔薇の花弁が舞い落ちるかのようであった。
元の姿に戻ったリリベル=ユーリィはまるで今の今まで呼吸が出来ていなかったかのようにハアハアゼエゼエと荒い呼吸をしながら、その場で片膝つき続けるしかなかった。彼女は意識が遠のいていくのを必死に覚醒する方向へと持っていく。
(わたしは助かったの? でも、先ほどまで感じていた感覚は何? まるでヒトを超越したかのような絶対的存在感になっていた気がす……る)
リリベル=ユーリィは心の奥底から湧く疑問の答えを探しつつ、未だに黒い大蛇5匹を喰らいつくさんと身体を大きくくねらせている緋喰い鳥を見つめるのであった……。
リリベル=ユーリィは全身が火傷したかのような錯覚に捕らわれる。紅い竜巻によって傷つけられた身体が熱を帯び、その熱が段々と脳を焼き始める。しかし、リリベル=ユーリィは頭の中を常に冷やし続けた。それだけでなく、熱操作の魔術により、紅を基調とした部分鎧も物理的に冷やす。リリベル=ユーリィが着こむ部分鎧の表面には霜が降り、白く変色しかけていた。
だが、鎧下の服がボロボロにされたために、冷却された部分鎧はリリベル=ユーリィの身体を凍傷で侵し始める。特に胸部部分のパーツとリリベル=ユーリィの乳首の先端がくっつきはじめる。リリベル=ユーリィは乳首を噛み千切られそうな感覚に襲われて、彼女は痛さのあまりに意識が飛びかけて片膝をつきそうになる。
ついに体勢を大きく崩したリリベル=ユーリィに向かって、紅い竜巻群は容赦なくリリベル=ユーリィを包囲しつつ、その包囲を狭めていく。リリベル=ユーリィはガリッと唇を歯で噛み、乳首に襲い掛かる痛みを唇を噛み切った痛みでごまかそうとした。しかし、それでも全身を蝕む熱と冷えがリリベル=ユーリィから体勢を整わせる力を奪うこととなる。
「リリベルっっっ!!」
彼女の一部始終を見ていたレオナルト=ヴィッダーは吼えた。今まさに赤い竜巻群に飲み込まれようとしていた彼女の姿を見せつけられ、レオナルト=ヴィッダーの心の中の何かが弾け飛ぶ。レオナルト=ヴィッダーは段々と萎んでいった黒い球体を再び膨らませる。先ほどまではせいぜい直径1ミャートル程度であったものが、一気に3倍へと膨れ上がる。レオナルト=ヴィッダーはそれをリリベル=ユーリィを包み込もうとしてた紅い竜巻群に向かって放った。
放たれた直径3ミャートルの黒い球体は赤い竜巻群を吹き飛ばしながら、リリベル=ユーリィの頭上まで一気にすっ飛んで行き、そこで一度、静止する。しかし、まるでそれ自体が何かしらの卵であったかのように、表面が割れ砕け、破片をまき散らし、さらにはその黒い球体を中心として、8匹の黒い大蛇が生まれたのであった。
リリベル=ユーリィは茫然とするしかなかった。黒い球体自体は直径50センチュミャートルまで萎んでしまっていた。しかし、その宙に浮かぶ黒い球体を中心として、8匹の黒い大蛇が四方八方へとその鋭い牙を剥き出しにしつつ、次々と紅い竜巻群を喰らっていく。この世のものとは思えない光景を間近で見せつけられたリリベル=ユーリィは心底、恐怖心を抱いてしまうこととなる。どうか願わくば、8匹の大蛇の牙が自分に向かってこないことだけを願う。
しかし、喰らう物が無くなった8匹の黒い大蛇の内、5匹が緋喰い鳥に纏わりつくが、残りの3匹が鎌首をもたげ、リリベル=ユーリィの方を向く。リリベル=ユーリィもまた、レオナルト=ヴィッダーが生み出した黒い大蛇の餌としか認識されていなかった……。リリベル=ユーリィは尻餅をつきながら、自分と眼を合わせてくる黒い大蛇から逃げようとした。しかし、腰が抜けており、手足をばたつかせても、身体は思うように動かない。
黒い大蛇3匹は紫色の舌をチロチロと口の外へと高速に出し入れをする。リリベル=ユーリィはこの黒い大蛇に食べられてしまうと思い、恐怖の余りに失禁してしまう。蛇に睨まれたカエルとは、まさに今のリリベル=ユーリィを象徴していた。しかし、そんな彼女であったが、右手はまだ薔薇乙女の細剣をしっかりと握りしめていた。それが彼女を黒い大蛇の魔の舌から救い出すこととなる。
黒い大蛇3匹が赤い竜巻に代わり、リリベル=ユーリィの周りをゆっくりと旋回しながら動く。そして、包囲が完了したとばかりにその長い胴でリリベル=ユーリィの身体を締め上げようとした。しかし、それと同時にリリベル=ユーリィが右手で握る薔薇乙女の細剣から大量のイバラが飛び出し、リリベル=ユーリィと黒い大蛇の間に割って入る。
黒い大蛇はリリベル=ユーリィをドーム状に覆い隠してしまったイバラによって、リリベル=ユーリィを絞め殺すことは出来なくなってしまう。紫色の舌をチョロチョロと高速に出し入れしつつ、リリベル=ユーリィから物理的に距離を取らざるをえなくなる。どうすれば、リリベル=ユーリィを包み込んでいる大量のイバラを排除できるのかと考える黒い大蛇たちであった。
しかしながら、数十秒後にはリリベル=ユーリィを護るべく、ドームを形成していたイバラ群がまるでツボミが開くかのように四方八方へと広がりを見せる。そして、イバラ群の中心部には、薔薇色を基調とした全身鎧を着込んだダークエルフの騎士が静かに立ち上がったのである。
そのダークエルフの薔薇騎士は、これまたイバラが巻き付いた細剣を右手に持っていた。そして、イバラの細剣を上下左右に振り回すや否や、彼女の周りで虎視眈々と彼女の命を狙っていた黒い大蛇は百の花弁に変えられてしまう。
ダークエルフの薔薇騎士は、大蛇の一匹を花弁に変えると、すぐさま、次の大蛇をイバラの細剣で串刺しにしてしまう。喉あたりを歪な形をした細剣で貫かれ、ピギャアアア!? という断末魔をその口から放つ他なかった黒い大蛇であった。
そして、最後の3匹目は、彼女から逃げようとするが、彼女の足元で花弁のように広がっていたイバラ群が罪人を捕らえる鎖の如くに蛇行しつつ、その黒い大蛇をがんじがらめにしてしまう。逃げられなくなった黒い大蛇はダークエルフの薔薇騎士の横薙ぎ一閃により、鎌首を宙に放り投げられてしまう。
身の危険が去ったことで、ダークエルフの薔薇騎士は片膝をつく。それと同時にイバラ群が彼女の右手に持つイバラの細剣に収束していく。全てのイバラ群がイバラの細剣に収納されるや否や、薔薇色の全身鎧は、オープンフルフェイスの兜ごと、通常の部分鎧へと姿を変える。その様はまるで薔薇の花弁が舞い落ちるかのようであった。
元の姿に戻ったリリベル=ユーリィはまるで今の今まで呼吸が出来ていなかったかのようにハアハアゼエゼエと荒い呼吸をしながら、その場で片膝つき続けるしかなかった。彼女は意識が遠のいていくのを必死に覚醒する方向へと持っていく。
(わたしは助かったの? でも、先ほどまで感じていた感覚は何? まるでヒトを超越したかのような絶対的存在感になっていた気がす……る)
リリベル=ユーリィは心の奥底から湧く疑問の答えを探しつつ、未だに黒い大蛇5匹を喰らいつくさんと身体を大きくくねらせている緋喰い鳥を見つめるのであった……。
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