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第10章:災厄の兆し
第1話:モンドロールへの帰還
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レオナルト=ヴィッダーたちは2泊3日しか『地上の楽園』に滞在しなかった。結局、ウィーゼ王国の国王:ロータス=クレープスが求める『失われた朱鷺』の入手を諦めたことで、次の秘宝を手に入れるためにも、さっさと『地上の楽園』から退去してしまう。
野営地を解体し終えたレオナルト=ヴィッダーたちは材木を手漕ぎボートへ繋ぎ直し、エンダーラー・プライズ号に戻っていく。戦果を期待していたエンダーラー・プライズ号の乗組員たちは、がっくりと肩を落とすが、一番に悔しい想いをしているのはレオナルト=ヴィッダーたちだと考え、すぐに態度を改め、船の操作に戻っていく。
エンダーラー・プライズ号は帰路に着く。道中の航行の安全はエクレア=シューが担当しているため、大きな問題は起きなかった。エンダーラー・プライズ号は東から西へと進む。帆に受ける風を利用して進む船のため、季節風が時折、エンダーラー・プライズ号の行く手を阻む。しかしながら行きに1週間。帰りに1週間半かかった程度で済む。
大海原を西に進み続け、ようやく港町:モンドロールが水平線の向こうに見えてくると、エンダーラー・プライズ号の乗組員たちはホッと安堵の息を漏らすこととなる。
「ようやく、我らが故郷に戻ってこれたか……。ようし。あとは座礁しないようにするだけだ。最後の最後でへまをやらかさないようにしておけってんだっ!」
エンダーラー・プライズ号の船長であるスポークス=ミスドは最後まで気を抜かないようにと乗組員たちに激を飛ばす。なんせ、順調な航海が1週間以上も続くようなことはめったに起きない。山の天気同様、海の機嫌も女心のように荒れやすい。海皇の娘がそれを為してくれているわけだが、穏やか過ぎる海はエンダーラー・プライズ号の乗組員たちに気持ち悪ささえ抱かせてしまう。
しかしながら、その気持ち悪さを言葉にする者は誰もいなかった。海の機嫌がエクレア=シューの機嫌に直結していると思っていたからだ。エンダーラー・プライズ号の乗組員たちは普段と変わらぬ態度でエクレア=シューに接し続けた。その甲斐もあってこその、順調な航海である。
港町:モンドロールの沖合まで船が辿り着くと、船長は船の帆を畳み、碇を降ろすようにと船員たちに指示を出す。大きな銅製の碇が海に投げ込まれ、それを支点にエンダーラー・プライズ号はほぼほぼ完全に静止することとなる。
「ありがとう。スポークス船長。あなたのおかげで俺はなんとか無事に帰ってこれたよ」
「いいってことよ。それよりも、あんちゃん。これからも旅を続けるんだろ? 航海の無事は俺様が担当できても、陸路までは保証できねえから、気をつけて行くんだぞ?」
レオナルト=ヴィッダーは船長であるスポークス=ミスドとがっしりと固い握手をする。スポークス=ミスドは空いた左手でバンバンと遠慮なくレオナルト=ヴィッダーの右肩付近を叩いてみせる。そうした後、顔をレオナルト=ヴィッダーの右耳に近づけ、小声でささやき始める。
「ところで、あんちゃんは嫁候補を3人も引き連れてるわけだが……。精力剤をモンドロールで買っておくことをお勧めしておくぜ。ここの港町を横断している川で獲れるスッポンの肝から抽出した『ミナギール』ってのが、薬屋で見つかるはずだ」
「あ、ああ……。それは助言ありが……とう?」
スポークス=ミスドは要らぬお節介をやくことになるが、あくまでも善意からの助言であり、レオナルト=ヴィッダーとしても無下に否定することが出来なかった。港町でゆっくり時間を過ごせるのならば、探してみると返事をする。その返事に気を良くしたのか、またしてもスポークス=ミスドはバンバンとレオナルト=ヴィッダーの右肩を叩く。そして、船長はレオナルト=ヴィッダーたちを商品搬送用の中型の手漕ぎボートに乗せた後、大きく右腕を振り、エンダーラー・プライズ号の船上から見送るのであった。
「良いヒトだったね、スポークス船長。船乗りって、女性を船に乗せるのは嫌がるって聞いたことがあったけど、そのイメージが180度、変わったわ」
「ぼくも男の娘なので、内心、冷や冷やしていたのですゥ。いつ、荒れる海を鎮めるために生贄として、海に放り投げられるのかと肝を冷やしていたのですゥ」
海の守り神は海皇そのものであるがゆえに美女を乗せていると、海皇がその美女を欲しがって、わざと海を荒らすと伝わっている。クルス=サンティーモは美少女と見間違えるほどの男の娘である。蒼髪オカッパで、紅玉と碧玉のオッドアイ。これだけでも目につくというのに、水を玉で弾く肌の持ち主だ、クルス=サンティーモは。彼女? を見て、おちんこさんが立たない男がいるはずがないとも言えた。
だからこそ、クルス=サンティーモは生贄として、海に放り投げられるかもしれない恐怖に襲われていたのだ。しかしながら、航海を終えてみれば、そんなことはまったくもって杞憂であったことを今更ながらに知るクルス=サンティーモであった。もちろん、エクレア=シューの存在が最も影響していたとも言える。クルス=サンティーモは同じ中型の手漕ぎボートに乗っているエクレア=シューに感謝の念を伝えることとなる。
「う~~~ん。パパは100人近くのママと契りを結んでいますけど~~~。男の娘に手を出したって話は聞いたことがないんです~~~」
「へーーー。それは意外なんですゥ。男の娘をおつまみ感覚で手を出す男性は意外と多いんですけどねェ。100人もの奥さんがいるなら、あっちのほうは性豪だと思うんですけどォ」
「チュッチュッチュ。海皇は男の娘に手を出さないのではなくて、一度、大やけどを負った苦い経験があるために、『あつものに懲りて、なますを吹く』ことになってしまっただけでッチュウ。エクレア。お前の父親である海皇:ポセイトス=アドンとゆっくりしゃべる時間が取れる時は、それとなく聞いてみると良いのでッチュウ」
クルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点部分で居座っているコッシロー=ネヅが底意地悪そうな笑みを浮かべつつ、エクレア=シューにそう提言してくる。エクレア=シューはコッシローちゃんがそう言ってくる以上、パパが昔、男の娘相手に大失敗をやらかしたのであろうことは容易に想像できたのであった。
女性を口説く際に肝心なことは、気の利いた台詞を100個用意することではない。それよりも当たって砕けろの精神で100人の女性に声をかけまくることだ。自分に気が無い女性を口説く時間が1秒でもあるなら、その時間を別の女性に声掛けする時間に回した方が遥かにマシなのである。
結局のところ、合う合わないは誰にでも起こりうることであり、ヒトからは節操無しと見られるかもしれないが、本気で人生の相方を探すのであれば、声掛けする人数を増やした方が、当たりに巡り合う確率は明確に高いのだ。
野営地を解体し終えたレオナルト=ヴィッダーたちは材木を手漕ぎボートへ繋ぎ直し、エンダーラー・プライズ号に戻っていく。戦果を期待していたエンダーラー・プライズ号の乗組員たちは、がっくりと肩を落とすが、一番に悔しい想いをしているのはレオナルト=ヴィッダーたちだと考え、すぐに態度を改め、船の操作に戻っていく。
エンダーラー・プライズ号は帰路に着く。道中の航行の安全はエクレア=シューが担当しているため、大きな問題は起きなかった。エンダーラー・プライズ号は東から西へと進む。帆に受ける風を利用して進む船のため、季節風が時折、エンダーラー・プライズ号の行く手を阻む。しかしながら行きに1週間。帰りに1週間半かかった程度で済む。
大海原を西に進み続け、ようやく港町:モンドロールが水平線の向こうに見えてくると、エンダーラー・プライズ号の乗組員たちはホッと安堵の息を漏らすこととなる。
「ようやく、我らが故郷に戻ってこれたか……。ようし。あとは座礁しないようにするだけだ。最後の最後でへまをやらかさないようにしておけってんだっ!」
エンダーラー・プライズ号の船長であるスポークス=ミスドは最後まで気を抜かないようにと乗組員たちに激を飛ばす。なんせ、順調な航海が1週間以上も続くようなことはめったに起きない。山の天気同様、海の機嫌も女心のように荒れやすい。海皇の娘がそれを為してくれているわけだが、穏やか過ぎる海はエンダーラー・プライズ号の乗組員たちに気持ち悪ささえ抱かせてしまう。
しかしながら、その気持ち悪さを言葉にする者は誰もいなかった。海の機嫌がエクレア=シューの機嫌に直結していると思っていたからだ。エンダーラー・プライズ号の乗組員たちは普段と変わらぬ態度でエクレア=シューに接し続けた。その甲斐もあってこその、順調な航海である。
港町:モンドロールの沖合まで船が辿り着くと、船長は船の帆を畳み、碇を降ろすようにと船員たちに指示を出す。大きな銅製の碇が海に投げ込まれ、それを支点にエンダーラー・プライズ号はほぼほぼ完全に静止することとなる。
「ありがとう。スポークス船長。あなたのおかげで俺はなんとか無事に帰ってこれたよ」
「いいってことよ。それよりも、あんちゃん。これからも旅を続けるんだろ? 航海の無事は俺様が担当できても、陸路までは保証できねえから、気をつけて行くんだぞ?」
レオナルト=ヴィッダーは船長であるスポークス=ミスドとがっしりと固い握手をする。スポークス=ミスドは空いた左手でバンバンと遠慮なくレオナルト=ヴィッダーの右肩付近を叩いてみせる。そうした後、顔をレオナルト=ヴィッダーの右耳に近づけ、小声でささやき始める。
「ところで、あんちゃんは嫁候補を3人も引き連れてるわけだが……。精力剤をモンドロールで買っておくことをお勧めしておくぜ。ここの港町を横断している川で獲れるスッポンの肝から抽出した『ミナギール』ってのが、薬屋で見つかるはずだ」
「あ、ああ……。それは助言ありが……とう?」
スポークス=ミスドは要らぬお節介をやくことになるが、あくまでも善意からの助言であり、レオナルト=ヴィッダーとしても無下に否定することが出来なかった。港町でゆっくり時間を過ごせるのならば、探してみると返事をする。その返事に気を良くしたのか、またしてもスポークス=ミスドはバンバンとレオナルト=ヴィッダーの右肩を叩く。そして、船長はレオナルト=ヴィッダーたちを商品搬送用の中型の手漕ぎボートに乗せた後、大きく右腕を振り、エンダーラー・プライズ号の船上から見送るのであった。
「良いヒトだったね、スポークス船長。船乗りって、女性を船に乗せるのは嫌がるって聞いたことがあったけど、そのイメージが180度、変わったわ」
「ぼくも男の娘なので、内心、冷や冷やしていたのですゥ。いつ、荒れる海を鎮めるために生贄として、海に放り投げられるのかと肝を冷やしていたのですゥ」
海の守り神は海皇そのものであるがゆえに美女を乗せていると、海皇がその美女を欲しがって、わざと海を荒らすと伝わっている。クルス=サンティーモは美少女と見間違えるほどの男の娘である。蒼髪オカッパで、紅玉と碧玉のオッドアイ。これだけでも目につくというのに、水を玉で弾く肌の持ち主だ、クルス=サンティーモは。彼女? を見て、おちんこさんが立たない男がいるはずがないとも言えた。
だからこそ、クルス=サンティーモは生贄として、海に放り投げられるかもしれない恐怖に襲われていたのだ。しかしながら、航海を終えてみれば、そんなことはまったくもって杞憂であったことを今更ながらに知るクルス=サンティーモであった。もちろん、エクレア=シューの存在が最も影響していたとも言える。クルス=サンティーモは同じ中型の手漕ぎボートに乗っているエクレア=シューに感謝の念を伝えることとなる。
「う~~~ん。パパは100人近くのママと契りを結んでいますけど~~~。男の娘に手を出したって話は聞いたことがないんです~~~」
「へーーー。それは意外なんですゥ。男の娘をおつまみ感覚で手を出す男性は意外と多いんですけどねェ。100人もの奥さんがいるなら、あっちのほうは性豪だと思うんですけどォ」
「チュッチュッチュ。海皇は男の娘に手を出さないのではなくて、一度、大やけどを負った苦い経験があるために、『あつものに懲りて、なますを吹く』ことになってしまっただけでッチュウ。エクレア。お前の父親である海皇:ポセイトス=アドンとゆっくりしゃべる時間が取れる時は、それとなく聞いてみると良いのでッチュウ」
クルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点部分で居座っているコッシロー=ネヅが底意地悪そうな笑みを浮かべつつ、エクレア=シューにそう提言してくる。エクレア=シューはコッシローちゃんがそう言ってくる以上、パパが昔、男の娘相手に大失敗をやらかしたのであろうことは容易に想像できたのであった。
女性を口説く際に肝心なことは、気の利いた台詞を100個用意することではない。それよりも当たって砕けろの精神で100人の女性に声をかけまくることだ。自分に気が無い女性を口説く時間が1秒でもあるなら、その時間を別の女性に声掛けする時間に回した方が遥かにマシなのである。
結局のところ、合う合わないは誰にでも起こりうることであり、ヒトからは節操無しと見られるかもしれないが、本気で人生の相方を探すのであれば、声掛けする人数を増やした方が、当たりに巡り合う確率は明確に高いのだ。
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