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第10章:災厄の兆し
第2話:海皇の三叉槍
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そして、そんなことをするパパだからこそ、悪い男の娘に引っかかったのだろうと、エクレア=シューは思ってしまう。声掛けの回数を増やすということは、同時に悪い奴に捕まる可能性も高まるのだ。パパは100人の嫁を契りを結ぶために、その100倍となる1万人の女性(男の娘含む)にナンパを仕掛けたに違いないと思うエクレア=シューである。
(個人的には面白そうな話ですけど~~~。自分のパパの失態だと、あまり根掘り葉掘り聞きたくないのは、ヒトとしての防衛反応なんですかね~~~?)
この悪い男の娘にひかかったのが、エクレア=シューのパパでなく、リリベル=ユーリィやレオナルト=ヴィッダーのパパの話であったなら、エクレア=シューはノリノリで身を乗り出し、ボートの縁から海に転げ落ちる勢いで根掘り葉掘り、あらん限りの話術を持ってして聞きまくっていたであろう。だが、やはり自分の親の話となると、そういうわけにはいかないのは、エクレア=シューであっても他者と同じである。
「チュッチュッチュ。聞きづらいなら、僕が代わりに聞いてやろうか? ほら、あそこに嬉しそうに出迎えしてくれる海皇が居るのでッチュウ」
エクレア=シューはゲゲエ……と女性らしからぬ声を思わず口から漏らしてしまう。手漕ぎボートが向かう波止場の所に、今まさに話題の中心となっている人物がおーいおーーーい! とこちらに大声を張り上げていたのだ。海皇:ポセイトス=アドンは海賊王と見間違えるかのような両脇角付き兜を被り、毛むくじゃらの革製部分鎧で身を固めていた。まさにヴァイキングの王さながらの風貌で娘の到着を今か今かと待ちわびていたのがひと目でわかるのである。
「おおっ! 我が73番目の娘よっ! レオナルトの小僧にはたっぷり愛してもらえたか? 出産はいつだ!?」
「ちょっと、髭が痛いのです~~~。あと、皆が見ているので、降ろしてほしいのです~~~」
海皇:ポセイトス=アドンは手漕ぎボートから降りたばかりのエクレア=シューを抱きしめ、さらには抱え上げて、彼女の頬にぶちゅぶちゅと接吻しまくる。海皇の頬まで埋め尽くす虎髭が容赦なくエクレア=シューの柔らかなほっぺたを削りに削る。エクレア=シューは嬉しさ半分、恥ずかしさが半分、心を占めることとなる。
エクレア=シューは『地上の楽園』において、レオナルト=ヴィッダーとクルス=サンティーモにイカされまくるという経験を積むことで、子の親離れが遅まきながら起きることとなる。それゆえに、出航前までのエクレア=シューならば、パパにこういう熱い歓迎を人前で受けても、へっちゃらであったが、色々と経験し終えた今は違う。段々と恥ずかしさのほうが増していき、エクレア=シューはあからさまに反抗するのであった。
しかし、反抗の態度を強める娘に対して、海皇:ポセイトス=アドンはますます喜びの色を強めていく。娘が大人の女性として変わりつつあることを素直に喜んだからだ。
「ククッ! 子供が親離れしようとするのは自然の摂理だ。どこか危なげないところがあるエクレアだったが、ようやく我から巣立ちできよう。レオナルト=ヴィッダー。これからもエクレアをよしなに頼む」
「た、頼む!? まさか、俺の旅路に海皇様の娘を連れまわせと!?」
「ガーハハッ! あの頑固者のヤタガラスに会って、無事に帰ってこれたというのであれば、ますます娘をお前に預けたくなって当然であろう」
レオナルト=ヴィッダーは海皇の台詞から、緋喰い鳥と海皇が見知った仲だという事を察する。自分はエクレア=シューの卑肉におちんこさんを深々とハメる前に、海皇にまんまとハメられていたのだと知る。レオナルト=ヴィッダーはボリボリと左手で自分の後頭部を掻くしかなかった。そんなレオナルト=ヴィッダーに対して、クルス=サンティーモがハッ! と気づきを得て、レオナルト=ヴィッダーに耳打ちする。
「あ、あの……。失われた朱鷺は手に入りませんでしたけど、機嫌がすこぶる良い海皇様に『海皇の三叉槍』をもらったらどう……です?」
「あーーー、そう言えば、ロータス国王が欲しがっている秘宝のひとつにそれがあったな……」
クルス=サンティーモはあまり乗り気では無いレオン様が不思議でならなかった。海皇の73番目の娘であるエクレア=シューはべったりレオン様に引っ付いているのだ。それならば、結納品として『海皇の三叉槍』を所望しても問題ないと思ってしまうクルス=サンティーモである。しかし、レオン様からはそう言った雰囲気がほとんどないのが、おかしいとさえ思ってしまうクルス=サンティーモである。御主人様が言い出しにくいのであれば、従者である自分の出番だと考えたクルス=サンティーモは、レオナルト=ヴィッダーに代わり、海皇に願い出る。
「ふむ……。我の三叉槍が欲しいのであるか」
「いや……。クルスの言葉は忘れてほしい。俺は身代金みたいに貴方から三叉槍をもらうつもりはない。俺が三叉槍を手に入れるなら、俺が貴方の偉大さを超えてみせてからだと思ってるからだ」
レオナルト=ヴィッダーはクルス=サンティーモを下がらせて、自分の思いの丈を海皇に告げる。自分を超えてみせると豪語する若造に対して、海皇は頬を埋め尽くす虎髭を右手でさすりつつ、値踏みするような視線を飛ばす。
数十秒ほど、その所作を繰り出す海皇に、発端となったクルス=サンティーモはあわわ……と取り乱すこととなる。助け船を出してほしそうな表情でリリベル=ユーリィとエクレア=シューへ顔を向けるが、彼女たちは残念そうにフルフルと左右に顔を振ってみせる。リリベル=ユーリィたちはわかっていたのだ。レオナルト=ヴィッダーがエクレア=シューを餌に『海皇の三叉槍』を手に入れようとすることは絶対に無いと。そして、失言してしまったクルス=サンティーモに対して、同情心は抱いても、同調する態度は見せなかった。
「よろしい。我は未だにレオナルト=ヴィッダーが『海皇の三叉槍』を手にするほどの武勇は持ち合わせていないと断言しよう。最低限、おぬしが我と並び立つほどに勇名を馳せるまでは渡せぬな」
「俺の意を汲んでくれて、ありがとう。俺は『与えらえる者』じゃない。『奪う者』でありつづけたい」
レオナルト=ヴィッダーはそう言うと、海皇に向かって、深々とお辞儀をする。そして、クルリと回れ右をし、右腕にハメた前腕固定型杖に体重を乗せつつ、その場から去り始める。リリベル=ユーリィ、エクレア=シューも海皇にペコリとお辞儀をし、それを別れの挨拶として、レオナルト=ヴィッダーのあとに続く。
ひとり残されたクルス=サンティーモは頭の上にコッシロー=ネヅを乗せたまま、あわわ……と慌てふためくばかりであった……。
(個人的には面白そうな話ですけど~~~。自分のパパの失態だと、あまり根掘り葉掘り聞きたくないのは、ヒトとしての防衛反応なんですかね~~~?)
この悪い男の娘にひかかったのが、エクレア=シューのパパでなく、リリベル=ユーリィやレオナルト=ヴィッダーのパパの話であったなら、エクレア=シューはノリノリで身を乗り出し、ボートの縁から海に転げ落ちる勢いで根掘り葉掘り、あらん限りの話術を持ってして聞きまくっていたであろう。だが、やはり自分の親の話となると、そういうわけにはいかないのは、エクレア=シューであっても他者と同じである。
「チュッチュッチュ。聞きづらいなら、僕が代わりに聞いてやろうか? ほら、あそこに嬉しそうに出迎えしてくれる海皇が居るのでッチュウ」
エクレア=シューはゲゲエ……と女性らしからぬ声を思わず口から漏らしてしまう。手漕ぎボートが向かう波止場の所に、今まさに話題の中心となっている人物がおーいおーーーい! とこちらに大声を張り上げていたのだ。海皇:ポセイトス=アドンは海賊王と見間違えるかのような両脇角付き兜を被り、毛むくじゃらの革製部分鎧で身を固めていた。まさにヴァイキングの王さながらの風貌で娘の到着を今か今かと待ちわびていたのがひと目でわかるのである。
「おおっ! 我が73番目の娘よっ! レオナルトの小僧にはたっぷり愛してもらえたか? 出産はいつだ!?」
「ちょっと、髭が痛いのです~~~。あと、皆が見ているので、降ろしてほしいのです~~~」
海皇:ポセイトス=アドンは手漕ぎボートから降りたばかりのエクレア=シューを抱きしめ、さらには抱え上げて、彼女の頬にぶちゅぶちゅと接吻しまくる。海皇の頬まで埋め尽くす虎髭が容赦なくエクレア=シューの柔らかなほっぺたを削りに削る。エクレア=シューは嬉しさ半分、恥ずかしさが半分、心を占めることとなる。
エクレア=シューは『地上の楽園』において、レオナルト=ヴィッダーとクルス=サンティーモにイカされまくるという経験を積むことで、子の親離れが遅まきながら起きることとなる。それゆえに、出航前までのエクレア=シューならば、パパにこういう熱い歓迎を人前で受けても、へっちゃらであったが、色々と経験し終えた今は違う。段々と恥ずかしさのほうが増していき、エクレア=シューはあからさまに反抗するのであった。
しかし、反抗の態度を強める娘に対して、海皇:ポセイトス=アドンはますます喜びの色を強めていく。娘が大人の女性として変わりつつあることを素直に喜んだからだ。
「ククッ! 子供が親離れしようとするのは自然の摂理だ。どこか危なげないところがあるエクレアだったが、ようやく我から巣立ちできよう。レオナルト=ヴィッダー。これからもエクレアをよしなに頼む」
「た、頼む!? まさか、俺の旅路に海皇様の娘を連れまわせと!?」
「ガーハハッ! あの頑固者のヤタガラスに会って、無事に帰ってこれたというのであれば、ますます娘をお前に預けたくなって当然であろう」
レオナルト=ヴィッダーは海皇の台詞から、緋喰い鳥と海皇が見知った仲だという事を察する。自分はエクレア=シューの卑肉におちんこさんを深々とハメる前に、海皇にまんまとハメられていたのだと知る。レオナルト=ヴィッダーはボリボリと左手で自分の後頭部を掻くしかなかった。そんなレオナルト=ヴィッダーに対して、クルス=サンティーモがハッ! と気づきを得て、レオナルト=ヴィッダーに耳打ちする。
「あ、あの……。失われた朱鷺は手に入りませんでしたけど、機嫌がすこぶる良い海皇様に『海皇の三叉槍』をもらったらどう……です?」
「あーーー、そう言えば、ロータス国王が欲しがっている秘宝のひとつにそれがあったな……」
クルス=サンティーモはあまり乗り気では無いレオン様が不思議でならなかった。海皇の73番目の娘であるエクレア=シューはべったりレオン様に引っ付いているのだ。それならば、結納品として『海皇の三叉槍』を所望しても問題ないと思ってしまうクルス=サンティーモである。しかし、レオン様からはそう言った雰囲気がほとんどないのが、おかしいとさえ思ってしまうクルス=サンティーモである。御主人様が言い出しにくいのであれば、従者である自分の出番だと考えたクルス=サンティーモは、レオナルト=ヴィッダーに代わり、海皇に願い出る。
「ふむ……。我の三叉槍が欲しいのであるか」
「いや……。クルスの言葉は忘れてほしい。俺は身代金みたいに貴方から三叉槍をもらうつもりはない。俺が三叉槍を手に入れるなら、俺が貴方の偉大さを超えてみせてからだと思ってるからだ」
レオナルト=ヴィッダーはクルス=サンティーモを下がらせて、自分の思いの丈を海皇に告げる。自分を超えてみせると豪語する若造に対して、海皇は頬を埋め尽くす虎髭を右手でさすりつつ、値踏みするような視線を飛ばす。
数十秒ほど、その所作を繰り出す海皇に、発端となったクルス=サンティーモはあわわ……と取り乱すこととなる。助け船を出してほしそうな表情でリリベル=ユーリィとエクレア=シューへ顔を向けるが、彼女たちは残念そうにフルフルと左右に顔を振ってみせる。リリベル=ユーリィたちはわかっていたのだ。レオナルト=ヴィッダーがエクレア=シューを餌に『海皇の三叉槍』を手に入れようとすることは絶対に無いと。そして、失言してしまったクルス=サンティーモに対して、同情心は抱いても、同調する態度は見せなかった。
「よろしい。我は未だにレオナルト=ヴィッダーが『海皇の三叉槍』を手にするほどの武勇は持ち合わせていないと断言しよう。最低限、おぬしが我と並び立つほどに勇名を馳せるまでは渡せぬな」
「俺の意を汲んでくれて、ありがとう。俺は『与えらえる者』じゃない。『奪う者』でありつづけたい」
レオナルト=ヴィッダーはそう言うと、海皇に向かって、深々とお辞儀をする。そして、クルリと回れ右をし、右腕にハメた前腕固定型杖に体重を乗せつつ、その場から去り始める。リリベル=ユーリィ、エクレア=シューも海皇にペコリとお辞儀をし、それを別れの挨拶として、レオナルト=ヴィッダーのあとに続く。
ひとり残されたクルス=サンティーモは頭の上にコッシロー=ネヅを乗せたまま、あわわ……と慌てふためくばかりであった……。
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