【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

文字の大きさ
93 / 261
第10章:災厄の兆し

第2話:海皇の三叉槍

しおりを挟む
 そして、そんなことをするパパだからこそ、悪い男の娘に引っかかったのだろうと、エクレア=シューは思ってしまう。声掛けの回数を増やすということは、同時に悪い奴に捕まる可能性も高まるのだ。パパは100人の嫁を契りを結ぶために、その100倍となる1万人の女性(男の娘含む)にナンパを仕掛けたに違いないと思うエクレア=シューである。

(個人的には面白そうな話ですけど~~~。自分のパパの失態だと、あまり根掘り葉掘り聞きたくないのは、ヒトとしての防衛反応なんですかね~~~?)

 この悪い男の娘にひかかったのが、エクレア=シューのパパでなく、リリベル=ユーリィやレオナルト=ヴィッダーのパパの話であったなら、エクレア=シューはノリノリで身を乗り出し、ボートの縁から海に転げ落ちる勢いで根掘り葉掘り、あらん限りの話術を持ってして聞きまくっていたであろう。だが、やはり自分の親の話となると、そういうわけにはいかないのは、エクレア=シューであっても他者と同じである。

「チュッチュッチュ。聞きづらいなら、僕が代わりに聞いてやろうか? ほら、あそこに嬉しそうに出迎えしてくれる海皇が居るのでッチュウ」

 エクレア=シューはゲゲエ……と女性らしからぬ声を思わず口から漏らしてしまう。手漕ぎボートが向かう波止場の所に、今まさに話題の中心となっている人物がおーいおーーーい! とこちらに大声を張り上げていたのだ。海皇:ポセイトス=アドンは海賊王と見間違えるかのような両脇角付き兜を被り、毛むくじゃらの革製部分鎧で身を固めていた。まさにヴァイキングの王さながらの風貌で娘の到着を今か今かと待ちわびていたのがひと目でわかるのである。

「おおっ! 我が73番目の娘よっ! レオナルトの小僧にはたっぷり愛してもらえたか? 出産はいつだ!?」

「ちょっと、髭が痛いのです~~~。あと、皆が見ているので、降ろしてほしいのです~~~」

 海皇:ポセイトス=アドンは手漕ぎボートから降りたばかりのエクレア=シューを抱きしめ、さらには抱え上げて、彼女の頬にぶちゅぶちゅと接吻せっぷんしまくる。海皇の頬まで埋め尽くす虎髭が容赦なくエクレア=シューの柔らかなほっぺたを削りに削る。エクレア=シューは嬉しさ半分、恥ずかしさが半分、心を占めることとなる。

 エクレア=シューは『地上の楽園』において、レオナルト=ヴィッダーとクルス=サンティーモにイカされまくるという経験を積むことで、子の親離れが遅まきながら起きることとなる。それゆえに、出航前までのエクレア=シューならば、パパにこういう熱い歓迎を人前で受けても、へっちゃらであったが、色々と経験し終えた今は違う。段々と恥ずかしさのほうが増していき、エクレア=シューはあからさまに反抗するのであった。

 しかし、反抗の態度を強める娘に対して、海皇:ポセイトス=アドンはますます喜びの色を強めていく。娘が大人の女性として変わりつつあることを素直に喜んだからだ。

「ククッ! 子供が親離れしようとするのは自然の摂理だ。どこか危なげないところがあるエクレアだったが、ようやくわれから巣立ちできよう。レオナルト=ヴィッダー。これからもエクレアをよしなに頼む」

「た、頼む!? まさか、俺の旅路に海皇様の娘を連れまわせと!?」

「ガーハハッ! あの頑固者のヤタガラスに会って、無事に帰ってこれたというのであれば、ますます娘をお前に預けたくなって当然であろう」

 レオナルト=ヴィッダーは海皇の台詞から、緋喰い鳥と海皇が見知った仲だという事を察する。自分はエクレア=シューの卑肉におちんこさんを深々とハメる前に、海皇にまんまとハメられていたのだと知る。レオナルト=ヴィッダーはボリボリと左手で自分の後頭部を掻くしかなかった。そんなレオナルト=ヴィッダーに対して、クルス=サンティーモがハッ! と気づきを得て、レオナルト=ヴィッダーに耳打ちする。

「あ、あの……。失われた朱鷺は手に入りませんでしたけど、機嫌がすこぶる良い海皇様に『海皇の三叉槍』をもらったらどう……です?」

「あーーー、そう言えば、ロータス国王が欲しがっている秘宝のひとつにそれがあったな……」

 クルス=サンティーモはあまり乗り気では無いレオン様が不思議でならなかった。海皇の73番目の娘であるエクレア=シューはべったりレオン様に引っ付いているのだ。それならば、結納品として『海皇の三叉槍』を所望しても問題ないと思ってしまうクルス=サンティーモである。しかし、レオン様からはそう言った雰囲気がほとんどないのが、おかしいとさえ思ってしまうクルス=サンティーモである。御主人様が言い出しにくいのであれば、従者である自分の出番だと考えたクルス=サンティーモは、レオナルト=ヴィッダーに代わり、海皇に願い出る。

「ふむ……。われの三叉槍が欲しいのであるか」

「いや……。クルスの言葉は忘れてほしい。俺は身代金みたいに貴方から三叉槍をもらうつもりはない。俺が三叉槍を手に入れるなら、俺が貴方の偉大さを超えてみせてからだと思ってるからだ」

 レオナルト=ヴィッダーはクルス=サンティーモを下がらせて、自分の思いの丈を海皇に告げる。自分を超えてみせると豪語する若造に対して、海皇は頬を埋め尽くす虎髭を右手でさすりつつ、値踏みするような視線を飛ばす。

 数十秒ほど、その所作を繰り出す海皇に、発端となったクルス=サンティーモはあわわ……と取り乱すこととなる。助け船を出してほしそうな表情でリリベル=ユーリィとエクレア=シューへ顔を向けるが、彼女たちは残念そうにフルフルと左右に顔を振ってみせる。リリベル=ユーリィたちはわかっていたのだ。レオナルト=ヴィッダーがエクレア=シューを餌に『海皇の三叉槍』を手に入れようとすることは絶対に無いと。そして、失言してしまったクルス=サンティーモに対して、同情心は抱いても、同調する態度は見せなかった。

「よろしい。われは未だにレオナルト=ヴィッダーが『海皇の三叉槍』を手にするほどの武勇は持ち合わせていないと断言しよう。最低限、おぬしがわれと並び立つほどに勇名を馳せるまでは渡せぬな」

「俺の意を汲んでくれて、ありがとう。俺は『与えらえる者』じゃない。『奪う者』でありつづけたい」

 レオナルト=ヴィッダーはそう言うと、海皇に向かって、深々とお辞儀をする。そして、クルリと回れ右をし、右腕にハメた前腕固定型杖ロフストランドクラッチに体重を乗せつつ、その場から去り始める。リリベル=ユーリィ、エクレア=シューも海皇にペコリとお辞儀をし、それを別れの挨拶として、レオナルト=ヴィッダーのあとに続く。

 ひとり残されたクルス=サンティーモは頭の上にコッシロー=ネヅを乗せたまま、あわわ……と慌てふためくばかりであった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...