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第15章:愛を知らぬ男
第4話:フルスイング
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「ウォォォォン!!」
ジルバ=フリューゲルの大剣がリリベル=ユーリィの腹に。リリベル=ユーリィの薔薇乙女の細剣がジルバ=フリューゲルの左胸に吸い込まれていくその時、辺りの空気が振動し、それが狼の吼え声となる。その吼え声の主はリリベル=ユーリィに生きろと命じた。リリベル=ユーリィは、ハッ! と気づきを得て、ジルバ=フリューゲルと相打ちになるのを止める。
リリベル=ユーリィが右手で突き出した薔薇乙女の細剣の軌道を左側に逸らしつつ、身体を左側に捻じる。薔薇乙女の細剣の切っ先がジルバ=フリューゲルが振り下ろしてくる大剣の腹に当たる。それと同時に右足で回し蹴りのようにジルバ=フリューゲルの左わき腹に蹴りを入れる。
ジルバ=フリューゲルはたまらず身体を右側に揺らされる。彼が望んでいたことは起きず、リリベル=ユーリィは間一髪、ジルバ=フリューゲルが放った致命の一撃を避けることが出来た。
「このクソアマがっ! 大人しく、俺様の物になりやがれてんだぁぁぁ!?」
ジルバ=フリューゲルが怒りに心を支配され、真っ赤であった顔がドス黒いモノへと変化する。右倒れに身体が流れるのと同時に乾いた地面に突き刺さってしまった大剣を抜く。しかしながら、無理な体勢で自分の体重と匹敵するほどの大剣を地面から抜いたことで、ますますジルバ=フリューゲルの体勢は崩れに崩れてしまう。
ジルバ=フリューゲルは為す術もなく、身体を泳がせてしまう。そんな彼に対して、横から突っ込んできたのが、黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーであった。彼は獣面となったオープンフルフェイス兜に生える狼歯でジルバ=フリューゲルの横っ腹を噛む。そして、犬が与えられたぬいぐるみに乱暴を働くが如くに、ジルバ=フリューゲルを首だけの力で振り回し、何度も乾いた大地に彼の身体を打ち付けてみせる。
そして、遊び飽きたとばかりにジルバ=フリューゲルを宙に放り投げてしまう。ジルバ=フリューゲルはおもちゃにされたことに怒りを覚え、宙を舞いながらも右眼でレオナルト=ヴィッダーを睨みつける。ジルバ=フリューゲルが右眼で凝視した場所に向かって黒雲から雷光がジグザグに落下していく。
「死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! レオナルト=ヴィッダーぁぁぁ!!」
幾百もの光の束がレオナルト=ヴィッダーを中心として、直径10ミャートルの範囲に降り注ぐ。黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーが光の雨あられにさらされる。だが、驚きを覚えたのはレオナルト=ヴィッダーでは無く、ジルバ=フリューゲルの方であった。
「この数の雷光の全てを回避した……だとぉぉぉ!?」
ジルバ=フリューゲルがレオナルト=ヴィッダーの顎の力で宙に舞い、地面に到達するまでに300を超える雷光が渇いた地面を穿った。しかし、その1本もレオナルト=ヴィッダーに直撃しなかったのだ。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ雷光を4本足を用いて、回避しつつ、さらには踏み台にしながら、天を駆け昇っていく。
ジルバ=フリューゲルの視線は真正面では無く、上を向くことになる。憎き相手が雷光に穿たれて、乾いた大地の上で屍を晒すはずだったのに、そうはならなく、天を舞っているからだ。そして、天を駆ける黒い獣は縦方向に回転し、自分の身体全体から生える黒い短剣を雨あられのようにジルバ=フリューゲルに向かって投げつける。
ジルバ=フリューゲルはますます持って、右眼に込める目力を高める。身体を流れる過電流が、ジルバ=フリューゲルの身体能力を通常の300倍まで引き上げる。ここまでニンゲンの力が引き出されると、超常の現象が起きる。リリベル=ユーリィは青碧玉の双眸で見たモノを頭で理解できなかった。
リリベル=ユーリィの眼では、ジルバ=フリューゲルはまったくもって、その場所から動いていないように見えたのだ。雷速をもってして大剣を振るってきたジルバ=フリューゲルの剣筋を見ることが出来た彼女でも、ジルバ=フリューゲルの動きに動体視力が追い付かなかったのである。
実際のところ、ジルバ=フリューゲルは細かく身体を前後左右斜めに身体を細かく移動させている。だが、それが速すぎて、超人でもなければ彼の動きを眼で追う事は叶わなかっただけである。リリベル=ユーリィはこの時点において、まだヒトという分類から完全にははみ出していなかった。それゆえにジルバ=フリューゲルが何をしているのかわからず、直立不動しているように見えたのだ。
しかし、そうだというのに、レオナルト=ヴィッダーが放った黒い短剣の雨あられの一粒もジルバ=フリューゲルが被弾していないのを見れば、リリベル=ユーリィが混乱の極地に陥るのは致し方なかったと言えよう。そして、黒い雨が止むと同時にジルバ=フリューゲルの姿が忽然と消える。
そして、遅れて1秒後に轟音がリリベル=ユーリィの耳に届くこととなる。雷光が天から地に堕ちる時、音はタイムラグを起こして、ヒトの耳に届く。その現象を肉体を持つはずのジルバ=フリューゲルが起こしたのだ。未だに宙を漂い、地面に向かって落下していくレオナルト=ヴィッダーの背中側にジルバ=フリューゲルが現れる。彼は大剣でレオナルト=ヴィッダーの背中を思いっ切り叩く。
レオナルト=ヴィッダーは斜め下へと突き飛ばされる。そして、またしてもリリベル=ユーリィの耳に轟音が届くと、ジルバ=フリューゲルはレオナルト=ヴィッダーが渇いた地面に身体全体を打ち付ける位置に移動し終えていた。そして、ジルバ=フリューゲルは大剣をまるでバットを振り回すかのように振り抜き、レオナルト=ヴィッダーを再び宙にかち上げる。
それを10回繰り返した後、レオナルト=ヴィッダーはようやく乾いた地面の上で横たわることが出来た。
「はぁはぁはぁ……。レオナルト如きが俺様を虚仮にするんじゃ……ねえぞ」
ジルバ=フリューゲルは今まで呼吸が止まっていたかのように空気を欲する呼吸をする。大剣の切っ先を乾いた地面に埋もれさせ、さらには大剣を杖代わりにしながら、片膝ついた格好となっている。ゼエハアゼエハアと肩と胸板で酸素を肺の中に無理やり取り入れる。
対して、レオナルト=ヴィッダーは後ろ足を産まれたての小鹿のように震わせながらも、前足を持ってして、4本足で起き上がろうとしていた。彼らの因縁の鎖はあと10分も経たぬうちに断ち切られるであろうことは、リリベル=ユーリィでなくとも予想できた……。
ジルバ=フリューゲルの大剣がリリベル=ユーリィの腹に。リリベル=ユーリィの薔薇乙女の細剣がジルバ=フリューゲルの左胸に吸い込まれていくその時、辺りの空気が振動し、それが狼の吼え声となる。その吼え声の主はリリベル=ユーリィに生きろと命じた。リリベル=ユーリィは、ハッ! と気づきを得て、ジルバ=フリューゲルと相打ちになるのを止める。
リリベル=ユーリィが右手で突き出した薔薇乙女の細剣の軌道を左側に逸らしつつ、身体を左側に捻じる。薔薇乙女の細剣の切っ先がジルバ=フリューゲルが振り下ろしてくる大剣の腹に当たる。それと同時に右足で回し蹴りのようにジルバ=フリューゲルの左わき腹に蹴りを入れる。
ジルバ=フリューゲルはたまらず身体を右側に揺らされる。彼が望んでいたことは起きず、リリベル=ユーリィは間一髪、ジルバ=フリューゲルが放った致命の一撃を避けることが出来た。
「このクソアマがっ! 大人しく、俺様の物になりやがれてんだぁぁぁ!?」
ジルバ=フリューゲルが怒りに心を支配され、真っ赤であった顔がドス黒いモノへと変化する。右倒れに身体が流れるのと同時に乾いた地面に突き刺さってしまった大剣を抜く。しかしながら、無理な体勢で自分の体重と匹敵するほどの大剣を地面から抜いたことで、ますますジルバ=フリューゲルの体勢は崩れに崩れてしまう。
ジルバ=フリューゲルは為す術もなく、身体を泳がせてしまう。そんな彼に対して、横から突っ込んできたのが、黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーであった。彼は獣面となったオープンフルフェイス兜に生える狼歯でジルバ=フリューゲルの横っ腹を噛む。そして、犬が与えられたぬいぐるみに乱暴を働くが如くに、ジルバ=フリューゲルを首だけの力で振り回し、何度も乾いた大地に彼の身体を打ち付けてみせる。
そして、遊び飽きたとばかりにジルバ=フリューゲルを宙に放り投げてしまう。ジルバ=フリューゲルはおもちゃにされたことに怒りを覚え、宙を舞いながらも右眼でレオナルト=ヴィッダーを睨みつける。ジルバ=フリューゲルが右眼で凝視した場所に向かって黒雲から雷光がジグザグに落下していく。
「死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! レオナルト=ヴィッダーぁぁぁ!!」
幾百もの光の束がレオナルト=ヴィッダーを中心として、直径10ミャートルの範囲に降り注ぐ。黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーが光の雨あられにさらされる。だが、驚きを覚えたのはレオナルト=ヴィッダーでは無く、ジルバ=フリューゲルの方であった。
「この数の雷光の全てを回避した……だとぉぉぉ!?」
ジルバ=フリューゲルがレオナルト=ヴィッダーの顎の力で宙に舞い、地面に到達するまでに300を超える雷光が渇いた地面を穿った。しかし、その1本もレオナルト=ヴィッダーに直撃しなかったのだ。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ雷光を4本足を用いて、回避しつつ、さらには踏み台にしながら、天を駆け昇っていく。
ジルバ=フリューゲルの視線は真正面では無く、上を向くことになる。憎き相手が雷光に穿たれて、乾いた大地の上で屍を晒すはずだったのに、そうはならなく、天を舞っているからだ。そして、天を駆ける黒い獣は縦方向に回転し、自分の身体全体から生える黒い短剣を雨あられのようにジルバ=フリューゲルに向かって投げつける。
ジルバ=フリューゲルはますます持って、右眼に込める目力を高める。身体を流れる過電流が、ジルバ=フリューゲルの身体能力を通常の300倍まで引き上げる。ここまでニンゲンの力が引き出されると、超常の現象が起きる。リリベル=ユーリィは青碧玉の双眸で見たモノを頭で理解できなかった。
リリベル=ユーリィの眼では、ジルバ=フリューゲルはまったくもって、その場所から動いていないように見えたのだ。雷速をもってして大剣を振るってきたジルバ=フリューゲルの剣筋を見ることが出来た彼女でも、ジルバ=フリューゲルの動きに動体視力が追い付かなかったのである。
実際のところ、ジルバ=フリューゲルは細かく身体を前後左右斜めに身体を細かく移動させている。だが、それが速すぎて、超人でもなければ彼の動きを眼で追う事は叶わなかっただけである。リリベル=ユーリィはこの時点において、まだヒトという分類から完全にははみ出していなかった。それゆえにジルバ=フリューゲルが何をしているのかわからず、直立不動しているように見えたのだ。
しかし、そうだというのに、レオナルト=ヴィッダーが放った黒い短剣の雨あられの一粒もジルバ=フリューゲルが被弾していないのを見れば、リリベル=ユーリィが混乱の極地に陥るのは致し方なかったと言えよう。そして、黒い雨が止むと同時にジルバ=フリューゲルの姿が忽然と消える。
そして、遅れて1秒後に轟音がリリベル=ユーリィの耳に届くこととなる。雷光が天から地に堕ちる時、音はタイムラグを起こして、ヒトの耳に届く。その現象を肉体を持つはずのジルバ=フリューゲルが起こしたのだ。未だに宙を漂い、地面に向かって落下していくレオナルト=ヴィッダーの背中側にジルバ=フリューゲルが現れる。彼は大剣でレオナルト=ヴィッダーの背中を思いっ切り叩く。
レオナルト=ヴィッダーは斜め下へと突き飛ばされる。そして、またしてもリリベル=ユーリィの耳に轟音が届くと、ジルバ=フリューゲルはレオナルト=ヴィッダーが渇いた地面に身体全体を打ち付ける位置に移動し終えていた。そして、ジルバ=フリューゲルは大剣をまるでバットを振り回すかのように振り抜き、レオナルト=ヴィッダーを再び宙にかち上げる。
それを10回繰り返した後、レオナルト=ヴィッダーはようやく乾いた地面の上で横たわることが出来た。
「はぁはぁはぁ……。レオナルト如きが俺様を虚仮にするんじゃ……ねえぞ」
ジルバ=フリューゲルは今まで呼吸が止まっていたかのように空気を欲する呼吸をする。大剣の切っ先を乾いた地面に埋もれさせ、さらには大剣を杖代わりにしながら、片膝ついた格好となっている。ゼエハアゼエハアと肩と胸板で酸素を肺の中に無理やり取り入れる。
対して、レオナルト=ヴィッダーは後ろ足を産まれたての小鹿のように震わせながらも、前足を持ってして、4本足で起き上がろうとしていた。彼らの因縁の鎖はあと10分も経たぬうちに断ち切られるであろうことは、リリベル=ユーリィでなくとも予想できた……。
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