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第15章:愛を知らぬ男
第5話:溢れ出す|呪力《ちから》
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ジルバ=フリューゲルは大剣を杖代わりに立ち上がる。『雷斬り』と呼ばれるそれを構え直し、刃に雷光を走らせる。レオナルト=ヴィッダーが4本足で完全に立ち上がる前に、ジルバ=フリューゲルは大剣を斜め横に交差するように6度、その場で振り回す。
すると、雷斬りが纏っていた雷光が直径30センチュミャートルほどの雷球へと変化し、それが10個、生み出される。レオナルト=ヴィッダーはその雷球群をグルルルゥゥゥと唸りながら見つめる。
「この技を俺様に繰り出せただけでも、てめえは誇ってもいいぜえええ!?」
ジルバ=フリューゲルはそう言うと、右眼から目力を発し、右眼で凝視した地点から直径10ミャートルの範囲で落雷を降らせる。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ稲光に打たれながらも、直撃だけは避ける。そんなレオナルト=ヴィッダーに対して、先ほど生み出した雷球を差し向けるジルバ=フリューゲルであった。
放たれた雷球群は一定の軌道を描くことはせず、互いにぶつかり合いながら、複雑な動きを描きつつ、レオナルト=ヴィッダーの周りを取り囲んでしまう。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ稲光だけでなく、四方八方から自分の身に向かってくる雷球も回避せねばならなくなる。
ジルバ=フリューゲルの顔は歪み切っていた。レオナルト=ヴィッダーに対するあらゆる感情がないまぜになり、喜びとも悲しみとも怒りともつかないモノになっていたのだ。雷球のひとつがレオナルト=ヴィッダーの脇腹を抉り、天から降り注ぐ稲光がレオナルト=ヴィッダーの背中を打つ。レオナルト=ヴィッダーはまたしても宙に放りあげられたまま、ジルバ=フリューゲルにおもちゃにされてしまう。
「レオン様をやらせはしないのです~~~! あたしがレオン様を護るのです~~~!!」
エクレア=シューが雷光の檻に閉じ込められたレオナルト=ヴィッダーを救うために、両手で握る魔法の杖から魔力を放出し、海色の魔術障壁をレオナルト=ヴィッダーの周囲に出現させる。ジルバ=フリューゲルはエクレア=シューの存在を失念しており、チッチッチッ! と舌打ちを連打する。
「俺様とレオナルト=ヴィッダーの戦いに介入するんじゃねぇぇぇ! てめえから死にてえのかっっ!!」
ジルバ=フリューゲルはまたしても右眼から目力を放ち、レオナルト=ヴィッダーを護るために魔術障壁を展開しているクソアマに向かって、雷光を落とす。エクレア=シューは魔力をレオナルト=ヴィッダーを護るために集中しているため、自分の身を護る術を持たなかった。黒雲から放たれた雷光が無防備のエクレア=シューの頭上から散々に降り注ぐ。
「常々思うけど、女に手をあげるあんたは最悪な男ね。男は女を護るべき存在でしょっ!!」
身体の痺れが取れたリリベル=ユーリィが渇いた地面を駆ける。右手に握る薔薇乙女の細剣から大量のイバラの鞭を現出させつつ、エクレア=シューに向かって、イバラの鞭を放つ。イバラの鞭はエクレア=シューの傘となり、天から降り注ぐ光の束を防ぐ。しかし、落雷の直撃は回避できたが、轟音と衝撃はエクレア=シューをその場から吹き飛ばす。宙を舞うエクレア=シューをリリベル=ユーリィはイバラの鞭をベッド状態にして、エクレア=シューが渇いた地面に身体を打ち付けるのを防ぐ。
「あ、ありがとうございます~~~、リリベル様」
「感謝は後よ。レオだけに戦わせてはダメ。わたしたちも出来る限りのレオの援護をするわよ」
リリベル=ユーリィはエクレア=シューと合流する。エクレア=シューがレオナルト=ヴィッダーの周囲に海色の魔術障壁を展開し、そのエクレア=シューを護るようにリリベル=ユーリィが彼女の護衛を買って出る。ジルバ=フリューゲルはチィィィ! とひと際大きく強く舌打ちをする。
ジルバ=フリューゲルは1vs3になってしまったことを嫌がり、ちらりと幌付き荷馬車のほうを見る。あちらには自分の部下であるミットライト=リュッケシュルトとロビン=ブルーストを派遣している。レオナルト=ヴィッダーたちの戦力として期待できる3人をジルバ=フリューゲルひとりで対応しているために、あちらの方はすぐにでも片がつくはずであった。
しかし、どう見ても、攻めあぐねいていた。ミットライト=リュッケシュルトとロビン=ブルーストの両名は。魔物の群れだけでなく、石の虚像も幌付き荷馬車を取り囲んでいるが、決着がつくにはまだまだ先のことだろうとジルバ=フリューゲルは予想する。ならば、ジルバ=フリューゲルは人数として不利とわかりつつも、レオナルト=ヴィッダーを仕留めねばならなかった。
「いいぜ。レオナルト=ヴィッダーたちを分断したつもりが、俺様のほうが分断にあっているわけだな? てめえらのところの指揮官役はよっぽど頭がキレてやがる……」
ジルバ=フリューゲルは認識を改めざるをえなかった。幌付き荷馬車を護る面々において、豚ニンゲンのように肥え太ったデブくらいが注意すべき相手だと思っていた。しかし、存外にも蒼髪オカッパの男の娘と、元娼婦の半猫半人も未だに地に伏してない。先日の戦いでは真っ先に倒れた2人娘が奮闘を続けられている。何かカラクリがあるのだろうが、それはレオナルト=ヴィッダーを倒した後に、調教部屋にあるベッドの上でじっくり尋問すれば良いことだ。
「俺様は相手が何人いようが、かまやあしねえ。邇邇芸《ニニギ》よ、俺様にもっともっと呪力を寄こせっ! 未だにニンゲンであることを超越しようとしないレオナルト=ヴィッダーとは違うところを見せろっ!!」
ジルバ=フリューゲルがそう叫ぶや否や、ますます、彼の右眼から放射される電流が強さを増す。ジルバ=フリューゲルを中心に乾いた地面にヒビが走り、大小さまざまな石が電流の影響を受けて、浮き上がることとなる。それと同時に地熱がそのまま電球へと変わっていき、ジルバ=フリューゲルの周囲には直径30センチュミャートルの電球が100を超すこととなる。
「俺様とどうか踊ってください、レオナルト=ヴィッダー、リリベル=ユーリィ、エクレア=シュー!!」
ジルバ=フリューゲルを中心として、100を超える電球が回転しはじめる。雷球がそれぞれに作用しあい、稲光で出来た竜巻を生み出す。そして、ジルバ=フリューゲルはさらに雷球を操作し、竜巻の太さをどんどん太くしていく。轟音と突風と電流がバチバチとぶつかり合い、死を呼ぶ風へと生まれ変わる。その中心部でジルバ=フリューゲルは高笑いを止めないでいた……。
すると、雷斬りが纏っていた雷光が直径30センチュミャートルほどの雷球へと変化し、それが10個、生み出される。レオナルト=ヴィッダーはその雷球群をグルルルゥゥゥと唸りながら見つめる。
「この技を俺様に繰り出せただけでも、てめえは誇ってもいいぜえええ!?」
ジルバ=フリューゲルはそう言うと、右眼から目力を発し、右眼で凝視した地点から直径10ミャートルの範囲で落雷を降らせる。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ稲光に打たれながらも、直撃だけは避ける。そんなレオナルト=ヴィッダーに対して、先ほど生み出した雷球を差し向けるジルバ=フリューゲルであった。
放たれた雷球群は一定の軌道を描くことはせず、互いにぶつかり合いながら、複雑な動きを描きつつ、レオナルト=ヴィッダーの周りを取り囲んでしまう。レオナルト=ヴィッダーは天から降り注ぐ稲光だけでなく、四方八方から自分の身に向かってくる雷球も回避せねばならなくなる。
ジルバ=フリューゲルの顔は歪み切っていた。レオナルト=ヴィッダーに対するあらゆる感情がないまぜになり、喜びとも悲しみとも怒りともつかないモノになっていたのだ。雷球のひとつがレオナルト=ヴィッダーの脇腹を抉り、天から降り注ぐ稲光がレオナルト=ヴィッダーの背中を打つ。レオナルト=ヴィッダーはまたしても宙に放りあげられたまま、ジルバ=フリューゲルにおもちゃにされてしまう。
「レオン様をやらせはしないのです~~~! あたしがレオン様を護るのです~~~!!」
エクレア=シューが雷光の檻に閉じ込められたレオナルト=ヴィッダーを救うために、両手で握る魔法の杖から魔力を放出し、海色の魔術障壁をレオナルト=ヴィッダーの周囲に出現させる。ジルバ=フリューゲルはエクレア=シューの存在を失念しており、チッチッチッ! と舌打ちを連打する。
「俺様とレオナルト=ヴィッダーの戦いに介入するんじゃねぇぇぇ! てめえから死にてえのかっっ!!」
ジルバ=フリューゲルはまたしても右眼から目力を放ち、レオナルト=ヴィッダーを護るために魔術障壁を展開しているクソアマに向かって、雷光を落とす。エクレア=シューは魔力をレオナルト=ヴィッダーを護るために集中しているため、自分の身を護る術を持たなかった。黒雲から放たれた雷光が無防備のエクレア=シューの頭上から散々に降り注ぐ。
「常々思うけど、女に手をあげるあんたは最悪な男ね。男は女を護るべき存在でしょっ!!」
身体の痺れが取れたリリベル=ユーリィが渇いた地面を駆ける。右手に握る薔薇乙女の細剣から大量のイバラの鞭を現出させつつ、エクレア=シューに向かって、イバラの鞭を放つ。イバラの鞭はエクレア=シューの傘となり、天から降り注ぐ光の束を防ぐ。しかし、落雷の直撃は回避できたが、轟音と衝撃はエクレア=シューをその場から吹き飛ばす。宙を舞うエクレア=シューをリリベル=ユーリィはイバラの鞭をベッド状態にして、エクレア=シューが渇いた地面に身体を打ち付けるのを防ぐ。
「あ、ありがとうございます~~~、リリベル様」
「感謝は後よ。レオだけに戦わせてはダメ。わたしたちも出来る限りのレオの援護をするわよ」
リリベル=ユーリィはエクレア=シューと合流する。エクレア=シューがレオナルト=ヴィッダーの周囲に海色の魔術障壁を展開し、そのエクレア=シューを護るようにリリベル=ユーリィが彼女の護衛を買って出る。ジルバ=フリューゲルはチィィィ! とひと際大きく強く舌打ちをする。
ジルバ=フリューゲルは1vs3になってしまったことを嫌がり、ちらりと幌付き荷馬車のほうを見る。あちらには自分の部下であるミットライト=リュッケシュルトとロビン=ブルーストを派遣している。レオナルト=ヴィッダーたちの戦力として期待できる3人をジルバ=フリューゲルひとりで対応しているために、あちらの方はすぐにでも片がつくはずであった。
しかし、どう見ても、攻めあぐねいていた。ミットライト=リュッケシュルトとロビン=ブルーストの両名は。魔物の群れだけでなく、石の虚像も幌付き荷馬車を取り囲んでいるが、決着がつくにはまだまだ先のことだろうとジルバ=フリューゲルは予想する。ならば、ジルバ=フリューゲルは人数として不利とわかりつつも、レオナルト=ヴィッダーを仕留めねばならなかった。
「いいぜ。レオナルト=ヴィッダーたちを分断したつもりが、俺様のほうが分断にあっているわけだな? てめえらのところの指揮官役はよっぽど頭がキレてやがる……」
ジルバ=フリューゲルは認識を改めざるをえなかった。幌付き荷馬車を護る面々において、豚ニンゲンのように肥え太ったデブくらいが注意すべき相手だと思っていた。しかし、存外にも蒼髪オカッパの男の娘と、元娼婦の半猫半人も未だに地に伏してない。先日の戦いでは真っ先に倒れた2人娘が奮闘を続けられている。何かカラクリがあるのだろうが、それはレオナルト=ヴィッダーを倒した後に、調教部屋にあるベッドの上でじっくり尋問すれば良いことだ。
「俺様は相手が何人いようが、かまやあしねえ。邇邇芸《ニニギ》よ、俺様にもっともっと呪力を寄こせっ! 未だにニンゲンであることを超越しようとしないレオナルト=ヴィッダーとは違うところを見せろっ!!」
ジルバ=フリューゲルがそう叫ぶや否や、ますます、彼の右眼から放射される電流が強さを増す。ジルバ=フリューゲルを中心に乾いた地面にヒビが走り、大小さまざまな石が電流の影響を受けて、浮き上がることとなる。それと同時に地熱がそのまま電球へと変わっていき、ジルバ=フリューゲルの周囲には直径30センチュミャートルの電球が100を超すこととなる。
「俺様とどうか踊ってください、レオナルト=ヴィッダー、リリベル=ユーリィ、エクレア=シュー!!」
ジルバ=フリューゲルを中心として、100を超える電球が回転しはじめる。雷球がそれぞれに作用しあい、稲光で出来た竜巻を生み出す。そして、ジルバ=フリューゲルはさらに雷球を操作し、竜巻の太さをどんどん太くしていく。轟音と突風と電流がバチバチとぶつかり合い、死を呼ぶ風へと生まれ変わる。その中心部でジルバ=フリューゲルは高笑いを止めないでいた……。
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