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第18章:紅玉眼の蒼き竜
第10話:親友の|呪力《ちから》
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――呪力が欲しいか?
レオナルト=ヴィッダーの燃え滾る心にそう語りかけてくる存在がいた。レオナルト=ヴィッダーは紅玉眼の蒼き竜に正面から打ち克つためにも呪力を欲した。素戔嗚からの呪力の供給は留まることを知らず、レオナルト=ヴィッダーを一個の獣へと化していく。
「貴様なぞに我が負ける謂われなどナイッ!」
紅玉眼の蒼き竜はドリルの形状をした巨大な氷柱を口から放った後、続けざまに口から猛吹雪を吐き出す。その白いツナミは先ほど放った巨大な氷柱を飛び越えて、レオナルト=ヴィッダーの身体を氷漬けにする。
――呪力が欲しいか?
レオナルト=ヴィッダーは意識が遠ざかっていく中で、心にその言葉を受ける。レオナルト=ヴィッダーは紅玉眼の蒼き竜に負けぬための呪力を欲する。レオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちに爬虫類のような鱗がびっしりと生えてくる。
「まだ諦めないつもりカ! ならば、これでドウダ!」
紅玉眼の蒼き竜は氷漬けになったはずのレオナルト=ヴィッダーがドリルの形状をした巨大な氷柱と白いツナミに飲み込まれ、遥か彼方へと飛んでいく姿を視認していたが、かの者が氷の牢獄から脱し、さらには巨大な氷柱を完全にかみ砕く。そして、黒い全身鎧全体を震わせて、獣の雄叫びをあげたことに戦々恐々となってしまう。
紅玉眼の蒼き竜は口から吐く竜の凍てつく息吹を放射状に吐くのをやめて、レオナルト=ヴィッダーの身を貫通するように細く長く鋭く吐き出す。それはレーザー光線のようであり、一直線にレオナルト=ヴィッダーの身を貫かんと突き進んでいく……。
――お前には護りたいものがあるんだろ? 俺様のところに来るのはまだ早えよ。
身も心も異形のモノになろうとしていたレオナルト=ヴィッダーの脳内にかつての親友の声が聞こえてくる。レオナルト=ヴィッダーはすでに眼が見えなくなりつつあったが、そのぼやける視界の先に雷光を纏う人物を見る。
「俺は呪力に頼るしかねえんだっ! 俺はこの呪力で世界を変えてやるっ!」
――馬鹿野郎っ! てめえはそうやって、アイリスを追い詰めたっ! 今度は俺様が最高だと思っているリリベルまで不幸にする気かっ!
「うるせえってんだっ! 俺にごちゃごちゃ言うなら、ジルバ=フリューゲル、お前の呪力も寄越せっ!!」
――カハッ! てめえは本当の馬鹿だっ! だからこそ、俺の親友だっ! さあ、俺様の呪力を受け取れっ! 抗えぬ運命の刃をもってして、てめえの運命を覆せっ!!
レオナルト=ヴィッダーは眼の前の雷光を纏う幻影から一本のカタナを手渡される。レオナルト=ヴィッダーはそのカタナの柄を握るや否や、身体の隅々にまで雷光が走る。その雷光はレオナルト=ヴィッダーの身を焼き尽くし、レオナルト=ヴィッダーを蝕んでいた素戔嗚の呪力と融合する。
その途端、レオナルト=ヴィッダーの身体にびっしりと生えていた爬虫類の鱗が内側から弾けるように爆散四散する。それだけではなかった。レオナルト=ヴィッダーの不気味に折れ曲がり、獣のようになっていたレオナルト=ヴィッダーの骨格をヒトのそれに戻す。
レオナルト=ヴィッダーは親友から受け取った『雷斬り』を『ヒトの構え』で握り込む。自分の身を貫かんとして吐き出された竜の凍てつく息吹に向かって、真正面から『雷斬り』を斜め上から斜め下へと振り下ろす。レオナルト=ヴィッダーが袈裟斬りに振るった『雷斬り』は竜の凍てつく息吹とかち合うと同時に幾百幾千の落雷を生じさせ、氷で出来たレーザービームを粉砕してしまう。
「貴様は一体、何者ダ!? 我が渾身の神力を込めた竜の凍てつく息吹を粉砕するダト!? ヒトの身で出来ることはではナイゾ!!」
紅玉眼の蒼き竜は驚愕する他無かった。今の一撃は現竜皇の年季の入った厚い鱗さえも貫通できると自負していたシロモノであったからだ。この技をもってして、現竜皇から竜皇の座を奪おうとしていたのだ、紅玉眼の蒼き竜は。だが、たかだか地上を這いまわるしか能の無いニンゲン族に、自信たっぷりの技を真正面から粉砕される。紅玉眼の蒼き竜は竜族最強の自負を打ち砕かれ、腰砕けとなってしまう。
「俺は……。俺を許せねえ……。誰よりも先に俺自身をい許せねえ……。幸せにすると約束したアイリスを幸せに出来ていない。護りたいと思う大切な仲間が俺の身を案じてくれて、その身を犠牲にしてくれる……。だからこそ、俺は俺を許せね……え」
レオナルト=ヴィッダーは息も絶え絶えにそう独白めいた台詞を吐く。すでにレオナルト=ヴィッダーの身体には雷斬りを振るう力は残されていなかった。レオナルト=ヴィッダーは身体をグラリと前へと倒しつつ、大空から地面へと向けて落下してく。その姿を紅玉眼の蒼き竜は黙って、見ていることしか出来なかった。
「我に恐怖を抱かせた男……。あいつの名を知りタイ。コッシロー=ネヅ。まだ近くに居るのでアロウ?」
「チュッチュッチュ。僕の幻術で僕の姿を視認できていないくせに、そこは察することが出来るのでッチュウね。あいつの名はレオナルト=ヴィッダー。『自由を欲するがゆえに、暴力に身を委ねた男』でッチュウ」
コッシロー=ネヅは海色の魔術障壁に包まれながら、エクレア=シューと共に、戦いの趨勢を見守っていた。コッシロー=ネヅは海色の魔術障壁にさらに幻術を重ねて、存在感を希薄にし、紅玉眼の蒼き竜の間近くまで接近していたのである。その幻術へ注がれる魔力を弱ませて、紅玉眼の蒼き竜にも視認できるようにする。
「ククッ! げに面白き世はこれからというコトカ……。ならば、我はここでレオナルト=ヴィッダーと共に相打ちとなるわけにはイカヌナ?」
「チュッチュッチュ。あいつだけでなく、僕もそしてお前も舞台に立つ役者のひとりでッチュウ。しかしながら、それは一旦さておき……。お前をそこまで追い詰めたレオナルト=ヴィッダーに報奨のひとつでも渡してほしいでッチュウよ?」
レオナルト=ヴィッダーの燃え滾る心にそう語りかけてくる存在がいた。レオナルト=ヴィッダーは紅玉眼の蒼き竜に正面から打ち克つためにも呪力を欲した。素戔嗚からの呪力の供給は留まることを知らず、レオナルト=ヴィッダーを一個の獣へと化していく。
「貴様なぞに我が負ける謂われなどナイッ!」
紅玉眼の蒼き竜はドリルの形状をした巨大な氷柱を口から放った後、続けざまに口から猛吹雪を吐き出す。その白いツナミは先ほど放った巨大な氷柱を飛び越えて、レオナルト=ヴィッダーの身体を氷漬けにする。
――呪力が欲しいか?
レオナルト=ヴィッダーは意識が遠ざかっていく中で、心にその言葉を受ける。レオナルト=ヴィッダーは紅玉眼の蒼き竜に負けぬための呪力を欲する。レオナルト=ヴィッダーの身体のあちこちに爬虫類のような鱗がびっしりと生えてくる。
「まだ諦めないつもりカ! ならば、これでドウダ!」
紅玉眼の蒼き竜は氷漬けになったはずのレオナルト=ヴィッダーがドリルの形状をした巨大な氷柱と白いツナミに飲み込まれ、遥か彼方へと飛んでいく姿を視認していたが、かの者が氷の牢獄から脱し、さらには巨大な氷柱を完全にかみ砕く。そして、黒い全身鎧全体を震わせて、獣の雄叫びをあげたことに戦々恐々となってしまう。
紅玉眼の蒼き竜は口から吐く竜の凍てつく息吹を放射状に吐くのをやめて、レオナルト=ヴィッダーの身を貫通するように細く長く鋭く吐き出す。それはレーザー光線のようであり、一直線にレオナルト=ヴィッダーの身を貫かんと突き進んでいく……。
――お前には護りたいものがあるんだろ? 俺様のところに来るのはまだ早えよ。
身も心も異形のモノになろうとしていたレオナルト=ヴィッダーの脳内にかつての親友の声が聞こえてくる。レオナルト=ヴィッダーはすでに眼が見えなくなりつつあったが、そのぼやける視界の先に雷光を纏う人物を見る。
「俺は呪力に頼るしかねえんだっ! 俺はこの呪力で世界を変えてやるっ!」
――馬鹿野郎っ! てめえはそうやって、アイリスを追い詰めたっ! 今度は俺様が最高だと思っているリリベルまで不幸にする気かっ!
「うるせえってんだっ! 俺にごちゃごちゃ言うなら、ジルバ=フリューゲル、お前の呪力も寄越せっ!!」
――カハッ! てめえは本当の馬鹿だっ! だからこそ、俺の親友だっ! さあ、俺様の呪力を受け取れっ! 抗えぬ運命の刃をもってして、てめえの運命を覆せっ!!
レオナルト=ヴィッダーは眼の前の雷光を纏う幻影から一本のカタナを手渡される。レオナルト=ヴィッダーはそのカタナの柄を握るや否や、身体の隅々にまで雷光が走る。その雷光はレオナルト=ヴィッダーの身を焼き尽くし、レオナルト=ヴィッダーを蝕んでいた素戔嗚の呪力と融合する。
その途端、レオナルト=ヴィッダーの身体にびっしりと生えていた爬虫類の鱗が内側から弾けるように爆散四散する。それだけではなかった。レオナルト=ヴィッダーの不気味に折れ曲がり、獣のようになっていたレオナルト=ヴィッダーの骨格をヒトのそれに戻す。
レオナルト=ヴィッダーは親友から受け取った『雷斬り』を『ヒトの構え』で握り込む。自分の身を貫かんとして吐き出された竜の凍てつく息吹に向かって、真正面から『雷斬り』を斜め上から斜め下へと振り下ろす。レオナルト=ヴィッダーが袈裟斬りに振るった『雷斬り』は竜の凍てつく息吹とかち合うと同時に幾百幾千の落雷を生じさせ、氷で出来たレーザービームを粉砕してしまう。
「貴様は一体、何者ダ!? 我が渾身の神力を込めた竜の凍てつく息吹を粉砕するダト!? ヒトの身で出来ることはではナイゾ!!」
紅玉眼の蒼き竜は驚愕する他無かった。今の一撃は現竜皇の年季の入った厚い鱗さえも貫通できると自負していたシロモノであったからだ。この技をもってして、現竜皇から竜皇の座を奪おうとしていたのだ、紅玉眼の蒼き竜は。だが、たかだか地上を這いまわるしか能の無いニンゲン族に、自信たっぷりの技を真正面から粉砕される。紅玉眼の蒼き竜は竜族最強の自負を打ち砕かれ、腰砕けとなってしまう。
「俺は……。俺を許せねえ……。誰よりも先に俺自身をい許せねえ……。幸せにすると約束したアイリスを幸せに出来ていない。護りたいと思う大切な仲間が俺の身を案じてくれて、その身を犠牲にしてくれる……。だからこそ、俺は俺を許せね……え」
レオナルト=ヴィッダーは息も絶え絶えにそう独白めいた台詞を吐く。すでにレオナルト=ヴィッダーの身体には雷斬りを振るう力は残されていなかった。レオナルト=ヴィッダーは身体をグラリと前へと倒しつつ、大空から地面へと向けて落下してく。その姿を紅玉眼の蒼き竜は黙って、見ていることしか出来なかった。
「我に恐怖を抱かせた男……。あいつの名を知りタイ。コッシロー=ネヅ。まだ近くに居るのでアロウ?」
「チュッチュッチュ。僕の幻術で僕の姿を視認できていないくせに、そこは察することが出来るのでッチュウね。あいつの名はレオナルト=ヴィッダー。『自由を欲するがゆえに、暴力に身を委ねた男』でッチュウ」
コッシロー=ネヅは海色の魔術障壁に包まれながら、エクレア=シューと共に、戦いの趨勢を見守っていた。コッシロー=ネヅは海色の魔術障壁にさらに幻術を重ねて、存在感を希薄にし、紅玉眼の蒼き竜の間近くまで接近していたのである。その幻術へ注がれる魔力を弱ませて、紅玉眼の蒼き竜にも視認できるようにする。
「ククッ! げに面白き世はこれからというコトカ……。ならば、我はここでレオナルト=ヴィッダーと共に相打ちとなるわけにはイカヌナ?」
「チュッチュッチュ。あいつだけでなく、僕もそしてお前も舞台に立つ役者のひとりでッチュウ。しかしながら、それは一旦さておき……。お前をそこまで追い詰めたレオナルト=ヴィッダーに報奨のひとつでも渡してほしいでッチュウよ?」
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