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第20章:東への帰路
第5話:衛兵の仕事
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温泉宿の御主人と女将に再会の約束をしたレオナルト=ヴィッダーたちは、手荷物を持って、幌付き荷馬車へと乗り込む。当初、ここまでやってきた道中をそのまま通って戻ろうという考えであったが、カッツエ=マルベール女王の厚意もあり、レオナルト=ヴィッダーたちは五大湖を船で横断する運びとなる。
レオナルト=ヴィッダーたちを乗せた幌付き荷馬車は南に向かうのではなく、北に向かい、五大湖でも船を発着できる港町へと移動する。御者台にはデーブ=オクボーンが座り、その隣には案内役の白銀の獣皇がちょこんと行儀よく座っていた。
「王城を右手に見ながら、道沿いにぐるりと北上していけば、港町に辿り着くッスワン。道中、1カ所、関所があるッスけど、俺っちが居れば顔パスで通れるッス」
「なんだかフラグを立てられたような気がするぞ……。本当に顔パスで通れるのか?」
デーブ=オクボーンは自信たっぷりの表情を浮かべるシロちゃんに対して、怪訝な表情を浮かべるしかなかった。しかしながら、不安感を抱きながらも、そこに向かうしかないので、デーブ=オクボーンはシロちゃんの言うことを信じて、馬車を向かわせる
温泉宿から出発してから1時間後には、シロちゃんが言う関所の前へとたどり着く。シロちゃんは関所の衛兵にご苦労さんッスワン! と元気よく吠えてみせる。
「これはこれは……。白銀の獣皇様。話は女王様から聞いております。しかしながら、不審な輩や、物を荷馬車に乗せている可能性は否定できないので、一応、チェックさせてもらいますぞ?」
「自分の仕事に忠実なのは賢いッスワン。でも、俺っちが保証するッス。物騒なモノを持ち運んでいたりはしないッスワン」
関所の衛兵たちは形式上であると弁明しながらも、手狭な荷台部分に乗り込み、軽くレオナルト=ヴィッダーたちの所有物をチェックしはじめる。そして、異様な雰囲気を醸し出す木箱に眼をつけて、これの中身をチェックして良いか? とレオナルト=ヴィッダーに問いただす。レオナルト=ヴィッダーは見られて困るモノではないだろうと、衛兵たちにどうぞと勧めるのであった。
「むむ……。この大量のろうそくは一体なんだ……ね? きみたちは行商人であるという通達は受けていないのだが……」
「ああ、それは俺の身体にぶっかけられる分のろうそくだ。温泉宿の女将にSMプレイ用に持っていきなさいと言われてさ。けっして、商売のために持ち込んでいるモノじゃない。あくまでも俺自身が消費する分だ」
レオナルト=ヴィッダーの言葉を受けて、衛兵は頬を引きつらせる他無かった。縦横50センチュミャートル。高さ40センチュミャートルの木箱に敷き詰められた赤いろうそくの量はどう考えても、個人で消費するには多すぎる量である。しかしながら、この太さで赤いろうそくを何に使用するか問われれば、衛兵だって、SM用であることは自明の理であった。
結果、衛兵は木箱の蓋をそっと閉じて、見て見ぬ振りをすることにした。それほどまでに自信ありげな態度に出ているレオナルト=ヴィッダーである。そして、荷馬車には男の娘を含めて、4人もの女性が居る。レオナルト=ヴィッダーという男が女性陣から一斉にろうそくのロウを垂らされると考えれば、この木箱の中身もすぐに消費されるのだろうと納得することにした。
次に衛兵が注目したのは、パンパンに膨れ上がっているふたつの魔法の荷物入れであった。その魔法の荷物入れの所有者は可愛らしい男の娘である。その背丈から考えるに、魔法の荷物入れのパンパンっぷりは、衛兵も訝し気な表情になる他無かった。
「ぶっそうなモノは入ってないと思うのですけどォ。お仕事上、チェックするしかないんですよェ……」
「うむ。魔法の荷物入れをひっくり返して、中身をぶちまけるようなことはしないので、その魔法の荷物入れを貸してもらえるかな?」
衛兵は愛くるしい男の娘が不安感を抱かないように、言葉に注意しながら発言する。そして、恐る恐る手渡された魔法の荷物入れの底を両腕で持った途端、衛兵は驚きの表情を浮かべるしかなかった。
大の大人が両腕で抱え上げねばならぬだろうと予想していたのに、魔法の荷物入れは異様に軽かったのである。魔法の荷物入れのパンパンぶりから予想するに、ひとつ10キュログラムはあるだろうと予想していたのだ、その衛兵は。
しかし、実際は2キュログラムあるかどうかの重量であり、なぜ、このパンパンぶりで、この重量で収まっているのかが、不思議でたまらないという表情を顔に浮かべるしかない衛兵であった。受け取った魔法の荷物入れを一旦、荷台の上に置き直し、衛兵は片膝つきつつ、覗き込むようにしながら魔法の荷物入れの中身をジロジロと検査しはじめる。
そんな衛兵の眼に映ったのが、一片10センチュミャートルあるひし形に近い形をした何かの鱗であった。衛兵は自然とその鱗に手を伸ばし、指先が触れるや否や、その指先に痛覚が走ることとなる。
「いつっ! これは何だ!? 何かの魔法の道具か!?」
「あ、それは紅玉眼の蒼き竜の鱗なのですゥ。紅玉眼の蒼き竜の身体から剥がれたというのに、時折、とんでもない冷気を放つんですゥ。うかつに触らないほうが良いのですゥ」
それなら早く言えよ! と口から言葉が飛び出そうになってしまう衛兵であったが、申し訳ない顔をしている可愛い男の娘を叱責してはいけないという感情のほうが強く、衛兵はゴホン……と小さく咳払いをして、気持ちを落ち着かせることとなる。
「さすがは紅玉眼の蒼き竜を追い払った英雄たちですな。その戦利品なのでしょう。これも見なかったことにしましょうぞ」
愛くるしい男の娘所有の魔法の荷物入れの中には、黄金色の液体がたゆたうポーションの瓶や、吸い込まれるような紅い色の羽根等も見受けられたが、その一切合切を見なかったことにする衛兵である。紅玉眼の蒼き竜を追い払うような英雄ならば、自分のような一般人? の眼を引く魔法の道具を持っていて当然だろうという結論に至ったのである。
それらの魔法の道具の用途は不明なモノばかりであるが、職務に忠実である衛兵は日常通りに、あからさまに危険なシロモノであろうという直感が働かなければ不問にするという鉄則に従うことになる。
レオナルト=ヴィッダーたちを乗せた幌付き荷馬車は南に向かうのではなく、北に向かい、五大湖でも船を発着できる港町へと移動する。御者台にはデーブ=オクボーンが座り、その隣には案内役の白銀の獣皇がちょこんと行儀よく座っていた。
「王城を右手に見ながら、道沿いにぐるりと北上していけば、港町に辿り着くッスワン。道中、1カ所、関所があるッスけど、俺っちが居れば顔パスで通れるッス」
「なんだかフラグを立てられたような気がするぞ……。本当に顔パスで通れるのか?」
デーブ=オクボーンは自信たっぷりの表情を浮かべるシロちゃんに対して、怪訝な表情を浮かべるしかなかった。しかしながら、不安感を抱きながらも、そこに向かうしかないので、デーブ=オクボーンはシロちゃんの言うことを信じて、馬車を向かわせる
温泉宿から出発してから1時間後には、シロちゃんが言う関所の前へとたどり着く。シロちゃんは関所の衛兵にご苦労さんッスワン! と元気よく吠えてみせる。
「これはこれは……。白銀の獣皇様。話は女王様から聞いております。しかしながら、不審な輩や、物を荷馬車に乗せている可能性は否定できないので、一応、チェックさせてもらいますぞ?」
「自分の仕事に忠実なのは賢いッスワン。でも、俺っちが保証するッス。物騒なモノを持ち運んでいたりはしないッスワン」
関所の衛兵たちは形式上であると弁明しながらも、手狭な荷台部分に乗り込み、軽くレオナルト=ヴィッダーたちの所有物をチェックしはじめる。そして、異様な雰囲気を醸し出す木箱に眼をつけて、これの中身をチェックして良いか? とレオナルト=ヴィッダーに問いただす。レオナルト=ヴィッダーは見られて困るモノではないだろうと、衛兵たちにどうぞと勧めるのであった。
「むむ……。この大量のろうそくは一体なんだ……ね? きみたちは行商人であるという通達は受けていないのだが……」
「ああ、それは俺の身体にぶっかけられる分のろうそくだ。温泉宿の女将にSMプレイ用に持っていきなさいと言われてさ。けっして、商売のために持ち込んでいるモノじゃない。あくまでも俺自身が消費する分だ」
レオナルト=ヴィッダーの言葉を受けて、衛兵は頬を引きつらせる他無かった。縦横50センチュミャートル。高さ40センチュミャートルの木箱に敷き詰められた赤いろうそくの量はどう考えても、個人で消費するには多すぎる量である。しかしながら、この太さで赤いろうそくを何に使用するか問われれば、衛兵だって、SM用であることは自明の理であった。
結果、衛兵は木箱の蓋をそっと閉じて、見て見ぬ振りをすることにした。それほどまでに自信ありげな態度に出ているレオナルト=ヴィッダーである。そして、荷馬車には男の娘を含めて、4人もの女性が居る。レオナルト=ヴィッダーという男が女性陣から一斉にろうそくのロウを垂らされると考えれば、この木箱の中身もすぐに消費されるのだろうと納得することにした。
次に衛兵が注目したのは、パンパンに膨れ上がっているふたつの魔法の荷物入れであった。その魔法の荷物入れの所有者は可愛らしい男の娘である。その背丈から考えるに、魔法の荷物入れのパンパンっぷりは、衛兵も訝し気な表情になる他無かった。
「ぶっそうなモノは入ってないと思うのですけどォ。お仕事上、チェックするしかないんですよェ……」
「うむ。魔法の荷物入れをひっくり返して、中身をぶちまけるようなことはしないので、その魔法の荷物入れを貸してもらえるかな?」
衛兵は愛くるしい男の娘が不安感を抱かないように、言葉に注意しながら発言する。そして、恐る恐る手渡された魔法の荷物入れの底を両腕で持った途端、衛兵は驚きの表情を浮かべるしかなかった。
大の大人が両腕で抱え上げねばならぬだろうと予想していたのに、魔法の荷物入れは異様に軽かったのである。魔法の荷物入れのパンパンぶりから予想するに、ひとつ10キュログラムはあるだろうと予想していたのだ、その衛兵は。
しかし、実際は2キュログラムあるかどうかの重量であり、なぜ、このパンパンぶりで、この重量で収まっているのかが、不思議でたまらないという表情を顔に浮かべるしかない衛兵であった。受け取った魔法の荷物入れを一旦、荷台の上に置き直し、衛兵は片膝つきつつ、覗き込むようにしながら魔法の荷物入れの中身をジロジロと検査しはじめる。
そんな衛兵の眼に映ったのが、一片10センチュミャートルあるひし形に近い形をした何かの鱗であった。衛兵は自然とその鱗に手を伸ばし、指先が触れるや否や、その指先に痛覚が走ることとなる。
「いつっ! これは何だ!? 何かの魔法の道具か!?」
「あ、それは紅玉眼の蒼き竜の鱗なのですゥ。紅玉眼の蒼き竜の身体から剥がれたというのに、時折、とんでもない冷気を放つんですゥ。うかつに触らないほうが良いのですゥ」
それなら早く言えよ! と口から言葉が飛び出そうになってしまう衛兵であったが、申し訳ない顔をしている可愛い男の娘を叱責してはいけないという感情のほうが強く、衛兵はゴホン……と小さく咳払いをして、気持ちを落ち着かせることとなる。
「さすがは紅玉眼の蒼き竜を追い払った英雄たちですな。その戦利品なのでしょう。これも見なかったことにしましょうぞ」
愛くるしい男の娘所有の魔法の荷物入れの中には、黄金色の液体がたゆたうポーションの瓶や、吸い込まれるような紅い色の羽根等も見受けられたが、その一切合切を見なかったことにする衛兵である。紅玉眼の蒼き竜を追い払うような英雄ならば、自分のような一般人? の眼を引く魔法の道具を持っていて当然だろうという結論に至ったのである。
それらの魔法の道具の用途は不明なモノばかりであるが、職務に忠実である衛兵は日常通りに、あからさまに危険なシロモノであろうという直感が働かなければ不問にするという鉄則に従うことになる。
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