【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

文字の大きさ
203 / 261
第21章:新たな出会い

第2話:|漢《おとこ》の誇り

しおりを挟む
 レオナルト=ヴィッダーとトーマス=ロコモーティブとの意地の張り合いは時間にして、3分弱が経過しようとしていた。レオナルト=ヴィッダーの右腕にはめられている前腕固定型杖ロフストランドクラッチがギシギシと悲鳴を上げている。レオナルト=ヴィッダーはそれでもグギギ……と歯ぎしりしながら、トーマス=ロコモーティブの威圧を押し返そうとしていた。

 レオナルト=ヴィッダーたちを取り囲む面々もゴクリと生唾を飲み込んでしまうほどに、彼らは意地と意地のぶつかり合いをさせ続けていた。

「そろそろ諦めたほうが良いのではないかっ!? レオナルト=ヴィッダーッ!!」

「へっ! てめえこそ、息があがってんじゃねえかっ! 老体に鞭打ってんじゃねえよっ!!」

 こういう押し合いにおいて、先に前のめりになった方が、体重をかけやすい。トーマス=ロコモーティブは初老に入っている身であるために、体力面ではレオナルト=ヴィッダーに劣るが、そこは老練された技術でレオナルト=ヴィッダーの身体に全身鎧フルプレート・メイル込みの重量を押し付けていく。レオナルト=ヴィッダーはギシギシと悲鳴を上げ続ける前腕固定型杖ロフストランドクラッチに不安を抱きながらも、そちらには目をやらず、真っ直ぐにトーマス=ロコモーティブのほんのりと紫色に染まる眼を見返していた。

(こいつっ! 奥の手で俺に催眠術をかけようとしてないか!? この怪しげな眼はコッシローに似てやがるっ!!)

 トーマス=ロコモーティブと鍔迫り合いを繰り広げるレオナルト=ヴィッダーは一抹の不安を心に抱く。睨みつけられたら睨み返すのがレオナルト=ヴィッダーの神髄である。しかし、段々と紫色を強めていくトーマス=ロコモーティブの眼を真っ直ぐに見ていていいのか? という疑念が心に沸いてくる。そして、その疑念はレオナルト=ヴィッダーの身体から力を奪っていく。集中せねばならぬ時に、集中しきれなくなれば、意識と共に自然と身体の力が余所に流れていくのは当然であった。

「どうやら、そこが限界なようだなっ! レオナルト=ヴィッダーッッッ!!」

「いちいち、俺の名前を出してくんじゃねえっ! 『さん』をつけろ、このでこすけがぁぁぁ!!」

 レオナルト=ヴィッダーは無理やりに身体の奥底から怒りをこみあげさせて、言葉に乗せる。そうすることで、霧散しつつあった心と身体の力を眼の前のおとこに集中させる。その甲斐もあって、レオナルト=ヴィッダーは段々とトーマス=ロコモーティブを押し返しつつあった。そして、レオナルト=ヴィッダーは振り払うかのように左腕を左側へと振り、ついにトーマス=ロコモーティブがソフィア=グレイプに向かって振り下ろしていた凶刃を跳ね返すことに成功する。

「はあはあはあっ! 俺の勝ちだっ!!」

「はあはあはあっ! 良い気になるなよ、小童こわっぱがっ!!」

 どちらも荒い呼吸を繰り返し、一度、大きく呼吸をした両名は2度目の鍔迫り合いへと移行していく。ふぐっ! と大きく酸素を肺に取り込み、呼吸を止めて、第2の凶刃を今度はレオナルト=ヴィッダーの方へと向けて振り下ろす。レオナルト=ヴィッダーは今度はまともに受け止めようとせず、受け流すように左腕を払う。トーマス=ロコモーティブはグヌゥ! と唸りつつ、身体を回転させて、横薙ぎに大剣クレイモアを振り回す。レオナルト=ヴィッダーは右腕にはめている前腕固定型杖ロフストランドクラッチは邪魔だとばかりに右腕を横に振るって、それを甲板上へと投げ飛ばす。

 そうした後、レオナルト=ヴィッダーは左腕の内側に右手を添えつつ、左腕自身が楯の如くにトーマス=ロコモーティブの続けざまの三連撃を捌いてみせる。ガキンガキンッと金属と金属がぶつかり合う音がホワイトウルフ号の甲板上に響き渡る。その音に重なるように木の板が破砕する音も混ざりつつあった。

 トーマス=ロコモーティブは上下左右へと両手で扱わなければ振るえぬほどの重量がある大剣クレイモアを振り回す。レオナルト=ヴィッダーの左腕で軌道を逸らされた大剣クレイモアは甲板に痛ましい傷をつける。そして、トーマス=ロコモーティブが述べ10連撃目を放った時、彼が両手で持つ大剣クレイモアはリンゴが詰まった木製の樽を破砕することとなる。

 樽から爆発するように宙へと飛んでいくリンゴの群れは甲板上に転がるだけでなく、湖へも落下していく。クルス=サンティーモは彼らの戦いを見ていると同時に、レオナルト=ヴィッダーがあの大剣クレイモアで腹を裂かれて、今のリンゴのようにハラワタをそこら中にぶちまけてしまうのではないのかと思ってしまう。そして、自然とクルス=サンティーモはリリベル=ユーリィの左腕に自分の両腕を回し、ギュッと抱き込んでしまう。

 そんな彼女に対して、リリベル=ユーリィは右手でクルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点を右手で優しく撫でてみせる。

「レオは大丈夫。わたしにすっこんでろって言っておいて、おめおめと負けて帰ってくる男じゃないわっ!」

「は、はいっ! レオン様が負けるはずが無いのですゥ! レオン様、頑張ってくださいィ!」

「あたしもレオン様を応援するのです~~~! レオン様、そんなおっさんに負けちゃダメなのです~~~!!」

「あちきもレオン様を応援するニャンっ! 女の敵の臭いがプンプンするおっさんに勝ってくださいニャンっ!」

 レオナルト=ヴィッダーを見守る4人娘はレオナルト=ヴィッダーに勝てと命ずる。レオナルト=ヴィッダーはオウよっ!! と力強く返し、ついに奥の手を出す。

「左手が光って唸る!? それは何だっ!?」

 今の今まで、レオナルト=ヴィッダーを呪い殺さんとするほどの目力めぢからを持っていたトーマス=ロコモーティブの双眸に明らかに動揺の色が走る。レオナルト=ヴィッダーが右手を添えている左の腕先が黒色から黄金こがね色に変貌したのだ。そして、その黄金こがね色は一層に強まっていき、トーマス=ロコモーティブはあからさまに後ずさりしてしまう。

 レオナルト=ヴィッダーは左手の手のひらに右手を持っていき、そこから何かを引き抜くように右腕を右へと振り払ってみせる。そうしたと同時に、光り輝く刃がレオナルト=ヴィッダーの右手に収まっていた。その黄金こがね色の光は帯電しており、その身から発する稲光は天に住まう神の身すら焼いてしまいそうなほどの威光を発していた。

 レオナルト=ヴィッダーの右手に握られている光の刃は『雷斬り』であった。かつてのレオナルト=ヴィッダーの戦友ともが振るっていたモノだ。レオナルト=ヴィッダーはその『雷斬り』の柄を両手で握りしめ直し、上段構えから袈裟斬りにトーマス=ロコモーティブを斬ってみせる。

「ぐおおおっ! 身の内側から焼けるように熱いっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...