【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第21章:新たな出会い

第3話:譲れぬ想い

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 レオナルト=ヴィッダーによって振るわれた雷斬りに斬られたトーマス=ロコモーティブはよろめきながら、甲板上を後ずさりする。ついには甲板の縁に背中を預ける形となる。レオナルト=ヴィッダーは右手のみで雷斬りを横に振り、その刀身についた何かを振り払う所作をした後、左の手のひらの中へと、稲光を収めていく。

「みね打ちだ。安心しろ。命まで取る気は無い。今までの罪をそこのソフィアに詫びろ。それでチャラにしてやる」

「クックック……。命までは取らぬ!? バカを言えっ! 貴様に慈悲をもらうほど、私は落ちぶれてはおらんっ!!」

 トーマス=ロコモーティブは肩でゼエゼエハアハアと呼吸をしながら、未だに自分の身体に斜めに走る稲光へ右手を添える。実際には斜めに両断されているわけではないが、自分の身に巣食う雷光が未だに身体を内側から焼き続けていた。金属と肉の身を焼く匂いが甲板上に漂い始め、思わずクルス=サンティーモは鼻を両手で抑え込んでしまう。

(レオン様とトーマス=ロコモーティブは意地の張り合いを続けているのですゥ……。レオン様は言葉通り、トーマス=ロコモーティブの命を取るまではしたくない雰囲気ですけどォ……。彼が降伏を受け入れるとは思えないんですゥ)

 クルス=サンティーモは出来るならば、トーマス=ロコモーティブに降伏するようにと言葉をかけたかった。だが、それをすれば自害も辞さずという雰囲気を出しているトーマス=ロコモーティブである。稲光という呪力ちからで、身体を蝕まれようとも、それでも戦う意思を捨てる気はさらさら無さそうな彼であった。

 息も絶え絶えといった感じのトーマス=ロコモーティブは尻を甲板上から浮き上がらせ、背中を甲板の縁に押し付けながら、どうにか立ち上がる。そして、皆の脳裏によぎっていた通りの行動をトーマス=ロコモーティブは為す。

「私は海の藻屑となろうとも、私の思いを成就してみせるっ! 決して聖地:エルハレムにソフィア=グレイプが足を踏み入れることはさせぬっ!」

 トーマス=ロコモーティブはそう言うと、背中を海老ぞりにさせながら、そのまま頭から湖面へと滑り落ちていく。ドポーーーン! と盛大な水しぶきをあげながら、彼は入水してしまう。今まで静観を決め込んでいたデーブ=オクボーンたちは甲板の縁に近づき、トーマス=ロコモーティブが濁った湖に沈んでいく姿を眼で追う。

「レオン、どうすんだ!? トーマス=ロコモーティブがどんどん沈んでいくぞぉ!?」

「あうあうあう~~~。意地の張り合いで命を落とすことは無いのです~~~。後味悪すぎで、トーマス=ロコモーティブが入水自殺したシーンを夢で見ちゃうことになるのです~~~」

 レオナルト=ヴィッダーの味方であるはずのデーブ=オクボーンとエクレア=シューがついにはレオナルト=ヴィッダーを責める側へと回ってしまう。しかし、レオナルト=ヴィッダーは毅然とした態度のままに

「俺は悪くねぇ! 男装趣味のソフィアを悲しませたあいつが悪い! あいつが溺れ死ぬ道を選んだのなら、それは贖罪ゆえだ!!」

 レオナルト=ヴィッダーが暴論に近い正論を言ってのける。確かにレオナルト=ヴィッダーの言う事には一理あるが、それでもやりようはあったはずだと思ってしまうデーブ=オクボーンとエクレア=シューである。逡巡するデーブ=オクボーンたちに対して、さらにレオナルト=ヴィッダーが言葉を続ける。

「罵られている相手が事情もよくわかってないソフィアだからこそ、やりすぎだとお前たちは思うだけだ。俺はエクレアが同じように罵られていたら、湖に自ら投身する前に、ぶっ殺していたっ!」

「あうあうあう~~~。レオン様の御言葉は嬉しい限りなのです~~~。あたしは当事者意識が少なからず欠けていたのです~~~」

「わかれば良いんだ。強く言い過ぎてすまない。俺は手の届く範囲で、男装趣味のソフィアが斬られるのは嫌だったんだ。ただそれだけだ」

 レオナルト=ヴィッダーはそう言い切ると、エクレア=シューにゆっくりと近づいていき、彼女のターコイズブルーに染まる頭を優しく右手で撫でる。エクレア=シューはそうされるだけで、憂い顔からパッと華が咲いたかのような笑顔となる。

「レオ。これからどうする気?」

 リリベル=ユーリィは甲板上に投げ捨てられた前腕固定型杖ロフストランドクラッチを拾い上げ、それをレオに手渡しつつ、そう質問する。レオナルト=ヴィッダーは手渡された前腕固定型杖ロフストランドクラッチを右腕に絡めつつ

「何も考えていねえ。しかしだ。トーマス=ロコモーティブが最後に言っていた言葉が気になる。あいつはソフィアを聖地:エルハレムへ行かせたくなさそうだった。答えはそこにあるんじゃないのか? ソフィア」

 レオナルト=ヴィッダーがそう言うと、甲板上に集まっている面々の視線は未だ立ち上がれぬソフィア=グレイプに集中することになる。だが、当の本人は戸惑いの色を顔に浮かべたまま、皆が向けてくる視線から顔を背けてしまう。何か訳ありなのは、彼女の取った所作からもうかがえる。そして、空気を読まぬことで定評のある2匹がソフィア=グレイプに纏わりつくことになる。

「おッス、おッス! 俺っち、白銀の獣皇ッス。何の目的があって、ソフィアは聖地:エルハレムに行こうとしていたんッスか? あの地は聖地ではなく、今や性地ッスよ?」

「チュッチュッチュ。シロちゃんの言う通り、エルハレムと称するよりも、『ヘルハーレム』と呼ぶほうがふさわしいのでッチュウ。お前は男娼もとい、売春婦として、あの地に足を踏み入れるつもりだったのでッチュウ?」

「うぅ……。わたくしは何も知りませんっ! ただ、わたくしは『ニエ』だとバージニア王国の大法官に言われていました。わたくしが自分の身を犠牲にすることで、バージニア王国はミレニアム王国へと産まれ変わることが出来ると……」

 2匹とひとりの会話の内容はレオナルト=ヴィッダーたちにとって、ちんぷんかんぷんであった。ソフィア=グレイプの言うことは謎だらけであったが、それでも『ニエ』という言葉が盛大に引っかかる一同であった。そして、皆がよく事情をわかってないという中、白銀の獣皇ことシロちゃんと蝙蝠羽付きの白いネズミだけはやれやれという所作をしている。

「レオンっち。ちょっくら、早まったことをしてしまったかもしれないッスね。トーマス=ロコモーティブは100パーセントの悪意をもってして、ソフィアっちを聖地:エルハレムから遠ざけていたわけではなさそうッス」

「しかしながらでッチュウ。トーマス=ロコモーティブが大剣クレイモアをソフィアの頭に叩きこもうとした時、奴は明らかに殺意を抱いていたのでッチュウ。その理由を知ろうにも、トーマス=ロコモーティブは湖の底へ沈んでしまったのでッチュウ」

「俺は悪くねえっつってんだろ!! そんな裏事情があるのを知ってたら、あいつを逃がしているわけねえだろっ!!」
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