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第21章:新たな出会い
第7話:間違った覚悟
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「帆をたためっ! 碇を降ろせっ!」
ホワイトウルフ号の船長であるルイ=マッケンドーが水夫たちに指示を出し、聖地:エルハレムにある波止場で船を停泊させる。甲板上ではソフィア=グレイプがバージニア王国の白鳥騎士団が着る正装姿で現れる。まさに誰が見ても、美麗な青年騎士であり、彼女の周りに集まる面々は、ほぉぉぉと感心の声を漏らしてしまう。
「ルイ=マッケンドー船長、ここまで運んでいただき、ありがとうございます。あとは自分の足で聖地の奥へと進みます……」
ソフィア=グレイプは言葉尻が言葉通りに尻すぼみになっていく。彼女は不安でしょうがなかった。親にも触れられたこともない筋肉質な身体を魔皇に良いように弄ばれると考えただけで、腹の奥底から恐怖が昇ってくる。いくら、気丈にサラシを巻いた胸を張っていようが、段々と猫背になっていく。
「ひゃんっ!?」
背中を丸めていくソフィア=グレイプの尻をズボン越しにこねくりまわし、さらにはパーーーン! と馬の尻を叩くように平手打ちする人物が居た。ソフィア=グレイプはその場で跳ね上がったあと、そうした人物を睨みつける。
「いい加減、わたくしのお尻をいいように扱うのはやめてくださいっ! あなたはいったい、何なんですか!?」
「俺か? 俺はレオナルト=ヴィッダーってんだ。この名前を憶えておいてくれ。なんたって、魔皇に喧嘩を売る男の名前だからなっ!」
力強くそう言ってのける男に対して、ソフィア=グレイプは眼を白黒とさせてしまう。この男は馬鹿なのか!? 相手は四皇がひとり、魔皇なのである。その魔皇に喧嘩を吹っ掛ける満々な態度である男に対して、ソフィア=グレイプは口を金魚のようにパクパクと開閉させる他なかった。
「しゃあねえなあ、レオン。おいらも付き合ってやるぜ。お前なら、そう言うと思って、おいらは楽しみにしてたんだからよぉ!」
豚ニンゲンのような身体付きのデーブ=オクボーンがレオナルト=ヴィッダーの背中をバンバンと叩き、次にはレオナルト=ヴィッダーの肩に右腕を回す。ソフィア=グレイプから見たら、ガキがふたりではしゃいでいるようにしか見えない。
「デーブ。それを言うのはわたしなのよ。何、先にレオに言っちゃってるのよ。わたしの台詞を取らないでよ」
紅い部分鎧に身を包むダークエルフの女騎士が、はあやれやれとばかりに身体の左右に両腕を広げながら、はしゃぐ男2人に近づいていく。レオナルト=ヴィッダーは、おう、頼りにしてるぞ、リリベル=ユーリィ殿と軽口を叩いてみせる。
そして、ソフィア=グレイプのために魔皇に喧嘩を売ると宣言する者は段々と増えていく。蒼髪オカッパの愛くるしい男の娘が笑顔でソフィア=グレイプの両手を下からすくあげるように両手で持ってくれる。彼女の手は非常に柔らかく、自分の豆だらけのゴツゴツとした手が恥ずかしいモノだと言われている気がしてならなくなってしまう。
次いで、間延びした口調でレオン様は馬鹿は馬鹿でも北ラメリア一番の馬鹿なのです~~~と言ってのけるターコイズブルーの双眸を持つ女性がソフィア=グレイプに近づいてくる。彼女の眼に見つめられているだけで、心底、ソフィア=グレイプは安心感を得る。まるで母なる海に包まれている、そんな感覚に包まれるのであった。
「うぅ……。出遅れましたニャン。皆が皆で台詞を奪い合うから、あちきがソフィア様にかける言葉が無くなってしまいましたニャン。あちきは引きも弱い薄幸の女の子ですニャ~~~ン」
「チュッチュッチュ。欲しいものがあるなら、ねだるな出しゃばれって言葉があるのでッチュウ。シロちゃんくらいにふてぶてしくなるべきでッチュウ」
「うえぇぇ!? 俺っち、そんなにふてぶてしいッスか? コッシローっちに言われる筋合いはこれっぽちもないッスよ!?」
最後に自分に寄り沿ってくれたのは、服を着ていなくても絶壁洗濯板なのだろうと容易に想像できる華奢な半猫半人と、その彼女の頭の上にちょこんと乗っている蝙蝠羽付きの白いネズミ。そして、彼女の足元に纏わりついている白いラメリアン・ハスキーであった。特に白いラメリアン・ハスキーは、何かあれば魔皇の喉笛を食いちぎってやるッスワン! と豪語してみせる。
「皆さま……。わたくしは嬉しい限りです。わたくしを元気づけるために言ってくれるのですね?」
ソフィア=グレイプは、魔皇に弄ばれる運命に打ち克てと言われている気がしてならなかった。彼らは彼らなりに自分を元気づけてくれているのだと、自然と両目から涙が溢れ出し、それを両手でこすり、無理やり涙を堰き止めようとする。
「はい、レオ。ソフィア様を泣かせたわね。タイキックよっ!」
「ありがとうございますっ!」
ソフィア=グレイプは眼尻をこすりながら、コントをかますレオナルト=ヴィッダーとダークエルフの女騎士を微笑ましく思ってしまう。自分は魔皇の妻になるのではなく、彼らの一員として迎え入れられたい気分になってしまう。だが、それではバージニア王国を裏切ってしまうことになる。それは出来ないと心に言い聞かせ、姿勢を正した後、彼らに一礼する。
「本当に心から感謝いたします。これで迷いを払い、決心できました。わたくしは魔皇に手籠めにされようとも、あなた方の言葉を糧に生きていこうと思います」
ソフィア=グレイプがそう言ったのもつかの間、リリベル=ユーリィがずずいと彼女の眼の前に立ち、パーーーンという音を立てる。リリベル=ユーリィはなんと、ソフィア=グレイプの横っ面を平手打ちしたのである。ソフィア=グレイプは一瞬、何をされたのか、理解が及ばなかった。呆けた顔のまま、怒り心頭のリリベル=ユーリィの顔を見つめることとなる。
「何、悲劇のヒロインに浸っているのよっ! あんたはレオと変わらないくらいに馬鹿ねっ! レオはあんたを救ってみせると言っているの。伊達や酔狂で魔皇と喧嘩を売るって言ってないのっ! 貴女が本当に腹をくくらなきゃならないのは、その馬鹿なレオに貴女の尻穴をガバガバにされることよっ!!」
「尻穴!? な、な、なにを言っているんです!?」
「わたしはレオが大好きなの。だから、わたしはレオに進んで尻穴をガバガバにされちゃったの。貴女も覚悟してなさいっ! レオが本当にどれほど馬鹿なのかを、嫌でも見せられることになるからっ!」
リリベル=ユーリィは言いたいことは言ってのけたとばかりに、彼女を両手を用いて、回れ右をさせる。そして、ソフィア=グレイプがホワイトウルフ号から降りる手伝いをする。しかしながら、ソフィア=グレイプはあわわ……あわわ!? と慌てふためくしかなかった。いったいぜんたい、自分の運命がどこへ向かおうとしているのか、見当がつかなかったからだ。
ホワイトウルフ号の船長であるルイ=マッケンドーが水夫たちに指示を出し、聖地:エルハレムにある波止場で船を停泊させる。甲板上ではソフィア=グレイプがバージニア王国の白鳥騎士団が着る正装姿で現れる。まさに誰が見ても、美麗な青年騎士であり、彼女の周りに集まる面々は、ほぉぉぉと感心の声を漏らしてしまう。
「ルイ=マッケンドー船長、ここまで運んでいただき、ありがとうございます。あとは自分の足で聖地の奥へと進みます……」
ソフィア=グレイプは言葉尻が言葉通りに尻すぼみになっていく。彼女は不安でしょうがなかった。親にも触れられたこともない筋肉質な身体を魔皇に良いように弄ばれると考えただけで、腹の奥底から恐怖が昇ってくる。いくら、気丈にサラシを巻いた胸を張っていようが、段々と猫背になっていく。
「ひゃんっ!?」
背中を丸めていくソフィア=グレイプの尻をズボン越しにこねくりまわし、さらにはパーーーン! と馬の尻を叩くように平手打ちする人物が居た。ソフィア=グレイプはその場で跳ね上がったあと、そうした人物を睨みつける。
「いい加減、わたくしのお尻をいいように扱うのはやめてくださいっ! あなたはいったい、何なんですか!?」
「俺か? 俺はレオナルト=ヴィッダーってんだ。この名前を憶えておいてくれ。なんたって、魔皇に喧嘩を売る男の名前だからなっ!」
力強くそう言ってのける男に対して、ソフィア=グレイプは眼を白黒とさせてしまう。この男は馬鹿なのか!? 相手は四皇がひとり、魔皇なのである。その魔皇に喧嘩を吹っ掛ける満々な態度である男に対して、ソフィア=グレイプは口を金魚のようにパクパクと開閉させる他なかった。
「しゃあねえなあ、レオン。おいらも付き合ってやるぜ。お前なら、そう言うと思って、おいらは楽しみにしてたんだからよぉ!」
豚ニンゲンのような身体付きのデーブ=オクボーンがレオナルト=ヴィッダーの背中をバンバンと叩き、次にはレオナルト=ヴィッダーの肩に右腕を回す。ソフィア=グレイプから見たら、ガキがふたりではしゃいでいるようにしか見えない。
「デーブ。それを言うのはわたしなのよ。何、先にレオに言っちゃってるのよ。わたしの台詞を取らないでよ」
紅い部分鎧に身を包むダークエルフの女騎士が、はあやれやれとばかりに身体の左右に両腕を広げながら、はしゃぐ男2人に近づいていく。レオナルト=ヴィッダーは、おう、頼りにしてるぞ、リリベル=ユーリィ殿と軽口を叩いてみせる。
そして、ソフィア=グレイプのために魔皇に喧嘩を売ると宣言する者は段々と増えていく。蒼髪オカッパの愛くるしい男の娘が笑顔でソフィア=グレイプの両手を下からすくあげるように両手で持ってくれる。彼女の手は非常に柔らかく、自分の豆だらけのゴツゴツとした手が恥ずかしいモノだと言われている気がしてならなくなってしまう。
次いで、間延びした口調でレオン様は馬鹿は馬鹿でも北ラメリア一番の馬鹿なのです~~~と言ってのけるターコイズブルーの双眸を持つ女性がソフィア=グレイプに近づいてくる。彼女の眼に見つめられているだけで、心底、ソフィア=グレイプは安心感を得る。まるで母なる海に包まれている、そんな感覚に包まれるのであった。
「うぅ……。出遅れましたニャン。皆が皆で台詞を奪い合うから、あちきがソフィア様にかける言葉が無くなってしまいましたニャン。あちきは引きも弱い薄幸の女の子ですニャ~~~ン」
「チュッチュッチュ。欲しいものがあるなら、ねだるな出しゃばれって言葉があるのでッチュウ。シロちゃんくらいにふてぶてしくなるべきでッチュウ」
「うえぇぇ!? 俺っち、そんなにふてぶてしいッスか? コッシローっちに言われる筋合いはこれっぽちもないッスよ!?」
最後に自分に寄り沿ってくれたのは、服を着ていなくても絶壁洗濯板なのだろうと容易に想像できる華奢な半猫半人と、その彼女の頭の上にちょこんと乗っている蝙蝠羽付きの白いネズミ。そして、彼女の足元に纏わりついている白いラメリアン・ハスキーであった。特に白いラメリアン・ハスキーは、何かあれば魔皇の喉笛を食いちぎってやるッスワン! と豪語してみせる。
「皆さま……。わたくしは嬉しい限りです。わたくしを元気づけるために言ってくれるのですね?」
ソフィア=グレイプは、魔皇に弄ばれる運命に打ち克てと言われている気がしてならなかった。彼らは彼らなりに自分を元気づけてくれているのだと、自然と両目から涙が溢れ出し、それを両手でこすり、無理やり涙を堰き止めようとする。
「はい、レオ。ソフィア様を泣かせたわね。タイキックよっ!」
「ありがとうございますっ!」
ソフィア=グレイプは眼尻をこすりながら、コントをかますレオナルト=ヴィッダーとダークエルフの女騎士を微笑ましく思ってしまう。自分は魔皇の妻になるのではなく、彼らの一員として迎え入れられたい気分になってしまう。だが、それではバージニア王国を裏切ってしまうことになる。それは出来ないと心に言い聞かせ、姿勢を正した後、彼らに一礼する。
「本当に心から感謝いたします。これで迷いを払い、決心できました。わたくしは魔皇に手籠めにされようとも、あなた方の言葉を糧に生きていこうと思います」
ソフィア=グレイプがそう言ったのもつかの間、リリベル=ユーリィがずずいと彼女の眼の前に立ち、パーーーンという音を立てる。リリベル=ユーリィはなんと、ソフィア=グレイプの横っ面を平手打ちしたのである。ソフィア=グレイプは一瞬、何をされたのか、理解が及ばなかった。呆けた顔のまま、怒り心頭のリリベル=ユーリィの顔を見つめることとなる。
「何、悲劇のヒロインに浸っているのよっ! あんたはレオと変わらないくらいに馬鹿ねっ! レオはあんたを救ってみせると言っているの。伊達や酔狂で魔皇と喧嘩を売るって言ってないのっ! 貴女が本当に腹をくくらなきゃならないのは、その馬鹿なレオに貴女の尻穴をガバガバにされることよっ!!」
「尻穴!? な、な、なにを言っているんです!?」
「わたしはレオが大好きなの。だから、わたしはレオに進んで尻穴をガバガバにされちゃったの。貴女も覚悟してなさいっ! レオが本当にどれほど馬鹿なのかを、嫌でも見せられることになるからっ!」
リリベル=ユーリィは言いたいことは言ってのけたとばかりに、彼女を両手を用いて、回れ右をさせる。そして、ソフィア=グレイプがホワイトウルフ号から降りる手伝いをする。しかしながら、ソフィア=グレイプはあわわ……あわわ!? と慌てふためくしかなかった。いったいぜんたい、自分の運命がどこへ向かおうとしているのか、見当がつかなかったからだ。
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