【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

文字の大きさ
208 / 261
第21章:新たな出会い

第7話:間違った覚悟

しおりを挟む
「帆をたためっ! 碇を降ろせっ!」

 ホワイトウルフ号の船長であるルイ=マッケンドーが水夫たちに指示を出し、聖地:エルハレムにある波止場で船を停泊させる。甲板上ではソフィア=グレイプがバージニア王国の白鳥騎士団が着る正装姿で現れる。まさに誰が見ても、美麗な青年騎士であり、彼女の周りに集まる面々は、ほぉぉぉと感心の声を漏らしてしまう。

「ルイ=マッケンドー船長、ここまで運んでいただき、ありがとうございます。あとは自分の足で聖地の奥へと進みます……」

 ソフィア=グレイプは言葉尻が言葉通りに尻すぼみになっていく。彼女は不安でしょうがなかった。親にも触れられたこともない筋肉質な身体を魔皇に良いように弄ばれると考えただけで、腹の奥底から恐怖が昇ってくる。いくら、気丈にサラシを巻いた胸を張っていようが、段々と猫背になっていく。

「ひゃんっ!?」

 背中を丸めていくソフィア=グレイプの尻をズボン越しにこねくりまわし、さらにはパーーーン! と馬の尻を叩くように平手打ちする人物が居た。ソフィア=グレイプはその場で跳ね上がったあと、そうした人物を睨みつける。

「いい加減、わたくしのお尻をいいように扱うのはやめてくださいっ! あなたはいったい、何なんですか!?」

「俺か? 俺はレオナルト=ヴィッダーってんだ。この名前を憶えておいてくれ。なんたって、魔皇に喧嘩を売る男の名前だからなっ!」

 力強くそう言ってのける男に対して、ソフィア=グレイプは眼を白黒とさせてしまう。この男は馬鹿なのか!? 相手は四皇がひとり、魔皇なのである。その魔皇に喧嘩を吹っ掛ける満々な態度である男に対して、ソフィア=グレイプは口を金魚ゴールデン・フィッシュのようにパクパクと開閉させる他なかった。

「しゃあねえなあ、レオン。おいらも付き合ってやるぜ。お前なら、そう言うと思って、おいらは楽しみにしてたんだからよぉ!」

 豚ニンゲンオークのような身体付きのデーブ=オクボーンがレオナルト=ヴィッダーの背中をバンバンと叩き、次にはレオナルト=ヴィッダーの肩に右腕を回す。ソフィア=グレイプから見たら、ガキがふたりではしゃいでいるようにしか見えない。

「デーブ。それを言うのはわたしなのよ。何、先にレオに言っちゃってるのよ。わたしの台詞を取らないでよ」

 紅い部分鎧に身を包むダークエルフの女騎士が、はあやれやれとばかりに身体の左右に両腕を広げながら、はしゃぐ男2人に近づいていく。レオナルト=ヴィッダーは、おう、頼りにしてるぞ、リリベル=ユーリィ殿と軽口を叩いてみせる。

 そして、ソフィア=グレイプのために魔皇に喧嘩を売ると宣言する者は段々と増えていく。蒼髪オカッパの愛くるしい男の娘が笑顔でソフィア=グレイプの両手を下からすくあげるように両手で持ってくれる。彼女の手は非常に柔らかく、自分の豆だらけのゴツゴツとした手が恥ずかしいモノだと言われている気がしてならなくなってしまう。

 次いで、間延びした口調でレオン様は馬鹿は馬鹿でも北ラメリア一番の馬鹿なのです~~~と言ってのけるターコイズブルーの双眸を持つ女性がソフィア=グレイプに近づいてくる。彼女の眼に見つめられているだけで、心底、ソフィア=グレイプは安心感を得る。まるで母なる海に包まれている、そんな感覚に包まれるのであった。

「うぅ……。出遅れましたニャン。皆が皆で台詞を奪い合うから、あちきがソフィア様にかける言葉が無くなってしまいましたニャン。あちきは引きも弱い薄幸の女の子ですニャ~~~ン」

「チュッチュッチュ。欲しいものがあるなら、ねだるな出しゃばれって言葉があるのでッチュウ。シロちゃんくらいにふてぶてしくなるべきでッチュウ」

「うえぇぇ!? 俺っち、そんなにふてぶてしいッスか? コッシローっちに言われる筋合いはこれっぽちもないッスよ!?」

 最後に自分に寄り沿ってくれたのは、服を着ていなくても絶壁洗濯板なのだろうと容易に想像できる華奢な半猫半人ハーフ・ダ・ニャンと、その彼女の頭の上にちょこんと乗っている蝙蝠羽付きの白いネズミ。そして、彼女の足元に纏わりついている白いラメリアン・ハスキーであった。特に白いラメリアン・ハスキーは、何かあれば魔皇の喉笛を食いちぎってやるッスワン! と豪語してみせる。

「皆さま……。わたくしは嬉しい限りです。わたくしを元気づけるために言ってくれるのですね?」

 ソフィア=グレイプは、魔皇に弄ばれる運命に打ち克てと言われている気がしてならなかった。彼らは彼らなりに自分を元気づけてくれているのだと、自然と両目から涙が溢れ出し、それを両手でこすり、無理やり涙を堰き止めようとする。

「はい、レオ。ソフィア様を泣かせたわね。タイキックよっ!」

「ありがとうございますっ!」

 ソフィア=グレイプは眼尻をこすりながら、コントをかますレオナルト=ヴィッダーとダークエルフの女騎士を微笑ましく思ってしまう。自分は魔皇の妻になるのではなく、彼らの一員として迎え入れられたい気分になってしまう。だが、それではバージニア王国を裏切ってしまうことになる。それは出来ないと心に言い聞かせ、姿勢を正した後、彼らに一礼する。

「本当に心から感謝いたします。これで迷いを払い、決心できました。わたくしは魔皇に手籠めにされようとも、あなた方の言葉をかてに生きていこうと思います」

 ソフィア=グレイプがそう言ったのもつかの間、リリベル=ユーリィがずずいと彼女の眼の前に立ち、パーーーンという音を立てる。リリベル=ユーリィはなんと、ソフィア=グレイプの横っ面を平手打ちしたのである。ソフィア=グレイプは一瞬、何をされたのか、理解が及ばなかった。呆けた顔のまま、怒り心頭のリリベル=ユーリィの顔を見つめることとなる。

「何、悲劇のヒロインに浸っているのよっ! あんたはレオと変わらないくらいに馬鹿ねっ! レオはあんたを救ってみせると言っているの。伊達や酔狂で魔皇と喧嘩を売るって言ってないのっ! 貴女が本当に腹をくくらなきゃならないのは、その馬鹿なレオに貴女の尻穴をガバガバにされることよっ!!」

「尻穴!? な、な、なにを言っているんです!?」

「わたしはレオが大好きなの。だから、わたしはレオに進んで尻穴をガバガバにされちゃったの。貴女も覚悟してなさいっ! レオが本当にどれほど馬鹿なのかを、嫌でも見せられることになるからっ!」

 リリベル=ユーリィは言いたいことは言ってのけたとばかりに、彼女を両手を用いて、回れ右をさせる。そして、ソフィア=グレイプがホワイトウルフ号から降りる手伝いをする。しかしながら、ソフィア=グレイプはあわわ……あわわ!? と慌てふためくしかなかった。いったいぜんたい、自分の運命がどこへ向かおうとしているのか、見当がつかなかったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...