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第25章:七人の天使
第4話:幻惑の天使
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ソフィア=グレイプは大空を舞う背中から羽根の生えたニンゲンたちを苦々しい気持ちで睨みつけていた。それもそうだろ。彼らは白い全身鎧に身を包んでおり、彼らが元は白鳥騎士団所属のニンゲンであることは一目瞭然であったからだ。
総勢約300の大空舞う白鳥騎士団の一部が次々と副長であるソフィア=グレイプに向かって、凶刃を放ってくる。これほど、心に嫌悪感を抱いたことは無かったソフィア=グレイプである。
「わたくしを白鳥騎士団の副長と知っての狼藉かっ!」
ソフィア=グレイプは堪らず、口から嗚咽に近い口調で怒号を大空に向かって飛ばす。しかし、本当の意味で白鳥となってしまった彼らにソフィア=グレイプの気持ちは伝わらない。それどころか、彼らは右手に持っている手槍をソフィア=グレイプに向かって、次々と投げつけてくる。ソフィア=グレイプは眉間にシワを寄せれるだけ寄せて、自分の身に向かって投げ飛ばされてきた手槍の群れを睨みつけることになる。
「魔術障壁展開なのです~~~。ソフィア様~~~、あちらが手加減の一切をしてこない以上、敵だと認識してください~~~!」
戸惑うソフィア=グレイプに対して、喝を入れる形となったのがエクレア=シューであった。彼女は未だに腰に佩いた長剣を抜かないソフィア=グレイプを叱責する。ソフィア=グレイプはグッ! と唸り、嫌々ながらという感情を表に出しながら、ようやく長剣を手に取り、大空を舞う白鳥騎士団に向かって、敵意を見せる。
エクレア=シューはホッと安堵する。元同僚である彼らに向かって剣の切っ先を突きつけるのは、ソフィア=グレイプにとっては心苦しいことであることは容易に想像できる。しかし、こちらが命を狙われている現状下、相手をおもんばかる態度は間違っている。相手を叩き伏せて、無力化させた後にこそ、向ける感情であるとエクレア=シューはソフィア=グレイプを叱責したのである。
ソフィア=グレイプが戦意を取り戻したことを確認したソフィア=グレイプはちらりとレオナルト=ヴィッダーとリリベル=ユーリィの方を見る。彼らは背中と背中を合わせ、あらゆる方向から飛んでくる手槍を打ち払っている。そちらへの援護はまだ大丈夫だろうと予測し、エクレア=シューはソフィア=グレイプと共に大空舞う白鳥騎士団の相手をしようと心に決める。
「チュチュゥ! シロちゃん、上空斜め30度の方向から手槍が飛んでくるでッチュウ!」
「オッス、オッス! おいらから振り落とされないようにしっかり掴まっているッスよっ!」
コッシロー=ネヅはクルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点に乗らず、白銀の獣皇ことシロちゃんの首根っこに掴まっていた。敵は大空を自在に舞いながら、攻撃をしかけてくるために、クルス=サンティーモの頭の上に乗っていては、デーブ=オクボーンという絶対不可侵の盾が邪魔で戦況を把握しづらくてしょうがない。
そのため、危険を承知の上で、コッシロー=ネヅはシロちゃんにしがみつき、シロちゃんと共にホワイトウルフ号の甲板上を走り回ったのである。コッシロー=ネヅは頭の中の算盤の珠を弾き、300余りの敵兵をどう料理すべきかを考える。
「波旬! 一見、無軌道に動いているように見える敵たちでッチュウけど、この動きを演出している輩が居るはずでッチュウ! 波旬はそいつを捉えることが出来るでッチュウか!?」
コッシロー=ネヅは300余りの敵兵の動きにある法則性があることに感づく。10人をひと固まりとして、その1群が輪っかを作るように飛んでいる。その輪が30重ねとなっているために、一見、無軌道に300余りの敵兵が大空を自在に舞っているように見えるだけなのだ。
彼らは元は羽根を持たないニンゲンである。昨日今日、与えられたばかりの白鳥の羽根で、自由自在に大空を飛び交うことなど不可能である。それゆえにコッシロー=ネヅは必ず、誰かしらが、この一見、ランダムっぽく見える動きを醸し出している存在が居るはずだと決めつけていた。そして、コッシロー=ネヅの思っている通り、確かに彼らの動きを制御している存在が居た。
「そこかっ!?」
第六天魔皇・波旬は右手の先で創り出していた黒い玉をある方向へと飛ばす。魔皇が放った黒い玉の一撃は銀色の長剣で弾き飛ばされてしまう。その瞬間、大空を舞う300余りの敵兵の動きが本当の意味でバラバラになる。大空を舞う敵兵たちが次々とぶつかり合い、五大湖へと落下していく。指揮者がその動きを無理やり止められたがゆえの現象である。
「さすがは魔皇殿。ワタシの存在に気づきマシタカ。しかし、気配を感じただけのようなので、本格的に消えさせてもらいまショウ」
魔皇はチッ! と舌打ちせざるをえなかった。魔皇の眼ですら惑わす神力を持つ天使となれば、それに該当する者は限られてくる。魔皇は頭を上下左右に振り、存在感が希薄になっていく天使を探し出そうとする。
「フフフッ。ワタシは『幻視の天使』とも呼ばれてイマス。ワタシの存在を眼で追うことなど、笑止千万……」
「ふんっ! 言ってくれるわっ! 貴様の性格から考えて、そこであろうっ!」
魔皇は左手の先に創り出していた黒い玉を、あろうことかソフィア=グレイプに向けて放つ。ソフィア=グレイプは自分に向かって、黒い玉が迫ってきたために驚きの表情をその顔に浮かべる。不意も不意を突かれたことで、回避することも出来ず、両目をギュッと硬く閉じてしまう。
「ヤレヤレ……。ワタシたちの聖女に傷をつけようとする行為。これは許せまセン……」
魔皇が左手から放った黒い玉はソフィア=グレイプの眼前で止まっていた。ソフィア=グレイプは驚きの余り、その場で腰を抜かし、さらには卑肉からチョロチョロと黄金色の水を漏らしてしまう。
「聖女が失禁などはしたナイ。貴女は天界に招かれるべき存在なのデス。魔皇如きに畏れおののいてはいけまセンヨ?」
「ふんっ! ジュレミエルっ! そいつはすでに聖女ではないわっ! レオナルト=ヴィッダーの手により『駄女』に堕とされておるわっ!」
魔皇は自分の放った一撃を受け止めた存在の名を口に出す。存在感が未だに希薄でありながらも、その者が発する不快感が周囲に伝播しはじめる。それと同時にジュレミエルと呼ばれた存在が、この世界に姿を現す。
ソフィア=グレイプは眼が潰れてしまうのではないかと思わざるをえなかった。かの者の存在感が増すにつれ、光の束が眼の前に現れたのである。その御姿を見ているだけで、自分は魂の穢れを感じずにはおれず、ソフィア=グレイプの銀色の双眸からは自然と涙が溢れてしまう……。
総勢約300の大空舞う白鳥騎士団の一部が次々と副長であるソフィア=グレイプに向かって、凶刃を放ってくる。これほど、心に嫌悪感を抱いたことは無かったソフィア=グレイプである。
「わたくしを白鳥騎士団の副長と知っての狼藉かっ!」
ソフィア=グレイプは堪らず、口から嗚咽に近い口調で怒号を大空に向かって飛ばす。しかし、本当の意味で白鳥となってしまった彼らにソフィア=グレイプの気持ちは伝わらない。それどころか、彼らは右手に持っている手槍をソフィア=グレイプに向かって、次々と投げつけてくる。ソフィア=グレイプは眉間にシワを寄せれるだけ寄せて、自分の身に向かって投げ飛ばされてきた手槍の群れを睨みつけることになる。
「魔術障壁展開なのです~~~。ソフィア様~~~、あちらが手加減の一切をしてこない以上、敵だと認識してください~~~!」
戸惑うソフィア=グレイプに対して、喝を入れる形となったのがエクレア=シューであった。彼女は未だに腰に佩いた長剣を抜かないソフィア=グレイプを叱責する。ソフィア=グレイプはグッ! と唸り、嫌々ながらという感情を表に出しながら、ようやく長剣を手に取り、大空を舞う白鳥騎士団に向かって、敵意を見せる。
エクレア=シューはホッと安堵する。元同僚である彼らに向かって剣の切っ先を突きつけるのは、ソフィア=グレイプにとっては心苦しいことであることは容易に想像できる。しかし、こちらが命を狙われている現状下、相手をおもんばかる態度は間違っている。相手を叩き伏せて、無力化させた後にこそ、向ける感情であるとエクレア=シューはソフィア=グレイプを叱責したのである。
ソフィア=グレイプが戦意を取り戻したことを確認したソフィア=グレイプはちらりとレオナルト=ヴィッダーとリリベル=ユーリィの方を見る。彼らは背中と背中を合わせ、あらゆる方向から飛んでくる手槍を打ち払っている。そちらへの援護はまだ大丈夫だろうと予測し、エクレア=シューはソフィア=グレイプと共に大空舞う白鳥騎士団の相手をしようと心に決める。
「チュチュゥ! シロちゃん、上空斜め30度の方向から手槍が飛んでくるでッチュウ!」
「オッス、オッス! おいらから振り落とされないようにしっかり掴まっているッスよっ!」
コッシロー=ネヅはクルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点に乗らず、白銀の獣皇ことシロちゃんの首根っこに掴まっていた。敵は大空を自在に舞いながら、攻撃をしかけてくるために、クルス=サンティーモの頭の上に乗っていては、デーブ=オクボーンという絶対不可侵の盾が邪魔で戦況を把握しづらくてしょうがない。
そのため、危険を承知の上で、コッシロー=ネヅはシロちゃんにしがみつき、シロちゃんと共にホワイトウルフ号の甲板上を走り回ったのである。コッシロー=ネヅは頭の中の算盤の珠を弾き、300余りの敵兵をどう料理すべきかを考える。
「波旬! 一見、無軌道に動いているように見える敵たちでッチュウけど、この動きを演出している輩が居るはずでッチュウ! 波旬はそいつを捉えることが出来るでッチュウか!?」
コッシロー=ネヅは300余りの敵兵の動きにある法則性があることに感づく。10人をひと固まりとして、その1群が輪っかを作るように飛んでいる。その輪が30重ねとなっているために、一見、無軌道に300余りの敵兵が大空を自在に舞っているように見えるだけなのだ。
彼らは元は羽根を持たないニンゲンである。昨日今日、与えられたばかりの白鳥の羽根で、自由自在に大空を飛び交うことなど不可能である。それゆえにコッシロー=ネヅは必ず、誰かしらが、この一見、ランダムっぽく見える動きを醸し出している存在が居るはずだと決めつけていた。そして、コッシロー=ネヅの思っている通り、確かに彼らの動きを制御している存在が居た。
「そこかっ!?」
第六天魔皇・波旬は右手の先で創り出していた黒い玉をある方向へと飛ばす。魔皇が放った黒い玉の一撃は銀色の長剣で弾き飛ばされてしまう。その瞬間、大空を舞う300余りの敵兵の動きが本当の意味でバラバラになる。大空を舞う敵兵たちが次々とぶつかり合い、五大湖へと落下していく。指揮者がその動きを無理やり止められたがゆえの現象である。
「さすがは魔皇殿。ワタシの存在に気づきマシタカ。しかし、気配を感じただけのようなので、本格的に消えさせてもらいまショウ」
魔皇はチッ! と舌打ちせざるをえなかった。魔皇の眼ですら惑わす神力を持つ天使となれば、それに該当する者は限られてくる。魔皇は頭を上下左右に振り、存在感が希薄になっていく天使を探し出そうとする。
「フフフッ。ワタシは『幻視の天使』とも呼ばれてイマス。ワタシの存在を眼で追うことなど、笑止千万……」
「ふんっ! 言ってくれるわっ! 貴様の性格から考えて、そこであろうっ!」
魔皇は左手の先に創り出していた黒い玉を、あろうことかソフィア=グレイプに向けて放つ。ソフィア=グレイプは自分に向かって、黒い玉が迫ってきたために驚きの表情をその顔に浮かべる。不意も不意を突かれたことで、回避することも出来ず、両目をギュッと硬く閉じてしまう。
「ヤレヤレ……。ワタシたちの聖女に傷をつけようとする行為。これは許せまセン……」
魔皇が左手から放った黒い玉はソフィア=グレイプの眼前で止まっていた。ソフィア=グレイプは驚きの余り、その場で腰を抜かし、さらには卑肉からチョロチョロと黄金色の水を漏らしてしまう。
「聖女が失禁などはしたナイ。貴女は天界に招かれるべき存在なのデス。魔皇如きに畏れおののいてはいけまセンヨ?」
「ふんっ! ジュレミエルっ! そいつはすでに聖女ではないわっ! レオナルト=ヴィッダーの手により『駄女』に堕とされておるわっ!」
魔皇は自分の放った一撃を受け止めた存在の名を口に出す。存在感が未だに希薄でありながらも、その者が発する不快感が周囲に伝播しはじめる。それと同時にジュレミエルと呼ばれた存在が、この世界に姿を現す。
ソフィア=グレイプは眼が潰れてしまうのではないかと思わざるをえなかった。かの者の存在感が増すにつれ、光の束が眼の前に現れたのである。その御姿を見ているだけで、自分は魂の穢れを感じずにはおれず、ソフィア=グレイプの銀色の双眸からは自然と涙が溢れてしまう……。
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