【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

文字の大きさ
257 / 261
第25章:七人の天使

第6話:麗しの眠り姫

しおりを挟む
 ソフィア=グレイプの金色に染まる頭のてっぺんで、ジュレミエルを挑発してみせるコッシロー=ネヅである。今の今まで涼し気な顔をしていたジュレミエルの眉間がピクリと動き、うっすらとシワが寄ることになる。それを視認したソフィア=グレイプはガクガクブルブルと身体中が小刻みに震えてしょうがない。コッシロー=ネヅがジュレミエルを挑発するのを止めようとしてしまいそうになる。

 しかし、そんなソフィア=グレイプの心配など知ったこっちゃないとばかりに、コッシロー=ネヅはジュレミエルを挑発しまくるのであった。

「賢い飼い犬はあの方とやらに向けて、尻尾を振っているのがお似合いでッチュウ」

 この一言でジュレミエルの眉間がまたしてもピクピクッと震える。その姿を見て、ソフィア=グレイプはショワワワーと卑肉から黄金こがね色の液体を漏らすことになる。普段、温厚なヒトほど、キレると手に負えないという感じを醸し出しているのがジュレミエルである。

 かの存在は両目を閉じ、涼し気な表情をその顔に浮かべているが、眉間のシワは増える一方である。そうしているのは紛れもなく、自分の頭の上にちょこんと乗っかっているコッシロー=ネヅである。そして、コッシロー=ネヅはついに言葉による会心の一撃をジュレミエルに対して放つ。

「お前はあの方のオナペットでッチュウ。いや、バター犬と言ったほうが正しいでッチュウ? あの方の卑肉をペロペロ舐めているのが、お前に相応しい地位でッチュウ!」

「コッシロー! 貴様、それ以上の侮辱、許しはセヌゾ!!」

 ジュレミエルが今まで閉じていた両目を見開き、親の仇が如く、コッシロー=ネヅを睨みつける。そして、その余波をモロに喰らったソフィア=グレイプは、ついに卑肉から鉄砲水が如くに黄金こがね色の液体を噴き出すことになる。しかし、そんなソフィア=グレイプに慈悲なぞ与えぬと言った感じで、ジュレミエルは右手をめいいっぱい広げ、コッシロー=ネヅごと、ソフィア=グレイプの頭を鷲掴みしようとしてくる。

 ソフィア=グレイプは腰が抜けた状態で、さらに黄金こがね色の液体を卑肉から噴き出していた。しかしながら、少しでもジュレミエルの怒りに震える右手から物理的に距離を開けようと、尻餅をついたまま、後ずさりをする。そんな状態のソフィア=グレイプがジュレミエルが突き出してきた右手から逃れることなど決して出来るはずも無かった。

 だが、ジュレミエルの手がコッシロー=ネヅの身体を鷲掴みしようとした瞬間、ジュレミエルの右手は何かしらの力で弾き飛ばされることになる。右手に衝撃を受けたジュレミエルは2歩、3歩と後ずさりし、左手で右の手首を抑えることになる。

「チュッチュッチュ。レオン。お前に良いことを教えてやるでッチュウ。押してダメなら、相手に押させろでッチュウ」

 コッシロー=ネヅはジュレミエルがレオナルト=ヴィッダーにしたことをそのまま、お返ししたのである。相手を挑発させるだけさせて、あちらからこちらへと手を出させる。そして、相手の虚をついて、痛手を負わせたのである。ジュレミエルの顔から涼し気な雰囲気は掻き消えていた。それほどまでに、コッシロー=ネヅの放った言葉は、自分の感情を揺さぶるモノであり、コッシロー=ネヅを踏みつけて、謝罪の言葉をカエルが踏みつぶされている時と同じ声色で受けねば、収まりがつかない心の状態へと様変わりしていたのだ。

「コッシロー! 貴様はレオナルト=ヴィッダーよりも先に八つ裂きにしてヤロウッ!」

 怒りに燃えるジュレミエルは本気でコッシロー=ネヅを叩き潰してやろうと画策する。ソフィア=グレイプから物理的に距離を取り、両腕を大きく身体の左右で回し始める。かの者の両手は紫色のオーラに包まれており、かの者の舞いはソフィア=グレイプだけでなく、ホワイトウルフ号の甲板上に集まる全ての者を魅了する。

 ジュレミエルの変化はそれだけでは無かった。背中に生える6枚羽の一枚一枚に大きな眼が浮かび上がる。その眼に見つめられるだけで、ソフィア=グレイプたちはクラクラと眩暈めまいを感じて仕方が無い。しかも、春の陽気を表すような心地良い風が甲板上を吹き抜け、ソフィア=グレイプたちは身体中から力が抜けていく感覚にとらわれる。

「チュッチュッチュ。麗しの眠り姫スリーピング・ビューティでッチュウか。これは僕でも正直、キツイの……でッチュウ」

「クックック……。さあ、眠りにつくが良い。しかし、次に目覚めた時は地獄の窯に煮えられている真っ最中かもしれぬガナ!?」

 ジュレミエルが放っている魔術は幻惑術の中でも最高峰に位置する『麗しの眠り姫スリーピング・ビューティ』である。怒れる地獄の番犬ですら、この子守歌代わりの幻惑術にかかれば、瞬く間に眠りに誘われてしまうほどの威力を誇っていた。そして、ジュレミエルの思惑通り、甲板上に集う面々は深い眠りに堕ちてしまう。ジュレミエルは心地よさそうな表情でソフィア=グレイプの頭の上で眠るコッシロー=ネヅを鷲掴みにし、心胆寒くなるような笑みを浮かべる。

「さあ、コッシロー。地獄の窯で煮られながら、あの方とワタシに対しての暴言を悔いるがぐおぉあぁぉあぁ!!」

 ジュレミエルがコッシロー=ネヅを鷲掴みにした状態から、あらん限りの神力ちからを込めようとした矢先であった。背中の下部分、ニンゲンで言うなら腎臓部分を痛打されることになる。ジュレミエルは思わず、片膝をつき、自分に痛撃を与えた人物に対して、ギロリッ! と睨みを利かせることになる。

「へっ! 何が麗しの眠り姫スリーピング・ビューティだっ! 俺にはまったく効かなかったぜ!?」

「貴様っ! レオナルト=ヴィッダーッッッ!」

 ジュレミエルの腎臓部分を背中側から打ち抜いたのは、レオナルト=ヴィッダーであった。レオナルト=ヴィッダーの左手は真っ黒なオーラに包まれており、その一撃はジュレミエルの体内に響き渡ることになる。レオナルト=ヴィッダーはクラクラする頭を左右に振り、ジュレミエルを仕留め損なったことを不覚に思う。

 ニンゲン相手なら、間違いなく命に係わる一撃である。決して、遊びで腎臓部分を拳で打ち抜いてはいけない。それほどに危険な箇所への痛打がキレイに決まったと言うのに、ジュレミエルは腰を左手で抑えつつ、苦悶の表情を浮かべるが、いっこうに倒れる気配を見せないでいた。

 ジュレミエルの眼から見て、レオナルト=ヴィッダーは頭を前後左右に振り、身体も揺れまくりであった。自分が放った幻惑術がまったく効いていないようには見えない。レオナルト=ヴィッダーが身体をふらつかせている状態から言えば、効きが悪いと言った表現が正しいと思えるジュレミエルであった。

 ジュレミエルは大事を取って、レオナルト=ヴィッダーから物理的に距離を開ける。そして、他にも自分の幻惑術:麗しの眠り姫スリーピング・ビューティが効いていない者が居ないかを確かめる。かの魔皇と言えども、仁王立ちした状態で鼻ちょうちんを作って、眠りに堕ちている。そして、一番に警戒しなければならないコッシロー=ネヅは、甲板上でクピークピークコー! と盛大に寝息を立てていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...