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第2章:オベール家の窮地
5:拒否
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大神殿前の緩やかな階段が血で汚れるようなあわやの事態に発展するかと思えば、そういうこともなく、ここで話すのもなんだとばかりにハジュン=ド・レイは行きつけの大き目の居酒屋【犬貴族】に移動し、そこで詳しくクロード=サインの話を聞くことになる。
「いやあ、この時間から【犬貴族】を利用することになるとは思いませんでしたね。本当なら、視察を終えたあとに一杯ひっかけるためにくるんですけどね?」
居酒屋【犬貴族】は火の国:イズモの大きめの街にならどこにでも展開している居酒屋チェーン店であった。出資者はもちろん、ハジュン=ド・レイであり、この居酒屋で出される創作料理の数々はハジュンの部下にあたる准男爵:セイ=ゲンドーが直々にプロデュースしたものである。
まだまだ日も高いこともあり、ハジュンは連れてきた兵や従者たちにノンアルコールの飲み物と、早めの昼食を取るようにと促すのであった。えええ!? そりゃないっすよー!? と兵士たちが言うのだが、兵士たちのまとめ役でもある騎士:ヌレバ=スオーが一喝し、渋々であるが兵士たちは牛の絞り乳やフルーツジュースなどで喉の渇きを癒すことになる。
5人ほどが座れる丸テーブルの席でハジュン=ド・レイ、ヌレバ=スオー、クロード=サイン、そして、ハジュンのお目付け役であるセイ=ゲンドーが同席することになる。セイ=ゲンドーは給仕役の女性に手早く注文を頼んでいた。給仕役の女性はセイ=ゲンドーと世間話をしながら、時折、尻をさわろうとしてくるセイ=ゲンドーの右手を指でつねり、さらには左手で持つお盆で彼の頭をバンッ! と勢いよく叩くものだから、クロードとしては、准男爵相手にそんなことをしていいのか!? と驚いてしまうのである。
「ガハハッ! セイ=ゲンドー殿は相変わらず、女子の尻が好きでもうすな?」
セイ=ゲンドーは、振られちまったねェ! と言いつつ可愛らしく舌をペロリと出している。あまり反省している様子には思えない態度であった。
「セイくんのことは放っておきましょうか。街の警護の者を呼び出されて、説教を喰らうのはセイくんだけですし……。さて、美味しい料理をいただきながらでも、クロードくんでしたっけ? きみの陳情を聞きたいところですね?」
料理の前に運ばれてきた牛の絞り乳が注がれたジョッキに口をつけつつ、ハジュンがそうクロードに言うのであった。しかし、クロードはハジュンがそう言いながら、ジョッキを傾けて、その中身の牛乳をぐびぐび、ぷはーーー! 仕事前の牛乳は最高ですね! もう一杯! とやるものだから、なかなかに話を切り出せないのであった。
とまどうクロードを相手に、ん? どうしたんです? 早く言ってくれて良いんですよ? 縛り首になんかしませんのでと、ヒトの気も知れずにハジュンは冗談ともつかぬことを言い出す始末であった。
「し、縛り首はなるべくなら、やめてほしいところです……。俺、こう見えても婚約者がいるんで……」
「ほうほう。それなのに、本来なら法で重罰を受けるはずの四大貴族への直訴を行ったわけですか……。クロードくんは、それほどまでにその婚約者のことが大切なんですね?」
ヴァンパイア族の身体的特徴と言っても良い琥珀色の双眸を好奇心の色に染めながら、ハジュンはそう言うのである。その双眸でハジュンが丸テーブルの向かいに座るクロードをまじまじと見るために、クロードはさらに委縮してしまうのである。
「あの、その……。ロージーじゃなくて、ローズマリー=オベールって名前の女性と俺は『婚約』を交わしているんです。それで、そのローズマリーの母親であるオルタンシア=オベールさまが病で床に伏せている状態になっているんです……」
クロードの言いをふむふむと頷きながらハジュンは興味深く彼の話を聞くのであった。クロードはハジュンに気圧されながらも、事の起こりとそれからのオベール家の内情をハジュンにかいつまんで説明していく。
ハジュンたちは丸テーブルに運ばれてきた料理に手をつけながら、クロードの話を質問を交えながら聞き続ける。
「もぐもぐ、ごっくん。なるほど……。オベール家の当主であるカルドリア=オベールくんの刑罰が一週間も経たずに決定され、さらにはオベール家の家財のほぼ全てを宰相:ツナ=ヨッシーが派遣した騎士:モル=アキスに差し押さえられたと……。そして、奥方のオルタンシアくんと娘のローズマリーくんは着の身着のままで、ここ火の国:イズモへと流刑となったわけですね……」
ハジュンは一旦、箸を置いて神妙な顔つきになる。彼の右隣りに座るヌレバもまた、かつて自分が仕えていたオベール家がまさかそんなことになっていたとはと驚きの表情を顔に浮かべていた。
「うーーーむ。風の噂でオベール家が没落したのは聞いていたのでもうすが、家財のなにもかもを奪われていたとは初耳だったのでもうす……。クロードよ。よくもまあ、今まで生活できたものでもうすな?」
「は、はい……。俺以外は3人とも女性だったこともあり、俺が家の外に出て、魔物討伐の依頼を受けたりして、少しでも生活費の足しにと思っていたんですが……。オルタンシアさまが、それはロージーとの結婚資金にとっておきなさいと言われて……。少しだけ屋敷から持ち出せた宮中や舞踏会に着ていくドレスや、金に代えれそうな調度品を近くの街で売って、生活費に充てていました……」
「なるほどなるほど。ですが、オルタンシアくんの病状が一向に良くならず、町医者に頼ることが多くなってしまい、それらを売って手に入れた生活費がついに底をつこうとしているわけなのですね?」
ハジュンの問いかけに、クロードは首を縦に振り、『是』という意思を示す。
「俺としては、魔物討伐で稼いだ金を使ってもらいたいのですが、どうしても、それだけは受け取れないと頑なに拒まれるんです、オルタンシアさまが……」
「それは貴族としての誇りうんぬんではなくて、先の長くない自分のために大事なお金を使ってほしくないというオルタンシアくんの意思を感じますね……。まったく、オルタンシアくんはなかなかに強情と言いますか……」
ハジュンの感想にクロードはこくこくと何度も首を縦に振って、同意見だという意思をハジュン伝えるのであった。
「ガハハッ! オルタンシアさまらしいと言えばらしい行いでもうすな。しかし、そこまで固辞している以上、オルタンシアさま自身も、自分は長くは生きられないであろうと予測している表れでもうすな。殿、どうされるのでもうす?」
「いやあ、この時間から【犬貴族】を利用することになるとは思いませんでしたね。本当なら、視察を終えたあとに一杯ひっかけるためにくるんですけどね?」
居酒屋【犬貴族】は火の国:イズモの大きめの街にならどこにでも展開している居酒屋チェーン店であった。出資者はもちろん、ハジュン=ド・レイであり、この居酒屋で出される創作料理の数々はハジュンの部下にあたる准男爵:セイ=ゲンドーが直々にプロデュースしたものである。
まだまだ日も高いこともあり、ハジュンは連れてきた兵や従者たちにノンアルコールの飲み物と、早めの昼食を取るようにと促すのであった。えええ!? そりゃないっすよー!? と兵士たちが言うのだが、兵士たちのまとめ役でもある騎士:ヌレバ=スオーが一喝し、渋々であるが兵士たちは牛の絞り乳やフルーツジュースなどで喉の渇きを癒すことになる。
5人ほどが座れる丸テーブルの席でハジュン=ド・レイ、ヌレバ=スオー、クロード=サイン、そして、ハジュンのお目付け役であるセイ=ゲンドーが同席することになる。セイ=ゲンドーは給仕役の女性に手早く注文を頼んでいた。給仕役の女性はセイ=ゲンドーと世間話をしながら、時折、尻をさわろうとしてくるセイ=ゲンドーの右手を指でつねり、さらには左手で持つお盆で彼の頭をバンッ! と勢いよく叩くものだから、クロードとしては、准男爵相手にそんなことをしていいのか!? と驚いてしまうのである。
「ガハハッ! セイ=ゲンドー殿は相変わらず、女子の尻が好きでもうすな?」
セイ=ゲンドーは、振られちまったねェ! と言いつつ可愛らしく舌をペロリと出している。あまり反省している様子には思えない態度であった。
「セイくんのことは放っておきましょうか。街の警護の者を呼び出されて、説教を喰らうのはセイくんだけですし……。さて、美味しい料理をいただきながらでも、クロードくんでしたっけ? きみの陳情を聞きたいところですね?」
料理の前に運ばれてきた牛の絞り乳が注がれたジョッキに口をつけつつ、ハジュンがそうクロードに言うのであった。しかし、クロードはハジュンがそう言いながら、ジョッキを傾けて、その中身の牛乳をぐびぐび、ぷはーーー! 仕事前の牛乳は最高ですね! もう一杯! とやるものだから、なかなかに話を切り出せないのであった。
とまどうクロードを相手に、ん? どうしたんです? 早く言ってくれて良いんですよ? 縛り首になんかしませんのでと、ヒトの気も知れずにハジュンは冗談ともつかぬことを言い出す始末であった。
「し、縛り首はなるべくなら、やめてほしいところです……。俺、こう見えても婚約者がいるんで……」
「ほうほう。それなのに、本来なら法で重罰を受けるはずの四大貴族への直訴を行ったわけですか……。クロードくんは、それほどまでにその婚約者のことが大切なんですね?」
ヴァンパイア族の身体的特徴と言っても良い琥珀色の双眸を好奇心の色に染めながら、ハジュンはそう言うのである。その双眸でハジュンが丸テーブルの向かいに座るクロードをまじまじと見るために、クロードはさらに委縮してしまうのである。
「あの、その……。ロージーじゃなくて、ローズマリー=オベールって名前の女性と俺は『婚約』を交わしているんです。それで、そのローズマリーの母親であるオルタンシア=オベールさまが病で床に伏せている状態になっているんです……」
クロードの言いをふむふむと頷きながらハジュンは興味深く彼の話を聞くのであった。クロードはハジュンに気圧されながらも、事の起こりとそれからのオベール家の内情をハジュンにかいつまんで説明していく。
ハジュンたちは丸テーブルに運ばれてきた料理に手をつけながら、クロードの話を質問を交えながら聞き続ける。
「もぐもぐ、ごっくん。なるほど……。オベール家の当主であるカルドリア=オベールくんの刑罰が一週間も経たずに決定され、さらにはオベール家の家財のほぼ全てを宰相:ツナ=ヨッシーが派遣した騎士:モル=アキスに差し押さえられたと……。そして、奥方のオルタンシアくんと娘のローズマリーくんは着の身着のままで、ここ火の国:イズモへと流刑となったわけですね……」
ハジュンは一旦、箸を置いて神妙な顔つきになる。彼の右隣りに座るヌレバもまた、かつて自分が仕えていたオベール家がまさかそんなことになっていたとはと驚きの表情を顔に浮かべていた。
「うーーーむ。風の噂でオベール家が没落したのは聞いていたのでもうすが、家財のなにもかもを奪われていたとは初耳だったのでもうす……。クロードよ。よくもまあ、今まで生活できたものでもうすな?」
「は、はい……。俺以外は3人とも女性だったこともあり、俺が家の外に出て、魔物討伐の依頼を受けたりして、少しでも生活費の足しにと思っていたんですが……。オルタンシアさまが、それはロージーとの結婚資金にとっておきなさいと言われて……。少しだけ屋敷から持ち出せた宮中や舞踏会に着ていくドレスや、金に代えれそうな調度品を近くの街で売って、生活費に充てていました……」
「なるほどなるほど。ですが、オルタンシアくんの病状が一向に良くならず、町医者に頼ることが多くなってしまい、それらを売って手に入れた生活費がついに底をつこうとしているわけなのですね?」
ハジュンの問いかけに、クロードは首を縦に振り、『是』という意思を示す。
「俺としては、魔物討伐で稼いだ金を使ってもらいたいのですが、どうしても、それだけは受け取れないと頑なに拒まれるんです、オルタンシアさまが……」
「それは貴族としての誇りうんぬんではなくて、先の長くない自分のために大事なお金を使ってほしくないというオルタンシアくんの意思を感じますね……。まったく、オルタンシアくんはなかなかに強情と言いますか……」
ハジュンの感想にクロードはこくこくと何度も首を縦に振って、同意見だという意思をハジュン伝えるのであった。
「ガハハッ! オルタンシアさまらしいと言えばらしい行いでもうすな。しかし、そこまで固辞している以上、オルタンシアさま自身も、自分は長くは生きられないであろうと予測している表れでもうすな。殿、どうされるのでもうす?」
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