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第6章:宮廷騒乱
11:終わりの始まり
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「はははっ。ミサくんは本当に困ったひとですねえ。クロードくん、ミサくんは悪気は無いので、気にしないでくださいね?」
クロードが目覚めたその日の昼前に兵舎の寝室のベッドで横になっていた兵士たちの慰問にハジュン=ド・レイがやってきていたのである。そのハジュンがクロードにも声をかけている真っ最中だ。ハジュンからクロードは宰相:ツナ=ヨッシーが謀反を企んだその日から丸2日が経過していることを伝えられる。
そして、ナギッサ=フランダールが暗殺されてしまったこと。その実行犯は捕らえることが出来たことを矢継ぎ早に説明されることとなる。
クロードはやるせない気持ちになっていた。元々は第1皇女の夫君であるナギッサ=フランダールを暗殺から守ることが第一優先事項であったのに、それを未然に防げなかったのである。
あの真っ暗闇のボールルームからナギッサ=フランダールを隠し部屋に移動させたのはクロードとミサ=ミケーン、そしてセイ=ゲンドーであった。クロードはナッギサに感謝の念を送られていた。だが、結局はナギッサの命は失われることになる。
クロードの両手には自然と力を込められてしまう。そんなクロードの右手を優しく包み込む存在があった。それはロージーの右手であった。ロージーはクロードが横になっているベッドの右側に添え付けらえた丸椅子に座った状態である。ロージーの右手から伝わってくる体温がクロードにとっての唯一の慰めであった。
「では、先生は色々と後片付けがありますので、これで失礼しますね。いやはや……。シヴァ帝と大将軍:ドーベル=マンベルくんは行方不明。そして、先生の戦友であるエヌル=ボサツくんは大きな怪我は無いものの、息子のナギッサくんを失って、失意のどん底ですし」
「すいません。俺がずっとナギッサさまの側に居れば……」
「いえ。あの隠し部屋に配置していたのは先生が信頼していた兵たちばかりです。その警戒網をかいくぐり、さらには彼ら全員を殺していますからね、カンタスくんは。いやあ、あの場にクロードくんが居なかったことのほうが逆に良かったのかも知れません」
ハジュンの言葉に嘘偽りは無かった。ナギッサ=フランダールの命を守ることは、ハジュンにとっても大事な件であったのだ。それゆえ、ハジュンは自分の子飼いの兵たちの中でも、腕利きの者たちを配置させていたのだ。その者たちを全て屠った暗殺者:カンタスの存在に気づかなかった時点で、自分自身の落ち度だと、ハジュンは言うのであった。
カンタスは今、宮廷の四方にある塔の東側にある『冷却の牢獄』にて捕らえているという話であった。そこはポメラニア帝国で死刑につぐ重罪を行った者たちが捕らえられる牢獄である。
ロージーは『冷却の牢獄』という言葉を聞いて、表情を曇らせる。それもそうだ。その牢獄に捕らわれている者のひとりにロージーの父親であるカルドリア=オベールが居るからだ。
カルドリア=オベールは未だ、あの冷却の牢獄に捕らわれの身のままだ。恩赦をもらうはずが、そもそもとしてシヴァ帝が大将軍:ドーベル=マンベルと共に行方知れずなのである。
当然、ポメラニア帝国は未曾有の大混乱に陥っていた。
その収拾をつけるために、ハジュン=ド・レイが動いていたのである。この状況で、ロージーが自分の父親を冷却の牢獄から出してほしいなど頼めるわけがない。
「パパ……」
ロージーとしては珍しく弱気な声で、そうつぶやく。そして、クロードの右手の甲をギュッと自分の右手で握りしめる。クロードはそんなロージーの気持ちを察して、右手をひっくり返し、ロージーの右手の指に自分の指をからめて、しっかりと握り返すのであった。
それからさらに1週間が経過する。シヴァ帝不在を補うため、誰かがポメラニア帝国のトップに君臨せねばならぬ状況になっていた。そこで推されたのが帝の継承権を持つシヴァ帝の第1皇女たるチクマリーン=フランダールであった。
シヴァ帝の妃であるテリア=フランダールは存命中であったが、そもそもとして、彼女には帝になりえる継承権が存在しない。代々、帝の継承権は妃には与えられない決まりとなっていた。
その代わり、妃にはポメラニア帝国内の神殿、社を統括する『教皇』の地位が与えられていた。しかし、それは妃が帝の政治に口を出すことを禁止させるための方策である。
ポメラニア帝国250年の歴史において、とある妃の幼い息子が帝位を継いだ時に、その息子をを補佐し、政治の実権を握るという事態が実際に起きたのだ。しかし、それにより、一時的にではあるが、帝自身の権威は大きく失墜することになる。その事態を重く見た当時の四大貴族が妃を排除すべく動いたのである。
それが妃に『教皇』の地位を与えるという行為なのである。ポメラニア帝国は初代アキータ帝により政教分離が成功したエイコー大陸中唯一の帝国であった。『教皇』の地位を与えられた妃は宗教も帝国の政治も全て牛耳れると勘違いしてくれたのである。
しかし、実際に起きたことは、妃の実質的排除が成功したことであった。民の間でも、政教分離の考えは根付いており、民からの声もあり、妃は政治の舞台から引きずり落とされることとなったのである。
話を戻そう。様々な混乱を脱するためにチクマリーン=フランダールは仮ではあるが、第15代ポメラニア帝国の帝の座に収まることになる。
宮廷の玉座の間にて、簡易的ながらにも戴冠式が執り行われることになる。『教皇』であるテリア=フランダールの手より、娘であるチクマリーン=フランダールの頭にポメラニア帝国を治める者としての証でもある月桂樹の葉で出来た冠がチクマリーンの頭に乗せられる。この瞬間、ポメラニア帝国に新たな帝が誕生したのであった。
「その方たちの尽力には感謝するのデスワッ! ワタクシが第15代ポメラニア帝国の帝なのデスワッ!」
玉座の間に集まる貴族たちの前で、右手に持つ蒼き竜の槍と左手に持つ裁きの錫杖を掲げて、高らかに宣言するチクマリーン帝であった。そして、次に続く帝の言葉に皆は顔から血の気を引かされることなる。
「宰相:ツナ=ヨッシー並びにその騎士:モル=アキスは一命を賭して、ワタクシを護ってくれたのデスワッ! その者たちを死に追いやった重罪人を捕らえるのデスワッ!」
クロードが目覚めたその日の昼前に兵舎の寝室のベッドで横になっていた兵士たちの慰問にハジュン=ド・レイがやってきていたのである。そのハジュンがクロードにも声をかけている真っ最中だ。ハジュンからクロードは宰相:ツナ=ヨッシーが謀反を企んだその日から丸2日が経過していることを伝えられる。
そして、ナギッサ=フランダールが暗殺されてしまったこと。その実行犯は捕らえることが出来たことを矢継ぎ早に説明されることとなる。
クロードはやるせない気持ちになっていた。元々は第1皇女の夫君であるナギッサ=フランダールを暗殺から守ることが第一優先事項であったのに、それを未然に防げなかったのである。
あの真っ暗闇のボールルームからナギッサ=フランダールを隠し部屋に移動させたのはクロードとミサ=ミケーン、そしてセイ=ゲンドーであった。クロードはナッギサに感謝の念を送られていた。だが、結局はナギッサの命は失われることになる。
クロードの両手には自然と力を込められてしまう。そんなクロードの右手を優しく包み込む存在があった。それはロージーの右手であった。ロージーはクロードが横になっているベッドの右側に添え付けらえた丸椅子に座った状態である。ロージーの右手から伝わってくる体温がクロードにとっての唯一の慰めであった。
「では、先生は色々と後片付けがありますので、これで失礼しますね。いやはや……。シヴァ帝と大将軍:ドーベル=マンベルくんは行方不明。そして、先生の戦友であるエヌル=ボサツくんは大きな怪我は無いものの、息子のナギッサくんを失って、失意のどん底ですし」
「すいません。俺がずっとナギッサさまの側に居れば……」
「いえ。あの隠し部屋に配置していたのは先生が信頼していた兵たちばかりです。その警戒網をかいくぐり、さらには彼ら全員を殺していますからね、カンタスくんは。いやあ、あの場にクロードくんが居なかったことのほうが逆に良かったのかも知れません」
ハジュンの言葉に嘘偽りは無かった。ナギッサ=フランダールの命を守ることは、ハジュンにとっても大事な件であったのだ。それゆえ、ハジュンは自分の子飼いの兵たちの中でも、腕利きの者たちを配置させていたのだ。その者たちを全て屠った暗殺者:カンタスの存在に気づかなかった時点で、自分自身の落ち度だと、ハジュンは言うのであった。
カンタスは今、宮廷の四方にある塔の東側にある『冷却の牢獄』にて捕らえているという話であった。そこはポメラニア帝国で死刑につぐ重罪を行った者たちが捕らえられる牢獄である。
ロージーは『冷却の牢獄』という言葉を聞いて、表情を曇らせる。それもそうだ。その牢獄に捕らわれている者のひとりにロージーの父親であるカルドリア=オベールが居るからだ。
カルドリア=オベールは未だ、あの冷却の牢獄に捕らわれの身のままだ。恩赦をもらうはずが、そもそもとしてシヴァ帝が大将軍:ドーベル=マンベルと共に行方知れずなのである。
当然、ポメラニア帝国は未曾有の大混乱に陥っていた。
その収拾をつけるために、ハジュン=ド・レイが動いていたのである。この状況で、ロージーが自分の父親を冷却の牢獄から出してほしいなど頼めるわけがない。
「パパ……」
ロージーとしては珍しく弱気な声で、そうつぶやく。そして、クロードの右手の甲をギュッと自分の右手で握りしめる。クロードはそんなロージーの気持ちを察して、右手をひっくり返し、ロージーの右手の指に自分の指をからめて、しっかりと握り返すのであった。
それからさらに1週間が経過する。シヴァ帝不在を補うため、誰かがポメラニア帝国のトップに君臨せねばならぬ状況になっていた。そこで推されたのが帝の継承権を持つシヴァ帝の第1皇女たるチクマリーン=フランダールであった。
シヴァ帝の妃であるテリア=フランダールは存命中であったが、そもそもとして、彼女には帝になりえる継承権が存在しない。代々、帝の継承権は妃には与えられない決まりとなっていた。
その代わり、妃にはポメラニア帝国内の神殿、社を統括する『教皇』の地位が与えられていた。しかし、それは妃が帝の政治に口を出すことを禁止させるための方策である。
ポメラニア帝国250年の歴史において、とある妃の幼い息子が帝位を継いだ時に、その息子をを補佐し、政治の実権を握るという事態が実際に起きたのだ。しかし、それにより、一時的にではあるが、帝自身の権威は大きく失墜することになる。その事態を重く見た当時の四大貴族が妃を排除すべく動いたのである。
それが妃に『教皇』の地位を与えるという行為なのである。ポメラニア帝国は初代アキータ帝により政教分離が成功したエイコー大陸中唯一の帝国であった。『教皇』の地位を与えられた妃は宗教も帝国の政治も全て牛耳れると勘違いしてくれたのである。
しかし、実際に起きたことは、妃の実質的排除が成功したことであった。民の間でも、政教分離の考えは根付いており、民からの声もあり、妃は政治の舞台から引きずり落とされることとなったのである。
話を戻そう。様々な混乱を脱するためにチクマリーン=フランダールは仮ではあるが、第15代ポメラニア帝国の帝の座に収まることになる。
宮廷の玉座の間にて、簡易的ながらにも戴冠式が執り行われることになる。『教皇』であるテリア=フランダールの手より、娘であるチクマリーン=フランダールの頭にポメラニア帝国を治める者としての証でもある月桂樹の葉で出来た冠がチクマリーンの頭に乗せられる。この瞬間、ポメラニア帝国に新たな帝が誕生したのであった。
「その方たちの尽力には感謝するのデスワッ! ワタクシが第15代ポメラニア帝国の帝なのデスワッ!」
玉座の間に集まる貴族たちの前で、右手に持つ蒼き竜の槍と左手に持つ裁きの錫杖を掲げて、高らかに宣言するチクマリーン帝であった。そして、次に続く帝の言葉に皆は顔から血の気を引かされることなる。
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