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第7章:脱出
7:神殺しの剣
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ミサ=ミケーンがそうセイ=ゲンドーに言ったあと、彼の右隣りに立ち、腰の背中側に佩いた2本の鞘から短剣を抜き出す。右手の1本は元々、彼女が所持していた蝶の短刀・緋。そして、左手に持つ1本は、彼女の兄であるカンタス=ミケーンが所持していた蝶の短刀・蒼であった。
(お兄ちゃん……。もしかして、こうなることを予測していたのかニャン?)
ミサは左手に持つ蝶の短刀・蒼が右手の短剣と比べて、やけに重い気がした。それは兄がその短剣で屠ってきた者たちの魂が宿っているかもしれないとさえ思えてしかたがなかったのである。
ミサ=ミケーンは要らぬ詮索は邪魔だとばかりに頭を左右に振る。そして口を開き、力ある言葉を発するのであった。
「詠唱入力『蝶の短刀』。『蝶也・蜂也』発動許可申請……」
彼女は眼を閉じながら、その身からあふれ出す灰褐色の魔力を両手に握る短剣へと注いでいく。そして、琥珀色の双眸を見開き
「使用許可が下りたニャン! 『蝶也・蜂也』発動だニャン!」
ミサ=ミケーンがそう宣言した瞬間に、彼女が両手に握る短剣から蝶が羽ばたいた時に巻き起こる鱗粉が具現化されることになる。その大量の紫色の鱗粉は眼の前に迫りくる菜の花色の鎧の兵士たちへと纏わりついていくのであった。
セイ=ゲンドーとミサ=ミケーンを廊下に残したまま、走り続けたロージー、クロード、コッシロー、そしてハジュンの3人と1匹は西塔の入り口にまで到達していた。しかし、彼らの進行を阻むかのように強固な結界が絶対不可侵の壁となり立ちはだかることとなる。
「ちゅっちゅっちゅ! 魔術的な何かしらの結界かと思ったら、物理的に樹木が幾重にも絡みあっているんでッチュウ! さらにその樹木1本1本に魔術を仕込むとか、代々の帝はアホか何かなのでっちゅう!?」
「あちゃあ……。先生も扉の先の結界を見るのは初めてでしたけど、まさか、こんなことになっているなんて。いやあ、これは想像以上に厄介なシロモノでしたね?」
西塔に繋がる扉を開けると、道を塞ぐかのように細い樹木が絡み合い、お互いを引き締め合って、強固な壁となっていた。これなら石壁で塞いでくれたほうがまだマシといったところである。
1本1本の樹木は細いので、その1本を剣で斬るのは容易い。だが、その1本を剣で切っている間に、その隙間を埋めるかのように新たな樹木がニョキニョキと生えてくる仕掛けとなっているのだ。
コッシローが魔力探査を行って、そう結論づける。ここでロージーが何かを思いつく。
「樹木が宮廷内に流れる魔力を吸い上げて、それを自己の修復と再生に使っているんでしょ? なら、この樹木の育成を逆行させれば……」
「それは理論としては正しいのでッチュウ。でも、実現不可能なのでッチュウ。ロージーちゃんが逆行魔術を使えるようにはしたけれど、まだまだ修得してから日が浅すぎるのでッチュウ。ロージーちゃんがあと10年、いや5年でもいいから研鑽を積み重ねていたなら話は別でッチュウけど……」
コッシローは切歯扼腕としていた。そもそも、コッシローはロージーの魔術の腕が超一流へ達した時に、彼女を始祖神:S.N.O.Jにぶつけようと考えていたのだ。
コッシローの目的は始祖神:S.N.O.Jと対決し、再び250年ほど確実に封印することである。そのための手駒として選んだのがロージーであった。コッシローの見立てでは、始祖神:S.N.O.Jがこの世に再び悪影響を与えるのは4~5年先だと考えていた。
ロージーが超一流の魔術師へと育つその時まで、コッシローは金色の聖書に施された封印を補強しようと画策していた。しかし、そもそもとして、その金色の聖書自体をメアリー帝が破壊したのである。
コッシローの計画は海の泡と帰していたのだ、この時点で。だからこそ、コッシローはせめて、始祖神:S.N.O.Jの魔の手からロージーを逃がそうとしているのだ。しかし、西塔の入り口を塞ぐこの強固な結界が彼らを拒絶するのであった。
「しょうがありませんね。奥の手を使うしかありませんか……。ローズマリーくん。先ほど、ヌレバくんから剣を一振り譲ってもらいましたよね? それを先生に貸してもらえませんか?」
「えっ? これでどうにか出来るシロモノなの?」
ロージーはハジュンの言わんとしていることがなんであるか、理解が追い付かなかった。だが、ハジュンさまが何とかしてくれると言っている以上、ロージーはヌレバから預かった剣をハジュンに手渡すのであった。
ハジュンはロージーから一振りの剣を受け取り、それを鞘から抜き出すのであった。ロージーはここで気づかされることがあった。ポメラニア帝国に存在する剣のほとんどは両刃の直剣である。しかし、ハジュンが抜き身にした剣は片刃であり、さらには軽く反りがあったのだ。
「これは一見、長剣の類に見えるかもしれませんが、カタナなんですよね。ローズマリーくんは火の国:イズモでこれとおなじような形状の剣を見ていませんか? 鍛冶屋さんとかで」
「は、はい。片刃でなんだか使いづらそうな長剣だなあってことは思っていましけど……」
「そう。その通り。カタナは非常に扱いにくい剣なんです。ですが、カタナの斬れ味は、ポメラニア帝国に現存する剣の中で1番なんですよ。って、悠長に説明をしている暇なんてありませんね。さっそく、この神殺しの剣の斬れ味を試させていただきましょう」
ハジュンはそこまで言うと、抜いたカタナを一度、鞘に納めるのであった。そして、両足を大きく開き、居合の型を取る。
「詠唱入力『神殺しの剣』。『全てを超える者』発動許可申請……」
ハジュンは眼を閉じて、ぶつぶつと小さな声で詠唱を開始する。そして、その身からコッシローと同じ紫色の魔力をあふれ出させ、自分の身に宿る魔力の全てを神殺しの剣に流し込んでいく。
「使用許可が下りました。『全てを超える者』発動です!!」
ハジュンは琥珀色の双眸を見開き、鞘から素早く刀身を抜き、斜め下から逆袈裟斬りでカタナを振りきる。幾重にも重なる樹木の表面に一筋の紫色の直線がくっきりと浮かび上がるのであった。
(お兄ちゃん……。もしかして、こうなることを予測していたのかニャン?)
ミサは左手に持つ蝶の短刀・蒼が右手の短剣と比べて、やけに重い気がした。それは兄がその短剣で屠ってきた者たちの魂が宿っているかもしれないとさえ思えてしかたがなかったのである。
ミサ=ミケーンは要らぬ詮索は邪魔だとばかりに頭を左右に振る。そして口を開き、力ある言葉を発するのであった。
「詠唱入力『蝶の短刀』。『蝶也・蜂也』発動許可申請……」
彼女は眼を閉じながら、その身からあふれ出す灰褐色の魔力を両手に握る短剣へと注いでいく。そして、琥珀色の双眸を見開き
「使用許可が下りたニャン! 『蝶也・蜂也』発動だニャン!」
ミサ=ミケーンがそう宣言した瞬間に、彼女が両手に握る短剣から蝶が羽ばたいた時に巻き起こる鱗粉が具現化されることになる。その大量の紫色の鱗粉は眼の前に迫りくる菜の花色の鎧の兵士たちへと纏わりついていくのであった。
セイ=ゲンドーとミサ=ミケーンを廊下に残したまま、走り続けたロージー、クロード、コッシロー、そしてハジュンの3人と1匹は西塔の入り口にまで到達していた。しかし、彼らの進行を阻むかのように強固な結界が絶対不可侵の壁となり立ちはだかることとなる。
「ちゅっちゅっちゅ! 魔術的な何かしらの結界かと思ったら、物理的に樹木が幾重にも絡みあっているんでッチュウ! さらにその樹木1本1本に魔術を仕込むとか、代々の帝はアホか何かなのでっちゅう!?」
「あちゃあ……。先生も扉の先の結界を見るのは初めてでしたけど、まさか、こんなことになっているなんて。いやあ、これは想像以上に厄介なシロモノでしたね?」
西塔に繋がる扉を開けると、道を塞ぐかのように細い樹木が絡み合い、お互いを引き締め合って、強固な壁となっていた。これなら石壁で塞いでくれたほうがまだマシといったところである。
1本1本の樹木は細いので、その1本を剣で斬るのは容易い。だが、その1本を剣で切っている間に、その隙間を埋めるかのように新たな樹木がニョキニョキと生えてくる仕掛けとなっているのだ。
コッシローが魔力探査を行って、そう結論づける。ここでロージーが何かを思いつく。
「樹木が宮廷内に流れる魔力を吸い上げて、それを自己の修復と再生に使っているんでしょ? なら、この樹木の育成を逆行させれば……」
「それは理論としては正しいのでッチュウ。でも、実現不可能なのでッチュウ。ロージーちゃんが逆行魔術を使えるようにはしたけれど、まだまだ修得してから日が浅すぎるのでッチュウ。ロージーちゃんがあと10年、いや5年でもいいから研鑽を積み重ねていたなら話は別でッチュウけど……」
コッシローは切歯扼腕としていた。そもそも、コッシローはロージーの魔術の腕が超一流へ達した時に、彼女を始祖神:S.N.O.Jにぶつけようと考えていたのだ。
コッシローの目的は始祖神:S.N.O.Jと対決し、再び250年ほど確実に封印することである。そのための手駒として選んだのがロージーであった。コッシローの見立てでは、始祖神:S.N.O.Jがこの世に再び悪影響を与えるのは4~5年先だと考えていた。
ロージーが超一流の魔術師へと育つその時まで、コッシローは金色の聖書に施された封印を補強しようと画策していた。しかし、そもそもとして、その金色の聖書自体をメアリー帝が破壊したのである。
コッシローの計画は海の泡と帰していたのだ、この時点で。だからこそ、コッシローはせめて、始祖神:S.N.O.Jの魔の手からロージーを逃がそうとしているのだ。しかし、西塔の入り口を塞ぐこの強固な結界が彼らを拒絶するのであった。
「しょうがありませんね。奥の手を使うしかありませんか……。ローズマリーくん。先ほど、ヌレバくんから剣を一振り譲ってもらいましたよね? それを先生に貸してもらえませんか?」
「えっ? これでどうにか出来るシロモノなの?」
ロージーはハジュンの言わんとしていることがなんであるか、理解が追い付かなかった。だが、ハジュンさまが何とかしてくれると言っている以上、ロージーはヌレバから預かった剣をハジュンに手渡すのであった。
ハジュンはロージーから一振りの剣を受け取り、それを鞘から抜き出すのであった。ロージーはここで気づかされることがあった。ポメラニア帝国に存在する剣のほとんどは両刃の直剣である。しかし、ハジュンが抜き身にした剣は片刃であり、さらには軽く反りがあったのだ。
「これは一見、長剣の類に見えるかもしれませんが、カタナなんですよね。ローズマリーくんは火の国:イズモでこれとおなじような形状の剣を見ていませんか? 鍛冶屋さんとかで」
「は、はい。片刃でなんだか使いづらそうな長剣だなあってことは思っていましけど……」
「そう。その通り。カタナは非常に扱いにくい剣なんです。ですが、カタナの斬れ味は、ポメラニア帝国に現存する剣の中で1番なんですよ。って、悠長に説明をしている暇なんてありませんね。さっそく、この神殺しの剣の斬れ味を試させていただきましょう」
ハジュンはそこまで言うと、抜いたカタナを一度、鞘に納めるのであった。そして、両足を大きく開き、居合の型を取る。
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ハジュンは眼を閉じて、ぶつぶつと小さな声で詠唱を開始する。そして、その身からコッシローと同じ紫色の魔力をあふれ出させ、自分の身に宿る魔力の全てを神殺しの剣に流し込んでいく。
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