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第8章:反旗
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――ポメラニア帝国歴264年 7月16日 ポメラニア帝国領:土の国:モンドラ 平野部にて――
チクマリーン=フランダール改め、メアリーが第15代のポメラニア帝国の帝に就いてから、ポメラニア帝国領内では恐怖政治が執り行われていた。
彼女は犯罪者を検挙するために通報者の匿名性を高めるための施策として密告制度を設けたのである。
そのため、罪無き人々までもが牢獄に捕らわれる結果となる。
帝国民が隣人すらも信用できないほどの猜疑心に襲われる中、メアリー帝は新たな大将軍として若き男を採用する。その男の名はイコン=コブングーダであった。宮中ではメアリー帝がナギッサ=フランダールという夫が居たのに、密会を重ねた仲と噂されていた男である。
大将軍:イコン=コブングーダは兵をまとめ上げて、帝国内の反乱分子を制圧する任に就く。彼がまず目指した先はボサツ家の旧領である水の国:アクエリーズであった。ボサツ家への不当なる扱いに業を煮やした伯爵家、子爵家、それに追随するかのように数多くの男爵家がメアリー帝が戴冠式を終えてから数えて4年後にポメラニア帝国に対して反旗を翻したのだ。だが、それは多くの者たちの予想を裏切り、たった1年で鎮圧されることになる。
その名将としての器を発揮した大将軍:イコン=コブングーダが次に狙いを定めたのは土の国:モンドラであった。かの地には大罪人が匿われているとの情報をイコン=コブングーダは入手したのである。
大将軍が率いる1万の兵は燎原のような勢いを保ち、土の国:モンドラに住む部族たちの集落を襲い続けたのである。
「いよいよ大将軍:イコンが率いる1万の兵がここから1時間のところまで迫ってきたようね」
透き通るような白銀の甲冑に身を包んだ金髪の女性が蒼穹の双眸で平原の彼方を見守っていた。
「ああ、そうだな。でも、勝つのは俺たちだ……」
彼女が乗る戦闘用馬車の右隣りには燃えるような紅い甲冑に身を包んだ騎士がこれまた紅いタテガミの馬にまたがっていた。彼は兜の前面を降ろし、戦闘態勢に入るのであった。
そんな隣の男に慈愛の籠った視線を彼女は送るのであった。
(クロ。わたしの隣にずっといてくれてありがとう。そして、これからもわたしの隣に居てほしい)
彼女は左腕に抱えていた白銀の兜を自分の頭に装着する。そして、戦闘用馬車の上で立ち上がり、くるっと後ろへと向く。そして後方に控える1千の騎馬隊に激励を飛ばす。
「わたしはローズマリー=オベール! 今日までわたしを支えてくれてありがとう! そして、今日、この日、この時、この場所から、わたしはあなたたちの命を全てもらうわっ!」
ローズマリーは腰の左側に佩いた鞘から1本のカタナを右手で抜き出し、それを頭上に高々と掲げる。その瞬間、後方に控える騎馬隊の皆は、それぞれの手にそれぞれ槍、長剣、そして弓を持ち、彼女と同じように頭上で掲げ、上下に振り回すのであった。
その時であった。そんな彼らを射殺すための3千を超える矢の雨が天上から降り注ごうとしていたのである。
「まったく……。あちらはせっかちさんね……。そう……。穏便に済ませようと思っていた、わたしが間違っていたわね……。 詠唱入力『正邪の秤』。『絶対なる盾』発動許可申請……」
――汝、皇となるために我の力を欲するか?
(ええ。わたしはこの間違った世を正すために立ち上がったのよ)
――汝、皇でありながら、皆を護るための盾となるのか?
(そうよ。わたしは皆を死なせたくないの)
――汝の行く道は険しい。
(そんなの承知よ。でも、わたしにはクロがいてくれる。わたしだけを護ってくれるクロが居るわ)
――汝は誠に幸いである。我の力を存分に使え。我と対を成す神殺しの剣とそなたの想い人が持つ薔薇乙女の細剣の使用許可も与える。
(それは願ってもない申し出ね? どうせあとで申請許可をもらおうとしていたのに。手間が省けて幸いよ?)
「使用許可が下りたわ! 『絶対なる盾』展開! それと同時に『幸せへの福音歌』を発動するわよっ! 皆、巻き込まれないように注意してねっ!」
「ちょっと、待て! なんでモノのついでみたいに『幸せへの福音歌』まで許可をもらっているんだよっ!?」
「あら? クロこそ何を言っているのよ? 『侵略スルコト火ノ如シ。初手カラ最強ノ手札ヲ切レ』って、コッシローとハジュンさまが開く【ソンシノヘイホー】っていう授業で習ったじゃないの?」
あっけらかんと言いのけるローズマリー=オベールに対して、クロード=サインは、はあああと深いため息をつかざるをえないのであった。
天上から降り注ぐ3千の矢のことごとくはローズマリーが展開した薔薇色の障壁によりはじき返されることになる。そして、ローズマリーは騎手に戦闘用馬車を前方へ発進させるように命じるのであった。
「さあ、行くわよっ! クロは騎馬隊100を率いて右翼へ展開! ヌレバは同じく騎馬隊100を率いて左翼に展開よっ! ミサ! セイ! あんたたち、後詰だからってのんきに構えてるんじゃないわよっ!?」
彼女を乗せた戦闘用馬車は平原の向こう側に迫ってきていた敵の先方隊3千に一直線に突き進んでいく。彼女の右手に握られた神殺しの剣には彼女がその身から発する薔薇色に染まった魔力を吸い込み、この世の全てを照らす太陽を思わせるかのような色に染まり上がっていくのであった。
チクマリーン=フランダール改め、メアリーが第15代のポメラニア帝国の帝に就いてから、ポメラニア帝国領内では恐怖政治が執り行われていた。
彼女は犯罪者を検挙するために通報者の匿名性を高めるための施策として密告制度を設けたのである。
そのため、罪無き人々までもが牢獄に捕らわれる結果となる。
帝国民が隣人すらも信用できないほどの猜疑心に襲われる中、メアリー帝は新たな大将軍として若き男を採用する。その男の名はイコン=コブングーダであった。宮中ではメアリー帝がナギッサ=フランダールという夫が居たのに、密会を重ねた仲と噂されていた男である。
大将軍:イコン=コブングーダは兵をまとめ上げて、帝国内の反乱分子を制圧する任に就く。彼がまず目指した先はボサツ家の旧領である水の国:アクエリーズであった。ボサツ家への不当なる扱いに業を煮やした伯爵家、子爵家、それに追随するかのように数多くの男爵家がメアリー帝が戴冠式を終えてから数えて4年後にポメラニア帝国に対して反旗を翻したのだ。だが、それは多くの者たちの予想を裏切り、たった1年で鎮圧されることになる。
その名将としての器を発揮した大将軍:イコン=コブングーダが次に狙いを定めたのは土の国:モンドラであった。かの地には大罪人が匿われているとの情報をイコン=コブングーダは入手したのである。
大将軍が率いる1万の兵は燎原のような勢いを保ち、土の国:モンドラに住む部族たちの集落を襲い続けたのである。
「いよいよ大将軍:イコンが率いる1万の兵がここから1時間のところまで迫ってきたようね」
透き通るような白銀の甲冑に身を包んだ金髪の女性が蒼穹の双眸で平原の彼方を見守っていた。
「ああ、そうだな。でも、勝つのは俺たちだ……」
彼女が乗る戦闘用馬車の右隣りには燃えるような紅い甲冑に身を包んだ騎士がこれまた紅いタテガミの馬にまたがっていた。彼は兜の前面を降ろし、戦闘態勢に入るのであった。
そんな隣の男に慈愛の籠った視線を彼女は送るのであった。
(クロ。わたしの隣にずっといてくれてありがとう。そして、これからもわたしの隣に居てほしい)
彼女は左腕に抱えていた白銀の兜を自分の頭に装着する。そして、戦闘用馬車の上で立ち上がり、くるっと後ろへと向く。そして後方に控える1千の騎馬隊に激励を飛ばす。
「わたしはローズマリー=オベール! 今日までわたしを支えてくれてありがとう! そして、今日、この日、この時、この場所から、わたしはあなたたちの命を全てもらうわっ!」
ローズマリーは腰の左側に佩いた鞘から1本のカタナを右手で抜き出し、それを頭上に高々と掲げる。その瞬間、後方に控える騎馬隊の皆は、それぞれの手にそれぞれ槍、長剣、そして弓を持ち、彼女と同じように頭上で掲げ、上下に振り回すのであった。
その時であった。そんな彼らを射殺すための3千を超える矢の雨が天上から降り注ごうとしていたのである。
「まったく……。あちらはせっかちさんね……。そう……。穏便に済ませようと思っていた、わたしが間違っていたわね……。 詠唱入力『正邪の秤』。『絶対なる盾』発動許可申請……」
――汝、皇となるために我の力を欲するか?
(ええ。わたしはこの間違った世を正すために立ち上がったのよ)
――汝、皇でありながら、皆を護るための盾となるのか?
(そうよ。わたしは皆を死なせたくないの)
――汝の行く道は険しい。
(そんなの承知よ。でも、わたしにはクロがいてくれる。わたしだけを護ってくれるクロが居るわ)
――汝は誠に幸いである。我の力を存分に使え。我と対を成す神殺しの剣とそなたの想い人が持つ薔薇乙女の細剣の使用許可も与える。
(それは願ってもない申し出ね? どうせあとで申請許可をもらおうとしていたのに。手間が省けて幸いよ?)
「使用許可が下りたわ! 『絶対なる盾』展開! それと同時に『幸せへの福音歌』を発動するわよっ! 皆、巻き込まれないように注意してねっ!」
「ちょっと、待て! なんでモノのついでみたいに『幸せへの福音歌』まで許可をもらっているんだよっ!?」
「あら? クロこそ何を言っているのよ? 『侵略スルコト火ノ如シ。初手カラ最強ノ手札ヲ切レ』って、コッシローとハジュンさまが開く【ソンシノヘイホー】っていう授業で習ったじゃないの?」
あっけらかんと言いのけるローズマリー=オベールに対して、クロード=サインは、はあああと深いため息をつかざるをえないのであった。
天上から降り注ぐ3千の矢のことごとくはローズマリーが展開した薔薇色の障壁によりはじき返されることになる。そして、ローズマリーは騎手に戦闘用馬車を前方へ発進させるように命じるのであった。
「さあ、行くわよっ! クロは騎馬隊100を率いて右翼へ展開! ヌレバは同じく騎馬隊100を率いて左翼に展開よっ! ミサ! セイ! あんたたち、後詰だからってのんきに構えてるんじゃないわよっ!?」
彼女を乗せた戦闘用馬車は平原の向こう側に迫ってきていた敵の先方隊3千に一直線に突き進んでいく。彼女の右手に握られた神殺しの剣には彼女がその身から発する薔薇色に染まった魔力を吸い込み、この世の全てを照らす太陽を思わせるかのような色に染まり上がっていくのであった。
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