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元婚約者との再会
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「おや、マーレイ? 」
不意に背後から聞き覚えのある声で呼ばれた。
「バルモア? 」
振り返るなりマーレイは、眉間に皺をきつく寄せる。
燕尾服姿のバルモアと、ピンクの絹サテンの後ろに膨らみを持たせたドレス姿のフローレンスが、睦まじく腕を絡めていたからだ。
「さすが、社交界でも評判の手の早さ。婚約破棄したかと思えば、もう次の男かい? 」
バルモアは不躾なほど、マーレイの隣に並んだサーフェスを値踏みしている。
婚約者に資金援助を受けているバルモアに比べて、公爵位にあり、おまけに高利貸しまで営んでいる財産家のサーフェスの方が、同じ燕尾服でも遥かに生地は上質で仕立てが良い。やっかんで、平然と無礼なことを口にしている。
「こ、この方はそんなんじゃないわ」
マーレイは否定したが、バルモアには通じなかった。
「へえ。別に責めてやしないよ。君の男好きは、今更だろ」
「し、失礼ね。私を貶めるだけならともかく、この方まで誤解した目で見ないで」
「別に。ただ、また君の被害者が出るのだと嘆いているのだよ」
これまでも被害者などいない。
根も葉もない根源を、マーレイは奥歯を噛んで睨みつける。
「あ、あなた。何故、ここに? 」
まさか、このような場で出くわすなんて。
憧れの俳優に出会えるといった浮ついた気持ちが、たちまち萎んでしまった。
「何故って。フローレンスがねだるから。何とか伝手を頼ってチケットを取ったんだよ」
「そうですの。マーレイ様」
フローレンスは見せつけるように、バルモアの腕にしなだれかかる。
そのチケット代も、おそらくフローレンスの実家の財布から捻出されただろうに。
「まさか、このような場で君と鉢合わせするとはね」
バルモアは嫌そうに鼻に皺を寄せるが、それはこちらの台詞だ。
夜会に出席しないのも、あからさまに仲睦まじさを見せつけてくる二人に、必要以上に関わりを持たないようするためだったのに。
「マーレイ様。もしかして、バルモア様にしつこく付き纏っていらっしゃるの? 」
フローレンスはふふんと高飛車な言い方で聞いてきた。
「そ、そんなことあるわけないでしょう」
婚約破棄した時点で彼への気持ちは切り替えている。
そもそも、彼との間には家と家を繋ぐ義理以上のものはなかった。
「マーレイ。そちらは一般の入り口。我々はこちらだ」
唐突にサーフェスが割って入った。
不毛な会話もバカバカしくなり、劇場への行列に加わろうと体の向きを変えたマーレイを、サーフェスはぐいと引き戻した。
彼の視線の先には、豪奢な金の縁飾りの扉がある。
サーフェスは、こっそりとマーレイだけにわかるようにウィンクしてみせた。
ムスッとしている彼らしからぬ、茶目っ気ある表情に、ドキリと心臓が跳ねる。
「初めまして。私はシェカール公爵サーフェス・マクラバーです」
彼は平然と言ってのけた。
不意に背後から聞き覚えのある声で呼ばれた。
「バルモア? 」
振り返るなりマーレイは、眉間に皺をきつく寄せる。
燕尾服姿のバルモアと、ピンクの絹サテンの後ろに膨らみを持たせたドレス姿のフローレンスが、睦まじく腕を絡めていたからだ。
「さすが、社交界でも評判の手の早さ。婚約破棄したかと思えば、もう次の男かい? 」
バルモアは不躾なほど、マーレイの隣に並んだサーフェスを値踏みしている。
婚約者に資金援助を受けているバルモアに比べて、公爵位にあり、おまけに高利貸しまで営んでいる財産家のサーフェスの方が、同じ燕尾服でも遥かに生地は上質で仕立てが良い。やっかんで、平然と無礼なことを口にしている。
「こ、この方はそんなんじゃないわ」
マーレイは否定したが、バルモアには通じなかった。
「へえ。別に責めてやしないよ。君の男好きは、今更だろ」
「し、失礼ね。私を貶めるだけならともかく、この方まで誤解した目で見ないで」
「別に。ただ、また君の被害者が出るのだと嘆いているのだよ」
これまでも被害者などいない。
根も葉もない根源を、マーレイは奥歯を噛んで睨みつける。
「あ、あなた。何故、ここに? 」
まさか、このような場で出くわすなんて。
憧れの俳優に出会えるといった浮ついた気持ちが、たちまち萎んでしまった。
「何故って。フローレンスがねだるから。何とか伝手を頼ってチケットを取ったんだよ」
「そうですの。マーレイ様」
フローレンスは見せつけるように、バルモアの腕にしなだれかかる。
そのチケット代も、おそらくフローレンスの実家の財布から捻出されただろうに。
「まさか、このような場で君と鉢合わせするとはね」
バルモアは嫌そうに鼻に皺を寄せるが、それはこちらの台詞だ。
夜会に出席しないのも、あからさまに仲睦まじさを見せつけてくる二人に、必要以上に関わりを持たないようするためだったのに。
「マーレイ様。もしかして、バルモア様にしつこく付き纏っていらっしゃるの? 」
フローレンスはふふんと高飛車な言い方で聞いてきた。
「そ、そんなことあるわけないでしょう」
婚約破棄した時点で彼への気持ちは切り替えている。
そもそも、彼との間には家と家を繋ぐ義理以上のものはなかった。
「マーレイ。そちらは一般の入り口。我々はこちらだ」
唐突にサーフェスが割って入った。
不毛な会話もバカバカしくなり、劇場への行列に加わろうと体の向きを変えたマーレイを、サーフェスはぐいと引き戻した。
彼の視線の先には、豪奢な金の縁飾りの扉がある。
サーフェスは、こっそりとマーレイだけにわかるようにウィンクしてみせた。
ムスッとしている彼らしからぬ、茶目っ気ある表情に、ドキリと心臓が跳ねる。
「初めまして。私はシェカール公爵サーフェス・マクラバーです」
彼は平然と言ってのけた。
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