30 / 112
恋愛劇の行く末
しおりを挟む
ジミー・シュバイツァー演じる公爵サイラスは最高だ。
公爵令息のサイラスは数年前まではイカサマな品を売り捌く商家の倅で、平民だった。
ある日、彼の元に公爵家から迎えが来る。
サイラスを産んだと同時に亡くなったとされていた母は実は生きており、何とさる公爵の一人娘だったのだ。
母は父と大恋愛をしたが、身分差によって引き離され、産んだ子供を父に押し付けて実家に戻り、言われるまま泣く泣く婿を迎えた。
ところが婿が早世し、婿との間に産んだ子供はまだまだ幼く、母の父親、つまりサイラスの祖父も病の後遺症で寝たきりになり、公爵家存続の危機だった。
そういった事情により、サイラスは半ば脅されるように公爵位を継いだ。
義理の弟が成人するまでの繋ぎだったはずが、その弟も五歳の幼さで病で亡くなり、サイラスの地位は決定づけられる。
サイラスには、公爵位を継ぐ前からの恋人ルナがいた。
突然作られた身分差により、引き離されようとする二人。
数々の困難が二人を襲う。
その度に二人は乗り越えて、絆を深めていく。
「良かった。良かったわね、ルナ。白いウェディングドレスが素敵よ」
芝居の終盤、サイラスと結ばれたルナは、純白のウェディングドレス姿となり、教会で恋人と抱き合う。
ルナと己を重ね合わせ、幸せな気持ちに浸り、涙をぼろぼろと零すマーレイ。ごわごわのハンカチーフで頬を擦ったものだから、肌が赤くヒリヒリするが、今はそんなこと構っていられない。
「何が良かっただ。こんなもの、ほとんど創作ではないか」
感極まって号泣するマーレイとは真逆に、サーフェスは仏頂面だ。
「恋愛部分は捏造の何物でもない。誰だ、ルナとか言う女は」
ぶつぶつと口を尖らせ、ワインを注ぐ。
「そもそも何なんだ、公爵令息とは。サイラスとか、くだらんもじり方をして」
ワインを一気に煽ると、空になったグラスをどんとテーブルに置いた。
まるで自分が芝居のモデルにされてしまったかのような言動だ。
確かに公爵だし、名前の響きもサーフェスに近い。
しかし、あくまでフィクションだ。
「水を差すような言動はお控えあそばせ」
涙を拭きながら、マーレイはいらいらと嗜める。
アルコールが体に入り、いつものツンツン済ました態度が取れていない。
「この演目は駄目だ。脚本が失敗だ」
「まあ! 何て言い草! 」
マーレイはハンカチーフをぐしゃりと握り潰す。
「許せませんわ」
「君に許しを乞うつもりはない」
「だからといって。ジミー・シュバイツァーを貶める発言は聞き捨てなりません」
「一個人の感想を述べたまでだ」
「でしたら、すぐに訂正するべきですわ」
「何故だ」
「彼の芝居も脚本も最高だからです」
「芝居はともかく、脚本は最低だ。至上稀に見る駄作と言える」
「まあ! 発言を改めてください」
「するつもりはない」
「まあ! 何て人かしら! 軽蔑しますわ! 」
「君に軽蔑されたところで、私に何ら影響はない」
「まあ! 」
ハンカチーフがくしゃくしゃに丸まった。
それを冷めた目で一瞥したサーフェスは、三杯目のワインを一気に飲み干した。立て続けのアルコールで、目元が赤らんでいる。
マーレイは憤慨し、ハンカチーフをぎゅうぎゅうと雑巾のように絞った。
公爵令息のサイラスは数年前まではイカサマな品を売り捌く商家の倅で、平民だった。
ある日、彼の元に公爵家から迎えが来る。
サイラスを産んだと同時に亡くなったとされていた母は実は生きており、何とさる公爵の一人娘だったのだ。
母は父と大恋愛をしたが、身分差によって引き離され、産んだ子供を父に押し付けて実家に戻り、言われるまま泣く泣く婿を迎えた。
ところが婿が早世し、婿との間に産んだ子供はまだまだ幼く、母の父親、つまりサイラスの祖父も病の後遺症で寝たきりになり、公爵家存続の危機だった。
そういった事情により、サイラスは半ば脅されるように公爵位を継いだ。
義理の弟が成人するまでの繋ぎだったはずが、その弟も五歳の幼さで病で亡くなり、サイラスの地位は決定づけられる。
サイラスには、公爵位を継ぐ前からの恋人ルナがいた。
突然作られた身分差により、引き離されようとする二人。
数々の困難が二人を襲う。
その度に二人は乗り越えて、絆を深めていく。
「良かった。良かったわね、ルナ。白いウェディングドレスが素敵よ」
芝居の終盤、サイラスと結ばれたルナは、純白のウェディングドレス姿となり、教会で恋人と抱き合う。
ルナと己を重ね合わせ、幸せな気持ちに浸り、涙をぼろぼろと零すマーレイ。ごわごわのハンカチーフで頬を擦ったものだから、肌が赤くヒリヒリするが、今はそんなこと構っていられない。
「何が良かっただ。こんなもの、ほとんど創作ではないか」
感極まって号泣するマーレイとは真逆に、サーフェスは仏頂面だ。
「恋愛部分は捏造の何物でもない。誰だ、ルナとか言う女は」
ぶつぶつと口を尖らせ、ワインを注ぐ。
「そもそも何なんだ、公爵令息とは。サイラスとか、くだらんもじり方をして」
ワインを一気に煽ると、空になったグラスをどんとテーブルに置いた。
まるで自分が芝居のモデルにされてしまったかのような言動だ。
確かに公爵だし、名前の響きもサーフェスに近い。
しかし、あくまでフィクションだ。
「水を差すような言動はお控えあそばせ」
涙を拭きながら、マーレイはいらいらと嗜める。
アルコールが体に入り、いつものツンツン済ました態度が取れていない。
「この演目は駄目だ。脚本が失敗だ」
「まあ! 何て言い草! 」
マーレイはハンカチーフをぐしゃりと握り潰す。
「許せませんわ」
「君に許しを乞うつもりはない」
「だからといって。ジミー・シュバイツァーを貶める発言は聞き捨てなりません」
「一個人の感想を述べたまでだ」
「でしたら、すぐに訂正するべきですわ」
「何故だ」
「彼の芝居も脚本も最高だからです」
「芝居はともかく、脚本は最低だ。至上稀に見る駄作と言える」
「まあ! 発言を改めてください」
「するつもりはない」
「まあ! 何て人かしら! 軽蔑しますわ! 」
「君に軽蔑されたところで、私に何ら影響はない」
「まあ! 」
ハンカチーフがくしゃくしゃに丸まった。
それを冷めた目で一瞥したサーフェスは、三杯目のワインを一気に飲み干した。立て続けのアルコールで、目元が赤らんでいる。
マーレイは憤慨し、ハンカチーフをぎゅうぎゅうと雑巾のように絞った。
96
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる