【完結】婚約破棄された悪役令嬢は童貞公爵様の恋愛指南役となる

氷 豹人

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恋愛劇の行く末

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 ジミー・シュバイツァー演じる公爵サイラスは最高だ。
 公爵令息のサイラスは数年前まではイカサマな品を売り捌く商家の倅で、平民だった。
 ある日、彼の元に公爵家から迎えが来る。
 サイラスを産んだと同時に亡くなったとされていた母は実は生きており、何とさる公爵の一人娘だったのだ。
 母は父と大恋愛をしたが、身分差によって引き離され、産んだ子供を父に押し付けて実家に戻り、言われるまま泣く泣く婿を迎えた。
 ところが婿が早世し、婿との間に産んだ子供はまだまだ幼く、母の父親、つまりサイラスの祖父も病の後遺症で寝たきりになり、公爵家存続の危機だった。
 そういった事情により、サイラスは半ば脅されるように公爵位を継いだ。
 義理の弟が成人するまでの繋ぎだったはずが、その弟も五歳の幼さで病で亡くなり、サイラスの地位は決定づけられる。
 サイラスには、公爵位を継ぐ前からの恋人ルナがいた。
 突然作られた身分差により、引き離されようとする二人。
 数々の困難が二人を襲う。 
 その度に二人は乗り越えて、絆を深めていく。
「良かった。良かったわね、ルナ。白いウェディングドレスが素敵よ」
 芝居の終盤、サイラスと結ばれたルナは、純白のウェディングドレス姿となり、教会で恋人と抱き合う。
 ルナと己を重ね合わせ、幸せな気持ちに浸り、涙をぼろぼろと零すマーレイ。ごわごわのハンカチーフで頬を擦ったものだから、肌が赤くヒリヒリするが、今はそんなこと構っていられない。
「何が良かっただ。こんなもの、ほとんど創作ではないか」
 感極まって号泣するマーレイとは真逆に、サーフェスは仏頂面だ。
「恋愛部分は捏造の何物でもない。誰だ、ルナとか言う女は」
 ぶつぶつと口を尖らせ、ワインを注ぐ。
「そもそも何なんだ、公爵令息とは。サイラスとか、くだらんもじり方をして」
 ワインを一気に煽ると、空になったグラスをどんとテーブルに置いた。
 まるで自分が芝居のモデルにされてしまったかのような言動だ。
 確かに公爵だし、名前の響きもサーフェスに近い。
 しかし、あくまでフィクションだ。
「水を差すような言動はお控えあそばせ」
 涙を拭きながら、マーレイはいらいらと嗜める。
 アルコールが体に入り、いつものツンツン済ました態度が取れていない。
「この演目は駄目だ。脚本が失敗だ」
「まあ! 何て言い草! 」
 マーレイはハンカチーフをぐしゃりと握り潰す。
「許せませんわ」
「君に許しを乞うつもりはない」
「だからといって。ジミー・シュバイツァーを貶める発言は聞き捨てなりません」
「一個人の感想を述べたまでだ」
「でしたら、すぐに訂正するべきですわ」
「何故だ」
「彼の芝居も脚本も最高だからです」
「芝居はともかく、脚本は最低だ。至上稀に見る駄作と言える」
「まあ! 発言を改めてください」
「するつもりはない」
「まあ! 何て人かしら! 軽蔑しますわ! 」
「君に軽蔑されたところで、私に何ら影響はない」
「まあ! 」
 ハンカチーフがくしゃくしゃに丸まった。
 それを冷めた目で一瞥したサーフェスは、三杯目のワインを一気に飲み干した。立て続けのアルコールで、目元が赤らんでいる。
 マーレイは憤慨し、ハンカチーフをぎゅうぎゅうと雑巾のように絞った。
 
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