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不意打ちの来訪
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応接室のドアの隙間から、マーレイはそうっと息を殺して窺う。
マホガニー材の応接セットは他所の貴族と変わり映えしない設えであるし、ペルシャ絨毯もアラベスク紋様とごくありふれている。
だが、布張りソファに腰を落ち着け、優雅な仕草で紅茶を含むサーフェス一人が加わるだけで、まるで劇場の舞台のような華やかさとなる。
高貴な者特有の空気。
「やっぱり本物だわ」
マーレイはこっそり呟いた。
「だから何度も言っているではないか」
彼女の背後から同じように覗き込んでいた父が、マーレイに向けて小言を口にする。
「詐欺師が金儲けに来たと思いましたの」
「そんなわけあるか」
「お父様、声が大きいですわ」
マーレイが叱りつけると、普段は威張り散らしている父がシュンと項垂れた。娘には弱い。
マーレイはそんな父を無視して、やたらに深呼吸を繰り返した。
いつまでも行儀悪く覗き見をしている場合ではない。
思い切ってドアを開いた。
「シェカール公爵。ようこそおいでくださいました」
丁寧にお辞儀をすれば、待ちかねたと言わんばかりにサーフェスが立ち上がった。
「今更、堅苦しい挨拶はなしだ」
やはり彼は特異だ。
貴族にとっては当たり前の挨拶すらすっ飛ばす。
「改めて君に話したいことがある」
担当直入の物言いに、マーレイは踵を引いた。
「な、何ですの? 」
「この場では憚れることだ」
言うならドアを一瞥する。
父が応接室のドアの外で様子を窺っているのは、とっくにお見通しだ。
「だ、だから何ですの? 」
「君の名誉にも関わることでもあるから、言えん」
断言されては、マーレイもそれ以上詰め寄ることは出来ない。
「私の屋敷に案内する」
彼の屋敷とは、ここから馬車で二時間ばかり離れた「ディアミッド商会」だろう。
「こ、郊外の方ですか? 」
幾ら馬車が快適だろうと、往復で四時間は疲弊してしまう。
御者といえば金貸しの従業員なのか、専属に比べて腕前は荒々しいし。
時折、小石を噛んでは跳ね上がる車体を思い出して、ゲッソリと頬がこけてしまう。
「いいや。公爵邸だ」
しかしサーフェスが招こうとしているのは、公爵邸。
シェカール邸の本宅だ。
王家との血縁関係が濃いほど、王宮の近くに屋敷を構えることが出来る。
王太子と従兄弟である彼の屋敷なら、王宮のすぐそばだ。
その領域は、王族公爵しか許されない。
その場所に足を踏み入れることが出来るのは、限られた貴族のみ。
貴族にも身分差は勿論ある。
そんな、たかだか伯爵家の自分が、これからその領域に入るのだ。
マーレイは息を呑んだ。
マホガニー材の応接セットは他所の貴族と変わり映えしない設えであるし、ペルシャ絨毯もアラベスク紋様とごくありふれている。
だが、布張りソファに腰を落ち着け、優雅な仕草で紅茶を含むサーフェス一人が加わるだけで、まるで劇場の舞台のような華やかさとなる。
高貴な者特有の空気。
「やっぱり本物だわ」
マーレイはこっそり呟いた。
「だから何度も言っているではないか」
彼女の背後から同じように覗き込んでいた父が、マーレイに向けて小言を口にする。
「詐欺師が金儲けに来たと思いましたの」
「そんなわけあるか」
「お父様、声が大きいですわ」
マーレイが叱りつけると、普段は威張り散らしている父がシュンと項垂れた。娘には弱い。
マーレイはそんな父を無視して、やたらに深呼吸を繰り返した。
いつまでも行儀悪く覗き見をしている場合ではない。
思い切ってドアを開いた。
「シェカール公爵。ようこそおいでくださいました」
丁寧にお辞儀をすれば、待ちかねたと言わんばかりにサーフェスが立ち上がった。
「今更、堅苦しい挨拶はなしだ」
やはり彼は特異だ。
貴族にとっては当たり前の挨拶すらすっ飛ばす。
「改めて君に話したいことがある」
担当直入の物言いに、マーレイは踵を引いた。
「な、何ですの? 」
「この場では憚れることだ」
言うならドアを一瞥する。
父が応接室のドアの外で様子を窺っているのは、とっくにお見通しだ。
「だ、だから何ですの? 」
「君の名誉にも関わることでもあるから、言えん」
断言されては、マーレイもそれ以上詰め寄ることは出来ない。
「私の屋敷に案内する」
彼の屋敷とは、ここから馬車で二時間ばかり離れた「ディアミッド商会」だろう。
「こ、郊外の方ですか? 」
幾ら馬車が快適だろうと、往復で四時間は疲弊してしまう。
御者といえば金貸しの従業員なのか、専属に比べて腕前は荒々しいし。
時折、小石を噛んでは跳ね上がる車体を思い出して、ゲッソリと頬がこけてしまう。
「いいや。公爵邸だ」
しかしサーフェスが招こうとしているのは、公爵邸。
シェカール邸の本宅だ。
王家との血縁関係が濃いほど、王宮の近くに屋敷を構えることが出来る。
王太子と従兄弟である彼の屋敷なら、王宮のすぐそばだ。
その領域は、王族公爵しか許されない。
その場所に足を踏み入れることが出来るのは、限られた貴族のみ。
貴族にも身分差は勿論ある。
そんな、たかだか伯爵家の自分が、これからその領域に入るのだ。
マーレイは息を呑んだ。
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