寡黙な消防士でも恋はする

氷 豹人

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続編 愛くらい語らせろ

11※

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 内臓ごと日浦に持って行かれそうだ。
 誇張じゃねえ。まさに言葉通り。
 俺の体は自分が思う以上に正直だ。言葉で幾ら拒もうと、シリコンの玉の連なる器具が奥へと進むのを受け入れたくて、固く閉ざしたはずの侵入口は最早トロトロと濡れている。
 十個連なる黒く丸い玉は、不気味に艶々だ。最先端は小さく、段々と大きくなっていく。玉が直腸の奥へ入り込まないよう、根本はリング状になっていた。こんな玩具はさすがに未経験だ。橋本め、寄越してきたのはバイブだけじゃないのかよ。
「……うっ」
 なけなしのプライドで快楽を拒否するのは、苦しくて苦しくて。知らないうちに眦には涙が溜まり、鼻水まで垂れる始末。額には脂汗がひっきりなしに粒を作る。
「後ろはいつ経験した?」
 気を紛らわせるだけの問いかけ。わかったよ。乗ってやるよ。
「こ、高校生んときに」
「キレイなオネーサンと?」
「いや。ナンパした女……ひあ!」
 いきなりは反則だろ。丸い玉が強引に割れ目を抉る。普段もっと大きくて太いものを咥え込んでいるんだ、侵入を許せば容易い。
「真面目に答え過ぎ」
 じゃあ、何て答えたら満足いただけるんですか。
 一度許せば次々に入り込む。思ったより痛みはない。あるのは、粘膜を擦る違和感。
「全部入ったよ」
 だから、いちいち報告するな。
 蕩けて潤んだ内部に連なる十連の玉。リングが軽く引かれて蠕動する。湧き上がる排泄感。
「ひっ」
 ほんの少し引かれただけで、爪先がピンと張る。
「はっ……ああ……んん」
「エロいよ、あっちゃん」
 引っ張ったかと思ったら、また押し込んで。繰り返される刺激で神経が研ぎ澄まされる。ほんの些細な動きで、何度もソファの座面から体が浮いた。
「やっぱり、あっちゃんはこっち側だろ」
 こっち側ってどっちだ。
「最初から決まってたんだよ」
 何が。
「俺とこうなること」
 一気に十連の玉を引き抜かれる。
「あっ!うああ!」
 ぽこ、ぽこ、と開いては閉じて、開いては閉じてと、玉が抜けて行く。
 びりびり、と背筋を電流が走る。雷で撃たれたように全身が痙攣する。電流は脳天を直撃し、それが快楽であると理解した。
 視界が滲む。大人気なく鼻水を垂らし泣いているのなんか、気にならないくらいの凄まじさ。
「もう一回する?」
 間を置かずに首を縦に振っていた。
 成人してからはお行儀の良いセックスしかしていないから、ただひたすら、覚えたばかりの快楽を繰り返したい。
「了解」
 勿体ぶって丸い玉を指先で弄る日浦。
 もどかしくて堪らない。
「あっちゃんからキスして」
 調子に乗るな。
 そう口ごたえしたいのに、言われるがまま、日浦の薄い唇を塞いでやる。
 唇を重ねたまま、再び日浦は最初の玉をひくつく場所に当てた。待ってましたとばかりに収縮し、喰らいつく。次々に、だんだん大きくなる玉を飲み、とうとう根本のリングのみになった。今はまだ細い道が、ぽこぽこした形に変化する。
「このままグズグズに溶かして、女を抱けない体にしてやる」
 とっくに抱けない体だ。どんな別嬪のネエチャンが相手だろうと、無反応。日浦でしか快楽は得られない。まだわからないのか。 
「俺がいい?」
「あ……ああ……」
「俺だけだろ?」
「あ……ああ……ああ……」
 馬鹿みたいに「ああ」しか言えない。
 普段なら絶対認めない台詞。こんな場面でしか本心をさらけ出せない。
「色っぽい顔」
「う……うるせえ……あっ」
 またしても一気に引き抜かれる。ぽこ、ぽことリズムに合わせて粘膜が蠢いた。
 頭の中で何かがぜ、真っ白になる。
 まさに、まな板の上で捌かれようとする魚だ。びくん、と背中が反る。びくん、びくん、と大きく何度も痙攣した。
「あああああ!」
 まさしく断末魔。
 日浦によって体が造り替えられ、獣に成り果ててしまった。 
 醜く涎を垂らし、下半身はグズグズで、 ソファの革に白く円く水が溜まる。値段の張る代物が台無しだ。
「さあ。次は俺の番だからな」
 言いながら、日浦は猛りの収まらないものを、べちゃべちゃに濡れた場所に押し当て、今すぐ潜り込みたいと腰を前後させた。
「は、早く来いよ」
 日浦の肩に手を回し、上目遣いで挑発してやる。
 日浦の琥珀の双眸が尖った。
 まだまだ夜は明けない。



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