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第壱話 禊祓-ミソギハライー①
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努力に間違いはないが人には間違いがある。
努力が実を結ばないのは、その人間に見合った価値がないから。
努力に見合う価値を、人は才能という。
*
「あー……一旦タイム。ちょっと待って。殺すの明後日にして。」
随分と情けない声が出たもんだ。
自分の喉からひり出した声だなんて、考えたくもない。
白いコンクリートの床に倒れこみ、薄焼けた空を見上げる俺の眼前で、ソイツはゆっくりと俺を見下ろした。
小鬼の様相をしたその存在は、俺の命乞いになど耳を傾けた様子もなく、右手に握る棍棒をゆっくりと掲げる。
夕日に当てられ、小鬼の影が色濃く俺を呑み込む。
“贖物”は全滅だし、“呪詛玉”は使えねぇし、まいったな。
いや、ほんとまいった、冗談抜きで。
死んだな、こりゃあ。
「それ、振り下ろしてもいいけど、俺には意味ねぇぞ? 全部お前に跳ね返るからな。そういう“じゅつし———」
俺の言葉を最後まで待たずに、小鬼は棍棒を振り下ろした。
黄土色の物体が瞬時に俺の視界を塞ぐ。
———死んだ。
そう思った瞬間、俺の視界は再び薄焼けの空を映し出し、その遠くで弾かれた様に棍棒が宙を舞っていた。
棍棒は大きく弧を描くと、俺の頭上の遥か先に落下して砕け散った。
大小様々な破片が飛び散る様子を目視していると、不意に足元から声が聞こえた。
「こいつは五級以下の妖だ。名前もない、言葉も通じない。意思の疎通は図れない。」
棍棒の動きを追っていた目を、足元に移動させる。
その視線の通過点で、いつの間にか小鬼が消えているのを確認する。
「そうだとしても、陰陽師が妖に命乞いをするなんて、あってはならないことだ。」
足元に、一人の男が立っていた。
学ランを着た、白髪の少年。
「今のは聞かなかったことにしとくよ。怪我はないかい? 正紋。」
少年はゆっくりと俺に近づき、手を差し伸べてきた。
「あぁ……そうか。」
少年の手に摑まり、上体を起こす。
そうだった。
俺は、陰陽師なんだった。
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