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第参章 水龍神様と涙雨の巫女と小さな龍の雫!~パパママ神様、今日も育児に奮闘中です!~
第21話 水龍神様、パパになる!?
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あの、神域の存亡をかけた戦いから、地上では五年ほどの歳月が流れた。
かつて干ばつに泣いていたことが嘘のように、水見里(みずみさと)は、水龍神様の豊かな恵みを受けて、穏やかで活気に満ちた里へと生まれ変わっていた。小川のせせらぎ、のどかに回る水車の音、そして子供たちの元気な笑い声。それが、今の私の、かけがえのない日常だ。
そして私、萩乃(はぎの)はというと――。
「しずくー! そっちはダメよー! そろそろお昼ご飯の時間でしょー!」
「いやー! しずく、まだチョウチョさんとあしょぶのー!」
きゃっきゃと笑いながら、小さな体で元気に野原を駆け回る、水晶様譲りの美しい銀髪の女の子。
彼女こそ、私と水晶様との間に生まれた、たった一人の愛娘・雫(しずく)、五歳。
神の力と人の心を持つ、世界で一番愛おしい、私の宝物だ。
「あらあら、またお花が増えてるわねぇ」
「ははは、雫は本当に花が好きだな」
縁側でお茶を飲んでいた叔父の響斗と叔母の小萩が、微笑ましそうにその光景を見ている。
雫が「わーい!」と手を叩いて喜ぶたびに、彼女の足元から、ぽんっ、ぽんっと色とりどりの季節外れの花が咲き乱れる。うん、可愛い。すっごく可愛いんだけど、後でこっそり元に戻しておくのが、母である私の大事な役目だったりする。
(うちの子、ちょっとヤンチャが神レベルなのよねぇ…)
私がやれやれと肩をすくめていると、すっと背後から大きな影が差した。
「……昼餉の時間か」
「わ、水晶様! もう、驚かさないでくださいよ!」
振り返ると、そこにはいつもの涼しい顔をした、私の自慢の旦那様が立っていた。父となり、神としての威厳にさらに磨きがかかった…かと思いきや、その視線は娘の雫に釘付けだ。
「お父様ー!」
雫は、水晶様の姿を見つけると、たったか駆け寄ってきて、その足にぎゅっと抱きついた。
「お父様、だーいすき!」
「……ああ。俺もだ、雫」
水晶様は、クールな表情を一切崩さない。でも、私には分かる。彼の体から漏れ出す神気が、嬉しさのあまりキラキラと輝いて、春の陽だまりみたいに温かいオーラを放っているのを!
(だだ漏れですよ、水晶様! その親バカオーラ、隠しきれてませんからね!)
私が内心でツッコミを入れていると、水晶様はひょいと雫を軽々と抱き上げた。
「さあ、萩乃が待っている。戻るぞ」
「はーい!」
そんな穏やかな昼下がり。小萩が、楽しそうに一枚の張り紙を持ってきた。
「はぎ姉!見て見て!もうすぐ、収穫祭だって!」
「わあ、もうそんな時期なのね。今年は豊作だったから、きっと盛大なお祭りになるわねぇ」
その言葉に、水晶様の腕の中で雫がぴょこんと顔を上げた。
「おまつり? しずくもいく!」
「もちろんよ。雫も一緒に行こうね」
「やったー! しずくね、おまつり、お手伝いしゅるの!」
「あらあら、えらいわねぇ、雫ちゃんは」
雫の健気な言葉に、みんなが目を細める。でも、私と水晶様だけは、ほんの少しだけ顔を見合わせて、苦笑いした。雫の言う「お手伝い」が、時としてとんでもない大騒動を巻き起こすことを、私たちはよく知っているからだ。
その日の夕方のことだった。
空がにわかにかき曇り、社殿の庭に、ゴゴゴゴッ!と地響きのような音が轟いた。
「ガッハッハッハ! 水晶! 萩乃殿! そして我が可愛い孫娘、雫よ! この山の神・巌固様が、極上の土産を持ってきてやったぞぉ!」
現れたのは、相変わらず豪快で、岩のように大きな山の神・巌固様だった。そして、その肩に担がれているのは…って、えええ!?
「こ、これ…キノコ、ですか…?」
「うむ! この前、わしの山で見つけたちょっと珍しい『万年茸』じゃ! 雫の祝いにと思ってな! 精がつくぞぉ!」
巌固様が「どうだ!」とばかりに地面に置いたそれは、私の背丈ほどもある、巨大で、しかもぼんやりと光を放つ、明らかに普通じゃないキノコだった。
(じぃじ、スケールが神レベルすぎるんですよぉぉぉ!)
「わーい! おっきなキノコさん! ありがと、じぃじ!」
雫は大喜びで巨大キノコに抱きついている。水晶様は、やれやれといった顔でこめかみを押さえている。うん、これが私たちの平和な日常。
その夜。
すやすやと眠る雫の寝顔を見ながら、私はそっと水晶様の肩に寄り添った。雫は、楽しかったのか、寝息に合わせて枕の周りに小さな虹を架けている。
「雫、お祭りをすごく楽しみにしてましたね」
「ああ。…だが、あの子の力は、まだ本人にも制御できん。少し、心配だな」
「ふふっ、大丈夫ですよ。いざとなったら、お父様がパパっと解決してくれるんでしょう?」
「……当然だ」
水晶様はそう言って、私の手を優しく握り返してくれた。
母として、妻として、そして水見里の巫女として。この幸せな毎日を守るためなら、私は何だってできる。
そう、この時は、まだ本気でそう思っていたのだ。
雫の純粋な「お手伝いしたい」という想いが、やがて水見里全体を巻き込む、とんでもない大騒動の引き金になるなんて、夢にも思わずに――。
(次回、お祭り当日! 雫の力がまさかの大暴走!? 私たち、どうなっちゃうのー!?)
かつて干ばつに泣いていたことが嘘のように、水見里(みずみさと)は、水龍神様の豊かな恵みを受けて、穏やかで活気に満ちた里へと生まれ変わっていた。小川のせせらぎ、のどかに回る水車の音、そして子供たちの元気な笑い声。それが、今の私の、かけがえのない日常だ。
そして私、萩乃(はぎの)はというと――。
「しずくー! そっちはダメよー! そろそろお昼ご飯の時間でしょー!」
「いやー! しずく、まだチョウチョさんとあしょぶのー!」
きゃっきゃと笑いながら、小さな体で元気に野原を駆け回る、水晶様譲りの美しい銀髪の女の子。
彼女こそ、私と水晶様との間に生まれた、たった一人の愛娘・雫(しずく)、五歳。
神の力と人の心を持つ、世界で一番愛おしい、私の宝物だ。
「あらあら、またお花が増えてるわねぇ」
「ははは、雫は本当に花が好きだな」
縁側でお茶を飲んでいた叔父の響斗と叔母の小萩が、微笑ましそうにその光景を見ている。
雫が「わーい!」と手を叩いて喜ぶたびに、彼女の足元から、ぽんっ、ぽんっと色とりどりの季節外れの花が咲き乱れる。うん、可愛い。すっごく可愛いんだけど、後でこっそり元に戻しておくのが、母である私の大事な役目だったりする。
(うちの子、ちょっとヤンチャが神レベルなのよねぇ…)
私がやれやれと肩をすくめていると、すっと背後から大きな影が差した。
「……昼餉の時間か」
「わ、水晶様! もう、驚かさないでくださいよ!」
振り返ると、そこにはいつもの涼しい顔をした、私の自慢の旦那様が立っていた。父となり、神としての威厳にさらに磨きがかかった…かと思いきや、その視線は娘の雫に釘付けだ。
「お父様ー!」
雫は、水晶様の姿を見つけると、たったか駆け寄ってきて、その足にぎゅっと抱きついた。
「お父様、だーいすき!」
「……ああ。俺もだ、雫」
水晶様は、クールな表情を一切崩さない。でも、私には分かる。彼の体から漏れ出す神気が、嬉しさのあまりキラキラと輝いて、春の陽だまりみたいに温かいオーラを放っているのを!
(だだ漏れですよ、水晶様! その親バカオーラ、隠しきれてませんからね!)
私が内心でツッコミを入れていると、水晶様はひょいと雫を軽々と抱き上げた。
「さあ、萩乃が待っている。戻るぞ」
「はーい!」
そんな穏やかな昼下がり。小萩が、楽しそうに一枚の張り紙を持ってきた。
「はぎ姉!見て見て!もうすぐ、収穫祭だって!」
「わあ、もうそんな時期なのね。今年は豊作だったから、きっと盛大なお祭りになるわねぇ」
その言葉に、水晶様の腕の中で雫がぴょこんと顔を上げた。
「おまつり? しずくもいく!」
「もちろんよ。雫も一緒に行こうね」
「やったー! しずくね、おまつり、お手伝いしゅるの!」
「あらあら、えらいわねぇ、雫ちゃんは」
雫の健気な言葉に、みんなが目を細める。でも、私と水晶様だけは、ほんの少しだけ顔を見合わせて、苦笑いした。雫の言う「お手伝い」が、時としてとんでもない大騒動を巻き起こすことを、私たちはよく知っているからだ。
その日の夕方のことだった。
空がにわかにかき曇り、社殿の庭に、ゴゴゴゴッ!と地響きのような音が轟いた。
「ガッハッハッハ! 水晶! 萩乃殿! そして我が可愛い孫娘、雫よ! この山の神・巌固様が、極上の土産を持ってきてやったぞぉ!」
現れたのは、相変わらず豪快で、岩のように大きな山の神・巌固様だった。そして、その肩に担がれているのは…って、えええ!?
「こ、これ…キノコ、ですか…?」
「うむ! この前、わしの山で見つけたちょっと珍しい『万年茸』じゃ! 雫の祝いにと思ってな! 精がつくぞぉ!」
巌固様が「どうだ!」とばかりに地面に置いたそれは、私の背丈ほどもある、巨大で、しかもぼんやりと光を放つ、明らかに普通じゃないキノコだった。
(じぃじ、スケールが神レベルすぎるんですよぉぉぉ!)
「わーい! おっきなキノコさん! ありがと、じぃじ!」
雫は大喜びで巨大キノコに抱きついている。水晶様は、やれやれといった顔でこめかみを押さえている。うん、これが私たちの平和な日常。
その夜。
すやすやと眠る雫の寝顔を見ながら、私はそっと水晶様の肩に寄り添った。雫は、楽しかったのか、寝息に合わせて枕の周りに小さな虹を架けている。
「雫、お祭りをすごく楽しみにしてましたね」
「ああ。…だが、あの子の力は、まだ本人にも制御できん。少し、心配だな」
「ふふっ、大丈夫ですよ。いざとなったら、お父様がパパっと解決してくれるんでしょう?」
「……当然だ」
水晶様はそう言って、私の手を優しく握り返してくれた。
母として、妻として、そして水見里の巫女として。この幸せな毎日を守るためなら、私は何だってできる。
そう、この時は、まだ本気でそう思っていたのだ。
雫の純粋な「お手伝いしたい」という想いが、やがて水見里全体を巻き込む、とんでもない大騒動の引き金になるなんて、夢にも思わずに――。
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