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[No43]
しおりを挟むアーサーは赤くなって、怒りと羞恥に震えていた。ディランの発言に王が、尋ねた。
「ディ、姫のお陰とは、どう言う事だ?」
「兄上、姫からある物を見せて貰い、話を聞いたのです。実は、二度目に釣書が来た時に、アーサーから、自分宛てに手紙が入っていたと。
その前からゾルフィ王国からの、釣書の事で、皇帝や父君が、大層ご立腹で、国を攻める話をしていたと」
王国や、宰相、貴族達は、顔を、青ざめさせた。ディランは、話を続ける。
「それを、知っていたのと、釣書も実物を読んでいたので、その手紙にも、ろくな事が書かれていないだろうと思い、隠して見せなかったそうです。
間違い無く、これを読めば、攻め込むだろうと…。その予感は的中だったと、言われましたよ。その手紙を読めば、決してアーサー王子を、許さないだろうと。
私も、それを読ませて貰って、驚愕しましたよ。子供の戯言では、済まない内容でしたからね。そして姫の判断に、救われたと感謝しましたよ」
王は、苦悶の表情でディランに尋ねた。
「して、何と書いてあったのか?」
ディランは、紙を手にして、読み上げた。
「姫にお願いして、写しを撮らせて、貰いました」
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【※ゾルフィ王国の、天に輝く太陽の化身の如く高貴なる、未来の王アーサー・ラス・ゾルフィの婚約者に、チェリーローズ・リー・サイナス王女を、私が娶ってやる。
ありがたい事だと、名誉な事だと、泣いて感謝しているだろう。
第三王女など、私には相応しくないが、我慢してやる。しかも病弱だと聞いた。
何故、お前如きを、妻にしなければいけないのかは、不明だが父上の判断だから、従うしかない。子は、側室に産ませる。
お前は黙って、私に膝まづいていればいい。
気が向けば、子種を注いでやる。
側室達に、嫉妬などせず、精々私に気に入られる様に、股を開き媚びる事だな。
だから、手間を掛けさせず、さっさと来い】
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「兄上、私はこれを読んだ時、余りの暴言に言葉を失いましたよ。姫には謝罪させて、貰いましたが、私が書いた物ではないし、知らなかった事でしょうから、謝る必要は無いと、言ってくれました。謝るのは、書いた本人だと」
国王は、ディランが読み上げた、手紙の内容を聞き、顔を顰めて言った。
「全く…愚かすぎて、呆れ果てる。とても、王子が書く文書ではない。姫の機転に、感謝しかないな…。この様な物を読んだら、間違いなく、我が国が攻め込まれても、文句は言えぬ。こちらから、仕掛けているのも、同然だからな…。はぁぁ…」
皆、言葉を発する事は無く、静まり返っていた。余りの愚かさに言葉が出なかった。アーサーは、手紙の事を思い出し、青ざめていた。
「アーサー、お前はやはり、身分剥奪だ!!
牢へ連れて行け」
「ま、待って下さい父上!私は父上の息子ではありませんか!!姫には、謝罪をします。お願いします。私がいなければ、国はどうなるのですか?もう一度、お考え直して下さい!!」
ラルフが、前に出て来て言った。
「アーサー様、それは、違いますよ?貴方は、国王の息子では、ないですよ?それに、貴方がいなくても、貴方より優秀な、第二王子がいますので、心配はいりませんよ。
安心して、牢で今迄の行いを、反省して下さい」
また周囲の貴族達は、ざわめきます。そしてアーサーは、怒鳴りながら、ラルフを睨みつける。
「何を戯言を申すか。私は、前王妃の母上と、父上との子で、第一王子だ!!」
「確かに、アーサー様は、前王妃様の産んだお子ですよ。母はそうでも、父親は国王様ではないですよ。見れば、誰でも解るじゃないですか」
「古くからある国では、血筋を重んじる。王の血筋を、大切に受け継ぐのです。王家の男児は、王の子であれば、皆、その国の色で産まれる。勿論髪の色も同じです。
稀に、母親の髪の色の子が、産まれる事が有りますが、王の子ならば、必ず男児の瞳の色は同じです。
現に王と、第二王子と、王弟のディラン様は、同じアイスブルーの瞳で、髪はプラチナブロンドです。
アーサー様は、グリーンの瞳に、ただのくすんだブロンドです。
王の子の男子が、グリーンの瞳だなんて、ゾルフィ王家では、産まれないんですよ」
「嘘だ!たまたま、母上似なだけだ!!」
「いえ、違います。4人を見比べれば、一目瞭然ですよ」
会場の者達は、一斉に4人を見比べた。アーサーだけが、色が違う事がわかった。
アーサーは、会場の者達の、疑いの視線を向けられて、不安になりながらも、言い募った。
「私は、父上の子だ!母上が、お亡くなりになっている今、確認など出来ぬだろう。お前一人の戯言だ」
そのアーサーの言葉に、ラルフは言い返した。
「血筋を、重んじる王族は、閨教育で必ず、この事を聞かせられるんですがね…。勿論、私も、聞かされましたよ。無駄に、王族の子だと、名乗り出られても、判別が着く様に。
前王妃様は、男児が髪色が違えど、瞳の色だけは、必ず王と同じ色で、産まれる事を、知らなかったのでしょうね…。
やはり、これを用意して正解でしたね。
これは、親子鑑定をする魔道具です。王族以外の、貴族の場合は、必ず父親と同じ色で、子供が産まれる、訳ではないので、よく揉め事が有りますからね。
魔力には、人それぞれ、違いがあります。親から子に、引き継がれる物も、多いです。
その型と種類が、親子では多く、引継がれるのです。その同じ波長を調べれば、親子鑑定が出来る訳です。
それを調べる、魔道具が此方です。
この石に、親と子が手を乗せて、魔力を流し込むと、色が変わります。
親子であれば、同じ赤色に染まります。違えば、青色に光ります。同じく、親子ではなく、兄弟同士であれば緑色に光ります。更に、伯父や従兄弟などに、なると黄色になります。
申し訳ないですが、会場内に来ている方で、親子で登城されてる方と、兄弟で来ている方、伯父や従兄弟で来ている方は、前に出て、協力願して頂けませんか?何方か、いらしゃいませんか?」
何組かの貴族達が、協力を名乗り出てくれて、皆に関係を伝えてから、石に手をかざして見せた。それにより、魔道具が本物である事を、証明して見せた。
王と、ディランが手を乗せると緑色に。第二王子と、ディランが手を乗せると黄色に。王と第二王子が、手を乗せると赤く光った。
ラルフはアーサーに声を掛けた。
「では、次は国王様とアーサー様の番です。手を乗せて下さい」
アーサーは、震えながら手を石に乗せ、国王も乗せた。石は青色に光った。第二王子と王の様に、赤色に石は光る事は無かった。
アーサーは、ガックリ膝を付き項垂れた。王はアーサーに、声を掛けた。
「お前が、真面目に国を思い、勉学にも励み、国を導く者として、精進していれば、例え我が子でなくても、温情があっただろう。
だが、お前は幼き頃より、我儘で勉学もさぼってばかり。そのくせ色事だけは、励んでいたな。彼方此方で種を巻き放題だ!私が知らないと、思っていたか?学園での様子も、知っているぞ。仮にもお前は王子だ、お前には何時も影が付いている。そんな事すら、覚えられぬ、愚か者に、かける温情はない!」
「アーサーは身分剥奪。地下牢へ繋いで置け!!追って沙汰を申し渡す。」
アーサーは、泣き叫びながら、引きずられて行った。アーサーがいなくなり、会場は静まり返っていた。
国王がラルフに問いかける。
「ラルフよ…やはり皇帝は、今回のアーサーの件は、お怒りなのか…。今度こそ、ゾルフィ王国に、兵を差し向けるつもりなのか…」
会場は、ざわつき貴族達は、皆項垂れた。
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