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【〜No31〜】

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ドナルドはあっという間に、二人のサンドイッチを平らげて(ふぅ…)と息を吐いた。

「これで少しは落ち着いたな…。パヴェル嬢とジュエル嬢、ありがとう。とても美味かったよ。御礼は改めてさせて貰う」

「まぁ…お気になさらず。早く王子殿下の元へ、戻って下さい。よかったら、この焼き菓子とお茶もどうぞ。沢山ありますから遠慮なく持って行って下さい」

「カトリーヌの言う通りです。まだ焼き菓子はあるので、もしヘンドリクス様が一緒なら、二人で食べて下さい。これは私達からの授業の御礼です」

「あぁ…ヘンドリクスが、二人に付いていたのか。私は用事があって、途中参加だったし、何度かこっちに戻ってたからな…」

「そう言われてみれば、サンドラ様の姿を、余り見かけませんでしたよね?いつも王子殿下の側にいらっしゃるのに…」

そう言ってカトリーヌが首を傾げると、ドナルドは笑いながら言った。

「そうか…クラスが違うと、そう思うのも無理はない。私は一応ロバート様の側近なんだが、学園内では、第二王子殿下に付くこともあるんだ。だからいつも、ロバート様の側にいる訳ではないんだよ」

「「へぇ…そうなんですか。知りませでした」」

「じゃあ、お言葉に甘えて、茶と菓子も貰っていくよ。礼は後日に!」

そう言ってドナルドは去って行った。
そして、リリアーナとカトリーヌは菓子を食べながら、ポールマンとブラッドリーを待っていた。

❝❝~~❞❞

「ドナルド、どこへ行ってたんです?課外授業の時からロバート様は、機嫌が悪いんですから、気をつけるように」

「そうなのか?ご自分で、急にD組の課外授業に、参加するように決めたのに?」

「ええ…そうです。それより、その手に持っている菓子はどうしたんです?売店は、もう閉まってますよね?」

「ああ、半分はヘンドリクスに渡さないとな。はい、ちゃんと渡したからな。パヴェル嬢とジュエル嬢から、お前に課外授業の礼だと言ってたぞ」

「リリアーナ嬢とカトリーヌ嬢からですか?」

突然、食べかけの菓子の包を渡されたヘンドリクスは、ポカンとしてドナルドに尋ねた。

「ああ、そうだ。先程ここへ来る途中、中庭で二人に会ってな。二人がベンチで、サンドイッチを食べようとしてる所を通りかかったら、俺の腹が鳴ってしまって…それでサンドイッチをくれたんだよ。本当に助かった!売店がやってないから、どうしようかと思ってたんだ!

それで、少し話をした帰り際に、沢山あるからと菓子と茶もくれた。
その時に、お前と一緒なら、菓子を授業の礼に渡してくれと言われたんだよ。
要らないなら、俺がもらうぞ?サンドイッチも、この菓子も凄く美味いんだ」

「あぁ…これは、特別寮の一階にあるカフェの水筒ですね。あそこのサンドイッチと焼き菓子なら美味しいでしょう…。
私もお腹が空いていますから、食べますよ。水筒も二本ですね…。
…ドナルドが口をつけたのはどちらです?
私は口をつけてない方を貰いますから…」

「なんだよ、それ…。ばい菌扱いか?」

「貴方とは間接的に、口づけはしたくありませんからね。リリアーナ嬢となら、嬉しいですがね」

「おい、ヘンドリクス、いつの間に名前で呼んでいるんだ?」

「課外授業の時からですよ。二人とは授業中仲良くなりましたから、お互いに名前で呼び合う事にしたんです。
あぁ…お腹が空いているから、一段と焼き菓子が美味しく感じます。
それに喉が乾いていたので、このお茶もありがたい。香りもいいですね…。
流石あそこのカフェは、良いモノを使っている」

「そうだな。サンドイッチも、そこのカフェの物かな?売店とは違い、めちゃくちゃ美味しかったから、二人のサンドイッチを、全部俺が食べてしまったよ」

「…ズルいですね。私の分も、持ち帰えろうとは、思わなかったんですか…?」

「あっ?!…すまん…」

「それを期待した、私が愚かでした。飢えた貴方が約束を守って、菓子と茶を持って来ただけでも、よしとしましょう…」

「ひでえ…言い草だな」

「本当の事でしょう?もしここで、私と遭わなければ、ドナルドは一人で、全部食べていましたよね?そして後で口頭で伝えて、済ませるつもりだったでしょう?」

「うっ…」

「後でドナルドに、夕食を御馳走になる事で、許してあげますよ。ドナルドは、特別寮のレストランに行った事はないでしょう?
今後の為に一度行って見るのも、勉強になりますよ?」

「寮の中のレストラン?!」

「はぁ…それすら、知らないのですか?だから、脳筋と言われるんです!少しは男女の色恋も知っておかないと、御令嬢をデートに誘う時に、恥をかくのはドナルドの方ですよ?
特別寮は、普通の学園の寮とは違って、ホテルと寮が一体の建物なんです。一階にはカフェとレストランがあり、二階はホテルなんです。
そして、三階と四階が特別寮になってます」

「へぇ…知らなかった。じゃあ学園の直ぐ側にあるから、帰りに寄ろう。サンドイッチと菓子だけでは、まだ食べ足りないからな!」

「では、さっさと残りの仕事を済ませましょうか。今日はそれでなくても色々あったんですから…」

「そうなのか?課外授業で、騒ぎがあったらしいとは、課外授業に同行した、護衛騎士からは聞いたが…」

「まぁ…それは、歩きながら話しますよ。
ほら、行きますよ!」

そう言って二人は学園の中に入って行った。
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