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シナリオは躍る
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いつものように調理場へ向かっていると、城の近くでジネットに遭遇した。
彼女は先日、聖女に認定された。建国祭期間中に国民に挨拶をしたのちに司書を辞めて聖女としての仕事に専念するそうだ。
「あら、お久しぶりですわね」
「エルランジェ嬢、この度は聖女となられおめでとうございます」
「ありがとうございます。建国祭の間には聖女として塔にお邪魔しますわ」
「まあ、それではお茶を用意してお待ちしております」
私は秘儀の営業スマイルシールドで隠しつつ心の中では叫ぶ。
ひぃぃぃ。
図書塔に来る、ということはノアルート確定ね。
ついにジネットと侯爵の戦争が始まるのか……。
戦々恐々としている私に向かって、ジネットは腕を組んで悪役令嬢よろしくな表情を浮かべる。
「エドワール王子殿下によるとあなたもモルガンの件を知ったのだとか」
「……ええ」
「それに、あなたは女神の愛し子でもあると?」
「表立って公表しませんが事実です」
聖女になると機密を全部把握できるようだ。なんだか怖いな。
ジネットがずいと近づいてくる。
「モルガンにはくれぐれも手を出さないでくださいませ!」
「しかし、力を合わせれば解決できるかと」
修羅場は避けたかったが、ここはもう前に出るしかない。
ハワード侯爵の恋を応援するためにジネットの邪魔をしなければ!
「聖女の力と愛し子の力を合わせればモルガンの中に眠る悪魔を消せるかもしれません!」
ゲームでもジネットは悪魔を眠らせることはできるが消すことまではできなかったと佳織から聞いている。恐らく、眠らせる以外の魔法は知らないはずだ。
だから、共同戦線を張るという提案で彼女の独壇場を防ぎたい。
ジネットはキッと目を吊り上げて私を見た。
「思いあがらないでください!ただでさえあなたは……っ!」
そう彼女は言いかけて、はっとして言葉を呑み込んだ。
「失言ですわ。忘れてくださる?」
「き、気になさらないでくださいませ」
「……申し訳ございませんわ」
本音を言えばそう簡単に忘れられないのだが、深く頭を下げられると拍子抜けて何も言えなくなる。
それに、顔を上げた彼女は今にも涙がこぼれそうなほど目を潤ましていた。
何か言葉をかけようか迷っているうちに、彼女は挨拶をして去っていった。
どうしちゃったの?
嫌味を言ってきているのに、どうしてジネットが傷ついた顔をするのだろうか。
釈然とはしないが、どうにか気を取り直して調理場へ行きワゴンを受け取る。
図書塔に戻る道筋をしばらく歩いていると、今度はロッシュ様が現れた。
「お久しぶりです、フェレメレンさん」
「ロッシュ様!」
「この前は第一王子殿下と一緒に居て驚きました」
「……いろいろと事情がありまして」
ロッシュ様はいろいろを詮索せず、「そうですか」と言ってふわりと笑った。
「フェレメレンさん、差し支えなければ私と建国祭をまわっていただけませんか?」
「……へ?」
ビックリして彼の顔を見ると、ほんのりと顔を赤くしてこちらを見ている。普段身の回りに居るメンツからは見られることのない純粋で恥じらいのある表情に、私もつられて赤くなりそうだ。
これって、デートのお誘いだよね?
好感を持ってくれているのは嬉しいが、私は仮とはいえ恋人がいる身だ。このお誘いは受け取れない。
「す、すみません。私には婚約する恋人がいますので……」
「友人としては、ダメですか?」
捨てられた子犬のような瞳で見られると言葉に詰まりそうになる。
本音ではいいよって言いたい。
しかし、ハワード侯爵との関係を抜きにしても私は建国祭を見に行くことはできないのだ。
実は建国祭期間中に次期年間計画の立案前資料を用意しなければならないのだが、侯爵がご実家の政務も重なり多忙を極めているためサポートしなければならないのだ。
侯爵から「身を粉にして働いてもらわねば終わらないほどだ」と言われて2人で話し合った結果、私は建国祭期間中は図書塔に寝泊りすることになっている。
あの時の侯爵といったら、本当にブラック上司さながらの表情を浮かべていたわ。
そういうわけで、心苦しいが事情を説明してお断りをした。
しゅんとしたロッシュ様を見ると、心がチクリと痛む。
「あなたのような恋人を得られるなんて、相手の方は幸せ者ですね」
彼は丁寧に挨拶をすると、城の方へと帰っていった。爽やかで紳士的な彼なら、きっとすぐに良い相手と結ばれるだろう。
建国祭って、ゲーム設定を抜きにしてもこの国の若者にとっては恋愛を発展させる一大イベントなのよね……。
もう間近に迫っている建国祭。
そろそろ、色々な変化が起こるのかもしれない。
塔に戻ると、ハワード侯爵とノアが掴みあっているのをピタリと止めてこちらを見ている。
痴話喧嘩ですか…?
もうすぐジネットが現れるというのに!早く仲直りしなさい!
私はこれ以上二人の仲が拗れるのを防ぐべく、慌てて止めに入った。
彼女は先日、聖女に認定された。建国祭期間中に国民に挨拶をしたのちに司書を辞めて聖女としての仕事に専念するそうだ。
「あら、お久しぶりですわね」
「エルランジェ嬢、この度は聖女となられおめでとうございます」
「ありがとうございます。建国祭の間には聖女として塔にお邪魔しますわ」
「まあ、それではお茶を用意してお待ちしております」
私は秘儀の営業スマイルシールドで隠しつつ心の中では叫ぶ。
ひぃぃぃ。
図書塔に来る、ということはノアルート確定ね。
ついにジネットと侯爵の戦争が始まるのか……。
戦々恐々としている私に向かって、ジネットは腕を組んで悪役令嬢よろしくな表情を浮かべる。
「エドワール王子殿下によるとあなたもモルガンの件を知ったのだとか」
「……ええ」
「それに、あなたは女神の愛し子でもあると?」
「表立って公表しませんが事実です」
聖女になると機密を全部把握できるようだ。なんだか怖いな。
ジネットがずいと近づいてくる。
「モルガンにはくれぐれも手を出さないでくださいませ!」
「しかし、力を合わせれば解決できるかと」
修羅場は避けたかったが、ここはもう前に出るしかない。
ハワード侯爵の恋を応援するためにジネットの邪魔をしなければ!
「聖女の力と愛し子の力を合わせればモルガンの中に眠る悪魔を消せるかもしれません!」
ゲームでもジネットは悪魔を眠らせることはできるが消すことまではできなかったと佳織から聞いている。恐らく、眠らせる以外の魔法は知らないはずだ。
だから、共同戦線を張るという提案で彼女の独壇場を防ぎたい。
ジネットはキッと目を吊り上げて私を見た。
「思いあがらないでください!ただでさえあなたは……っ!」
そう彼女は言いかけて、はっとして言葉を呑み込んだ。
「失言ですわ。忘れてくださる?」
「き、気になさらないでくださいませ」
「……申し訳ございませんわ」
本音を言えばそう簡単に忘れられないのだが、深く頭を下げられると拍子抜けて何も言えなくなる。
それに、顔を上げた彼女は今にも涙がこぼれそうなほど目を潤ましていた。
何か言葉をかけようか迷っているうちに、彼女は挨拶をして去っていった。
どうしちゃったの?
嫌味を言ってきているのに、どうしてジネットが傷ついた顔をするのだろうか。
釈然とはしないが、どうにか気を取り直して調理場へ行きワゴンを受け取る。
図書塔に戻る道筋をしばらく歩いていると、今度はロッシュ様が現れた。
「お久しぶりです、フェレメレンさん」
「ロッシュ様!」
「この前は第一王子殿下と一緒に居て驚きました」
「……いろいろと事情がありまして」
ロッシュ様はいろいろを詮索せず、「そうですか」と言ってふわりと笑った。
「フェレメレンさん、差し支えなければ私と建国祭をまわっていただけませんか?」
「……へ?」
ビックリして彼の顔を見ると、ほんのりと顔を赤くしてこちらを見ている。普段身の回りに居るメンツからは見られることのない純粋で恥じらいのある表情に、私もつられて赤くなりそうだ。
これって、デートのお誘いだよね?
好感を持ってくれているのは嬉しいが、私は仮とはいえ恋人がいる身だ。このお誘いは受け取れない。
「す、すみません。私には婚約する恋人がいますので……」
「友人としては、ダメですか?」
捨てられた子犬のような瞳で見られると言葉に詰まりそうになる。
本音ではいいよって言いたい。
しかし、ハワード侯爵との関係を抜きにしても私は建国祭を見に行くことはできないのだ。
実は建国祭期間中に次期年間計画の立案前資料を用意しなければならないのだが、侯爵がご実家の政務も重なり多忙を極めているためサポートしなければならないのだ。
侯爵から「身を粉にして働いてもらわねば終わらないほどだ」と言われて2人で話し合った結果、私は建国祭期間中は図書塔に寝泊りすることになっている。
あの時の侯爵といったら、本当にブラック上司さながらの表情を浮かべていたわ。
そういうわけで、心苦しいが事情を説明してお断りをした。
しゅんとしたロッシュ様を見ると、心がチクリと痛む。
「あなたのような恋人を得られるなんて、相手の方は幸せ者ですね」
彼は丁寧に挨拶をすると、城の方へと帰っていった。爽やかで紳士的な彼なら、きっとすぐに良い相手と結ばれるだろう。
建国祭って、ゲーム設定を抜きにしてもこの国の若者にとっては恋愛を発展させる一大イベントなのよね……。
もう間近に迫っている建国祭。
そろそろ、色々な変化が起こるのかもしれない。
塔に戻ると、ハワード侯爵とノアが掴みあっているのをピタリと止めてこちらを見ている。
痴話喧嘩ですか…?
もうすぐジネットが現れるというのに!早く仲直りしなさい!
私はこれ以上二人の仲が拗れるのを防ぐべく、慌てて止めに入った。
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