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第1章 猫がくれた新たな道
(1-1)
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『777』
スリーセブン。
なんてラッキーな数字だろう。それなのに気持ちは沈んでいく。
小城梨花は、項垂れて溜め息を漏らす。
もうダメだ。人生の終わりだ。どうして、こんなことになってしまったのだろう。
今、この数字を見てもラッキーだとは思えない。
『私って、馬鹿なの』
ふたたび、溜め息を漏らす。
『私は、なんの計画性もない大馬鹿者だ』
自分自身を罵ったところで、何も変わらない。
本当に馬鹿過ぎて、笑えてくる。
なんだか情けない。
きっと、今の自分の笑顔は、能面みたいに見えるだろう。想像しただけで、怖い顔だ。
梨花は、何気なく空を仰ぎ見た。
眩し過ぎる。それだけ、自分が暗い世界に落ちてしまったってことだろうか。
あそこへ行きたい。
あの雲みたいに何も考えずに、風に身を任せて過ごしたい。もう一度、溜め息を漏らして首を振る。
無理。人間であって、雲じゃない。そんなこと、わかっている。明るい世界で笑いたいだけ。
それなら、どうしたらいいのだろう。
再び、目を落として三つ並んだ『七』の数字をみつめる。これが、預金通帳の残高でなかったらどんなによかったことか。
残高、七七七円。
奈落の底へ突き落す最悪の数字だ。
この先、どうやって暮らせばいいのだろう。新しい仕事もみつからないし、三度の食事の心配もしなきゃいけない。光熱費すら払えない。
やっぱり、会社を辞めるんじゃなかった。
いやいや、それは違う。後悔なんてしていない。
あんな会社は辞めて正解だ。
あの会社で仕事をやり続けるよりも、生活が苦しくなるほうを選ぶ。たとえ、このアパートを追い出されて住む場所がなくなったとしても、会社を辞めるという選択をしただろう。
やっぱり、自分は馬鹿なのだろうか。きっと、そう。間違った選択をしたんだ。もっと、辛抱強く耐えるべきだった。あの会社で。
青い世界を仰ぎ見て、首を振り項垂れる。
突如、辞めた会社の上司の顔が浮かぶ。
なんで、あんな嫌な奴のことを思い出すのだろう。無性に腹が立ってきた。
セクハラ部長に、パワハラ課長の最悪上司コンビのもとで働くなんて、絶対に無理。部長は最初からエロオヤジな空気感あったけど、まさか課長があんなに傲慢な人だと思わなかった。ほとんど部下に仕事をやらせて、本人はいったいなんの仕事をしていたのか。ちょっとしたミスも、ねちねち説教してくる始末。ミスは悪いことだけど、説教が長いのは次の仕事に支障をきたしてしまう。かっこいい女性の上役だから、最初は憧れていたのに。
ああ、もう、むしゃくしゃする。
やっぱり、辞めて正解だ。間違ってなどいない。
そんな環境で二年も頑張ったんだから、自分を褒めてあげたいくらいだ。
そうでしょ。自分にも非があったとしても、言い方ってものがあるでしょ。間違っているの。そんなことはない。いや、とんでもないミスを犯していたとしたら文句は言えないのか。どうだろう。
違う。そんなことはないはずだ。
当時の記憶を思い出してみても、どうだったかはわからない。もしも、言い訳できないほどの非があったのなら、申し訳なく思う。
待て、待て。十分、謝っている。申し訳なく思わなくていい。あの上司たちのほうが、どう考えたって悪い。
ああ、もう。過去のこと、うだうだ考えていたってしかたがない。
考えるべきことは、今のこと。
生き延びるには、どうすればいいかってことを真剣に考えなきゃいけない。大袈裟でもなんでもない。
死活問題だ。
残高が、七七七円だなんて。本当に情けない。
『ああ、もう。私は、どうしたらいいの。誰か、教えてよ』
スリーセブン。
なんてラッキーな数字だろう。それなのに気持ちは沈んでいく。
小城梨花は、項垂れて溜め息を漏らす。
もうダメだ。人生の終わりだ。どうして、こんなことになってしまったのだろう。
今、この数字を見てもラッキーだとは思えない。
『私って、馬鹿なの』
ふたたび、溜め息を漏らす。
『私は、なんの計画性もない大馬鹿者だ』
自分自身を罵ったところで、何も変わらない。
本当に馬鹿過ぎて、笑えてくる。
なんだか情けない。
きっと、今の自分の笑顔は、能面みたいに見えるだろう。想像しただけで、怖い顔だ。
梨花は、何気なく空を仰ぎ見た。
眩し過ぎる。それだけ、自分が暗い世界に落ちてしまったってことだろうか。
あそこへ行きたい。
あの雲みたいに何も考えずに、風に身を任せて過ごしたい。もう一度、溜め息を漏らして首を振る。
無理。人間であって、雲じゃない。そんなこと、わかっている。明るい世界で笑いたいだけ。
それなら、どうしたらいいのだろう。
再び、目を落として三つ並んだ『七』の数字をみつめる。これが、預金通帳の残高でなかったらどんなによかったことか。
残高、七七七円。
奈落の底へ突き落す最悪の数字だ。
この先、どうやって暮らせばいいのだろう。新しい仕事もみつからないし、三度の食事の心配もしなきゃいけない。光熱費すら払えない。
やっぱり、会社を辞めるんじゃなかった。
いやいや、それは違う。後悔なんてしていない。
あんな会社は辞めて正解だ。
あの会社で仕事をやり続けるよりも、生活が苦しくなるほうを選ぶ。たとえ、このアパートを追い出されて住む場所がなくなったとしても、会社を辞めるという選択をしただろう。
やっぱり、自分は馬鹿なのだろうか。きっと、そう。間違った選択をしたんだ。もっと、辛抱強く耐えるべきだった。あの会社で。
青い世界を仰ぎ見て、首を振り項垂れる。
突如、辞めた会社の上司の顔が浮かぶ。
なんで、あんな嫌な奴のことを思い出すのだろう。無性に腹が立ってきた。
セクハラ部長に、パワハラ課長の最悪上司コンビのもとで働くなんて、絶対に無理。部長は最初からエロオヤジな空気感あったけど、まさか課長があんなに傲慢な人だと思わなかった。ほとんど部下に仕事をやらせて、本人はいったいなんの仕事をしていたのか。ちょっとしたミスも、ねちねち説教してくる始末。ミスは悪いことだけど、説教が長いのは次の仕事に支障をきたしてしまう。かっこいい女性の上役だから、最初は憧れていたのに。
ああ、もう、むしゃくしゃする。
やっぱり、辞めて正解だ。間違ってなどいない。
そんな環境で二年も頑張ったんだから、自分を褒めてあげたいくらいだ。
そうでしょ。自分にも非があったとしても、言い方ってものがあるでしょ。間違っているの。そんなことはない。いや、とんでもないミスを犯していたとしたら文句は言えないのか。どうだろう。
違う。そんなことはないはずだ。
当時の記憶を思い出してみても、どうだったかはわからない。もしも、言い訳できないほどの非があったのなら、申し訳なく思う。
待て、待て。十分、謝っている。申し訳なく思わなくていい。あの上司たちのほうが、どう考えたって悪い。
ああ、もう。過去のこと、うだうだ考えていたってしかたがない。
考えるべきことは、今のこと。
生き延びるには、どうすればいいかってことを真剣に考えなきゃいけない。大袈裟でもなんでもない。
死活問題だ。
残高が、七七七円だなんて。本当に情けない。
『ああ、もう。私は、どうしたらいいの。誰か、教えてよ』
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