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第2章 ガンバレ、私
(2-3)
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どんな仕事をするにしても、大変だろう。けど、この花屋『たんぽぽ』だったら頑張れる気がする。
頑張るにしても、まだ花屋の仕事を全然理解していないし、しっかり教えてもらわなきゃ。
梨花は、内なる闘志を燃やして拳を握る。仕事は、ある意味戦いよ。
「梨花さん、どうだい頑張れそうかい」
「あっ、はい。頑張ります」
「そうかい。そりゃ、よかった。まずは、話を聞いてもらおうかねぇ」
「はい」
節子は、キリリとした厳しい面持ちのまま話を続ける。
梨花は生唾を呑み込み、背筋を伸ばした。
「まずは、仕入れなんだけどねぇ。売る花がなければ、はじまらない。それはわかるね」
節子の言葉に頷くと、節子も頷き続きを話す。
「花市場で仕入れなきゃいけないんだ。あたしは、こんなんだから無理だろう。よかったら、庄平さんと一緒にどうかと思ってねぇ。ただ、朝が早いから、どうだろうねぇ」
朝が早い。正直、早起きは苦手だ。大丈夫だろうか。自分にできるだろうか。
節子は、期待してくれている。なんとなくそう感じる。そうだとしたら、その気持ちに応えなきゃいけない。
「あの、花市場に行くのって、何時ごろになるんですか」
「そうだねぇ。朝四時起きになるかねぇ」
朝四時。そんなに早いの。起きられるだろうか。目覚まし時計を止めて、二度寝する自分の姿が想像できた。自分には無理だろうか。さっきまでの闘志が崩れていき、気持ちが萎えていく。
「まあ、無理しなくてもいいんだけどねぇ。仕入れ後の仕事からでもいいんだよ。どうだい」
朝四時起きはキツイ。仕入れ後だったら、まだ大丈夫そうだ。けど、そこで甘えてしまってはいけない。ここは頑張り所なんじゃないだろうか。自分自身を変えるきっかけになるかもしれない。でも迷う。いやいや、この話しは受けるべきだ。安請け合いして大丈夫なの。本当に起きられる。
自問自答してみたが、はっきりと大丈夫と言い切れない自分がいた。ああ、もうそれじゃ変われない。ダメ、ダメ、頑張らなきゃ。
「朝の四時起きは正直キツイけど、あの、私、頑張ってみます」
「おお、そうかい。そこまでやる気があるんだねぇ。よくわかったよ」
その言葉を口にしたとたん、厳しい目をしていた節子の目尻が下がり、柔らかな笑みが零れた。
なに、どうしたの。
梨花は、節子の突然の笑顔に困惑した。
「あ、あの」
「梨花さん、ごめんよ。今の話は、冗談だよ。この店での仕入れは卸売業者に頼んであるからね。注文もパソコンで入力するだけ。花市場に行くことはないんだよ。どれだけやる気があるか、試させてもらったんだよ」
そういうことなの。試されていたの。
梨花は内心ホッとした。
いきなり、仕入れの初日に寝坊ってこともありえた。それでも、花屋の朝は早いのだろう。遅刻しないように気をつけなきゃ。気をつけるのはそれだけじゃない。花市場に行くことはなくても、節子はいつも通り動けない。自分が率先してやらなきゃいけないのは、変わらない。けど、試すだなんて。節子は、意外と意地悪なのかも。いや、違う。優しい人だ。わかっている。きっと、自分がどこか頼りなく思えたのかもしれない。
洗濯ものが溜まった自分の部屋を思い出して、苦笑いを浮かべた。
面倒くさがり屋を見抜かれているのかも。首を軽く振り、仕事はきちんとやる。プライベートではダメダメでも、いい加減な仕事はしない。
節子の代わりが務まるくらいにならなきゃいけない。
花屋が、大変な仕事だとしても、気合を入れて前へ進む。決めたの。
頑張るにしても、まだ花屋の仕事を全然理解していないし、しっかり教えてもらわなきゃ。
梨花は、内なる闘志を燃やして拳を握る。仕事は、ある意味戦いよ。
「梨花さん、どうだい頑張れそうかい」
「あっ、はい。頑張ります」
「そうかい。そりゃ、よかった。まずは、話を聞いてもらおうかねぇ」
「はい」
節子は、キリリとした厳しい面持ちのまま話を続ける。
梨花は生唾を呑み込み、背筋を伸ばした。
「まずは、仕入れなんだけどねぇ。売る花がなければ、はじまらない。それはわかるね」
節子の言葉に頷くと、節子も頷き続きを話す。
「花市場で仕入れなきゃいけないんだ。あたしは、こんなんだから無理だろう。よかったら、庄平さんと一緒にどうかと思ってねぇ。ただ、朝が早いから、どうだろうねぇ」
朝が早い。正直、早起きは苦手だ。大丈夫だろうか。自分にできるだろうか。
節子は、期待してくれている。なんとなくそう感じる。そうだとしたら、その気持ちに応えなきゃいけない。
「あの、花市場に行くのって、何時ごろになるんですか」
「そうだねぇ。朝四時起きになるかねぇ」
朝四時。そんなに早いの。起きられるだろうか。目覚まし時計を止めて、二度寝する自分の姿が想像できた。自分には無理だろうか。さっきまでの闘志が崩れていき、気持ちが萎えていく。
「まあ、無理しなくてもいいんだけどねぇ。仕入れ後の仕事からでもいいんだよ。どうだい」
朝四時起きはキツイ。仕入れ後だったら、まだ大丈夫そうだ。けど、そこで甘えてしまってはいけない。ここは頑張り所なんじゃないだろうか。自分自身を変えるきっかけになるかもしれない。でも迷う。いやいや、この話しは受けるべきだ。安請け合いして大丈夫なの。本当に起きられる。
自問自答してみたが、はっきりと大丈夫と言い切れない自分がいた。ああ、もうそれじゃ変われない。ダメ、ダメ、頑張らなきゃ。
「朝の四時起きは正直キツイけど、あの、私、頑張ってみます」
「おお、そうかい。そこまでやる気があるんだねぇ。よくわかったよ」
その言葉を口にしたとたん、厳しい目をしていた節子の目尻が下がり、柔らかな笑みが零れた。
なに、どうしたの。
梨花は、節子の突然の笑顔に困惑した。
「あ、あの」
「梨花さん、ごめんよ。今の話は、冗談だよ。この店での仕入れは卸売業者に頼んであるからね。注文もパソコンで入力するだけ。花市場に行くことはないんだよ。どれだけやる気があるか、試させてもらったんだよ」
そういうことなの。試されていたの。
梨花は内心ホッとした。
いきなり、仕入れの初日に寝坊ってこともありえた。それでも、花屋の朝は早いのだろう。遅刻しないように気をつけなきゃ。気をつけるのはそれだけじゃない。花市場に行くことはなくても、節子はいつも通り動けない。自分が率先してやらなきゃいけないのは、変わらない。けど、試すだなんて。節子は、意外と意地悪なのかも。いや、違う。優しい人だ。わかっている。きっと、自分がどこか頼りなく思えたのかもしれない。
洗濯ものが溜まった自分の部屋を思い出して、苦笑いを浮かべた。
面倒くさがり屋を見抜かれているのかも。首を軽く振り、仕事はきちんとやる。プライベートではダメダメでも、いい加減な仕事はしない。
節子の代わりが務まるくらいにならなきゃいけない。
花屋が、大変な仕事だとしても、気合を入れて前へ進む。決めたの。
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