17 / 107
第2章 ガンバレ、私
(2-5)
しおりを挟む
えっと、まずは前日の引き継ぎ内容確認か。
これは自分が休んだ日の次の日だけになるか。あっ、自分が休みなら店も休みだ。覚えておけばいいのかも。いやいや、忘れるかもしれない。かもしれないじゃない、自分は完璧に忘れる。もう、そんなところに自信を持ってもしかたがないでしょ。
きちんと引き継ぎ内容は、ノートに記載すること。
しっかりメモ、メモ。
定休日は水曜日。これ、重要。
そう思って、違う、違うと否定した。休みが重要だなんて。仕事、頑張らなきゃダメでしょ。
「梨花さん、ちなみに水曜日は、ここの商店街全店休みだからねぇ。覚えておくといいよ」
全店休み。
そんな、それじゃ休みの日に商店街をぶらりと探索なんて、できないじゃない。
しかたがないか。そのときは、ショッピングモールに行くしかない。けど、そんなことすら知らないでこの町で過ごしていたかと思うと、笑えてきた。
三年だよ。この町にいるの。
考えてみれば、当然なのか。
平日は仕事だったし、買い物は駅前で済ませて帰宅でしょ。土日だって、商店街を歩いたことなんてない。近所でも、わざわざ行こうなんて思わなかった。なんだか、申し訳なく思えた。
「梨花さん、大丈夫かい。聞いているかい」
「あっ、はい。大丈夫です」
きちんと話を聞かなきゃ。すぐ違うこと考えちゃう。悪い癖だ。
「配送されてきた商品確認も大事だからね」
「はい」
「梨花さん、返事はいいね」
返事は、か。
それが自分の取り柄なのかも。それだけじゃないとは思うけど。
それで、配送されてくるのは月曜日と金曜日が切り花で、土曜日が鉢植えか。配送がある日は、値付けとPOPも書かなきゃ。
なるほど。梨花は書いたメモを見ながら、頷く。
そうだ、花の名前も覚えなきゃいけない。
覚えられるだろうか。花って結構たくさんあるから、ちょっと心配。
「あら、梨花さん。難しい顔をしちゃって。もしかして、この仕事、やりたくなくなったかい」
「えっ、いえいえ、そんなことはないです」
思わぬところを突っ込まれて、気が焦る。焦る必要なんてないのに。これじゃ、本当に花屋の仕事がしたくないみたいじゃない。
それにしても、そんなに難しい顔をしていただろうか。梨花は苦笑いを浮かべて、頭を掻いた。
「そうかい。それならいいけど」
節子は、少しだけ頬を緩ませて話を続けた。
余計なこと、考えないでメモをとらなきゃ。
レジに、釣銭の準備をして。シャッターも開けて、店の外の掃除。陳列作業とともに、傷んだ花を下げる。で、いよいよ開店ってことか。
開店したら少しは落ち着けるのかなと思いきや、切り花の水替えに手入れ、鉢植えの水やりに手入れ。仕入れた切り花の水揚げもある。もちろん、その間に客がくれば接客もしなきゃいけない。ああ、なんだか頭がパニック起こしそう。きちんと出来るだろうか。いや、やらなきゃダメ。気づくと溜め息を漏らしていた。
「おやおや、やっぱり、ヤル気がなくなっちまったかい」
節子は恵比須顔をしていた。
「いえ、私、頑張ります」
「ふふふ、そうかい」
「あの、花の手入れなんですけど、いまいちよくわからなくて。もうちょっと詳しく教えてもらえないでしょうか。水揚げとかもよくわからないし」
「そうだねぇ。それじゃ、実際にやってみせるから、よく見ていなさいねぇ」
「はい」
切り花の水替えのやり方や水揚げのやり方を店舗にある切り花を持ってきて、説明してくれた。
メモをとりつつ、繰り返しその言葉を反芻する。
自分でもやってみきゃ。
節子のやり方を、逐一見逃さないように集中する。その間、メモを忘れずに書き留める。なんだか、忙しい。そう思いながらも、梨花は見様見真似でやってみた。
器を洗剤で洗っていく。切り花の茎も流水で流して、ヌメリを落として。それで、変色した茎は五ミリから一センチくらい切ると。
切り花を入れる桶には三センチから五センチの水を入れてと。
やりながら、メモもしっかりとっていく。
次は、えっと、配送された切り花の水揚げか。
これは自分が休んだ日の次の日だけになるか。あっ、自分が休みなら店も休みだ。覚えておけばいいのかも。いやいや、忘れるかもしれない。かもしれないじゃない、自分は完璧に忘れる。もう、そんなところに自信を持ってもしかたがないでしょ。
きちんと引き継ぎ内容は、ノートに記載すること。
しっかりメモ、メモ。
定休日は水曜日。これ、重要。
そう思って、違う、違うと否定した。休みが重要だなんて。仕事、頑張らなきゃダメでしょ。
「梨花さん、ちなみに水曜日は、ここの商店街全店休みだからねぇ。覚えておくといいよ」
全店休み。
そんな、それじゃ休みの日に商店街をぶらりと探索なんて、できないじゃない。
しかたがないか。そのときは、ショッピングモールに行くしかない。けど、そんなことすら知らないでこの町で過ごしていたかと思うと、笑えてきた。
三年だよ。この町にいるの。
考えてみれば、当然なのか。
平日は仕事だったし、買い物は駅前で済ませて帰宅でしょ。土日だって、商店街を歩いたことなんてない。近所でも、わざわざ行こうなんて思わなかった。なんだか、申し訳なく思えた。
「梨花さん、大丈夫かい。聞いているかい」
「あっ、はい。大丈夫です」
きちんと話を聞かなきゃ。すぐ違うこと考えちゃう。悪い癖だ。
「配送されてきた商品確認も大事だからね」
「はい」
「梨花さん、返事はいいね」
返事は、か。
それが自分の取り柄なのかも。それだけじゃないとは思うけど。
それで、配送されてくるのは月曜日と金曜日が切り花で、土曜日が鉢植えか。配送がある日は、値付けとPOPも書かなきゃ。
なるほど。梨花は書いたメモを見ながら、頷く。
そうだ、花の名前も覚えなきゃいけない。
覚えられるだろうか。花って結構たくさんあるから、ちょっと心配。
「あら、梨花さん。難しい顔をしちゃって。もしかして、この仕事、やりたくなくなったかい」
「えっ、いえいえ、そんなことはないです」
思わぬところを突っ込まれて、気が焦る。焦る必要なんてないのに。これじゃ、本当に花屋の仕事がしたくないみたいじゃない。
それにしても、そんなに難しい顔をしていただろうか。梨花は苦笑いを浮かべて、頭を掻いた。
「そうかい。それならいいけど」
節子は、少しだけ頬を緩ませて話を続けた。
余計なこと、考えないでメモをとらなきゃ。
レジに、釣銭の準備をして。シャッターも開けて、店の外の掃除。陳列作業とともに、傷んだ花を下げる。で、いよいよ開店ってことか。
開店したら少しは落ち着けるのかなと思いきや、切り花の水替えに手入れ、鉢植えの水やりに手入れ。仕入れた切り花の水揚げもある。もちろん、その間に客がくれば接客もしなきゃいけない。ああ、なんだか頭がパニック起こしそう。きちんと出来るだろうか。いや、やらなきゃダメ。気づくと溜め息を漏らしていた。
「おやおや、やっぱり、ヤル気がなくなっちまったかい」
節子は恵比須顔をしていた。
「いえ、私、頑張ります」
「ふふふ、そうかい」
「あの、花の手入れなんですけど、いまいちよくわからなくて。もうちょっと詳しく教えてもらえないでしょうか。水揚げとかもよくわからないし」
「そうだねぇ。それじゃ、実際にやってみせるから、よく見ていなさいねぇ」
「はい」
切り花の水替えのやり方や水揚げのやり方を店舗にある切り花を持ってきて、説明してくれた。
メモをとりつつ、繰り返しその言葉を反芻する。
自分でもやってみきゃ。
節子のやり方を、逐一見逃さないように集中する。その間、メモを忘れずに書き留める。なんだか、忙しい。そう思いながらも、梨花は見様見真似でやってみた。
器を洗剤で洗っていく。切り花の茎も流水で流して、ヌメリを落として。それで、変色した茎は五ミリから一センチくらい切ると。
切り花を入れる桶には三センチから五センチの水を入れてと。
やりながら、メモもしっかりとっていく。
次は、えっと、配送された切り花の水揚げか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる