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第4章 花ホタルの花言葉
(4-4)
しおりを挟む「結衣、誕生日おめでとう」
小宮山颯は、二四本のバラの花束を結衣に渡した。
「うわっ、キレイ。なに、どうしたの。こんなプレゼントくれるなんて、どういう風の吹き回し」
「おい、その目はなんだ。何も企んでなんかいないからな。そんな言い方はよせ」
結衣は勘が鋭い。だからって、自分の心は読めないだろう。
「ごめん、お兄ちゃん。ありがとうね」
「喜んでもらえたのならよかったよ。たまにはこういうのもいいだろう」
「嬉しいよ。誕生日覚えていてくれただけでね」
「なんだよ、忘れたことなんてないぞ」
「そうかな。そういうことにしておくか。それより」
んっ、なんだ。また、人を見透かすような目をして。
「それより、なんだよ」
「ふーん、なるほどね。そういうことか。わかっちゃった。お兄ちゃん、好きな人できたでしょ」
「な、なにを言っているんだよ。そ、そんな人はだな」
「まあ、いいけど」
なんだ、『いいけど』って。
まったく、結衣ときたら本当に勘の鋭い。
いったい、どこで気づいたのだろう。そんな要素どこにもなかったはずだ。
当たってはいるけど。
まあ、バラの花束はあの人に会う口実だ。忙しくてなかなか行けなかったけど、運よく妹の結衣の誕生日があったから花屋に行けた。颯はサイドボードの上に飾ってある花ホタルに目が留まり、頬を緩ませた。
そういえば、元気なさそうだったけど大丈夫だろうか。
どこか具合でも悪かったのだろうか。結衣と車で出掛けたとき見かけたけど、声をかけられなかった。結衣がいたから声をかけづらかったのもあるけど、馴れ馴れしい人だなって思われるのも嫌だった。
結衣には、まだ知られたくない。おせっかいの虫が疼くはずだ。それで、失敗したことが多々ある。いや、それは違うのか。あれは自分が悪かったのか。どっちにしろ、もうバレているだろう。とりあえず、どこの誰かを知られないようにしたほうがいい。
待てよ、知られたほうがいいのか。
結衣のことは、まあいい。今は、花屋に行く口実を考えなくては。
どうにも花屋って、入るのを躊躇してしまう。花ホタルを買うときは、意外と自然に行けたのに。やっぱり意識しているせいかもしれない。
「オギリカさん、だったか」
「えっ、なに。誰、それ」
「えっ」
結衣は何を言っているんだ。誰って、なんのことだ。
「えっ、じゃないでしょ。今、名前言っていたじゃない。リカさんって。もしかして無意識に口にしちゃったとか。そっか、その人のことが好きなのか。そういえば、この間も話していたような」
口にした。小城梨花って言っていたのか。それに、結衣に話していたっけ。
いつ、どこで。いや、そんなはずは。ないって言えないか。
節子を病院に連れて行った話をしたかもしれない。そのときに、話したかもしれない。
これじゃ、また、結衣が何かとんでもないことしでかしそうだ。
「お兄ちゃん、どうしたの。黙っちゃって。好きってことでいいんだよね」
「バ、バカ言うんじゃない。そ、そんなんじゃ」
「お兄ちゃん、わかりやすい。私が手助けしてあげようか」
「いいよ、放っておいてくれ」
「ふーん、そう。でもなぁ。気になるな。花屋の人なんでしょ」
ああ、こいつはなんでわかるんだ。こんなにも勘が鋭かったっけ。それとも、自分が鈍いだけか。
「その話はいいから。誕生日だろう。ほら、ケーキも買ってきたんだから食べろ。シャンパンだってあるぞ」
「誤魔化すんだ。ってことは当たりだね」
「ほら食え、このケーキ美味いぞ」
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